医師と日々議論する環境。アメリカで求められる「柔軟性」と「スピード感」
現在、私は、当社の海外子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.にて臨床開発を担う「Clinical Development」に所属し、Clinical Research Scientist (臨床企画)として働いています。Clinical Developmentは約10名の組織で、そのうち4名が医師という特徴を持つ部署です。
部署のミッションは、薬の開発戦略及び臨床試験のデザインを考案し、戦略の遂行をリードすることで新薬を承認へと導くことです。メンバー全員が「新しい薬を患者さんに届ける」という強い思いを共有しています。
主な業務の一つに、臨床試験の参加施設のマネジメントがあります。日本では臨床推進(オペレーション)のメンバーの方が主に施設とのコミュニケーションを担いますが、アメリカでは臨床企画が施設の医師やスタッフとも積極的に関わります。とくに抗がん剤の臨床試験では、副作用管理がきわめて重要になるため、臨床企画が社内医師と連携して施設対応することが必要になります。治験に参加いただいている患者さんの安全性を第一に、施設の医師やスタッフからの問い合わせなどに対応しています。
実際の1日の業務はデスクワークが中心です。朝は、先に1日が始まっているヨーロッパの治験参加施設からのメールを確認し、アメリカでの会議の合間に対応します。日中はアメリカ国内の治験参加施設も本格的に稼働するため、施設とのやり取りを通じて試験の進捗を確認しつつ、試験に必要な文書のレビューや作成、学会発表の準備といった業務も並行して進めます。
また、日本のプロジェクトメンバーとも週1回は情報共有や相談をしています。
アメリカならではの仕事の進め方として、私がとくに感じるのは「柔軟性」と「スピード感」です。
日本と比べて、状況に応じて臨機応変に議論しながら進めていく機会が多いです。臨床試験では新しく収集したデータに基づく迅速かつ柔軟な判断が求められます。また、競合他社も薬を開発していますので、新しい薬の登場により、がんの治療方法が変わってくるので、そういった外部環境の変化も早いです。
だからこそ、出てきた状況変化をキャッチするスピードも早いですし、すぐに開発責任者も交えた会議が開かれ、「次どうするか」を話す必要があります。以前の議論に固執せず、前を向いて柔軟に対応していく姿勢が求められますね。
働き方の面では、日本にいた頃から想像していた通り、メリハリをつけてプライベートを大事にする文化を実感しています。たとえば、アメリカのメンバーは、定時になったらきっちり仕事を終えています。私自身も、日本にいる時より間違いなく時間を区切って仕事をするようになりましたね。休日は家族との時間を大切にしており、一緒に外へ出かけたり、現地の友人たちと過ごしたりしています。
海外への挑戦を実現するために。チャンスを引き寄せた5年間の軌跡
前回の記事は、私にとって初めてのグローバルプロジェクトで成功体験を積んでいた時期でした。その後、2022年頃から別の新しいグローバル試験にアサインされました。
新しいプロジェクトでは、日本側から期待される役割を着実に遂行し、アメリカチームにも自身の存在感をアピールできました。そのプロジェクトが社内で重要案件へと発展し、私自身も大きく貢献できた結果、上司から「アメリカで引き続き同じプロジェクトに携わらないか」という打診を受け、正式な赴任へとつながりました。「今、このような話がある」と上司から声をかけてもらった際は、心からうれしく思いました。
もちろん、ただ待っていたわけではありません。チャンスを引き寄せるために、意識して行動してきたことが3つあります。
1つめは、日本で成果を出すことに加えて、アメリカ側に「自分自身の存在感を示す」ことです。受け入れてくれるのはアメリカの会社ですから、アメリカのメンバーにも自分を認識してもらう必要があると考えていました。そう考え、アメリカメンバーとの会議では、日本側からもしっかり自分のプレゼンスを示すよう心がけ、積極的に会議へ参加していました。
2つめは、「海外で働きたい」という希望を伝え続けることです。入社した時から上司には継続して伝えていましたし、年に1回提出するキャリアプランにも、常に海外赴任を希望する旨を記載していました。
そして3つめは、語学力、英語です。これは間違いなく必須だと考えて入社後から継続して勉強していました。
こうした日々の業務での発信と、グローバルプロジェクトでの実績が実を結んだのだと考えています。
実際にアメリカに赴任してからは、日本での臨床推進と臨床企画、両方の経験が今に活きていると感じます。
臨床企画は、まさに今アメリカで実践しているので、日本での経験がそのまま活きています。また臨床推進で日本の施設や先生方と対応していた経験も、こちらでアメリカやヨーロッパの先生方とコミュニケーションを取る上で、ベースは一緒です。過去の経験をうまく応用しながら仕事を進められています。
「違和感」を「イノベーション」に。部署間の連携を改善
アメリカに来て感じている変化は、大きく2つあります。
1つは、私自身の内面的な成長です。あまり動じない姿勢が身につきました。緊急案件が飛んでくることも多いのですが、冷静に対応すればなんとかなると思えるようになりました。赴任前ならドキドキしていたと思いますが、不確実なことが多いのが当たり前になり、度胸が付いたのかもしれません。
もう1つは、環境面での変化によって、Patient Firstの意識がより強くなったことです。部署内に医師がいることもあり、日々治験に参加くださっている患者さんの状況について議論することが多いです。議論の中で、Patient Firstを実践的に学んでいます。
このようにアメリカに来て得たものは多いのですが、とくに印象に残っているのは、部署間の連携を改善した経験です。
赴任当初、私の所属するチームでは各部署の連携があまりスムーズにできていない状況でした。具体的には、一部のメンバーが議論をリードし、全体に十分に認識が統一されていないように感じました。
そこで、まず私が取った行動は、アメリカの上司との対話でした。上司に自分が感じた違和感をマンツーマンで率直に伝え、「これは日本の働き方に慣れているから自身だけが違和感を覚えるのか、それともアメリカの働き方でも改善すべき課題なのか、改善すべき課題であるならばどのようにアプローチしていくのが良いか」を議論しました。その上で、上司から賛同を得て、チーム内の各部署と個別に会議を設定し、密に情報共有・議論することを始めたんです。
こうした行動を起こした背景には、現地のカルチャーと、私が日本で培ってきた経験との違いがありました。
現地のカルチャーは役割分担の意識がはっきりしており、それぞれが自分の専門領域にリソースを集中させる傾向があります。一方で、日本では、部署間の連携や、ジョブの範囲を越えて全体の最適化を図るような働き方を経験してきました。そうした日本で培った経験が活きた場面だと感じています。
最終的に、地道な対話を重ねた結果、チーム間の連携は改善し、業務もうまく分担できるようになり、アウトプットの質も向上したと感じています。
また、この取り組みを含めた私の働き方が思わぬ形で評価されました。年に1回、アメリカサイドでの「カルチャーアワード」という表彰の機会があるんです。そのうちの1つ、「イノベーション」のカルチャーを実践できたとして、他者からの推薦で私が表彰してもらえたんです。
アメリカメンバー約1,200人の中で評価してもらえたのは、本当にうれしかったですし、日本で培ってきた経験を活かせるということで自信をもつことができました。
めざすはグローバル開発のリード。現地で実感する、自分の意見を伝える大切さ
5年前に掲げた「グローバル開発のリード」という目標は今も変わりません。
がん領域の薬の開発は非常に専門性が求められる分野です。アメリカの著名な先生やFDA(規制当局)との経験を積み、がん領域の薬の開発をグローバルレベルでリードできる存在をめざしています。
今後磨きたいスキルは、「コミュニケーション力」です。とくに今、私たちのチームには、医師以外にも生物統計、データ解析のプログラミング、専門のライティングなど、非常に多彩なバックグラウンドを持つメンバーがいます。
今も、こうした多様なメンバーと働く上で、「自分の常識は、相手の常識とは違うこと」を常に意識し、自分の意見を伝える際は根拠まで丁寧に説明することを大切にしています。その上で、コミュニケーションの取り方は今後も継続して高めていく必要があると思っています。
これから社会に出る皆さんにお伝えしたいのは、「しっかり自分の意見を持って発信する重要性」です。
私自身、アメリカに来て強く感じるのは、薬の開発の中心はアメリカとヨーロッパだということです。最先端のアイデアや著名な先生と議論できる環境は、非常に刺激的で、シンプルに楽しいと感じます。
製薬業界は今後もグローバル化がますます進み、日本にいても海外のメンバーと一緒に仕事をする機会が増えていくと思います。
もちろん、英語はできたほうが良いに越したことはありません。私自身、社外のアメリカやヨーロッパの先生方と話す中で、「うまく自分の意見を伝えられなかったな」と悔しい思いをすることがあり、どうすればよかったか常に振り返っています。
ただ、語学よりも大事なのは、自分の意見を持つことです。会議に参加していても、意見を言わなければ埋もれてしまいます。そして、拙い英語でも、自分が「何を」思っているかを伝えようとすれば、相手は必ず聞いてくれます。だからこそ、まず「自分の考えを持つこと」、そして「それを伝える姿勢」が何よりも大事です。
あらためて、住友ファーマの開発職の魅力についても触れたいと思います。
1つは、「挑戦を後押ししてくれる環境」です。上司のサポートや、自身のキャリアパス(私の場合は、海外赴任)をサポートしてくれる環境があると思います。今、会社が成長に向けて頑張っている状況で、挑戦的なことも歓迎してくれる雰囲気があるのも魅力ですね。
もう1つ、研究職か開発職かで迷う方もいるかもしれませんが、開発職の魅力は、より患者さんに近く、「薬を出すこと」に貢献していると強く感じられる点だと思います。もちろん研究職も素晴らしい仕事ですが、そこが大きな違いですね。
そして、最後に、これから入社する未来の仲間へメッセージを送るとするならば、「一緒に薬を世の中に出して、患者さんに貢献しましょう」と伝えたいです。それが私自身の目標であり、会社の使命です。ぜひ一緒に、その夢を実現しましょう。
※ 記載内容は2025年10月時点のものです

