豊田自動織機L&Fカンパニー「AR開発部」の最前線で活躍する機種開発第二室のエンジニアへインタビュー。空港での「レベル4※」実装に挑むミッションや開発の面白さ、職場のリアルな魅力をまとめました。
※レベル4: 特定条件下における完全自動運転。特定条件下においてシステムがすべての運転タスクを実施
1.AR開発部とは?
Automation(A)とRobotics(R)の分野において、産業車両・機器の自動化を通じ、社会課題である労働人口不足の解決に貢献することを使命としています。単に自動運転車両を開発するだけでなく、お客様の物流・搬送現場全体を見据えたソリューションを提供し、安全で効率的な物流の実現をめざしています。
【組織体制】
機種開発第2室(水平搬送機種開発)
空港内で貨物搬送を行うトーイングトラクター、工場内搬送車など水平搬送車両の自動化開発を担当。25年に国内最大規模の羽田空港で国内初自動運転レベル4を実現。AR開発部は他にも車両運行管理システム、自動運転フォークリフトの開発部署もあります。
2.登壇者紹介
白川 克也 (入社7年目/ 制御システム・ソフト設計)
富山県出身・大学院卒(電気電子システム工学専攻)。3ヶ月の育児休業を経て復帰。
山田 高大 (入社5年目/ 電気設計)
長崎県出身・大学院卒(電気電子工学専攻)。実験部での2年間の研修を経て配属。
谷口 千果穂(入社5年目/ メカ設計)
福井県出身・大学院卒(メカトロニクス工学専攻)。実験部での2年間の研修を経て配属。
なぜ、豊田自動織機のAR開発部を選んだのですか?
白川:担当領域が細かく分けられている環境よりも、1人のエンジニアがシステム全体に広く携われる環境を希望していました。機能や構造を突き詰める産業機械の開発に魅力を感じて入社を決めました。
山田:働きやすい環境面や愛知県内中心の勤務地に魅力を感じたこと、そして就職活動時に「羽田空港での自動運転レベル3実証」のニュースを見て、技術的な取り組みに興味を持ったことがきっかけです。
谷口:大学の研究室でAR開発部の自律式搬送ロボを見る機会があり、「このような製品開発に携わりたい」と感じたのが一番の理由です。長く働き続けやすい環境面も含めて検討し、志望しました。
制御システム・ソフト設計 白川 克也
3.完成品メーカーだからこそ味わえる「裁量」と「開発の面白さ」
自社開発を手掛ける「完成品メーカー」ならではのやりがいはなんですか?
白川:大手メーカーなどにありがちな「部品単体の設計」にとどまらず、企画から実装、評価に至るまで、一人のエンジニアが開発の最初から最後(端から端)まで携わることができる点です。自分の担当範囲の課題に対して、最後まで責任を持って形にできる手応えがあります。
山田:機種全体の完成に携わるため、自分が設計したものが現場で組み上がっていく工程に立ち会えます。現地でお客様と直接やり取りしながら課題を一つひとつ解決し、最終的に無人で動く姿を目にしたときは「これが自分の作った車両だ」と胸を張って実感できますね。
谷口:設計の手法も「どこかから与えられた仕様通りに作る」わけではなく、自分たちでゼロから「どういう車両にするか」を提案・定義できるのがおもしろいところです。要求仕様を待つのではなく、自分たちでコンセプトを描いていけるのは、完成品メーカーのエンジニアならではの醍醐味だと思います。
電気設計担当 山田 高大
「最初から最後まで携わる」「ゼロから定義する」というお話がありましたが、そうした裁量のある開発を進めるうえで、他部署や協業する方たちとの連携はどうなっていますか?
山田:若手でも開発機種リーダーとの距離が近く、自分の意見を直接伝えられるところが、この職場の魅力だと思います。意思決定も早く、自分の提案がプロジェクトに反映されることもあるので、「自分もプロジェクトを動かしている」という実感があります。
谷口:生産部門や、品質保証部門などの他部署と協議する際も、「良い車両を完成させる」という共通のゴールが明確です。お互いに譲れない技術的アプローチをぶつけ合う場面はありますが、険悪になることはなく、パズルのピースを組み合わせるようにすり合わせを行っています。
メカ設計担当 谷口 千果穂
【AR開発部で培われる「ジェネラリスト」への成長】
メカ・電機・ソフトが複雑に絡み合う自動化開発では、「自分の専門はここまで」と線を引かない姿勢が求められます。自分の専門領域を軸にしつつ、システムすべてを俯瞰してコントロールする幅広い視野とスキルがジェネラリストとして身に付きやすい環境です。
4.羽田空港での自動運転プロジェクトへの挑戦とストーリー
ー現場最前線のエンジニアが語る、プロジェクトの「生みの苦しみ」ー
「羽田空港での自動運転プロジェクト」はどのような取り組みですか?
白川:国土交通省様主導で、官民が連携しながら、IoT、AI、自動化技術等の先端技術を活用した“航空イノベーション”を推進するプロジェクトです。弊社は、トーイングトラクターの自動運転分野でお客様と協業でプロジェクトを進めてきました。現在は羽田空港だけでなく、国内外の他空港、工場などでも導入拡大のための計画を進めています。
山田:既存の空港オペレーションの中に自動運転車両を組み込むため、現場の運用にどう適合させるかの調整が一番の難所でした。電気設計の立場からは、遠隔監視システムやコントロールシステムの構築、現地トラブルへの対応などでお客様と深く関わっています。
現場での開発・実証の中でどのような苦労がありましたか?
谷口:私は車体のフレームやカバーまわりのメカ設計を担当したのですが、「有人車と差別化した、かっこいいデザインにしたい」というデザイン部門の方針と、「過酷な物流現場でセンサーや配管を守る」という機能面の維持とのすり合わせに苦労しました。上司を交えて検討を重ね、最終的に私が一部設計を担当したフロントバンパーを含む意匠特許が令和7年度の全国発明表彰で「内閣総理大臣賞」を受賞したときは本当に嬉しかったですね。
⇒内閣総理大臣賞受賞詳細はこちら
白川:ソフト設計の面では、飛行機の荷物搬入出などのための人・物・車両が混在する環境に自動走行車両を導入することが課題でした。空港は広大なスペースがあるように見えて、実際は狭い走行路など限られたスペースでの走行も求められます。導入時には1か月以上にわたって空港に通い、走行ルートや障害物検知範囲を数十ミリ単位で調整しました。
最初は「本当にここを自動で走れるの?」と思うほど難しい条件でしたが、現場でお客様と泥臭く試行錯誤を重ね、最終的に狙いどおりの走行を実現できました。
最も達成感を感じたエピソードを教えてください。
山田:実証実験の最中に、自分の担当する電気部品が故障してしまうトラブルを乗り越えたことです。当時はものすごいプレッシャーで、連絡を受けたときは落ち込んでトボトボ帰宅したほどでした。しかし、現地現物で品質保証、施工、保全の各チームと一丸となって原因究明し、対策を講じて乗り越えることができました。
その後、無人で動く車両を見て、現場のグランドスタッフの方々が驚き、喜んでくれた瞬間は何物にも代えがたい達成感でしたね。
5.AR開発部室長に聞く
自動運転「レベル4」社会実装の裏側と、物流危機解決への展望
乗用車では難しい「レベル4」が、産業車両でいち早く実現できている要因・強みは何でしょうか?
室長:産業車両分野において早期にレベル4を実現できた要因は、限定された運行環境の中で、お客様や国土交通省と連携しながら、自動運転車両を安全に運行するためのルールや運用方法を構築できたことにあります。技術開発だけでなく、実際の運用を見据えた制度・ルールづくりまで一体となって推進したことが成功の鍵でした。
インフラに関わるステークホルダーとの協業プロジェクトは、世の中の「物流の人手不足問題」にどのようなインパクトを与えるとお考えですか?
室長:羽田空港で初めて無人車両が実際の業務の中で走行した際には、現場で働く方々や旅客の皆様から驚きの声をいただきました。世界有数の大規模空港で自動運転車両が実運用に組み込まれたことで、私たちの技術が社会を変えていく可能性を実感しました。
一方で、このプロジェクトによる本格的な省人化効果が現れるのは、これからだと考えています。自動運転車両の運用台数を増やしていくためには、さらなるインフラ整備に加え、より厳しい天候や複雑な走行環境への対応に挑戦し、自動運転が可能な領域をさらに広げていくことが重要です。
実際に導入された現場では、業務の省力化や作業負荷の低減に対して多くの喜びの声をいただいています。今回の取り組みで得られた技術やノウハウをさらに磨き、今後は国内外の他空港をはじめ、物流センターや工場など、さまざまな現場への展開をめざしています。私たちは、このプロジェクトを単なる空港での実証ではなく、人手不足という社会課題の解決に向け、自動運転の活躍の場を広げていく第一歩と捉えています。
6.リアルな働きやすさと福利厚生
日々の働き方や職場の雰囲気はいかがですか?
山田:家庭の都合などやむをえない場合には在宅勤務を活用する働き方も定着しています。もちろん出社するのが基本ではありますが、状況に応じて柔軟に働き方を選ぶことも可能です。
白川:私自身、3ヶ月の育児休業を取得しました。男性の取得実績も増えており、例えば16時に一度退勤して育児や送迎を行い、夜に少し業務を再開するといった柔軟な運用も認められています。
谷口:急な体調不良や家庭の事情がある際も、周囲が声を掛け合いカバーし合う配慮があるため、安心して業務に取り組めています。
7.求める人物像(求職者の方へのメッセージ)
主体性:答えが一つではない課題に対して、自分なりに考え動ける人
白川:先進的な開発では、明確な仕様が決まっていない課題に取り組むことも多くあります。指示を待つだけでなく、「こうすれば改善できるのでは」と仮説を立てて検証を進められる姿勢が大切だと感じます。
ジェネラリスト志向:自身の専門領域にとらわれず、幅広く学ぼうとする人
山田:メカ・電機・ソフトが組み合わさった製品のため、自分の専門外の領域にも興味を持って積極的に関われる方が向き合える環境です。広い視野を持つ技術者を目指す方に適しています。
現地現物の姿勢:実際の現場や実機に触れて評価・改善を行うことが好きな人
谷口:デスク上の検討だけでなく、実際に空港などの現場へ赴き、実機を動かしながら調整していくプロセスを楽しめるタフさや前向きさを持っている方を歓迎します。
皆様のご応募をお待ちしています!!
出典:株式会社クイック インタビュー記事より
