60代での廃業──「次の仕事」を探した、人生で一番苦しい時期
もともとは版下制作の仕事を長く続けていました。今でいうグラフィックデザイナーのような役割で、2,000点以上を制作してきたといいます。しかしデジタル化によって業界は一変。廃業を決断した60代、次の仕事を探す時期が人生で最も苦しい局面でした。
ちょうど過渡期だったんですよ。昔は版下を一つ作るのに五、六十万円かかっていたのが、デジタル化で誰でもできるようになってしまって。商売にならなくなってしまった。
60代のときに廃業して、次の仕事を探すのが一番大変でしたね。あのときは本当に悩みました。女房と2人で生きていかなきゃいけない。今みたいに高齢者向けの仕事もあまりなかった時代でしたから
いくつかの求人を検討するなかで、ビーモーションを選んだのは「長く続けられるかどうか」という軸からでした。
時給が高い仕事は、会社が傾いたときにすぐ切られる。ビーモーションを選んだのは、長く安定して働けそうだと思ったからです。文句を言わず続けてきたら、もう15年以上になっていました。
続けてる意味とか、そういう大げさなものじゃなくて、元気で働けるなら続けよう——それだけのことなんですよね
専門用語は一切使わない──お客さまとは「友達」になる気持ちで
売り場に立つうえで、関口が一貫して大切にしていることがあります。
専門用語は一切使わないようにしています。専門用語を並べ立てて説明しても、お客さまを言い負かすだけで、それじゃ絶対売れない。お客さまとは友達のような関係性にならないといけない、というのが私の考えです。
カメラの撮影モードって、言葉で説明してもなかなか伝わらないんですよ。AとかPとかSとか。だから実際にカメラを手に取って、絞りが変わる様子をその場で見せる。目で見てもらわないと、初めての方にはわからないですから。あと、決まったらサクサク進めることも大事で。お客さまだってそんなに暇じゃないですから
そうして積み重ねた信頼が、思わぬ形で届いたこともありました。
だいぶ前の話なんですけどね。売り場に立っていたら、若い女の子がじっと私を見てくるんですよ。なんだろうと思っていたら、『おじさん、有名よ』って言うんです。びっくりしちゃって。
聞いてみたら、SNSに『あのお店には、カメラにめちゃくちゃ詳しくて、親切に教えてくれる人がいる』という投稿があったらしくて。知らないところで、そういうふうに書いてもらえていたのが本当に嬉しかった
接客がうまくいかないこともある、と関口さんは笑いながら続けます。
若い男性の方に気に入ってもらえなくて、一生懸命説明したのに『あっちへ行こう』って別のメーカーのコーナーへ行っちゃったこともあって。でも後から社員がそのご家族のところへ行ったら、結局私が接客したカメラを買ってくれたんですよ。帰り際にパートナーの女性が『先ほどはすみませんでした。ありがとうございました』と言いに来てくれて。だって1台売れたんですよ。腹を立てる理由がない(笑)
「ベテランのつもりでいたのに」──それでも、学び続ける
近年、カメラ売り場では動画撮影に関する問い合わせが増えました。写真とはまったく異なる知識体系に、関口も最初は苦労したといいます。
動画撮影の知識が必要になってきて、これが写真とはまったく別の話で。お客さまに聞かれても最初はさっぱりわからなくて、頭の切り替えが本当に大変でした。ベテランのつもりでいたのに、若い社員の方が詳しいくらいで。
やっと最近、勉強して身についてお客さまと話せるくらいになってきたかなという感じです
続けていられる理由を聞くと、こんな言葉が返ってきました。
担当の方から『また教えてほしい』と言っていただけると、まだいていいんだな、と確かめられる気がして嬉しい。『もう来なくていい』と言われたらやめますけど、そう言われない限りは自分も努力しないといけないなと思っています。
それに、人と話すことが大きいと思いますよ。若い人とも、お年を召した方とも話す。はっきり言って、年取らないですよ。同世代の知り合いはもうほとんど亡くなっていて、生きていても病気でうちから出ない人ばかり。人と話さないと駄目ですね、本当に」
接客中は足の痛みも忘れ、時間があっという間に過ぎると話す関口。「きっとアドレナリンが出ているんでしょうね」という言葉が、すべてを物語っていました。
「命が尽きるまで、命を燃やすもの」
これから働くことを考えている方へ、関口はこう語ります。
年を意識しないで仕事をすれば、結構楽しくなると思います。ただ、一緒に働く人たちそれぞれの立場をわきまえることは大事で、若い社員さんにも『今日はよろしくお願いします』『ありがとうございました』は必ず自分から言う。私たちは場所を借りて働かせていただいているんだから、当たり前のことです
最後に、仕事とはどういうものかを尋ねました。
苦しいことがあっても、それは自分のプラスになること。苦しみを楽しみにしないと続かない。仕事しているときが一番燃えているときだと思うので——『命が尽きるまで、命を燃やすもの』、それが私にとっての仕事です
つらいことがあっても楽しみに変え、わからないことは学び、人と話し続ける。関口がこれからも売り場に立ち続ける理由は、仕事をしているときが一番燃えている——その一点だけ。命を燃やし続ける関口は、これからも販売の現場に立ち続けます。
※ 記載内容は2026年4月時点のものです
