支局長として地域医療を支える、160人超の組織をまとめる使命
■多様な専門職を束ね、地域医療を面で支える
Q. 現在、支局長としてどのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか?
A. 最も大きな役割は、各薬局の健全な運営管理から始まり、地域における他職種との連携、行政対応、関連医療機関への対応など、エリア内のすべてを統括することです。現在、私の管轄する支局には、パートやアルバイトのスタッフも含めると160名を超える従業員が在籍しています。調剤事務員、事務チーフ、薬剤師、薬局長、ファーマシーマネージャーなど、それぞれが高い専門性を持った多様な職種のメンバーです。彼らとしっかり協力しながら地域医療を面で支えていくこと、それが私が認識している支局長の立場であり、最大の使命だと感じています。
■距離の壁を越え、会社の熱意と現場のリアルを双方向に繋ぐ
Q. 多治見本部と現場との「橋渡し」も重要な役割だと伺いました。
A. おっしゃる通りです。私の仕事は、まさに本部と従業員の間に立つ「橋渡し」です。多治見本部の決定や会社方針に従いながら、それを実際の薬局実務にどう落とし込むかを考え、マネージャーへの指示出しや従業員教育を行っています。
特に私たちのエリア(北陸など)は、多治見本部から地理的に遠いという独自の課題があります。距離がある分、幹部社員が頻繁に店舗へ顔を出すことがどうしても難しい環境です。だからこそ、本部の「温度感」や「熱意」をいかにして地域の現場に伝えるか、そして同時に現場のリアルな声を本部にどう届けるかという双方向のコミュニケーションの円滑化が、支局長としての重大な役目になります。過去にはこの課題を乗り越えるため、数年に一度事業計画会議を現地で開催し、幹部社員や役員に直接足を運んでいただいて講演してもらうといった取り組みも行ってきました。
■会社の成長とともに進化してきた「支局」という組織
Q. 現在の「支局」という大きな体制になるまでには、組織の変遷もあったのでしょうか?
A. 私たちの支局が現在の形になった背景には、会社全体の目覚ましい成長があります。調剤薬局事業が拡大していくのに伴って、組織の形態も大きく変化してきました。私が知る限りでも、元々は「事業課」という一つの形態だったものが、会社の成長とともに「事業部」へと昇格し、やがて現在の「医療本部」という確固たる形へと発展していきました。そのダイナミックな過程の中で、かつては小さなエリアでしかなかった組織が、今のような広域をカバーする「支局」へと成長を遂げたのです。私自身、その進化の過程を現場で肌で感じながら歩んできました。
3店舗からの成長を支えたルールづくりと、エリア運営の礎
■わずか3店舗から42店舗へ。急成長の最前線で培った現場感覚
Q. 入社当時の会社の状況はどのようなものでしたか?
A. 私が入社したのは、まだ石川県に店舗がなく、高山と富山を合わせてもたったの3店舗という時代です。支局やエリアといった管理機能もまだ十分に整備されていませんでした。それから今日に至るまで、会社の急成長を一番身近なところで体感してきたというのが正直な実感です。
入社当初はファーマシーマネージャーとして、上司である課長の下で薬局長を支える役割からスタートしました。当時は管轄する店舗も5、6店舗程度でしたが、それが10店舗、20店舗、そして40店舗へと凄まじいスピードで拡大していく過程で、現場の働き方や運営の考え方が劇的に変わっていくのを目の当たりにしました。私自身、その時々で求められる対応に追われながらも、結果的にほぼすべての支局を担当する機会に恵まれました。いろいろな地域を熟知している、知らないエリアがないということは、現在の支局長という業務において非常に大きな強みになっています。
■「お互い様」の精神で実現する、働きやすさと組織力を高めるルールづくり
Q. 組織が拡大する中で、支局長として最初に取り組んだ壁は何だったのでしょうか?
A. 最初に着手したのは「エリアのルールづくり」です。多店舗展開を急速に進めていく上で、各店舗が単なる「個店の集合体」になってしまっては調剤薬局としての強みが活かせません。全体を底上げするための統一ルールを策定することが急務でした。
例えば、スタッフが希望する日に休みを取ったり、海外旅行に行きたいと考えた時、単独の店舗だけではシフトが回りません。希望を叶えるためには、他店舗から応援に来てくれるメンバーの存在が不可欠です。しかし、応援に行くメンバーが働きづらさを感じては意味がない。そのため、応援メンバーが迷わずスムーズに業務に入れるような「エリア運営の仕組みづくり」を一つの重要な手段として位置づけました。最初は「自分の店舗さえ良ければいい」とルールを不要に感じる現場の反発もありましたが、「皆が希望通りに休むための、お互い様のためのルールなんだ」という理解を根気よく浸透させていきました。
雪国ならではの苦労と、従業員の安全を守るための徹底した配慮
Q. エリア運営において、地域特有の難しさに直面したエピソードはありますか?
A. 最も苦労したのは、雪が降る地域ならではの課題です。冬場は他の支局とは全く異なる次元の配慮が求められます。欠勤困難者を出さない工夫や、安全な応援体制の構築が必須でした。「来週大雪が降る」という情報を徹底して事前共有し、遠方から通勤しているスタッフは早めに帰宅させる。遠距離通勤が危険な場合は勤務先の店舗を急遽組み替えるなど、天候による過度な負担がかからないよう柔軟に調整を行いました。
交通機関が運休して帰宅困難になるリスクも常にあります。そのため、冬場は万が一に備えて1~2泊できる準備をしておくようお願いしたり、状況によっては会社側で急遽ホテルを手配して宿泊してもらうなど、従業員の命と安全を守るための采配には常に気を配っていました。
オンライン化がもたらした変化と、そこから得た幅広い視点の大切さ
■オンライン化がもたらした、広域エリアにおける対話の劇的な向上
Q. 近年、働き方やコミュニケーションの面で大きな変化はありましたか?
A. 支局の運営状況を大きく変えた転換点は、やはりコロナ禍です。コロナを経てコミュニケーションの在り方が根本から変わり、支局全体の雰囲気も少しずつ良い方向へ変化していきました。
もともと広域にわたる支局ですので、本来であれば全体で集まって会議をしたい内容でも、物理的に全員が一堂に会することは非常に困難でした。しかし、コロナ禍をきっかけに会社全体でオンライン会議のシステム整備が一気に進みました。これにより、オンライン会議の仕組みを日常的に活用できるようになり、従来とは比較にならないほどコミュニケーションが格段に取りやすくなったんです。これは広域を管轄する私たちにとって、本当に計り知れないメリットでした。以前は対面での研修にこだわっていましたが、オンライン化されたことで気軽に頻繁なコミュニケーションが取れるようになったのは想像以上の効果でした。
■地元に拠点を置きながら、支局長としての重責を果たす
Q. オンライン化は、ご自身の働き方にも影響を与えましたか?
A. ええ、大きな影響がありました。私自身も多治見を離れて、地元の富山に帰ることができたのです。多治見に直接いなくても、オンラインで会議に参加し、業務を進められるようになったことで、地元での生活と支局長としての重責を両立させることが容易になりました。これもある意味、柔軟な変化がもたらした一つの素晴らしい成果だと感じています。
■ドラッグストア事業での経験が活きる、多角的なマネジメント
Q. これまでのキャリアの中で、今の業務に特に活きている経験は何でしょうか?
A. 私が他の支局長と少し毛色が違う点があるとすれば、ずっと調剤の支局にいたわけではなく、ドラッグストア部門に所属していた期間が数年間あるということです。ドラッグ事業部や管理部門には今でも仲の良いメンバーがたくさんおり、普段から活発に情報交換をしています。
その経験があるからこそ、ドラッグ部門で推奨販売しているOTC商品の売り方について今でも現場にアドバイスができますし、一時期は登録販売者の受験対策の講師も務めていました。当時私の講義を受けて登録販売者になった社員やパートさんから、今でもOTC接客の相談を受けることがあるほどです。こうした「一見すると自分の専門外」と思えるような様々な分野にちょこちょこと関わってきた経験が、部門を超えた連携が求められる今の仕事に大きく活きていると実感しています。
変化の時代に向けて、地域に根ざした医療人を育てる未来へ
■会社人としてだけでなく、地域社会に根ざした「医療人」としての立ち位置を築く
Q. 今後、会社や従業員にはどのようなステップアップを期待していますか?
A. 私たちが主軸としている調剤薬局事業において、社内での「薬剤師」「調剤事務」としての立ち位置は、すでに十分に確立されてきたと感じています。今の会社の勢いのまま出店や採用を継続していけば、企業としての基盤はさらに強固なものになるでしょう。
しかし、次に各従業員に強く意識してほしいのは、「その地域社会における立ち位置」です。富山市における薬剤師としての役割、金沢市での役割はそれぞれ異なります。今後、未曾有の災害が起こる可能性もありますし、地域内の医療従事者同士の強固な連携がますます重要になってきます。社会人としての生き方ももちろん大事ですが、それ以上に「地域の医療人としての立ち位置をどう築き上げるか」が問われるフェーズに入っています。そうした地域に根ざした志を持つ従業員をどれだけ多く抱えられるかが、今後の私たちの最大の強みになると確信しています。
■役職ではなく人間力。「この人のためなら」と人が付いてくる存在へ
Q. そうした組織を作る上で、リーダーにはどのような素質が必要だとお考えですか?
A. 現場に即して地域特性に合わせた薬局運営をしていくために、「ファーマシーマネージャー制度」が立ち上がり、現在マネージャークラスの育成に注力しています。
私がリーダーを目指す人たちに一番伝えたいのは、皆から親しまれ、尊敬され、目標とされる存在であってほしいということです。社内における「職位」や「役職」というのは、あくまで業務上の役割分担に過ぎません。それ自体が人の価値そのものを反映したり、人間性を判断するものではないのです。
だからこそ、「この人のためになら頑張ろう」と心から思ってもらえるような人間力がないと、結局のところ人は付いてきません。私自身も、その根幹の部分を常に心がけてここまで走ってきたつもりです。
■超高齢化社会という未知の領域へ。求められる「変化への対応力」と「思いやり」
Q. 最後に、これから一緒に働く未来の仲間にメッセージをお願いします。
A. 私たちのグループには薬局だけでなく、ドラッグストアやスーパー事業もあり、地域の人々の暮らしやインフラを全方位で支えられる企業です。これから医療業界が本格的な超高齢化社会という課題に向かっていく中で、過去の延長線上にはない未知の出来事が次々と起こり得るでしょう。調剤報酬改定による求められる姿の変化や、オンライン診療・服薬指導の普及など、ここからの10年、15年で業界は一気に変わる可能性を秘めています。
だからこそ、現状維持に満足せず、業務改善や改革に前向きに取り組める「変化への対応力」を持った方にぜひ来ていただきたいです。そして何より大切なのは、相手を思いやる気持ちです。自分の都合や立場を優先するのではなく、目の前の患者様や仲間の置かれている状況を想像し、「こうしてもらったら嬉しいだろうな」ということを自然に行動に移せる人。そんな本質的な優しさを持った方であれば、必ず地域から信頼される立派な医療人として活躍できると信じています。
編集後記:人を思いやる心が、組織と地域医療の未来を創る
今回のインタビューを通じて最も印象に残ったのは、160名を超える組織を牽引する支局長の言葉の端々から滲み出る「人への深い思いやり」でした。
組織が急成長し、システムやルールが整備されていく中でも、現場を支える根底にあるのは「あの人のためなら頑張ろう」と互いに思える温かな人間関係なのだと、改めて気付かされました。
私たち採用や教育に携わる立場としても、相手の立場を想像して行動できる、そんな思いやりを持った新たな仲間とお会いできる日を楽しみにしています。
※記載内容は2026年3月時点のものです。
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