現場を軸にした構造設計を。施工会社の中の設計部門ならではの想い
陶山が所属する東京本社 建築設計部 構造設計課は、陶山を含めて4名の精鋭チーム。メンバーは全員、新卒で入社し配属された、一級建築士の資格を持つプロフェッショナルです。
「構造設計は、建物の安全性や耐久性を確保するための重要な仕事です。具体的には、『地震などに対して建物が壊れないか』という検討を重ね、それを設計図にしていきます。仕事の流れとしては受注後に構造設計課に回ってくる場合もあれば、受注前の段階からお客さまと協議・提案を行い、案件化することもあります。
私が主に担当しているのは、清掃工場や発電所施設など特殊な建物が多いです。設計から施工まで一貫して行うことで、効率的に質の高い建設を実現しています」
陶山が構造設計で感じている魅力は、「答えがある」点です。
「意匠設計の場合はそれぞれの感性に委ねられる部分があるのですが、構造設計は計算によって、『答え』が出る点がおもしろいです。答えを導き出すことができれば、お客さまに論理的に説明し、納得してもらえることができます。そこに辿り着くまでのプロセスにもやりがいを感じますね」
そうした構造設計を行う上で、陶山が最も大切にするのは、現場に寄り添った設計だと言います。
「私たちは設計事務所で構造設計を行っているわけではなく、実際に建物を施工する建設会社の中の設計部門です。そのため、現場が施工しやすいように、現場から不満が出ないような設計にしたいと常に心がけています。
たとえば計算結果だけで図面を作成すると、現場から『どうやって作ればいいのか』『図面通りに鉄筋が収まらない』といった声があがるため、現場での組み立て方をイメージしながら設計を進めます。
現場の人とは頻繁に話し合い、どうすれば良いか、普段どのように対応しているかといった情報を積極的に得るように、コミュニケーションをとっています」
手探りの中で周囲に支えられながら、成長していく
陶山は中学卒業後、工業系の高等専門学校へ進学しました。当初は建築の意匠設計に興味を抱いていましたが、構造分野の先生から大規模な実験や研究の話を聞き、その魅力に惹かれ、構造分野へ進むことを決めます。
「高専では建築構造解析の研究に打ち込みました。専攻科課程修了後は、大学へ編入し、院進学を希望していたのですが、経済的な理由から就職すべきかどうかの選択には深く悩みました」
そんな陶山に転機が訪れます。建築の構造分野の強化をめざしていた若築建設から、学校を通じて声がかかりました。
「大学の4年に進学すると同時に、若築建設の嘱託社員として採用され、大学4年の1年間、奨学金を援助してもらいました。そして大学4年卒業と同時に若築建設に入社し、その後大学院に2年間行かせてもらったんです」
将来の技術者育成のために設けられた「若築建設奨学金制度」の第一人者となった陶山。勉学に励んだ後に、若築建設にて構造設計の実務を本格的に開始しました。
「当時の部署は構造設計の専門チームが立ち上がったばかりで、私と上司と2人だけという状態でした。過去の実績がなかったため、構造設計チームとしてのベースを作っていく必要があり、初めてのことばかりで苦労しましたね。
わからないことはとにかく社内外の人に積極的に話を聞きました。現場の方々もやさしく、若手で構造設計が初めての私に対して、『うちの現場にも来なさい』と温かく接してくれて。日々コミュニケーションを取りながら、学んでいきました」
陶山がとくに印象に残っていると話すのは、「耐爆計器室建築」の案件。爆発物に対応するため、日本の基準ではなく、すべて英語で書かれたアメリカの基準で設計することが求められました。
「アメリカの学会に所属して関連書籍を取り寄せ、その本を読んで理解し、検討も行いました。英語が堪能ではなかったため苦労しましたが、お客さまのエンジニアリング部門と協議を重ね、最終的に正解にたどり着くことができました」
この困難な挑戦を乗り越えたことは、陶山の自信となり、その後の大規模な物件にも積極的に挑戦する意欲につながりました。
「難しい案件を実現できたため、社内発表会にて報告も行いました。これを機に、どのような案件にも対応できるという自信がつき、これまで社内で設計・施工をしていなかった大規模な物件なども、手掛けられるようになりましたね」
子育ては「24時間休みなし」。男性育休を2度取得して気づいた家族に必要な支え
現在は構造設計課の課長としてチームを任されている陶山ですが、これまでに2度、育児休業を取得しています。最初の育休取得の背景には、当時まだ男性育休の取得が少ない中で、実績を作りたいという思いもあったと言います。
「育休は約1カ月取得しました。事前に予定を後ろ倒しにするなど、自分でスケジュールをコントロールして休みに入りました。客先に直接話していない案件では、代わりの担当者に対応してもらうなど、さまざまな調整を行って、最初の育休を取得しました」
この経験したことで、陶山は「育休取得は必要だ」と強く感じました。
「子どもは寝てもすぐに起きたり、起きてミルクをあげて寝かしつけている間に次の対応が必要になったり。もう24時間休みなしという状態になります。やはり夫婦のどちらかが休む時間、休息の時間を作らないといけないと感じました」
約1カ月の育休から復帰後も、子どもの生活リズムが整うまで、陶山は有給休暇を積極的に利用しました。
「復帰後の1カ月ぐらいは、週に3日、集中して業務を処理し、残り2日は有給を取得し、自宅で妻に休んでもらうという対応を行いました。設計の仕事は自身の裁量で業務の進め方を変えられたため、調整がしやすい部分もありました」
この経験から、2人目の出産時は、育休を取得する前提で業務を進めました。この頃には、社内でも男性の育休取得者が増え、陶山は「よりスムーズに取得ができた」と、会社の制度や風土が整ってきたことを実感しています。
「2人目の育休では、3歳の長女と0歳の長男という、年齢差のある育児に奮闘しました。3歳は外で遊びたがりますが、0歳は自宅で過ごすしかないため、それぞれが個別に手がかかる状況で、2人目ならではの苦労がありましたね」
課長として復帰後も陶山は両立を心がけながら、業務を進めています。
「定時に帰宅して家事育児をやることを心がけていて、そのために移動中や出張の合間に業務を進めるなど、隙間時間を有効活用しています。最近はICTの仕組みが発展しており、どこでも仕事ができる状況であるため、効率的に時間を活用できていると感じています」
自身の経験を踏まえ、後輩の育児休暇も支えたいと語る陶山。その際には自ら業務を引き継ぐことで、「きちんと休んでもらう」環境整備に努めたいと考えています。
建築設計部を“頼られる存在”へ。若築建設の新たな軸を育てる決意
陶山が長年若築建設で働き続ける魅力は、さまざまなことにチャレンジできる環境にあると言います。
「固定観念にとらわれていない感じがしますね。意見を出したものがどんどん実現していくことが多く、より良くするための提案を積極的に受け入れ、実行に移す社風があると感じています。
たとえば、以前は設計と現場はあまり関わりがなかったのですが、施工だけの現場でも着工前に構造設計の方で、その建物がどういう意図で作られ、どういう構造になっているかをレビューし、現場に伝えることを2020年頃に提案し、それが今では会社の正式な仕組みとして運用されています」
また、他社と共同でAIを活用した施工品質確保のためのソフトウェア開発に取り組んでいることも、陶山が「こういう仕組みがあったら良い」と提案し、会社が資金を出すことで実現した事例です。
「若手・ベテランなど年齢に関係なく、すべての社員が同様に挑戦でき、良いアイデアを会社が支援してくれる環境があると思います」
このような社風の中で、陶山が今後活躍できると考える人物像について語ります。
「仕事を進める上でコミュニケーションが重要なため、他人の意見を聞いて理解し、自分の意見も表現できる人がいいですね。また、構造設計は、若築建設の中では歴史の浅い分野だからこそ、新しいことをどんどん提案してくれる人を求めています」
今後の展望として、陶山は建築部門を「若築建設の1つの柱となるように形づくっていきたい」と語ります。
「当初、2名からスタートした建築設計チームも、現在では意匠設計と合わせて20数名になり、2025年春からは建築設計部が新設されました。建築設計部ができたことで、設計施工の両方を手掛ける物件の割合を増やしていきたいと考えています。そうすることで工事の利益率も向上し、さまざまな調整がしやすくなると思います」
これまで土木事業が中心だった若築建設において、建築部門が土木に依存せず自立した存在になることで、会社全体の利益に貢献していくことをめざしています。さらに、組織のあり方については、他部署から頼られる部署になりたいと続けます。
「他部署との関係を良好にし、『建築部・建築設計部に相談すれば、難しい問題も解決するね』と言われるような、頼られる部署にしたいと考えています。そのためにも、やはりさまざまな部署とコミュニケーションを取り、意見交換することは大切ですね」
長年の経験と知識、そして現場との密なコミュニケーションを武器に、若築建設の建築設計部門を切り拓いてきた陶山。チャレンジ精神溢れる社風の中で、自らのキャリアと家庭を両立させながら、組織の成長を牽引し続けていきます。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
