音声からはじまる「伝わる設計」への転換
私の原点は音声です。学生時代は放送部に打ち込み、大学では心理学、とくに聴覚心理を学びました。「どんな言い方・どんな間の取り方なら人に届くのか」を考えるのが好きで、その延長で“伝わる”を設計に落とす仕事に挑戦したい――そう思い、文系出身の私はメーカーの開発現場に飛び込みました。アルプスアルパインを選んだのは、音やHMI領域の技術が、人の「感じ方」に寄り添い、体験を形づくっていくと感じたからです。 入社後は東京の本社でコネクテッドサービス系の仕事に配属。OJT期間にスマートスピーカーから呼び出せる音声アプリを自作した経験が転機になり、関心は「音声」から「言葉」、そして「体験(UI/UX)」へと広がっていきました。その後はスマホアプリの評価や企画を担当し、人が心地よく使える画面とは何かを、試作と検証を重ねながら探ってきました。
現場で整える力。部門を超えて「同じ場所で一緒に直す」
コネクテッドサービス領域での評価・企画を経て、モビリティ向けの後付け電動化ユニットとスマートフォンをつなぐアプリの新規開発チームに配属されました。アプリは当該ユニットと常時通信し、速度や移動履歴、経路表示に加えて、状況に応じた注意喚起を行います。
私は、企画・仕様検討から、受託開発の管理、実走評価までを一気通貫で担いました。 書類上の設計では問題がなくても、実機につないだ途端に動きや表示が想定どおりにならない――現場ではよく起こることです。そこで私は、東京からハードウェア担当メンバーがいる仙台開発センター(古川)へ何度も足を運び、現場でそのまま検証し、即時に修正する進め方へと切り替えました。 実地検証用コースで実際に走らせながら確認を重ね、ソフトウェアとハードウェアの“つなぎ目”で起きる問題を、ひとつずつ素早く解消していきました。
プロダクトの目の前で、チーム全員が汗をかきながら細部を整えていく。 この姿勢こそが、今の私を支える基礎になっています。
UI/UXのわかりやすさが、誰かの「安全を守る」ことに直結する
アプリ開発で学んだ「同じ場所で一緒に直す」をもっと徹底したくて、私は自ら手を挙げ、仙台開発センター(古川)へ異動しました。現在はデータソリューション企画部で、見守りシステムの要件定義、UI/UX方針、開発ディレクションを担当しています。 見守りシステムは、建築現場などにおいて、作業者のヘルメットに付けた小型デバイスから得た情報で転倒・墜落や熱中症リスクの兆しを捉え、監督者がWeb画面で安全を見守る仕組みです。
私が最優先しているのは、監督者の判断を速くし、画面上の“迷い”を生まないことです。ここでいう“迷い”とは、情報が散らばって要点が見つけづらい、重要度の違いが見た目で伝わらない、文言が曖昧で操作をためらう——といった状態を指します。そのために、機能を絞り、情報の層を浅くし、通知ルールを再設計。フォントやコントラスト、クリック数まで見直しました。加えて、学生時代とOJTで培った「音声はどう言えば・どこで“間”を置けば伝わるか」という視点をUIに置き換え、重要情報は色と位置で一目でわかるようにして、画面階層は浅く、ボタン名やエラー文は短く言い切る形に整えました。こうした工夫で、監督者の判断を速めています。
仙台開発センター(古川)でハードウェアのメンバーと同じ現場に身を置き、実機で確かめてその場で直す——この回し方で短納期でも改善を積み上げ、現在は、プロダクトの機能改善とUI改善を継続しながら、東京のデザイン室と連携して、各サービス共通の UI/UX ガイドラインを整備しています。
監督者の判断を速くし、迷いを減らすUIをつくることが、現場の安心に直結します。だからこそ私にとって「使いやすさ=安全」なのです。
“体感”を設計へ――学びを画面に還元し続ける
もう一つ、私が大切にしていたのが ifLinkオープンコミュニティです。 企業や学校が集まり、IoTの“組み合わせ”を、アイデア出しからコンセプトの有効性を確かめる小規模な実証(PoC)まで、素早く試し、学び合えるオープンな場です。
仙台開発センター(古川)では ifLink オープンコミュニティのテーマ設定から登壇・出展依頼、当日の運営までを主担当し、約50名規模のイベントを実施しました。車内振動を再現する仮眠・寝かしつけ支援の試作システムなどをデモし、参加各社からのフィードバックを翌日のUI改善に直結させる運用を回していました。
外の刺激を受け続けるには、心身の余白も大切です。日常の体験もまた、設計のヒントになります。たとえば、週末は会社がスポンサーをしているいわきFCや東北楽天ゴールデンイーグルスの試合を観に行きます。スタジアムで感じる一体感、チームの連携から、翌週の画面レイアウトや導線設計のヒントが見つかることも少なくありません。よく笑い、よく走り、現場と並走して、よくつくる――そのリズムが、私の仕事を前に進めてくれます。 文系出身でも、領域の違いがあっても、『相手にとってのわかりやすさ』を諦めなければ必ず貢献できる。これからも『使いやすさ=安全』を合言葉に、仲間と製品を磨いていきます。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
