「駅」という建築物の特性に惹かれ、JR西日本に就職

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▲大学時代印象的だった建築

電車にそこまで関心のなかった私がJR西日本という大きな組織で働くようになったのは、父親の影響が大きかったように思います。

建築設計の仕事をしていた父は家族旅行のたびに、私たち家族を評判の建築物がある場所に連れて行ってくれました。いま思うと、父は純粋に自分が見たいと思う建築物がある場所に行きたかっただけかもしれませんが……。そのような父の影響で、私は自然と建築についてもっと知りたいと思うようになり、大学では建築工学(建築・都市計画論領域)を専攻しました。

大学では主に計画学・デザインの領域で、人間中心設計を学ぶかたわら、空いた時間にはWEBサイトの制作をしたりグラフィックデザインを独学で学んだり、建築分野以外のデザインについても貪欲に学ぶことを意識していました。

そんな私がJR西日本に就職しようと思ったきっかけは、「駅」という建築物の特性に惹かれたからです。人が一日のなかで多くの時間を過ごす場所といえば自宅や職場を挙げるかたがほとんどですが、電車通勤のかたにとっては駅もかなり多くの時間を過ごす場所の一つではないでしょうか。現在でこそ立派な駅ビルもたくさん建設されていますが、私が学生のころは多くの人が駅でたくさんの時間を過ごしているはずなのに、どこか居心地が悪く「イケてない」建築物が多かったように思います。

そんなイケてない空間を私自身の手で居心地を良くしたいと感じ、鉄道会社を志望しました。多くの鉄道会社のなかでも、将来への伸びしろが大きく私の能力が一番活かせそうだと感じたことがJR西日本に就職した決め手です。

留学を決意──アメリカでプロジェクトマネジメントとデザイン思考を学ぶ

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▲海外留学時(一番右が橋本)

入社当初は施設管理部門に配属されました。当時のJR西日本では大阪駅の改修工事(大阪ステーションシティ開発プロジェクト)がまさに動き出しており、私もいつかはビッグプロジェクトに関わりたいと思いながら目の前の仕事に励んでいました。現在は風通しも良くなっていますが、安全を維持することと変化を追い求めることは裏腹の関係になりがち。そのため、一定仕方のないことではありますが、大企業特有の保守的で安定を求める空気に私自身は少し物足りなさを感じることもあり、「いつかはこの空気を変えてやろう」という気持ちで頑張っていたように思います。

そんな悶々とした気持ちを抱えながら働いていたころに、北京で働く友人と会う機会があり、キャリアの圧倒的スピード感の違いを実感して「本当にこのままでいいのか?」と危機感を抱きました。

そこで、一念発起して社内の海外留学制度に応募し、海外留学の切符を手にします。「デザイン思考」を学ぶという軸はブラさず、いくつかの留学先候補で悩んだ結果、アメリカのビジネススクールに留学することに決めました。「デザイン思考」とは、デザイナーがデザインを考案するプロセスをビジネス上の課題解決に活用する手法のこと。もともと学生時代からデザインについて貪欲に学びながら「ビジネスとデザインをどうやって結びつけるのか?」を考えてきた私にとって、この先の人生に必ず役に立つ学びになるという確信がありました。

実際にアメリカの大学に留学してみると、他にも多くの留学生がおり、彼らのほとんどは公費や社費ではなく自費で留学している勉強熱心かつ上昇志向が強い人ばかりで、刺激を受ける機会が多くありました。例えば、実際のクライアントに対してチームを組んでプロジェクトに取り組む際には、どのようにチームをパフォームさせるのかを考えるのではなく、自分がパフォーマンスできる環境を自ら作っていく人たちもいて、私にとってはそれがとても衝撃的で強く記憶に残っています。

約2年間の海外留学を経て日本に帰ってきた私は、留学中に取得したMBAの知識を活かして本社の建築保守部門の中長期企画業務やグループ会社の経営計画の策定に携わるなどの経験を重ねていきました。

そして、2019年には建築保守部門でのキャリアには欠かせない「現場長」に就任します。当時はコロナ禍のマネジメントで、アメリカでは常識だが日本ではまだあまり導入されていないデジタルツールを独自に現場のマネジメント業務に活用するなどの改革を行っていました。そんなとき、現在トレイルブレイザーの取締役である宮崎に声をかけられ、新たな転機を迎えます。

「人と人・サービスの“縁”をデータとテクノロジーで濃密につないでいく」

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▲橋本がトレイルブレイザーで目指す未来

2019年に発生したコロナ禍は世界を混乱に陥れ、もちろん我々JR西日本も大きなダメージを受けました。

これは、後のWESTER事業のビジョンにも深く影響してくることですが、JR西日本ではこれまで「移動」を事業の中核に据えており、ホテルや物販などの関連事業はあくまで「移動」ありきの事業という位置づけでした。しかし、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの発展によって移動の必要性が薄れてしまい、私たちは既存事業の構造改革だけではなく「移動」に依存しない事業ポートフォリオを構築する必要性に迫られました。

コロナ禍によって予算的にも行動的にもできることが制限される中、再び悶々とした時間を過ごしていた私のもとにデジタルソリューション本部(以下、デジ本)の課長を務めていた宮崎からデジ本への異動の打診が届きます。

宮崎とは入社6年目に本社の同じ事業部門で働いていたこともあり、何かと気心の知れた仲ではありました。仕事ができる一方、誰が相手でも臆することなく自分の意見を伝えるところが社内でも注目される、目立つ存在でした。いま考えてみると、私がデジタルツールを独自に現場のマネジメント業務に活用していたことを面白がって誘ってくれたのかもしれません。

デジタルに興味があり、宮崎の話から大きな可能性を感じた私は、打診に応じてデジタルの世界へ飛び込む決意をします。当時のデジ本は、いまのように大所帯ではなく少数精鋭のメンバーで構成されており、それぞれのメンバーが「ここから新しいものを生み出すのだ」という気概に満ち溢れていて、とても居心地の良い環境でした。デジ本は、もともとJR西日本グループにおけるデジタル戦略の実行部隊として設立された経緯もあり、現在は車両や設備のメンテナンスにAIやIoTを活用して生産性を向上させる保守業務、自社に蓄積された豊富で多彩なデータの活用によって新たな価値を創造するマーケティング業務などに取り組んでいます。

私自身は、データアナリティクスやマーケティング、組織戦略など幅広い業務に携わり、デジタル技術とデータを組み合わせた新しい価値創造に取り組む「WESTER-X事業部」にて決済やポイント周りの事業戦略策定やプロモーションを担当しています。将来的には、WESTERアプリで収集したデータを分析かつ有効活用することで新たな個客体験価値を創造し、さまざまなポイントサービスを結合させることで、いわゆる「WESTER経済圏」を生み出し、拡大促進させていくことが一番大きなミッションだと考えています。

開拓者精神を持つメンバーと一緒に、日本を「西から」変えてゆく

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2023年10月、JR西日本グループのDXを支援するためのデジタル子会社としてトレイルブレイザーが設立されました。トレイルブレイザーは、JR西日本グループ向けに特化したデジタルコンサルティングエージェンシーとして、主に同グループのデジタル領域の変革や取り組みを加速させるための組織として今後活動していきます。

デジ本の設立当初からデータアナリティクスのチームを一つの事業会社として切り出すことを目論見、外販戦略を考えてきた私や宮崎にとって、トレイルブレイザーの設立は理想や努力が実を結んだ一つの結果だといえます。ただ、ここがゴールではないので、これからはより一層頑張らなければいけないと気合を入れ直しているところです。

JR西日本の事業範囲である西日本地区は首都圏と比べて多くの課題が山積しています。だからこそ、トレイルブレイザーでは「日本はいつも西から変わる」をビジョンに掲げ、DXという手法を用いて人の心を動かし、ひいては地域の課題解決にも資する事業を積極的に展開していくことをミッションとしています。

トレイルブレイザーという言葉には「先駆者」という意味があります。まさに時代の先駆者としてビジネスの世界において道なき道を切り開き、自らの力でどんどん前に進んでいくことができるかたにジョインしていただきたいと考えています。

私たちにはメンバーそれぞれの「個」の能力を尊重するというカルチャーがあり、そのカルチャーはトレイルブレイザーにも共通するものです。たとえ若手であっても、有効なアイデアや提案であれば、私たちのサポートのもと責任のあるポジションで取り組んでいくことが可能です。設立されたばかりの組織ということもあり、良い意味で未知数な部分も多々ありますが、私たちトレイルブレイザーと一緒に成長していきたいと思ってくださる皆さまと、西日本というフィールドから日本を変えるような大きなミッションに挑戦していけることを楽しみにしています。

※ 記載内容は2023年10月時点のものです