コンセプトは「#好奇心をドライブしよう」。有志が集まり始動したインスピラボ
顧客との共創・共感を生むDXの提案を中心に、ビジネス創出のためのサービスやコミュニケーションデザインを行うフロントデザイン部。プロジェクトの一つとして宮入が展開するインスピラボは、2018年に有志のデザイナーが集まって始動しました。
「私はこれまで、お客様と共に新しい事業の創出をめざすさまざまな取り組みを行ってきました。その中で度々経験したのが、良いアイデアが生まれたと思っても、調査するとすでに似たようなサービスが開発されているということ。そうした経験を通じて、そもそもの着眼点を変えなければ、イノベーションは創出できないと思うようになりました。
そこで、アイデアのもととなるインスピレーションの大切さに着目。新しい発想を生み出す情報や体験の機会を提供するべく、『#好奇心をドライブしよう』をコンセプトとして、インスピラボを立ち上げました。デザインセンターには社員の挑戦や自律を重んじる風土があるため、コンセプトに共感したメンバーが自主的に集まって活動を展開しています」
インスピラボでは、「ヒトの価値観の変化に着目すること」「世の中のおもしろい情報に触れること」「自ら体験して心を動かすこと」を重視。価値観に関する研究レポートの提供や勉強会の実施、デザイン思考の実践をテーマとしたワーケーションの開催など、幅広い活動を行っています。
「その一つとしてスタートしたのが、『ふヘンなみらい』というプロジェクトです。まだ誰も想像したことがない未来を描くことを目的として、世の中のトレンドや変化を追うだけではなく、普遍なものや不変なものについても着目し、物語を創作するというワークを実施しました。
ワークを通じて実感したのは、物語が持つ力の大きさです。創作された架空の物語をきっかけに、参加者の対話が自然と広がっていきました。たとえば少子化がさらに進行した未来の家族観など、普段の会話では触れることがないようなテーマに対しても、まるで映画の感想を言い合うように活発な議論が展開されました。
その成果を活かし、最近では生成AIを使ったSFプロトタイピング(※)をお客様と共に実施する機会が増えています。こうした取り組みが徐々に社内にも認知され、ワークショップの開催依頼を受けるなど、事業に貢献できる活動が広がりつつあります」
※ SFプロトタイピング…SF(サイエンス・フィクション)を活用することによって、思考のバイアスをはずし、新たな価値創造やイノベーションを生み出す手法
幅広いビジネス領域を持つ富士通。デザインの可能性が広がる大海原を自由に泳ぐ
宮入が富士通に入社したのは2009年。興味を持ったのは、学生時代に参加した映画製作プロジェクトでの教員との出会いがきっかけでした。
「担当教員がたまたま富士通出身の方で、これまで携わった仕事について話を伺ううちに富士通に興味を持つようになりました。とくに魅力を感じたのが、時代の先を見据えて先行投資する姿勢です。今すぐ売り上げにつながらなくても、ビジネスの種を育てることを大切にしている会社だという印象を受けました。
その中でデザインが果たす役割の広さも知り、未来の暮らしに必要なサービスを思い描き、それをカタチにしたいと考えるようになりました」
自分がやりたいデザインができる環境を求め、他の企業も受けた宮入。最終的に富士通への入社を決めたのは、就職活動を指導していた教員の言葉に背中を押されたからでした。
「その先生に言われたのは『富士通は大海原だ。宮入さんは広い海を自由に泳ぐ方が向いているよ』という言葉です。当時の富士通は、コンシューマープロダクトや通信インフラ、民間・公共向けの業務システムなどを扱っており、デザイン領域は多岐にわたっていました。
それは今も変わらず、ビジネスや組織、コミュニケーションなど、デザインの可能性はさらに広がっており、まさに『大海原』だと実感しています」
宮入が入社して最初に配属されたのは、富士通デザイン(現デザインセンター)のデザイン企画開発部。出向という形で公共・文教ソリューションのUIデザインに従事しました。
「自治体をお客様として、写真や動画を活用した橋梁点検システムの画面設計などを担当していました。ほかにも時代に合った公共サービスを追求するため、ダムの貯水状況や大気汚染などの監視システムを通じて、市民に情報を公開する仕組みづくりに携わりました」
社会に役立つ公共サービスのデザインに携わるやりがいを感じながらも、宮入は新たな挑戦を追求。未経験のプロジェクトに参画するべく、大手自動車メーカーへの出向を決意します。
「それまで私が担当していたのは、既存のサービスをより良く改善するデザインでした。時代の変化とともにお客様との共創をめざす動きが増えていく中で、今までやったことのないデザインがしたいと考えるように。そんなときに新規プロジェクトのメンバーを募集していると知り、成長のチャンスだと感じて参画を決めました」
デザイナーとして感度の良さを大切に。変化の兆しに気づき、不安を希望に変えていく
プロジェクトの内容は、企業に常駐してデジタルサイネージの導入から活用までを支援するというもの。宮入は2年間にわたり、サービスデザインと運用を担当しました。
「お客様の目的は、デジタルサイネージを活用して社長のメッセージを発信することにより、工場やオフィスなど勤務場所に関係なくタイムリーな意思疎通を実現し、会社としての一体感を醸成することでした。通常は数名でチームを組んでプロジェクトに取り組みますが、出向は私一人。富士通を代表して自分が持てるスキルをいかに発揮するかを考えながら、デザインを行いました。
常駐のため発注者と受注者という垣根を超え、お客様とワンチームでプロジェクトを進行。どのようなコンテンツを発信するかなど、議論の土台になるようなイメージ図を実際に描いて提供することで、プロジェクトの解像度を高めていきました。私は以前から、デザイナーの仕事はタタキ台をつくることから始まると思っているのですが、何もないところからプロジェクトを前進させるためのきっかけを与えることができ、デザイナーとして貢献できたと感じられる経験でした」
プロジェクトを終えた宮入は、産業・流通業界におけるサービスデザインを担当。その後はサービスロボットの活用促進に関するUXの研究や、生活者の価値観が変化する兆しを捉えるレポートの提供に取り組むなど、新しいデザインに挑戦し続けてきました。その中で宮入が、大切にしてきたことがあります。
「私は自身のパーパスとして、『感度良くいこう』を掲げています。固定概念や思い込みを持たず、世の中の小さな変化に気づくこと。それを大切にしながら、デザインの世界を広げてきました。
変化の先に何があるのかがわからないと不安になりますが、そこにあるのが希望だとわかれば、安心して前向きに変化を受け入れることができるはずです。だからこそまずは自分が、変化に向かって最初の一歩踏み出し、希望を提示していきたい。そうして未来のより良い道しるべをつくっていくことが、デザイナーとしての私の役割だと思っています」
富士通のテクノロジーと融合して新たな価値を。その先に描くより良い未来をめざして
有志が集まって活動をスタートし、今年で6年目を迎えたインスピラボ。宮入が取り組みたいことはまだまだあります。
「インスピラボの活動に富士通のテクノロジーを融合させ、新たな体験を提供する機会をつくりたいと考えています。イメージとして近いのは、入社4年目にTOKYO DESIGNERS WEEK コンテナ展で展示した『e*motion』です。
スマートフォンと透明なオブジェクトを組み合わせて、光と音の演出によりスマートフォンを情緒的なモノに変化させるインスタレーションを制作しました。モノの使用概念を崩し、新たな可能性を体験できる場を提供できればと考えています」
精力的な活動を展開するとともに、宮入はインスピラボの認知向上にも注力。そこで重要となるのが、社内外に向けた情報発信です。
「富士通の社内SNSを通じて、情報発信が得意なメンバーやさまざまなネットワークを持つメンバーと、部門を超えてつながることが可能です。そのため人的資源も有効に活用しながら認知を広げています。
そうして私たちの活動に共感してくれる仲間を増やすのはもちろん、重要なのはビジネスとして育て、富士通の成長に貢献すること。誰も想像したことがない未来図を描くだけでなく、それを富士通のテクノロジーによって実現し、新たな価値の創造を追求していきたいと思います」
変化の兆しに気づき、これからの時代に求められるビジネスの種を育てる宮入。そんな宮入が思い描く、より良い未来とは。
「先日ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に関するセミナーを開催したときのこと。台湾で活躍するデザイナーの方が言われたのは、DE&Iが当たり前になり、DE&Iという言葉がいらなくなる未来が理想だということです。私もその考えに共感しますし、多様性はより良い未来に欠かせないと思っています。
多様な価値観に基づくさまざまな選択肢がある中で、一人ひとりが自分に一番合うものを、周囲を気にせず思うままに選べること。それが認められる世界が、私にとってのより良い未来です。
めざす未来を実現するためにも、大切なのは好奇心に向かってまず一歩を踏み出すこと。『おもしろそう』とか『やってみたい』と心が動いた時に、誰もが挑戦できる小さな機会を、インスピラボでつくっていきたいと思います」
仲間と共に、富士通という大海原を自由に泳ぐ宮入。大航海はこれからも続きます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
