チームで連携してシナジーを発揮。前職の知見を活かしデータドリブンなPDCAを実施
富士通グループ全体のマーケティングを推進するグローバルマーケティング本部。松尾と小倉はその中にあるデジタルエクスペリエンス統括部に所属しています。
松尾:デジタルエクスペリエンス統括部は、マーケティングの中でもとくにデジタル領域を統括する部署です。デジタルを活用し、お客様とのコミュニケーションを量と質において最大化することをミッションとしています。
私が部長を務めるストラテジー&パフォーマンス部は、戦略と分析でチームが分かれています。戦略チームは全社の事業戦略にアラインしたデジタル領域のマーケティングの戦略の立案を、そして分析チームでは、データ分析を通じてインサイトを導き出します。このインサイトをもとに、小倉が率いるカスタマーエクスペリエンス部と連携して仮説を立て、デジタル施策を推進しています。
小倉:連携のプロセスとしては、データに基づき両チームでディスカッションして仮説を立て、共通認識を持つことから始めます。そこから仮説を検証するために、たとえばABテストなどの具体的な手段を考え、KPIに貢献できるアプローチを構築し、デザインやコンテンツの改善を実行するのが私たちカスタマーエクスペリエンス部の役割です。さらに実行後の効果を分析して、再び仮説検証を繰り返していくことで、PDCAを効果的に回しています。
チームの強みを互いに活かし、データを活用したマーケティングに取り組む2人。小倉も松尾も、同じ2023年に富士通へキャリア入社しました。
小倉:私は約20年にわたり一貫してマーケティング業界に従事してきました。キャリアのスタートは新聞社で、当初からデジタル領域に関わり、記事コンテンツのマネタイズやUIの最適化などに取り組んでいました。
その後、広告代理店や大手自動車メーカーなどでキャリアを積み、デジタルだけでなく、製品・価格・流通・プロモーションの4Pを統合的に管理し、マーケティング全般の知見を培ってきました。
松尾:私は食品メーカーでキャリアをスタートしました。営業や営業企画など幅広い経験を積んだのですが、その中で実感したのがマーケティングの重要性です。
その後オーストラリアの海外法人に出向し、PRとマーケティングを統括し、戦略の設計から実行まで、一気通貫したマーケティングをとおして、広告やWeb、SNS、イベントなど、さまざまな顧客接点の構築に携わりました。
前職の経験を現在の業務に活かしている2人。データの活用により、マーケティング活動が従来と比べて変化したのを感じていると話します。
松尾:とくに変わったのは、顧客と企業がよりWin-Winの関係を築けるようになったことです。たとえば、顧客の生の声を活用するほか、行動データ分析と他社分析から得られるデータを参考にするなど、定性データや定量データの活用によって顧客のインサイトを導き出し、それに基づく価値の提供を企業は追求できるようになりました。マーケティングの本質である「顧客の創造」を実現する上で、データ活用の意義は大きいと感じます。
小倉:データドリブンなマーケティングにより、意思決定の効率化が進んだと感じます。取得できるデータ量の増加やAIの進化により、データの分析から活用までのスピードは大幅に向上しました。
一方で、データ活用に過度に依存することにはリスクもあると考えています。データだけを見て意思決定をすると、発想力が抑制され、アウトプットが画一化される可能性があるからです。イノベーティブな成果を生み出すためにも、データの役割を定義し、クリエイティビティとのバランスを取ることが大事だと考えています。
「Webトラ」でパーソナライゼーションの仕組みを導入。顧客行動の活発化に寄与
富士通は2022年、マーケティング変革の一環としてWebサイト全体を刷新するWebトランスフォーメーションプロジェクト(Webトラ)を開始。その背景について、プロジェクトマネージャーを務める松尾はこう話します。
松尾:富士通の事業変革に伴い、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)パートナーとして一貫したメッセージのグローバル展開が求められていました。しかし、当時のWebサイトは、Webコンテンツを国ごと、事業部ごとに独自に作成していたため、市場へのメッセージに一貫性が欠けている、という課題がありました。
そのためお客様によりわかりやすく、富士通の事業変革の方向性が正しく伝わるWebサイトへと変えるべく、Webトラが始動しました。全社戦略、ブランディングとの一貫性を高め、Webコンテンツやサイト構成をお客さまにわかりやすく改善するとともに、制作プロセスも標準化および一元化させることを狙いとしています。各部門との連携が緊密に求められる、ステークホルダーが非常に多い大規模なプロジェクトです。
私のチームは、プロジェクト全体の進行を管理しながら、戦略の策定とガバナンスを担当。一方でWebのプロフェッショナルが集まる小倉のチームは、戦略を効果的・効率的に実施する手法を検討し、お客様にとってユーザーエクスペリエンス、最適なデザインや見せ方を追求しています。
全社的な大規模プロジェクトであるWebトラ。その中でデータを活用した取り組みの一つが、Webサイトのパーソナライゼーションです。
松尾:お客様の行動データに基づいて、最適なコンテンツを提供するパーソナライゼーションの仕組みを国内で試験的に始めました。個々のユーザーの興味・関心に基づいたコンテンツを提供することで、デジタル上でのユーザー体験のエンゲージメントを深め、理解促進につなげます。
私たちのチームでは、初出の際に富士通のグローバル戦略パートナーのSalesforceと協働し、パーソナライゼーションの仕組みを導入するとともに、お客様に応じたシナリオの設計を行っています。パーソナライゼーションではコンテンツの量と質が重要になるため、小倉のチームと密に連携して取り組んでいます。
小倉:コンテンツは各部門で作られているため、それらを管理しつつ、本部の方針にアラインさせることが必要です。私たちのチームでは、方針に基づいてどのようなコンテンツを提供するかを整理し、パーソナライゼーションの最適化をめざしています。
パーソナライゼーションの仕組みを導入したことで、具体的な成果も表れ始めています。
松尾:お客様のエンゲージメントレートやクリック率などで効果を測定していますが、導入前と比較してこれらの数値が上昇しました。お客様のデジタル上での行動が、以前より確実に活発化してきていると感じます。
現状はまだデータが少なくシナリオの数も限られていますが、今後はデータが集積し、シナリオのパターンが増えることで、パーソナライゼーションの精度がさらに向上する見込みです。将来的には全社CRM基盤やSalesforce AIと連携し、Webでの行動データを活用したタイムリーできめ細かい顧客体験を実現できると考えています。データを根拠にした次の打ち手をリアルタイムに打つ、データドリブンなデジタルマーケティングの強みを発揮していきたいと思います。
さらなる成果を追求するため、松尾は営業部門との連携も進めています。
松尾:お客さまとのデジタル接点で得たデータを活用し、より良い顧客体験を構築するには、お客さまの課題やニーズを肌で理解している営業の意見が必要です。そこで積極的な情報発信や連携体制を構築し、定例会での意見交換や議論を行っています。
Webトラにおいてもあらゆる営業の本部と協力し、パイロットテストを実施しながら、顧客視点でWebサイトを作成しています。来年度の本格ローンチに向けて活動を加速させています。
データ×AIが今後の鍵。チームの多様性も活かし、グローバルにマーケティングを推進
チームで連携し、新たな価値を創出しているデジタルエクスペリエンス統括部。小倉はデータ活用の取り組みについて「まだファーストステップに過ぎない」と話します。
小倉:リアルタイム予測を実現し、最適なコンテンツを提供することが今後のテーマの一つです。そしてデータドリブンなマーケティングの推進においては、AIの活用も重要になります。現在行っているABテストやSEO分析なども含め、定型的なタスクをAIによってすべて自動化し、オペレーションを効率化することが求められています。
それが実現すれば、クリエイティビティや付加価値の創出に集中することが可能です。データとAIの活用によっていかにシナジーを生み出していくかを、中長期的に追求していく必要があると考えています。
取り組みを推進していく上では、課題もあると語る小倉。
小倉:たとえば、パーソナライゼーションを進めるには大量のコンテンツを制作しなければならず、そのためのリソースが必要です。また、行動データを取得することについて、ユーザー心理への配慮も求められます。そこで重要なのは、データの活用方針を明確に定義し、戦略的に実行することです。
お客様の信頼性を保ちつつ、データとAIをどのように活用して価値を生み出していくのかが、これからの課題になると考えています。
そうした課題と向き合うにあたり、小倉はデジタルエクスペリエンス統括部の多様性が役に立つと話します。
小倉:グローバルにビジネスを展開する中で、富士通の信頼を守りブランドイメージを統一させるには、一貫性のあるメッセージを発信しなければなりません。
富士通としてどういうメッセージをグローバルに発信すべきかを追求する上で、ダイバーシティあふれるメンバーがさまざまな視点から議論を交わすことの意義は大きいと思います。
前職でもインターナショナルな環境で仕事をしていた松尾は、多様性を活かすために大切な心構えがあると話します。
松尾:私はオーストラリアで多国籍なメンバーと仕事をした経験があるのですが、異なる文化の中で働く上で大切なのは、アクティブリスニングだと思っています。日本の常識が海外では通用しないことも多く、逆もまた然りです。
多様性を活かすには積極的に相手の意見を聴く姿勢が大切です。深く理解した上で、信頼関係を築く。これは顧客を創造するマーケティングにおいても密接に関連する考え方だと思います。
「インサイト」と「仮説」を大切に、データドリブンなマーケティングのさらなる進化を
チームの多様性を活かし、データドリブンなマーケティングを推進している松尾と小倉。今後の展望を次のように語ります。
松尾:大きなビジョンとして描いているのは、私たちが活用しているデータの全社展開です。統括部の分析チームでは、本部のミッションに基づいてKGIやKPIなど約30種のデータを毎月算出しています。現在はこれを本部にのみ提供していますが、今後は全社的に発信し、各部署がリアルタイムで効果測定やマーケティング施策の改善に活用できる環境をつくることが目標です。
富士通では、商談情報を一元管理し顧客接点を強化する「OneCRMプロジェクト」を実施するなど、データドリブンマーケティングのインフラが着実に整いつつあります。そこにデジタルデータを加え、最初のタッチポイントから商談獲得までを一気通貫で支援できる仕組みをつくりたいと考えています。
小倉:私たちは今、インターネット登場以来の大きな転換点に立っています。AIが急速に進化している中で、お客様の行動やタッチポイントも大きく変化していくと思います。
こうした時代の波に取り残されないためにも、データドリブンなマーケティングを進化させていくことが重要です。データ分析によって現状の課題を把握するだけでなく、未来を予測して新たなお客様を創造するための枠組みをつくっていきたいと考えています。
データを積極的に活用していく一方で、留意すべき点もあると2人は話します。
松尾:加工されていないローデータは解釈次第で捉え方が大きく変わるため、誤った方向に進んでしまうリスクもあります。だからこそ重要なのは、データをさまざまな角度から分析して、インサイトを導き出し、検証を重ね続けることです。
膨大なデータからインサイトを見出すのは容易ではありません。データをさまざまな角度から分析し、時にはイレギュラーなデータにも目を向けることが必要です。定量データだけでなく、定性データにも価値があります。一つの解釈に飛びつかず、仮説・検証を地道に繰り返しながら価値のあるインサイトを得ることが求められます。
小倉:大切なのは、仮説ありきでデータを使うことです。データから得られるのは、すでに知っている情報や想像できる範囲の事実にすぎません。データに答えを求めるのではなく、仮説を立て、それを検証するというプロセスをきちんと回すことが重要です。データに振り回されないためにも、データの活用を目的とせず、目的のためにデータをどのように活用するのかを考えるべきだと思います。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
