東ティモールで奮闘、JICA事業の国立病院建設を支える多角的な現場管理
東ティモールの首都ディリ。今田は現在、ギド・ヴァラダレス国立病院整備計画工事事務所で働いています。JICA(国際協力機構)の無償資金協力によって進められるこのプロジェクトは、産婦人科病棟の建設などを通じて、現地の医療体制を整えるための事業です。
「現地スタッフの勤怠管理や日々の経理、協力会社との契約内容を確認する工務業務まで、私の役割は幅広いです。決まったルーティンがあるというよりは、その日に起きる課題へ一つひとつ対応していくのが私の役割ですね」
今田が担当する業務は、一般的な事務の枠にとどまりません。たとえば、東ティモールでは必要な資材が国内ですべてそろわないため、日本やベトナム、インドネシアなどから輸入する必要があります。
「輸入の手続きは今回が初めてで、最初は具体的な流れが見えず、難しく感じることもありました。それでも、所長のスケジュールに合わせて着実に確認を進めるうちに、少しずつ全体像がつかめてきました。最初は不安もありましたが、実際に動いてみれば何とかなるものだと実感しています」
また、職員の健康管理も大切な仕事の一つです。生活環境が日本と大きく異なるため、体調を崩すメンバーも少なくありません。
「風邪をひいたりお腹をこわしたりした職員を病院へ連れて行くこともあります。保険の手続きを含め、安心して働ける環境を整えることが、現場をスムーズに進めることにつながっています。
言葉が通じにくいときは翻訳アプリを使いつつ、現地スタッフとも積極的にコミュニケーションを取るようにしています。ときには一緒にコーヒーを飲みに行って雑談するようにしていて、そうした日常のやり取りが、現場を動かす助けになっています」
緩やかな雰囲気に惹かれた入社。海外への憧れを形にしたキャリアの原点
今田がこの道を選んだきっかけは、学生時代のちょっとした好奇心でした。大学では経済を学び、金融のゼミに所属。就職活動の時期に友人と海外旅行へ行った経験から、「将来は海外で生活して、働いてみたい」という漠然とした、しかし確かな思いを持つようになりました。
「最初は就職サイトで気になる企業をチェックしていくなかで、関連企業として出てきたのが若築建設でした。建設業界に強いこだわりがあったわけではありませんが、まずは話を聞いてみようと説明会に足を運びました」
そこで今田を惹きつけたのは、意外にも「緩やかさ」でした。
「説明会を通じて感じた、社員の皆さんの飾らない自然体な雰囲気が印象的でした。それまでは社会に対してどこか厳しく、常にピリピリしているようなイメージばかりを抱いていたのですが、社員の方が醸し出す心の余裕に触れて、その雰囲気が自分自身の価値観にもしっくりきて。肩肘を張らないスタイルが自分に合っていると感じましたね」
そして、入社の決定打となったのは、海外へ行くチャンスが極めて身近にあることでした。
「説明会のあとの質問コーナーで、海外で働くための条件を聞きました。語学力や特別な資格が必須だと言われるかと思ったのですが、返ってきたのは『行きたい人が希望を出せばチャンスはある』という、シンプルな回答でした。ここなら自分の『海外へ行きたい』という希望が早く実現しそうだと直感したのを覚えています」
2018年に入社後、まずは国際部で海外現場の経理書類の整理など実務の基礎を学びました。そして2021年、ついに念願だった海外赴任、インドネシア勤務が実現します。
「インドネシアでは先輩の事務担当者のサポート役でしたが、毎日が刺激の連続でした。イスラム教の国なので、決まった時間になるとお祈りが始まり、断食の時期(ラマダン)もある。日本とはまったく違う文化や環境のなかで生活すること自体が、純粋に楽しかったですね」
未経験からの挑戦が教えてくれた、全体を理解する視点と仕事の本質
インドネシアでの勤務を終えた今田は、2023年から名古屋支店へ異動します。実はここでの経験が、今田にとって最も大きな成長の機会となりました。
「名古屋支店へ行ったときは、ちょうど前任の方が退職された直後で、事務担当が私一人だけという状況でした。それまで海外業務が中心だったため、国内の決算の流れや事務手続きが何もわからない状態でのスタート。しかも着任してすぐに1年で最も忙しい3月の年度末決算を迎えることになったんです」
右も左もわからないなか、それでも今田は周囲の助けを借りながら必死に業務を遂行しました。
「本社のヘルプの方に来ていただき、手取り足取り教えてもらいながら、なんとか決算業務をやり遂げました。自分のことで手一杯ななかで、さらには新入社員の面倒も見るという、ハードな時期でしたが、同時に自分を大きく成長させてくれた出来事だったと思います。国内の事務を経験したことで、会社全体の仕組みをより深く理解できるようになりました」
その後、2025年に再び国際部へ戻り、次なる舞台として東ティモールへ赴任。そこで待っていたのは、既存の組織に入るのではなく、事務所をゼロから作り上げる「立ち上げ」でした。
「銀行口座の開設から会社登録の手続きまで、現地の法律やルールを一つひとつ確認しながら進める日々でした。日本では当たり前のことが通用しない世界。役所へ足を運んでも、昨日言われたことが今日には変わっている。そんなことは日常茶飯事です」
そんな混沌とした状況でも、今田の心は落ち着いています。
「ここでへこたれていては、いつまで経っても仕事が進みませんから。日本のように娯楽が多い環境ではないので、オフの時間はとにかくよく寝て体力を蓄えるようにしています。起きたらまた目の前の課題に向き合う。もっとスマートな解決方法があるかもしれませんが、今は現地の人たちと粘り強く話し合い、一つずつクリアしていく達成感があります」
メンバーと協力しながら一歩ずつ体制を整える。その地道な積み重ねが、現在の国立病院建設現場を支える土台となっています。
「まずはやってみる」の積み重ね。ドローンが映す、 変わりゆく現場の景色がやりがい
現在の仕事のやりがいについて、今田はこう語ります。
「月に1回、記録のために現場でドローンを飛ばして写真を撮るんです。私は技術職ではないので、図面通りの細かい進捗まではわからなくても、上空から1カ月前と比較すると景色がまったく変わっている。さら地の状態から少しずつ基礎ができ、形ができあがっていく過程を俯瞰で見ると、素直に『すごいな』と感じますね」
今田が支えているのは、東ティモールで唯一の国立病院、ギド・ヴァラダレス国立病院の整備です。この施設は現地の人たちにとって、待ちに待った施設であり、その注目度は非常に高いものです。
「大使館の天皇誕生日レセプションに参加した際、東ティモールのメディア関係者から『病院はいつ完成するのか』と熱心に声をかけられました。自分たちが手がけているのは、単なる建物ではなく、この国の医療の未来を担う重要な施設なのだと肌で感じ、意義のある仕事に関わっているという実感が湧きました」
今後の目標について、今田はどこまでも自然体です。
「新人の頃に経験した海外業務、名古屋での国内業務、そして東ティモールでの立ち上げ経験。これらすべてを自分の中にストックして、次にどこへ行っても活かせるようにしたい。また、今後入ってくる後輩たちに、自分の経験を活かして、的確なアドバイスができる存在になれればいいなと考えています」
入社当初は「何のためにこの書類を作っているのか」すらわからなかった今田。しかし今では、業務の目的を理解し、より効率的に進める術を身につけています。それでも「自分のペースを守る」という姿勢は変わりません。それが、異国の地での自分を失わないための知恵でもあります。
最後に、これから若築建設を志す、あるいは海外での活躍を夢見る後輩たちに向けてメッセージを送ります。
「まずは『やってみよう』と思えるかどうかが、すべてだと思います。とくに海外は、予期せぬことの連続。チャンスを与えられたときに、深く考えすぎず『じゃあ、やってみます』と一歩踏み出せる人が向いています。実際にやってみたら意外と何とかなった、という自信の積み重ねが、いつの間にか自分を遠い場所まで連れて行ってくれるはずです」
東ティモールの強い日差しのなか、今田は今日も「まずはやってみる」という姿勢で、現場を支え続けています。
記載内容は2026年4月時点のものです
