専門技術領域の第一人者を認定するGlobal FDE。グループ全体で33名が活躍
富士通が掲げる、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパス。その達成には、テクノロジーカンパニーとして技術力を高め続けることが重要になります。
そうした観点から、グループにおける最高峰の技術者に、グローバルな称号とオーソリティを与える取り組みとして、2021年より開始したのがGlobal Fujitsu Distinguished Engineer(以下、Global FDE)制度です。
この制度の目的は、技術者のエンゲージメント向上やリテンションに加え、優秀な技術人材を獲得すること、また、国や組織を超えた交流により、相互研鑽や技術課題の解決につなげることをめざしています。
約12万4,000人いる従業員のうち、2023年6月時点で33名がGlobal FDEに認定されています。認定技術領域は、ハイブリッドIT、ネットワーク、サイバーセキュリティ、AI、データ、コンピューティング、プロジェクトマネジメントの7つです。今西は、その中のAI領域で認定されています。
「Global FDEは応募制で、上位者の推薦を受けてエントリーする仕組みとなっています。認定されると技術研鑽や情報発信などに使用する活動費用として、年間100万円が支給されることも魅力の一つです」
Global FDEの人材レベルとしては、専門技術領域における世界的な記録保持者であることや受賞実績があること、グローバルで認知されていることなど、該当技術領域の第一人者であることが求められます。
「私の場合は、世界で20万人が参加する機械学習のコンペティション『Kaggle』において、Kaggle Masterの称号を獲得していたことが評価され、認定につながりました。Global FDEになると、高い技術力を活かして社会貢献や後進の育成などに取り組むことになります。
私はFujitsu Convention(※)において、エンジニアのスキルアップに有用なKaggleの紹介を行いました。こうした社内での発表も含め、Global FDEは富士通の技術の顔として、イノベーションの創出に貢献するべく重要な役割を担っています」
※ 技術、ノウハウ、アイデアを論文にまとめて蓄積し、広く共有し、誰でも活用できるようにする富士通グループ全体での取り組み
ハードウェア開発からキャリアをシフト。挑戦してわかったAI開発の魅力
AI領域のGlobal FDE として活躍する今西。現在はジャパン・グローバルゲートウェイPublic & Social ITS Division(以下、PSITS)でマネージャーを務めています。
「ジャパン・グローバルゲートウェイは、世界7カ国のグローバルデリバリーセンターと連携し、デリバリーの変革に取り組んでいます。その中でPSITSは、国家や国民生活の基盤となる最重要社会システムを、デジタル技術で支えることをミッションとしています」
PSITSにおいて、今西はAIのデリバリーを担うグループに所属。ミッションクリティカルなお客様を担当しているソーシャルシステム事業本部と連携し、官公庁や社会インフラ事業者などを顧客とする領域でソリューションを提供しています。
「現在は、膨大な映像データをAIによって解析し、交通量計測や道路・河川の異常事象を迅速に検知する『道路河川映像解析ソフトウェア』の次期開発に向けた技術調査を行っています。
その他にも監視カメラの映像に対して、不審な行動や人物属性などを自動で検出する『マルチAIエンジン』の次期開発にも従事。画像解析だけでなく、過去のデータから事象の発生を未然に予測するようなAIの開発にも取り組んでいます」
最先端の開発を担う今西がAIに携わるようになったのは、2018年のこと。それまではネットワーク機器の開発に携わっていました。
「2010年に富士通に入社した当初は、電気回路の設計から試作機の評価などを行っていました。以来、8年間にわたりハードウェアの開発を経験しましたが、所属本部の注力領域の変化にともない、これまでの領域とは大きく異なるAIを担当することに。
最初はせっかく身につけたハードウェア開発のスキルが無駄になると感じ、乗り気ではありませんでした。でも実際にAIを学び始めて気づいたのは、自分がその分野のエキスパートになれる可能性があるということです。ディープラーニングはまだ歴史が浅いので、今から学んでも十分に技術を究められると思いました。
また、試行錯誤を繰り返しながら進めていくAIの開発は、昔から理科の実験が好きだった自分の性格にも合っていました。実験結果を考察し、改善を重ねていく過程は、とても楽しくやりがいがあります」
AIを学び始めて約3年後、世界的機械学習コンペ「Kaggle」で金メダルを獲得
AIを学ぶ中で、その魅力に夢中になっていった今西。スキルアップできたのは、Kaggleへの参加が大きかったと話します。
「自分の力がどこまで通用するのか、力試しをしたいと考えたのが参加のきっかけでした。Kaggleはノートパソコンが1台あれば、誰でも簡単に参加できるハードルの低さが魅力です。コンペではスポンサー企業がデータ分析の課題を出し、世界中の参加者が最適なモデルの構築を競い合います。その精度の高さで順位が決まり、上位入賞者にはメダルと賞金が授与されます。
参加する楽しさは、情報共有が活発に行われること。コンペ終了後も、ランキングの上位入賞者が使った手法やコードを公開してくれるので、とても勉強になります。そうして知識を増やしながら実践に活かすうち、飛躍的にスキルアップしていきました。このまま続けていけば、必ず自分も入賞できる。そんな自信が湧いてきて、コンペにどんどん熱中していきました」
そしてAIを学び始めて約3年後。今西はプロアメリカンフットボールリーグのNFLがスポンサー企業として開催した、「NFL Health & Safety - Helmet Assignment」のコンペで825チーム中11位に入賞。念願の金メダルを獲得しました。
「選手のけがを軽減するためのデータ分析として、プレイ動画から選手のヘルメットを検出してIDを付与し、トラッキングすることがコンペの課題でした。Kaggleでは自分が書いたコードを1日最大5回まで提出できるのですが、コードにバグがあると提出がエラーになってしまいます。何度もバグが出て、その修正に相当の労力を費やしました。そして迎えた締め切り当日、最後の5本目として提出したコードがエラーせずに高得点をマークし、初めて金メダルを獲得。今までの努力が報われた瞬間でした」
時には睡眠時間を削ってコンペに没頭したと話す今西。業務に差し支えがないよう、作業の段取りを工夫して乗り越えました。
「AIにデータを学習させるときには、待機時間が発生します。それがもったいないので、就寝中や仕事中などに実行できるように工夫していました。Kaggleを始めたことで、そうした段取りがうまくなっただけでなく、何より技術知識が向上し、コーディングのスピードも格段にアップしたと実感しています。
それは本業にも活かされ、Kaggleを通じて習得した技術を製品に導入したこともありました。そうしたビジネスにつながる成果が出せていることも、Global FDEとしての評価につながったのだと思います」
世界一のAI技術者をめざして。Global FDEとして、さらに高い実績を
現在はKaggleで4つの金メダルを保有している今西。今後の目標を次のように語ります。
「最高ランクであるGrandmasterまであと金メダル1つというところまできているので、やはりGrandmasterの称号を獲得したいですね。その後は、Kaggleには個人のランキングがありますのでさらに上位をめざしていきたいです。Global FDEの権威を向上するためにも、より難易度の高い目標に挑戦していきたいと思います。
そしてKaggle自体をもっと盛り上げ、社会的な認知を広げることも目標の一つです。周囲で参加したいという声を聞く機会が増えてきているので、富士通社内でチームを組み、チャレンジできないかと考えています」
自分の実力が可視化されるKaggleのおもしろさを、社内の技術者にも体験してほしいと今西は話します。
「ハードウェアの開発を担当していたころは、自分のスキルを世界的にアピールできるような機会がありませんでした。AIの分野ではKaggleに参加することで、技術者として世界何位なのかをランキングで知ることができます。それがもっと上をめざしたいというモチベーションになり、継続的なスキルアップにつながると思います」
キャリアをシフトして挑戦したAI領域で、新たに身につけた専門性。職域が変わっても、変わらず今西が大切にしてきたことがあります。
「社外でも通用する高度なスキルを身につけることを、常に意識してきました。富士通は、規模が大きく多様なプロジェクトに携わることができ、自分の裁量で新しいことに挑戦できる会社です。ハードウェア開発からキャリアシフトしたように、もしかしたら10年後にはAIとは異なる分野を担当しているかもしれませんが、この環境を活かして何事にもチャレンジし、社外でも通用する卓越したスキルを追求し続けることに、変わりはありません。
デジタル技術は常に進化しているので、絶えず学び続けることが技術者の使命だと言えます。社内の技術者もそうした意識を持ち、高い目標に向かって挑戦してほしいですね。そしてGlobal FDEとして活躍できる優れた技術者が、さらに増えていくことを期待しています」
※ 記載内容は2024年3月時点のものです
