今月で施行から1年を迎えた「産後パパ育休制度(出生時育児休業)」。この制度は産後8週間以内に4週間を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業(以下、育休)とは別に取得できるものです。
男性が育休を取得しやすくなることで、昨今のライフスタイルの多様化に応えるだけではなく、女性の活躍を後押しする一因にもなります。また、こうした企業の取り組みは新卒採用・中途採用にも影響するため、多くの企業が育休取得率の向上に取り組んでいます。
そうした背景がありながらも、当事者である男性は、男性の育休取得についてどのように考えているのでしょうか?
本記事では、総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区)が全国の男性ビジネスパーソン270人(20代~40代)を対象に実施した「男性の育休に対する意識」についてのアンケート結果とともに、育休を取得した男性の経験談をご紹介しています。
育休取得率はどう変化しているの?
厚生労働省が公表した「令和4年度雇用均等基本調査」結果によれば、令和4年度の男性の育休取得率は17.13%と、前年の13.97%から3.16ポイント上昇。この数年で大きな伸びをみせています。
産後パパ育休制度、認知はどう変わった?
男性の育休取得率が伸びていく中、企業で働く男性は育休に対してどのように捉えているのでしょうか?
総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区)は全国の男性ビジネスパーソン270人(20代~40代)を対象に、「男性の育休に対する意識」についてアンケート調査を実施。同社では1年前にも同様のアンケート調査を実施しているため、それらの調査結果から一部をピックアップしてご紹介します。
はじめに、対象者全員に産後パパ育休制度を知っているか聞いたところ、「言葉も意味も知っている」が47.0%、「意味は知らないが見聞きした」が28.5%と、理解の有無に関わらず制度を「知っている」人が75.5%となりました。
1年前の調査では男性の認知度は63.2%だったことから、認知度としてはやや増加していることがわかります。また、意味まで理解している人が半数近くにのぼったことから、制度に関する理解も徐々に浸透しつつあるようです。
また、アンケートの回答者に育休を取得したことがあるかを尋ねたところ、育休を取ったことがある男性は9.6%という結果になっています。
▼育休を取った理由(一部抜粋)
・「第二子が生まれ、幼い第一子と二人の育児を妻だけに任せるわけにはいかないと思ったため。また、育児をする機会は一生に一度くらいであるため、経験したいと思ったから」(40代・男性・管理)
・「妻の職場復帰と入れ替わりで育児をするため」(30代・男性・企画マーケティング)
・「子どもが小さい間は家族と過ごすことに大きな価値を感じるため」(30代・男性・運輸交通)
・「会社から取得をお願いされたから」(30代・男性・営業)
前出の回答者に育休を取って良かったと思うか聞いたところ、育休の取得経験がある男性の全員が「そう思う」と回答し、非常にポジティブな結果となりました。
▼育休を取って良かったと感じる理由(一部抜粋)
・「育児が世間一般のマニュアルどおりにいかないことが多いと、身をもって知れたため」(40代・男性・管理)
・「子どもが生まれてすぐの貴重な時間を妻と一緒に過ごし、楽しいことも大変なことも共有できたから」(30代・男性・製造)
・「子どもの新生児の時期は後から取り返せるようなものではないから」(30代・男性・運輸交通)
・「唯一無二の家族との時間が作れたため」(30代・男性・営業)
なお、育休を取ったことがないとする男性に状況を聞いたところ、「子どもがいたけど取らなかった」人が42.9%と半数近くにのぼりました。
子どもがいたけど育休を取らなかったと回答した男性に理由を聞いたところ、「男性の育休という概念がまだ浸透しておらず、制度も整備されていなかったから」(40代・男性・その他)、「職場の人員が少なくて育休を取れる環境ではないから」(30代・男性・製造)、「上司や先輩からの圧力があったため」(40代・男性・製造)など、制度や環境が整っていないことが原因で育休を取りたくても取れなかったとする意見が大半を占めました。
男性の育休に対する価値観は?
職場や家庭の事情もあり、育児休業を取得できなかった方もいる一方で、育休に対しては男性も積極的に育休を取るべきだと考えている方が多いようです。
▼男性も積極的に育休を取るべきと思う理由(一部抜粋)
・「親として性別関係なく責任があるから」(40代・男性・管理)
・「家族で育児をするのが当たり前。子どもを産んで大変だった妻を労ることができないのは良くないと思うから」(30代・男性・公務員)
・「男性でも仕事とプライベートを両立できる環境や雰囲気をつくることで、女性が産後に働きやすくなるから」(40代・男性・管理)
・「身をもって妻の大変さを知ることにより、夫婦間の絆も強くなると思うから」(40代・男性・接客販売)
・「女性だけが育休を取るという固定概念はなくすべきだと思うから」(30代・男性・医療福祉介護)
・「育児をすることは人生の幸福度に大きく関わると感じるため」(20代・男性・営業)
また、対象者全員にもしご自身に子どもが生まれた場合、育休を取りたいか聞いたところ、「かなりそう思う」(58.1%)、「ややそう思う」(28.5%)が合わせて86.6%でした。中でも「かなりそう思う」と回答した男性は半数を上回っており、育休取得の意欲が高い人が多いことがわかりました。
▼子どもが生まれたら育休を取りたいと思う理由(一部抜粋)
・「仕事と家庭を両立してパートナーと平等な育児を行いたい、子どもの成長に立ち会いたいから」(30代・男性・事務)
・「子どもは両親によって世話をされる必要があると考えているから」(30代・男性・機械系エンジニア)
・「パートナーの負担を減らすため。仕事で疲れて育児ができないという事態を減らしたいから」(30代・男性・事務)
・「子どもの世話は昼夜問わないため、仕事に影響を出さないためにも育休が必要だから」(20代・男性・コールセンター)
・「制度を活用しないと下の世代も取り辛くなる。男性育休を当たり前にしたほうがよいと思うから」(40代・男性・機械系エンジニア)
・「仕事をやりながらよりも子育てに集中できるから」(40代・男性・営業)
■調査概要
・調査内容 :男性ビジネスパーソンの育休に対する意識調査
・調査機関 :自社調査
・調査対象 :当社を利用している全国のビジネスパーソン(20代~40代・男性)
・有効回答 :270人
・調査期間 :2023年9月21日~9月27日
・調査方法 :インターネット調査
※ データは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります
男性の育休経験談
talentbookにおいても、育休を取得したことのある男性のコンテンツは年々増えています。本記事では、育休を取得したことでの変化について語られているコンテンツをご紹介します。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎NRIセキュアテクノロジーズ株式会社
事業内容:コンサルティング事業、DXセキュリティ事業、マネージドセキュリティサービス事業、ソフトウェア事業
・仕事内容:グローバルセキュリティコンサルティング部とグローバル事業企画部の部長を兼務
・育休を取得しての変化:
松本さんは、育休を取得したことで、自身の価値観が大きく変化したと語ります。
松本さん 「子どもが生まれる前は、仕事の時間とプライベートの時間が多少曖昧でも生活が回っていました。今は子どもの寝起きや送り迎えなどの時間を意識せざるを得ないため、期限から逆算して計画的にやりきる、与えられた時間などの制約の中で割り切る、という志向がより明確になりました。
また、育休を取得する男性社員が目に見えて増えていると感じています。今後、育休に関わらずそれぞれのライフステージの状況に応じて柔軟な働き方ができ、それが相互に尊重されるような雰囲気づくりに自分がひと役買えたらうれしいですね」
→ストーリー:育休を取得して変わった仕事観。誰もが働き方を選べて助け合える職場であるために
▶︎株式会社アビスト
事業内容:工業設計技術サービス事業、3Dプリント事業、3D-CAD教育事業、不動産賃貸事業、美容・健康商品製造販売事業
・仕事内容:システム管理部長
・育休を取得しての変化:
育児休業の1カ月はあっという間に過ぎ、すぐに復職の時期に。職場に復帰すると、仕事の意識を変えなくてはいけないとあらためて感じたと言います。
星野さん 「結婚する前までは、会社でいかに成果を出し評価を上げるか、実力をつけるかが人生の目的で、帰宅後や休日も勉強をしたり、問題を考えたりしていました。けれども子どもが生まれてからは、家に帰ると家族中心の時間で自分が休む時間なんて取れないので、業務時間内に仕事を終わらせ、家には持ち帰らないようになりました。
今まで家に帰ってじっくり考えてから決断していたことができなくなり、業務時間内に整理し、決断するようになりました」
→ストーリー:仕事も育児も主体的な関わり方を体現するシステム管理部長の想い──可能にするアビストの環境
▶︎株式会社クレスコ
事業内容:情報システムに関するコンサルティングおよびソリューションサービス業務、設計、開発業務、運用管理、保守業務、調査、分析、評価および技術支援業務
・仕事内容:福岡事業所で保険業界向けの開発案件に従事
・育休を取得しての変化:
2022年に第3子を授かった松藤さんは、子どもとの時間を大切にしたいという想いから、1年間の育児休業を取得しました。
松藤さん 「しっかりと引継ぎできるように、取得する4カ月前くらいから相談していて、上司もメンバーも『行っておいで!』と気持ち良く送り出してくれました。当初は半年休む予定だったのですが、子どもがかわいすぎて1年間に延長させてもらいました(笑)」 (中略)
松藤さんは、今後は育休取得の経験を活かしたチーム運営を行いたいと言います。
松藤さん 「私が後輩から育休取得の相談を受ける立場になったときに、今度は私が『育休取っておいで!』と後輩に言えるような環境をより整えたいと思っています。
人にはいろいろな事情があるので、育休に限らず、個々の状況をくみ取りつつ、メンバーそれぞれがスムーズに業務を進められる、“心理的ハードルがないチーム”を引き続き目指していきたいです」
→ストーリー:1年間育休を取得したパパが目指すのは、自身の成長と、心理的ハードルのない環境
▶︎株式会社コメ兵
事業内容:中古品・新品の宝石・貴金属、時計、バッグ、衣料、きもの、カメラ、楽器などの仕入・販売
・仕事内容:衣料品の販売を担当
・育休を取得しての変化:
久野さん 「育休を取っていなければ、社員が子育てに臨む際の気持ちを理解できなかったと思います。とくに子どもが未就学児だと、発熱などの体調不良になることが多く、どうしても早退や欠勤しなければならないケースがあることも身をもって理解できました。
早退や欠勤になった社員は会社にいなくても、たとえば保育園や幼稚園まで迎えに行き、病院で順番を待ち、薬局に並んだ後は買い物をして食事の支度もするでしょう。その間も子どもの肌着やシーツを変え、保冷枕を交換しているかもしれません」
その後、育休からの復帰に際して久野さんが業務面で苦労することはありませんでした。逆に以前は出社前ギリギリまで寝ているタイプだったところが、子どもの寝かしつけに合わせて生活リズムが朝型になり、朝食を作って一緒に食べ、気分良く出社していると言います。
→ストーリー:社内初の長期男性育休取得者。シフト勤務の販売業でも周囲の支援で半年にわたり育児に専念
▶︎東洋製罐株式会社
事業内容:製缶・製蓋機械や飲料充填設備などの製造販売、飲料充填品・エアゾール製品・一般充填品(液充填製品)の受託製造販売、貨物自動車運送業や倉庫業など
・仕事内容:静岡工場の生産管理課で課長を務める
・育休を取得しての変化:
まとまった時間、正面から育児と向き合った山内さん。仕事観が大きく変わったと言います。
山内さん 「思うようにならないからといって、赤ん坊に怒ったりいらついたりしても仕方ありません。流されるしかないなと考えるようになりました。すると、子どもだけじゃなくて、会社での人間関係も同じじゃないかと思えた瞬間があって。何か問題が起きたとしても対処方法は必ず見つかるもの。怒りに任せるのではなく、次の手段へと頭を切り替えられるようになりました。
私はもともと気が短く、アンガーコントロールが得意ではなかったのですが、子育てを経て、少しは成長できたのかなと思っています」
→ストーリー:育休を会社と社員、家族が絆を深めるきっかけに。感謝と恩返しが連鎖する風土づくりを
▶︎パナソニック コネクト株式会社
事業内容:「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野向け機器・ソフトウェアの開発/製造/販売、並びに、システムインテグレーション/施工/保守・メンテナンス、およびサービスを含むソリューションの提供
・仕事内容:POSシステムや決済系アプリケーションの提案・設計・開発・保守に渡る一連の業務を担当
・育休を取得しての変化:
育児休暇を取得し、家事と子育てに真っ直ぐ向き合った1カ月。その間の業務は、鬼塚さん自身の丁寧な引き継ぎもあり、滞りなく進んでいました。
鬼塚さん 「育児休暇を経て、業務時間への考えが変わりました。今まで以上に効率性を追求し、子育てのスケジュールを鑑みて、仕事の時間配分を考えるようになりました。育児や家事において何か自分ができることが発生したら、可能な限り業務を調整しています。
それから、リーダーとしてチームメンバーを見るときの目線も変わりました。自分の家庭を意識することが増えた結果、他の社員の家庭の事情も理解しようと努めるようになりました。それぞれに家庭の事情があって、それぞれの時間の使い方があるはずなので、柔軟に理解を示せるリーダーでありたいと思っています。
また、育児に限らず、急なお休みは誰にでも起こりうるものです。“その人にしかできない業務”をできるだけ作らないよう、属人化しないしくみ作りに努めています」
→ストーリー:ワークライフバランス実現に向けて踏み出した一歩──1カ月間の男性育休で見えたもの
▶︎株式会社 明治
事業内容:牛乳・乳製品、菓子、食品の製造販売等
・仕事内容:量販店を中心とした営業に携わり、現在は仙台市で菓子の量販店営業を担当
・育休を取得しての変化:
末平さん 「育休を取得したことで、仕事への向き合い方に変化が生まれたと感じています。特に、時間管理への意識が高まりました。また、業務に明確な優先順位を付けるなど、できるだけ仕事の効率を高めて早く帰宅できるよう心がけています。
たとえば、私は遠隔地を担当しているため、新幹線を使ってお客さまを訪問することが少なくありません。移動時間を有効活用するよう努めていますが、事前準備を徹底するなど、今後はできるだけ1度の訪問で商談をまとめられるようにしていきたいと思っています。
また育休中、自社の粉ミルクを初めて自分が使ったことで、赤ちゃんからお年寄りまで、明治が幅広い方々に提供する商品を扱っていることを再認識しました。社会貢献度の高い仕事をしていることを今はとても誇りに思っています。
中でも私が長く扱ってきたのは菓子なので、小さなお子さまが明治のチョコレートを手に取ってくれるのを目にすると、健康で安心して暮らせる社会の実現に貢献できている気がして、とてもうれしい気持ちになります」
→ストーリー:小さな子どもの一瞬はかけがえのないもの——営業の最前線を担う自分が育休取得できた理由
男性の育休取得率や価値観に加えて、育休を取得した男性の声をご紹介しました。育休を取得したことで、仕事やプライベートなどにポジティブな影響があった方も多いようです。今回ご紹介したエピソード以外にも、育休前の仕事の引き継ぎでの工夫や仕事と育児を両立するための工夫などについて語られている方が多数います。
今後、ご自身が育休を取得する際や、周囲に育休を取得する方がいらっしゃる方はヒントにしてみてはいかがでしょうか?
【関連リンク】
・男性育休ってほんとに普及しているの?──企業の取り組みと経験者の声──
・10月1日に「産後パパ育休」制度施行。育休取得に対するパパの本音は?
