確かな技術と想いが交差する。自社ブランドを支えるものづくりへの熱意
IT商社としてICT流通事業を幅広く手がけるSB C&Sは、その市場知見を活かし、モバイルアクセサリーやオーディオデバイスなどの製品の企画から開発、販売までを一貫して担うメーカーの機能も有しています。
樺澤(かばさわ):SB C&Sは主にモバイル周辺のアイテムを扱っていますが、自社ブランドも複数持っています。スマートフォンのアクセサリーブランド「SoftBank SELECTION(ソフトバンクセレクション)」や、そこで培った音の技術力とスマートフォンへの深い理解を融合して生まれたオーディオブランド「GLIDiC(グライディック)」がその主軸です。
樺澤と苑はそれぞれの専門性を強みに、自社製品開発の最前線で挑戦を続けています。
苑(えん):私はプロダクトマネジメント室で、社内開発製品の機構設計および製品開発PMを担当しています。「GLIDiC AI」プロジェクトではPMサポートとして、中国語を活かして海外のベンダーとハード・ソフト両面の折衝や調整を行っています。
樺澤:私はグラフィックデザイナーとして、パッケージや店頭広告、販促物などを手がけています。最近はアプリ用のビジュアルやイラスト制作にも関わり、領域を広げています。
2人はなぜ、IT商社で製品をつくることを選んだのか。これまでのキャリアとSB C&Sに入社した理由をこう語ります。
苑:大学で機械工学を学んだ後、車検用設備の設計開発やコンシューマ向けデジタル機器の機構設計・製品開発に携わってきました。SB C&Sに転職を決めたのは、製品の設計開発から販売まで幅広く業務に携われる点や、国内外の多様な部署と関われる環境に惹かれたこと。そして何より、AI製品の開発に未来を感じたことが一番の理由でした。
樺澤:私はデザイナーとしてキャリアを積み、SB C&Sには当初、派遣社員として入社しました。そこで、皆さんが熱意やこだわりを持って、すごく楽しそうにものづくりに向き合っている姿を目にして。たとえ困難があっても「みんなで一緒に頑張ろう」という雰囲気やメンバーの人柄に惹かれ、ここで働き続けたいなと強く感じ、縁あって正社員になりました。
AIと歩む、新たな体験づくり。困難を乗り越え、思い描いたカタチに
2026年、AIプロダクトブランド「GLIDiC AI」の第1弾として誕生したのが、 “自己成長”を支援する次世代型AIイヤホン「GLIDiC AI +u Buds」です。「日常の困りごとをAIで解決する」ことを起点に、身近に使い続けられるプロダクトとして設計されました。
苑:この製品は、音楽を聴くだけの一般的なイヤホンとは違います。主にビジネスシーンでの使用を想定していて、会議や会話を録音し、AIを使って文字起こしや要約を行う。その内容をもとに「次回は何を準備すればいいか」「伝え方をこう改善してはどうか」といった次のアクションまでサポートしてくれます。
これまでにない製品の開発プロジェクトに参画した時のことを、2人はこう振り返ります。
樺澤:製品のアイデアを聞いて「こんなことが実現できるんだ」と驚きました。普段からデザインのヒントを得る壁打ちや仮想ユーザーレビューなどにAIを活用していることもあり、ぜひこの価値を形にしたいなと。私にとっては初めての新ブランド立ち上げで、どうすればチームの力になれるか考えていたのを覚えています。
苑:私も開発現場では、AIを相談相手に音声の確認や構造検討のアイデアをもらい、最終的に自分の手で確かめる、というように活用しています。だからこそ、AIを利用して自己成長できたり、日常の役に立ったりするというコンセプトに、技術者としておもしろさを感じました。
開発にあたっては、オープン型イヤホンゆえの壁が立ちはだかりました。
苑:耳の中に入れないタイプのため、耳にかける「イヤーフック」の耳当たりや装着感が重要になります。本体を支える強度と肌に触れるシリコンの柔らかさをどう両立させるか。柔らかすぎると成型不良や耐久性の不足につながります。装着時の開閉や手で曲げた時の操作など、さまざまな使用シーンを想定して、素材の硬さや形状を細かく検討しました。信頼性試験を繰り返し、ちょうど良いバランスを見つけるのに苦労しましたね。
とくにこだわったのは外観と装着感です。会議などで1日のうち数時間は耳にかけて使う製品なので、継続して使ってもらうには装着感が良いことが大前提。試行錯誤の末、開発初期より大幅に装着感が向上した時は、頑張った甲斐があったと嬉しくなりました。
細部から心を動かす表現へ。専門性を越えた対話から生まれる一体感
樺澤は、プロダクトの顔となるデザインにおいても既存の枠組みを打ち破るための挑戦があったと語ります。
樺澤:新ブランドのロゴ作りでは、既存の「GLIDiC」のイメージを大切にするか、一新するかで何度も議論を重ねました。「AI」の文字配置や太さを0.01mm単位で微調整し、50パターンほど作成しましたね。さらに「+u Buds」のロゴは、ノート1冊分、約200パターンを手書きし、ブランドに合う表現を一から模索したんです。
パッケージの素材選びにも、これまでの常識を覆すアイデアを取り入れました。
樺澤:今までにない素材に挑戦したいと、オーロラ素材を提案しました。当初は慎重な意見もありましたが、実物サンプルを作って見てもらうことで「いいじゃん!」とポジティブな声に変わり、実現に至ったんです。インフルエンサーの方がSNSで製品だけでなくパッケージも紹介してくださるなどの反応もあり、こだわりを貫いて良かったと感じました。
プロジェクトを共にした2人は、お互いのプロフェッショナルな姿勢に深い敬意を示します。
樺澤:私たちの想像を具現化してくれる苑さんたちのチームのことは、いつも尊敬するばかりです。イヤーフックのシリコン素材を決める会議に同席したことがあったのですが、硬さの違うサンプルを何パターンも用意して、私のような専門外の人間にはわからないほど微細な違いについて、皆さん熱く議論していました。そこまで突き詰めるからこそ、本当に良いものが生まれるのだと肌で感じた瞬間でした。
苑:ありがとうございます。直接肌に触れる部分だからこそ、妥協はしたくありませんでした。もっと頑張って、さらに良いものを作らなければと気が引き締まりますね。
私も、樺澤さんが手がけたパッケージやロゴを見て、製品全体の印象がこんなにも変わるのだと感動しました。デザインの力は製品価値を左右する重要な要素なのだと教えられましたね。
個々の技術を結集し、一つの目標に向かう。その団結力こそが未知の開発を支える原動力となりました。
苑:製品開発はチームプレーです。ハードウエア、ソフトウエア、デザイン、アプリケーション。他分野のメンバーと連携しながら一つのものを作り上げていく過程に大きなやりがいを感じます。とくに今回、デバイスとアプリのつなぎ込みの際には海外ベンダーとのコミュニケーションも重要でした。お互いの意図や専門的な内容をうまく橋渡しし、相互理解を深める経験は大きな糧になりました。
樺澤:このプロジェクトには、製品を売ること以上に「製品が手元に届いた時に心から喜んでほしい」と、お客さまの気持ちに寄り添う仲間がそろっています。こうした環境だからこそ、苑さんたちエンジニアや私たちデザイナー、どの領域のメンバーも妥協のないものづくりができるのだと思っています。
挑み続ける2人の志。技術とデザインが溶け合い、日常に彩りを添える製品を
今回のプロジェクトは、2人にとって大きな自己成長の場となりました。
樺澤:今回、初めてアプリ制作にも挑戦し、UI/UXデザイン業務の一部を担当しました。イラストやカラーを作成する中で、見た目の良さだけを優先して利便性への配慮が欠けると、かえって使う方の心理的ストレスになる場合があると知ったんです。見やすい色の規定など新たな知識を学び、あらためて「色とは何か」という基本について深く考えるきっかけになりました。
苑:私は今回、技術的な内容を企画担当メンバーに説明する機会が多く、どうすれば専門外の人にもわかりやすく伝えられるかを考える勉強になりました。また、ハード設計がメインの私にとって、アプリ設計チームと海外ベンダーとの橋渡しをした経験も大きかったです。つなぎ込みについて自分でも学んで理解しながら調整する過程で、視野が大きく広がったと感じます。
今回の協業を経て、それぞれの専門性を活かし、より高い次元でユーザー体験を共創していく姿勢を固めています。
樺澤:苑さんの言うように、お互いに専門領域があるからこそ、共通の言葉で語り合う大切さを実感しました。私もデザインを的確に言語化する努力を続け、次に活かしていきたいです。
苑:私もハードの完成度を高めるだけでなく、ソフトやAIとの連携も含め、体験全体を意識した開発に取り組みたいと考えています。周囲と密にコミュニケーションを取りながら、さらに良いものをつくり上げたいですね。
2人が見据える先にあるのは、日々の生活に寄り添い、使うほどに価値を感じてもらえるプロダクトの姿です。
樺澤:日々進化するAIに対応し、情報感度の高いお客さまに向けてアプリだけでなく、UIや色のユーザビリティーを磨き続けたいです。個人としてもUI/UXデザインの知見や技術を深め、今後の「GLIDiC AI」製品などにさらに貢献していくのが目標です。
苑:次回の開発では今回の経験を活かし、より高度なスケジュール管理や環境構築を行いたいと考えています。そしていつか自分のアイデアを製品化したい。質問すれば音声で回答してくれたり、使う方の感情に合わせて明るさが変わったりするAI搭載のデスクライトなど、人々の学習や生活を支える製品を形にしていきたいですね。
※ 記載内容は2026年4月時点のものです
