サウンド設計部の役割と広がる活躍の場
戸田:サウンド設計部とひとくちに言っても、業務内容はチームごとに異なります。私は2021年の入社以来、音の信号処理(ソフトウェア)開発に携わっており、めざす音を出すための要素技術研究に取り組んでいます。当社のサウンドビジネスは、過去には車載向けがメインでした。そのため、カー用品店でアルパインブランドのスピーカーやアンプを見かけたことがある方も多いかもしれません。
私たちはスピーカーなどの基礎的製品の設計開発だけでなく、音のソフトウェア開発にも強みを持っています。これまではソフトウェア領域も車載専用として取り組んできましたが、その機能は車載に限定されるものではありません。
そこで、数年前から民生向け市場の開拓にも力を入れています。その流れの中で、私は入社2年目からゲーム業界など、新たなお客様への技術提案も担当しています。
藁谷:私は1991年に統合前のアルパインに入社しました。以来、ずっとオーディオ製品の製品開発を行っています。普通はローテーションがあるものなので、私のようにずっと同じ職に就くことができるのは珍しいことだと思います。アルパイン入社前も別の会社でオーディオ開発に携わっていたので、社会人としてのほとんどの時間をサウンド設計に捧げています。
設計の実務だけではなく、課長・部長としてマネジメントを担っている時期もありました。現在は定年後再雇用制度を活用し、サウンド設計部のメンバーとしてスピーカー事業のグローバル戦略を企画・推進しています。従来、サウンド製品の設計や評価は社内で行っていましたが、製造は社外委託が主でした。
しかし、今後の事業拡大を目的に、製造まで一貫して社内で行える体制づくりに取り組んでいます。とくにスピーカーの内作化を中心とした体制整備に力を入れています。
音楽再生メディアは時代とともに移り変わっていますが、スピーカーの「音を直接出す」という役割は変わりません。だからこそ、人と音を直接つなぐスピーカーを製造する技術を社内に蓄積することは大きな意味があると思っています。
感謝が生む支え合いの文化
戸田と藁谷ではキャリアの長さこそ大きく異なりますが、「人に助けられるありがたさ」は共通して感じています。
戸田:まだ社歴は浅いですが、入社2年目に1人でアメリカへ出張し、デモカーのサウンド調整を担当した時は大変でした。デモカーの完成期日は動かせない中、前工程が遅れたことで、私が作業できる時間が想定よりも大幅に短くなってしまったんです。
プレッシャーの中、どうにか完成にこぎつけたのですが、それは現地エンジニアをはじめ、駐在員や日本側のエンジニアなど多くの方が協力してくれたおかげです。それ以来、自分も誰かの役に立てるなら積極的に手を差し伸べようと思うようになりました。
藁谷:私も誰かに手を貸してもらうありがたみを何度も感じてきました。たとえば10年ほど前、ありがたいことに多数の案件をサウンド設計部が受注した結果、開発が追い付かなくなったことがありました。部全員で1つの案件に集中することも考えましたが、共倒れのリスクがある。外注という選択肢もありましたが管理が煩雑になる。最終的には他部署に一部の開発を委託することで乗り切りました。あの時、助けてくれた他部署への感謝は忘れられないですね。
また、マネジメントにおいては「自分でやったほうが早い」と思う場面もありましたが、あえて任せることでチームの成長にもつながる、お互い成長過程で助け合っていくことで、結果として仕事を円滑に進めるのだと学びました。人をマネジメントするということは、開発とは違うハードルがありますね。
変わりゆくもの、変わらないもの
音楽の聴き方がレコードやCDから、スマートフォンやパソコンを使ったストリーミングへと変わる中、どのように時代と向き合っていくかは重要なテーマです。
藁谷:私が若い頃は、お給料が出たら高価なオーディオ機器を買い家でじっくり聴いたり、ジャズ喫茶で音楽を聴いたりするというのが音楽マニアの楽しみ方でした。
しかし最近では、音楽は「持ち歩くことができるもの」に変わりましたね。音楽の楽しみ方が「内」から「外」に変わったように思います。サウンド製品を扱う私たちもそれに合わせて価値提供の方法を進化させなくてはいけないと思っています。
戸田:たしかに音楽の在り方は変わってきているように思います。今は「音楽そのもの」よりも「音楽を通じた共感」が重視されている気がします。音楽がコミュニティ形成の手段の1つになっていますね。
こういった時代に、人々は何に喜び、何に価値を感じるのか。そこに寄り添う視点が求められていると感じます。当社は音響機器というモノを作ってきた実績はあります。今後はそれをどう社会に浸透させていくかを考えることがビジネス発展のカギなのでないでしょうか。
一方で、変えてはいけないものもあると言います。
藁谷:昔から当社が求める「いい音」は変わっていません。それはひと言で表すと「LIVE」です。飾りつけしていない「素音」、アーティストが表現したい音をそのまま表現した音が、当社が理想とする音です。決して担当者が好きな音が「いい音」ではないのです。
しかし私たちが昔から主戦場としてきた車室内は音を追求するには難しい空間です。音を吸収するモノが多く存在したり、座る場所によって聞こえる音が異なったりします。このような空間で「素音」を再現するのは非常に難しいことです。
そのような環境でも「いい音」を実現するために、当社にはサウンドマイスターという音のプロが数名存在します。彼らがテストを行いチューニングしたものだけが、「アルプスアルパイン」の名を冠して世に出ることができるのです。この音は私たちが誇るブランドです。社会が変わり、音楽の楽しみ方が変わっても、受け継いでいってほしいと思っています。
戸田:先人たちがどれだけ音に気を使ってきたかということは、先輩たちの背中からも伝わってきます。私たちのビジネスの場は車載以外にも広がっています。開発の仕方も昔とは大きく変わってきました。
それでも当社の音を追求する姿勢は変えてはいけない。軸をずらすわけにはいかない。私たち若手も、その想いを受け継いでいます。そのため、車載製品以外の、たとえばゲーム向けのサウンドソフトウェア開発の際にもサウンドマイスターに意見をもらうなどして、どんな市場の製品でも音のブランドイメージを守るようにしています。
ベテランの知見、若手の視点
同じ「いい音」をめざし、共に働くベテランと若手。ベテランの「好き」への熱意は次の世代にも影響を与えています。
戸田:サウンド設計部には音が好きな人がとても多く、音の可能性を追求する熱意にはいつも驚かされます。好きを突き詰めたベテランたちにはそれぞれ自分の得意分野を持ち、音の可能性を追求しています。話を聞くだけで刺激になりますし、学びも多いので、いつも積極的に話を聞くようにしています。
藁谷:好奇心を持って人の話を聞くことができるのは大切なことだと思っています。時間を惜しまずに、知りたいと思って探求することで人は成長するのではないでしょうか。その対象はサウンドでなくてもかまいません。得意分野だけを突き詰めると視野が狭まってしまうので、広く好奇心を持ってクリエイティブな感覚を養ってほしいですね。
車載製品メーカーだったアルパインと、広く電子部品を扱うメーカーのアルプス電気は2019年に統合し、事業の幅が広がりました。その環境が合っていると戸田は言います。
戸田:好奇心を広げるという意味で、社内でさまざまな分野のスペシャリストから意見を聞くことができる今の環境は恵まれています。
たとえば私たちは「音」という感性領域のひとつを追求していますが、同じ感性領域でも、当社のスイッチ製品の開発者はスイッチを押したときの感触にいかに高級感や心地良さを持たせるかを追求しています。同じテーマでも多様な向き合い方があるのだと勉強になります。
藁谷:他部署とのコミュニケーションが増えることはとても良い傾向だと思います。サウンド設計部は仲が良く、同じ目標に活発に意見を言い合える仲間たちに恵まれています。
一方で部としての規模は決して大きくはなく、音という狭い分野を深く追求しているため、サウンドという島に取り残されてしまっていないか不安になることもありました。しかし他部署との交流が盛んになればなるほど、私たちの可能性が広がっていくように思います。
これからも「いい音」へのこだわりを大切にしながら、他分野の仲間たちと手を取り合い、新たな価値と活躍の場を切り拓いていく。そんな挑戦がサウンドビジネスの未来を豊かにしてくれると信じています。
※ 記載内容は2025年4月時点のものです
