携わったことが「世に出る」という魅力
私は福島県いわき市にある大学に入学し、熱工学を専攻していました。熱工学というのは、熱エネルギーを利用する方法や、その原理と技術を扱う工学のこと。私はその中でもフロンガスに代わる環境にやさしい物質を冷媒として使用する技術「自然冷媒」に関する研究をしていました。
大学の研究室では教授と共にいわき地区の中学校や高校に出張し、学生たちに水素燃料電池について教える活動に携わっていました。自分が研究していることが世に出る可能性があることに魅力を感じていたんです。もっと突き詰めて研究するために大学院に入ってさらに専門性を磨こうと考えていました。
大学院に入るための勉強と就職活動を並行して行う中で、私の出身地でもある福島県に拠点を持つアルプス電気(アルパインとの統合前)を知りました。家庭の都合上、大学院に行くことは難しくなってしまったので、自分が携わった製品が世に出る可能性があるという期待を込めてアルプス電気を受け、入社が決まりました。
2008年に入社してから現在まで金型に関連する部署で働いています。そもそも金型ってなんだろうというところから始まったので、基礎の部分を必死に覚えました。主な業務は、それぞれの製品に使われる部品を量産する金型を設計すること。単純に金型の3Dモデルを設計するだけではなく、品質、コスト、納期を意識した設計をする必要がありとても奥が深いんです。
また、学生時代から魅力を感じ、就職の際にも大切にしたいと思っていた「自分の携わったものが世に出る」ことも、現在の仕事で実現できています。
育休で家族との時間を得る──新たな気づき
2018年、金型のフロントローディング活動を担当することになり、宮城県の古川工場に転勤となりました。国内に2カ所あった金型に関わる部署のうち、もともと働いていた福島県の小名浜工場には対応する機械がなかったからです。フロントローディングとは量産立ち上げ前の生産準備段階において現場で起こるトラブルやロスを検証し、成形部品においてQCD(Quality、Cost、Delivery)改善を行うこと。結果的に製品開発の初期段階で多くのリソースを費やすことなのでとても重要な活動です。
転勤して3年ほど経ってから、小名浜工場に戻るという話も出ました。でも、自分の中で「何をやれるようになったんだろう」という不安が大きく、「中途半端なまま戻っていいのだろうか?」と思い悩んでいました。
第一子が生まれてから3年も単身赴任を続けていたため、家族と暮らしたい思いもありとても悩みました。しかし、「今の知識のままではもったいない。もっとこの現場で金型技術の知見を身につけたい」という思いから家族と離れて暮らすことを決意しました。
単身赴任の間、休みの日はなるべく帰るようにしていたものの、やっぱり家族との時間が少なく、寂しい思いをさせてしまったなと思っています。第一子が生まれた時は育児に関わることがほとんどできなかったので、第二子誕生の際は2週間の育児休暇を取得しました。期間中は、チームリーダーの多大なるサポートがあり、本当に感謝しています。
休暇当初は、ソワソワした気持ちがありましたが、子供の成長を間近で見られて、ゆっくり家族とコミュニケーションが取れたのでとても充実した日を過ごすことができました。
昨年、小名浜工場へ戻ることになり今は家族と一緒に暮らしています。料理が趣味でもあるので、朝5時半に起きてみんなのお弁当や朝ごはんを作っています。1人で暮らしていると料理も自分のためだけなのでおもしろみがなかったのですが、おいしいと言って食べてくれる人がいるのはこんなに嬉しいことなんだとあらためて気づくことができました。
失敗から学びに──不具合を出さないために必要なこと
私にとってターニングポイントになった、ひとつの経験があります。
ある日、お客様からパネル部品の品質に対して指摘を受けました。その部品は先方の主力製品に使われるもので、量産まで時間がなく急ピッチで新たなサンプル品を作らなければなりません。技術部門、サプライヤーとも連携をし、これならば承認してもらえると判断した品質改善資料、サンプル品を持って私が直接お客様のもとへ行きました。
普段は金型の部門の担当者が直接お客様と話すことはないのですが、この時は急ぎということもあり営業部門と共に金型部門から説明を行うほうがいいという判断で私も同行したんです。
1日で三重県、埼玉県、栃木県の3拠点を回って製造部門、デザイン部門、品質部門それぞれの承認を得られ、なんとか量産にも間に合いました。この時の指摘は、「こういう構造であればこういう不具合が出るかもしれない」といった確認をおろそかにしたことで起きてしまった出来事でした。
同じことを繰り返さないために、現在はお客様がどんな形状の部品を求めているのか情報収集をしっかり行うことで「こういう形状にすれば不具合を出さないようにできる」というところまで考え、技術部門に共有するようにしています。失敗から学ぶとはこのことだと実感しました。
人とのつながりが基礎に──さらなる成長へ
私が日々感じているのは、金型部門は、個々で行う作業が多いからこそ人とのつながりが基礎になるということです。この仕事は自分だけで完結することはありません。金型部門の担当者は基本直接お客様とお話しすることはなく、お客様からの要求は技術部門が橋渡しとなって、私たちに伝えてくれます。その要求を正しく理解するためには技術部門とのコミュニケーション、情報共有がとても大事になってきます。
部品設計についてお客様に満足していただけて、量産までたどり着いた時は、これまで積み重ねてきた成果を実感でき、やりがいを感じます。まだまだ未熟ではありますが、金型について何もわからなかった入社当時から比べると、かなり知見は広がったと思っています(笑)。
実は4月から福島県いわき市にある開発センターに異動が決まりました。経験したことがない加飾領域も担当することになります。金型から完全に離れるわけではないので、これまで蓄積した知見も活かし、これからも貪欲にいろいろなことを吸収し、成長し続けていきたいです。
※ 記載内容は2024年3月時点のものです
