「だからこそおもしろい」。技術と信念で難度の高いミッションに挑む
富士ソフトのシステムインテグレーション事業本部で医療機器戦略を担う伊藤。インフォメーションビジネス事業部 第2技術部で課長としてIoMT推進グループを率い、医療機器メーカー向けのビジネスを展開する。
「私の主なミッションは、医療機器メーカー様に向け、富士ソフトの医療の法規制対応への取り組みをサービスとして構築し、付加価値を提供することです。
私自身も法規制のコンサルティングを行いますが、このニッチで難しい領域だからこそ、ビジネスの基盤をしっかりと作り上げる必要があるんです」
伊藤のコンサルティング業務は、複雑な医療規制に対応するための羅針盤となる。
「医療機器ソフトウェア開発の開発プロセスを規格した国際規格『IEC 62304』やサイバーセキュリティ、医療情報を安全に管理するためのガイドラインなど、複雑な規制への準拠を専門的な側面から一貫してサポートしています」
伊藤が率いる「IoMT推進グループ」は、医療機器業界に対する高い付加価値サービスを取り扱っている。
「グループ内には、新規ビジネスを構築するチーム、コンサルティングを行うチーム、受託開発を行うチームがあります。こうした多様なチーム構成で、総勢20数名のメンバーがそれぞれの専門性を発揮しています」
医療機器のソフトウェア開発において、最も重視しているのはリスクマネジメントの考え方だ。
「開発の大前提にあるのは、『ソフトウェアの不具合は発生するものだ』という考え方です。だからこそ、万が一不具合が起きても人命に影響が出ないようにする対策、たとえば緊急時に安全に停止する仕組みを組み込むといったリスクマネジメントが、最も重要になります。
また、ユーザーである医師や技師が、直感的に迷わず操作できる『ユーザビリティ』も常に意識していますね」
その信念はチーム運営にも貫かれている。実現のために、伊藤は定期的なコミュニケーションを重視する。
「週1回の主任会議でプロジェクト状況を確認し、社員全員が集まる会議では会社の方針やメンバーの声を共有します。プロジェクト単位でも週次でミーティングを行い、常に方向性を共有しています」
チーム全体の方向性を揃えるだけでなく、メンバー一人ひとりの成長を促すことにも、伊藤は力を注ぐ。
「たとえば、AIが単なる技術ではなく、業務や意思決定のあらゆる場面に浸透し、個人の役割や価値が再定義されるAI時代には『単なるプログラマーではなく、AIを使いこなす側になる必要がある』といった大きな方向性を示します。
また、規制要求に関する勉強会や技術コラムの執筆を通じて、知識向上とビジネスにつながる実践的な成長機会を作るよう心がけています」
試行錯誤の道のり。不可能を可能にしてきた問題解決力
伊藤のキャリアは、官公庁向けの監視システム開発から始まった。そこで大規模システムの開発とプロジェクトマネジメントを経験した後、伊藤のキャリアを象徴する案件の一つ、自治体向けの条例管理システム開発を手がける。
「当時、『技術的に不可能だ』と言われていた機能がありました。複雑な法律文書をコンピューターが理解できるようタグ付けする技術を駆使し、実現にこぎつけたんです。完成したシステムが実際に稼働した時は、本当に鳥肌が立ちましたね。
『複雑なものをいかに構造化するか』という点にこだわり抜いたことが、成功につながったと感じています」
医療分野への転機は、所属部署での小さな医療機器開発プロジェクトへの参画だった。そしてある医療機器のソフトウェア刷新プロジェクトで、伊藤はキャリアを左右するほどの巨大な「壁」に直面する。それは「IEC 62304」という、いわば「医療機器ソフトウェア開発の世界共通ルールブック」だった。
「当初は、お客様からの依頼のまま開発した事もあり、なぜこれほど複雑なドキュメントが必要なのか、まったく理解できませんでした。苦労の中で、「IEC 62304」規格というものがあり、それに準拠するため手順がとても大変だという事を知る事ができました。この苦労が、『医療機器戦略』立ち上げの原点です」
そして2016年、伊藤は自ら医療戦略を立ち上げ、医療機器業界向けに開発実績を商材として提案を行っていたが、まったく引き合いが取れなかった 。苦労の中で「開発実績だけではなく、医療業界を知り、法律に基づく規制要求の理解が無ければ、お客様の本当の課題を解決する事は出来ない」と気づいた。
その後、医療業界の情報を読みあさり、医療コンサルタントとの助けを借りながら試行錯誤で成長を続け、そして大きな時代の流れをキャッチする。
「2018年ごろから、医療機器をインターネット・クラウドに繋げるという引き合いが出てきました。医療機器業界も、ようやくIoT化の流れが来たと感じました。
IoT化の流れに伴い、IoMT(Internet of Medical Things)という言葉も登場し、技術革新が進んでいくと感じられる状況となりました。ただ、医療機器メーカー様の多くは機械系のバックグラウンドを持ち、IT分野への対応が難しいという課題を抱えていました。複雑な規制要求への対応と、IT分野への技術課題と抱える状況となったのです。
そこで、私たちは『テクノロジーの変化への追及』と『規制要求の変化への追従』という2つの変化に対応し、医療機器業界の技術革新に寄与し続けることを目的とし、医療戦略の中に新たな戦略、「IoMT戦略」を立ち上げました。
この戦略のもと、法規制とIT技術力の両面から支援ため、専門知識を深めていきました」
この戦略立案は、時代の大きな流れと伊藤の目論見が繋がった瞬間でもあった。
「IoT化とクラウドシフトの波が、ただの一過性の流行ではなく、社会の根幹を変えていく不可逆な流れであると確信した瞬間でした。法規制という土台を整えつつ、我々が得意とするIoTクラウドの技術を市場に展開できれば、富士ソフトならではの価値を創出できる——そう気付いたとき、これだ!と思いました。
それは、未来への確信と、自分たちの技術が社会に貢献できるという実感が重なった瞬間でした。あの感覚は、今でも自分の原動力になっています」
かつては乗り越えるべき課題でしかなかった規制要求は、深い理解を経て、伊藤にとって他社にはない専門領域となっていた。
「これは私たちがやるべきだ」。覚悟の先にあったチームで未来をつかんだ日
IoMT戦略を立ち上げて以来磨いてきたものが、やがて大きな成果として結実する時が来る。2019年、まさにその時が訪れた。組織細胞を検査する、先進的な医療機器の開発プロジェクトが舞い込んできたのだ。
「そのお客様は、医療機器開発そのものが初めての取り組みでした。当然、複雑な規制要求についても分からない、という状況で、『ぜひ富士ソフトさんに助けてほしい』とご相談いただいたんです」
それは、伊藤が掲げてきた構想を試す、またとない機会。しかし、それは大きな挑戦でもあった。
「まさに、私たちが掲げてきたIoMT戦略のすべてが詰まっている『ズバリの案件』でしたね。クラウドも、サイバーセキュリティも全部必要で。ようやく本当の意味で、この取り組みを形にできる時が来たと感じました。
ただ、正直なところ、私たちもコンサルティングサービスとしての実績はまだあまりなかった。知識はありましたが、お客様を薬事承認まで導いた経験はなかったんです。どうしようかと悩みましたね。
でも、『これは私たちがやるべきだ』と腹を括って、『コンサルティングから開発まで、責任を持ってやります』と宣言しました」
そこからチーム一丸となっての総力戦が始まった。
「総勢30名ほどのチームで、2年がかりで案件に取り組みました。まずは試作品を作り、ユーザーである医師にレビューしていただく。そのフィードバックを元に改良を重ねて、実際の製品開発を進めていく。まさに、コンサルティングチームと開発チームが両輪となって、お客様の良きパートナーとして伴走しました」
そしてついに、チームの努力は薬事承認の取得という最高の形で実を結んだ。
「お客様の課題に、私たちの知識と技術がまさに『刺さった』瞬間でしたね。自分たちの戦略が一つひとつ形になっていく過程は、本当に楽しかったです。チーム全員で大きな達成感を得ることができた、忘れられないプロジェクトです」
この成功は、単なる一案件の実績にとどまらなかった。伊藤が立ち上げたIoMT戦略の正しさを証明し、富士ソフトの医療事業におけるコンサルティングサービスの礎を築いた。チームでつかんだこの成功が、現在の事業の力強い基盤となっている。
「夢物語かもしれない」で終わらせない。ビジョン実現にかける、自らの役割
これまでの挑戦と成功を経て、伊藤は富士ソフトの、そして自らの未来をどう描いているのか。
「現状、私たちは医療機器メーカー様に対して間接的にソフトウェアを中心とした付加価値を提供していますが、今後はもう少し医療業界に対する責任範囲を広げていきたい。品質管理も含めて責任が取れる製造業や製造販売業といった資格の取得も考えています」
その視線は、さらに先を見据えている。
「これは本当に夢物語かもしれませんが、最終的には富士ソフトとして、患者さんへ直接的な貢献を果たしていきたい。自社ブランドの医療機器のようなものを世に出せたら、おもしろいですよね」
では、その大きなビジョンを牽引する伊藤自身は、自らの役割をどう捉えているのだろうか。
「技術も、営業も、戦略も、とその時々で必要なことをやってきたので、『マルチプレイヤー』と言えるかもしれません。ただ、その行動の根っこにある想いを一言で言うなら、それは『社会貢献』ですね。
社会に役立つ仕組みで、どれだけ良いインパクトを与えられるか。それが、私を突き動かす原動力なんです。ようやく今、この医療という分野で、執筆やウェビナーなどを通じて市場に少しでも良い影響を与えられる立場になれた。
そう感じられる瞬間に、一番のやりがいを感じますね。もちろんまだまだ満足はしていませんが、それが次のモチベーションになっています」
そんな伊藤の視点から見た、富士ソフトで働く技術職の魅力、そしてその役割とは何だろうか。
「ものづくりが好きな方にとって、本当に楽しい環境だと思います。数カ月前まで銀行のシステムを担当していたのに、次は産業機器のシステムを担当するというように、本当にいろいろな業界のシステムを作れることが特徴です。
また、風通しの良い会社だと感じています。自分が『こうなりたい』という意思があれば、会社もサポートしながら成長を見守ってくれる。もちろん部門によって違う部分もあるかもしれませんが、全体的に動きやすい会社ですよ」
最後に、どのような人材と一緒に働きたいか、伊藤は理想の人物像を示す。
「チームプレイが基本となるので、しっかりコミュニケーションが取れることが重要です。そして、指示に従うだけでなく、『こうあるべきだ』という自分の考えを持って能動的に動ける方を求めています。そういう方であれば、共に挑戦し成長していけると思います」
成すべきことのために。その実直な想いこそが、不可能を可能にし、数々の挑戦を成功に導いてきた原動力なのだろう。伊藤の挑戦は、これからも多くの仲間を巻き込みながら、医療の、そして社会の未来を切り拓いていく。
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
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