“デジタル×リアル”で新しい価値を提供―“WESTER体験”の創出を目指す
グループマーケティング推進部は、2023年4月に誕生したJR西日本グループ共通の新たなポイントサービス「WESTERポイント」を中心に、JR西日本グループ横断的なシナジー創出をリードし、段違いに便利でおトクで楽しい“WESTER体験”の提供を実現するために新設された部署です。この“WESTER体験”は、「決済」「個客接点アプリ」「ポイント」+リアルな個客接点の組み合わせで作られるものであり、その中で私が担っているのは、ポイントや決済の事業領域。データに基づいてカスタマージャーニーを紐解き、WESTERポイントが「たまる」「つかえる」をお客様に繰り返し体験いただけるようなサービスをマーケティングの観点から企画・推進しています。
これまで長い間、当グループのポイントは鉄道やショッピングセンター、ホテルなど各事業領域に特化していましたが、約3年間の構想期間を経て、2023年4月に「WESTERポイント」に統合することで、さまざまな事業でひとつのポイントが「たまる」「つかえる」ようになりました。
ポイントの共通化を起点に、リアルとデジタルの両面からの個客体験価値の再構築を通じて、段違いに便利でおトクで楽しい西日本地域のくらしを実現し、また、グループ収益の全体最大化・最適化を実現することを目指しています。
「WESTERポイント」は現在、サービスがローンチされてから約半年、共通化により登録会員数は650万人になり、2025年度には会員数800万人を目標としています。
会員数の拡大やWESTERポイントの流通量拡大に向けた施策を検討するにあたり、サービス開始当初はJR西日本グループで取得しているWESTERポイントに関するデータを利活用できるように仕組みを整えるところから始まりました。
現在はデータを活用できる基盤が整ってきましたので、そのデータをもとに、WESTERポイントはどういったお客様にご利用いただいているのか、お客様がどこでポイントをためて、どこで使っているのかといったポイントの循環構造を紐解き、お客様の行動特性を正しく理解することに注力しています。
その上で、私たちの強みでもあるリアルとデジタルの両面から、お客様により良い個客体験、サービスを提供するためのマーケティング戦略を立て、実行、推進していきたいと考えています。
人の心を動かす、役に立つサービスや価値を提供したいという想い
私の中の軸として、「誰かの心を動かす、役に立つサービスや価値を提供したい」という想いがあります。大学時代には医療工学などを研究していましたが、医療業界は形になるのに非常に長い期間がかかることや、確率的に限られたものだけが実際のサービス・製品に適用されることにもどかしさも感じていました。より直接的で身近なところで人の心を動かす、役に立つサービスや価値を提供できるのではないかという視点でインフラ業界に興味を持ち、その中でも出身である関西にあり、かつ工学的な視点を活かすことができる西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)に入社しました。
2012年の入社からは、鉄道車両の保守・メンテナンスや技術開発支援に関わる業務を中心にキャリアを歩んできました。その中で2017年、私にとっての転機が訪れます。技術企画部へ異動となったのです。そこでは、鉄道メンテナンス全体の生産性を高めるために部門横断的にデータ利活用する取り組みや、社内外の新たな技術適用による課題解決への取り組みを行いました。この時にデータ利活用の可能性を感じたことが現在の業務へチャレンジするきっかけとなりました。
一度は車両部門へ戻ったものの、もう一度生産性向上や新たな価値創出のためのデータ利活用の業務に携わりたいと考え、ポスト公募という社内の公募制度へ立候補します。その際に現在の上司から、今後注力したいマーケティングの領域に手を貸してほしいと声をかけてもらい、マーケティングについては全くの未経験でしたが、心機一転チャレンジすることを決意しました。
2021年の着任当初は、マーケティング領域の中でもICOCAやJ-WESTカードの決済領域を活性化させるため、良質で大規模な自社グループのデータからお客様の行動特性を読み解き、利用促進の打ち手を企画し、サービスとして提供する業務を担っていました。
しかし、2022年下期には、技術企画部在籍時のメンテナンス領域でのデータ利活用の企画・推進経験を買われ、外部収益化活動を担当することになったんです。故障予測や画像解析などのソリューションを当社グループ内だけで活用するのではなく、社外の方にも活用いただきたいという想いから、初めてソリューション営業という立場で社外のお客様との折衝を経験しました。
私にとっては初めての営業活動。どうやってアポイントを取って、どういう風に提案、説明をしていくのかなど、とても勉強になる経験でした。結果的に現在のマーケティングの領域でも、ポイント経済圏を広げるために加盟店様と連携施策の提案や、加盟店へ加入いただくために外部の方に魅力を伝えるという活動に活かすことができています。
こういったさまざまな経験を通して、自分自身もサービス提供する側だけでなく、個客の立場で考えることができるようになりました。実際に私自身が課題認識をもって起案したサービスが、新たな行動変容を生みだすきっかけとなる結果をもたらした場合には非常に大きなやりがいを感じます。「誰かの心を動かす、役に立つサービスや価値を提供したい」という想いにマッチする業務を担うことができ、充実した日々を送っています。
AIモデルを使った着雪量予測。データ利活用の分野へ心が動いた瞬間
これまで印象に残っている仕事はたくさんありますが、データサイエンスの利活用で大きく貢献できたと思うのは、北陸新幹線でAIを用いた「着雪量予測モデル」の本運用です。
北陸新幹線では積雪量が多くなると、車両の台車部分に付着する雪が一定量以上見込まれる場合に、糸魚川駅で臨時停車をさせて雪を落とすというオペレーションが必要で、多くの人員を投下していたんです。作業の実施は気象予報をもとに決定していましたが、従来の手法では精度が低く、予測がかなり外れていました。しかし、気象や走行条件のデータ、過去に同条件で走行したときの実績データを組み合わせることで、「雪がつく量を予測するアルゴリズム」を作れると判断し、社外にも門戸を開いたオープンコンペティションの開催を行うことになります。
その結果、社内で保有しているデータを有効活用することにより予測精度が改善され、メンテナンス革新につながる課題解決手法を構築することができたことは、データ利活用による価値創出ができた初めての成功体験として強く印象に残っていて、私自身の心が動いた取り組みでした。
さらにうれしい誤算もあり、このコンペティションを通して、JR西日本社員の中にもデータサイエンティストとしての才覚を持った人間が数名いることがわかりました。
上位入賞した2名は、それぞれ独自でデータサイエンスに取り組んでおり、現在は同じチームに参画し活躍しています。この取り組みが社内人財の発掘につながり、現在のデータ分析組織に発展するきっかけを創り出せたという点においても非常に印象的な経験となりました。
これまで取り組んできた鉄道のメンテナンス領域におけるデータ利活用は、クライアント側が解決したい課題の内容や期待精度、解決することで得られる効果などを課題設定として明確に言語化し、分析結果が要求水準をクリアできるか否かで本運用の成否が分かれる分野です。
一方で、現在担当しているマーケティング領域は、だれをターゲットにどうアプローチすべきか、千差万別の選択肢からデータに基づく仮説を導出し、施策の実施と効果検証を繰り返しながら知見を蓄えていく分野です。
企画側の課題設定の自由度が高い領域である分、施策の実施目的は何か、お客様にとどけたい価値は何か、どんな結果が得られたら成功と判断できるのか、メンテナンス領域での経験で得られた課題設定の重要性に照らして自問自答しながら業務に取り組むことを常に意識しています。
新設されたトレイルブレイザーは、JR西日本グループの各事業と一体でデジタル施策の実行支援を行い、データ利活用による事業横断の価値創出を担います。
これまでに蓄積された良質で大規模なデータやノウハウと、新たに参画いただく方も含めた多様なバックグラウンドのメンバーの知見やノウハウが組み合わさることで、スピードと柔軟性を圧倒的に高め、より良いサービスを提供することが可能になります。
私自身も、トレイルブレイザーの皆さんと一緒に新しいチャレンジを続けていきたいと思います。
お客様視点を大切に、西日本から潤いと活気に満ちた社会を実現する
これまでの取り組みを経て、データを利活用するための舞台は整いました。リアルな場がすでにあり、デジタルを活用する場も整った。そこにいかに知恵と技術を組み合わせて新しい価値を生み出すことができるか。ポテンシャルは無限大です。
これまでは、JR西日本の多彩なバックグラウンドを持ったメンバーと協力することでさまざまなことを成し遂げてきました。今後はトレイルブレイザーにさまざまなバックグラウンドを持った方がご入社されることで、個人の専門性や多角的な視点を取り入れ、分析の結果をどう読み解くのか、それをどう企画に活かすのか、アイデアや意見を持ち寄って議論を重ね、これまで以上に素晴らしいサービスを提供していくことが可能になると期待しています。
当社の強みはやはり、グループ自体がリアルな「場」をそれぞれに数多く持っていること。鉄道という独自性だけでなく、沿線のショッピングセンターやホテル、物販飲食サービスなど、多数のチャネルを持っています。これだけの規模のリアルな場で個客接点を作ることができ、グループ横断で一貫したサービスを提供できる環境はあまりないと思います。
とはいえ、当社グループの経済圏の中だけではなく、これからはいかにサードパーティの方々とつながり、よりポイントをためやすくつかいやすくできるか、これまで以上に広い範囲へとサービスを提供していくことが必要だと考えています。
“WESTER体験”を通じた潤いと活気に満ちた社会を実現するための一撃必殺の技はなく、お客様目線を大切にしながら困りごとやニーズをとらえて、新たなサービス提供や既存サービスの改良プロセスを繰り返すこと。地道な積み上げが結果としてお客様視点での良いサービスにつながると思います。
トレイルブレイザーにご入社いただく皆さんとも、お客様視点を大切に、最終的に誰がどううれしいのかを一緒に考え続けていきたい。私たちと一緒に、西日本という課題解決先進地域で社会的インパクトある仕事に挑戦してくれる方と出会えることを楽しみにしています。
※ 取材内容は2023年9月時点のものです
