大学・大学院に通う多くの方が、ゼミや研究室に所属し、活動に取り組んでいることでしょう。そうしたことから、就職活動において「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」として、ゼミや研究室での取り組みを挙げる方も多いのではないでしょうか?
一方で、ガクチカとしてだけでなく就職後にどう活かせるかもアピールしたいけれど、イメージがわかない……という方もいるかと思います。そこで本記事では、大学・大学院のゼミや研究室で得られるスキルや経験の一例と、それらを就職後に活かしているビジネスパーソンのエピソードをご紹介します。
大学・大学院時代のゼミや研究で得られるものといえば?
ゼミや研究室によって取り組みの形はさまざまですが、一般的にはテーマに沿って少人数で議論や研究をしたり、各々が定めたテーマのレポートや論文を執筆したりします。こうした取り組みではどのような経験やスキルを得ることができるのでしょうか?
・専門知識
ゼミや研究室では、特定の専門領域を持つ教員のもと活動に取り組むため、専門知識を深める機会となります。テーマの内容によりますが、そこで得た専門知識が就職後に活きることもあるでしょう。
・仮説思考力/課題解決能力
研究では仮説を立て、検証していくことになります。議論や研究の方向性を定めたり、効率的に進める上で仮説立ては非常に重要です。こうした経験を重ねることで、仮説思考力や課題解決能力のスキルを伸ばすことができるでしょう。
・リサーチスキル
議論や研究では、先人の研究論文を読んだり、自身で調査を行ったりするほか、データ分析をすることがあります。適切に情報を取捨選択する力や、効率的な情報収集の仕方を身につけることができるのではないでしょうか。
・プレゼンテーション能力
ゼミや研究室では、研究結果を発表する機会があります。自分自身が調査や研究した結果をまとめ、わかりやすく伝える必要性があります。発表までの過程だけではなく、教員やゼミ、研究室のメンバーからのフィードバックなどを受けながら身につけることができるでしょう。
・プロジェクト管理能力
発表の場や論文の締切はあらかじめ設けられていることがほとんどです。スケジュールを逆算しながら計画を立てることで、より良い内容にすることができます。
・チームワーク
調査や研究をチームで行うケースもあるかと思います。役割分担やチームで行動する際のスケジュール管理などを身につけることができるのではないでしょうか。
・ネットワークの構築
近いテーマや分野に興味を持った人が集まるゼミや研究室では、就職活動でも同じ傾向を持った先輩たちがいる可能性もあります。OBOG訪問や就職活動に関する相談だけでなく、就職後にもそのネットワークを活かせる機会もあるでしょう。
仕事で活きるゼミ・研究活動に注力した経験
ここからは、ゼミや研究室での経験がビジネスの場においてどう役立っているのか、また影響しているのか、働く人の実際の声をご紹介していきます。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎旭化成アミダス株式会社
事業内容:人材派遣、人材紹介、人材教育・研修、コンサルティング、業務委託
・仕事内容:人材ソリューション事業部で営業を担当
大学では経済学を専攻し、医療経済のゼミに入った廣島さん。参加してまもなく、洗礼を受けることに。
廣島さん 「ゼミに入って間もないころ、他校の学生も参加して研究発表大会が行われて。当時はまだ具体的な研究テーマも決まっていなくて、分析方法などもよくわからない。『なんとなくこんな感じかな』くらいだったんです。
ところが、先輩たちが想像以上に高いレベルの研究をやっていて。しかも、研究発表に対して、他の参加者からバシバシ質問や意見が飛んでくるんです。自分たちの甘さを大いに反省し、その後は皆で集まって勉強会を開くようになりました。ゼミに対する姿勢だけでなく、何事も丁寧に勉強することの大切さを学んだことで、考え方が大きく転換し、自覚が芽生えるきっかけになったと思います」
→ストーリー:相手の目線に立ち、一対一で寄り添う。企業理念を体現する営業を目指して
▶︎池田糖化工業株式会社
事業内容:中間原料品メーカーとして新たな加工用原料や食品素材の開発研究を行う
・仕事内容:池田食研の第二開発室 液体チームに所属し、液体調味料などの開発を担当
入社前は大学で生物資源科学を専攻し、化学的な知識を習得。そして就職活動では食品関係の会社を志望し、池田糖化工業グループに入社しました。
田淵さん 「大学時代は直接食品の研究をしていたわけではありませんが、乳化剤、増粘剤などは化学的な知識から原料を選ぶこともあり、現在の業務に役立っています。正直に言うと、就職活動中は池田糖化についてあまり知りませんでした。
しかし、スーパーや外食店で販売されている商品に当社の中間原材料が使われていることを知り、味の決め手となる中間原材料に興味を持ったのです。中間原材料は広がりの可能性を秘め、その先にはさまざまなお客様がいらっしゃり、多種多様な商品へと形作られることに惹かれ、入社を決めました」
→ストーリー:重要なのは地道な改良。味の決め手となる中間原材料を開発し、「おいしい」を届ける
▶︎株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
事業内容:システムインテグレーション事業、ネットワークシステムサービス事業、その他これらに関する一切の事業
・仕事内容:パブリックサービスデザイン事業部に所属し、開発チームのリーダーを担う
2018年にNTTデータへ入社し、パブリックサービスデザイン事業部において開発チームのリーダーを担っている小寺さん。学生時代は制御工学などについて研究し、その中で学んだ最適化理論の考え方は、仕事への向き合い方に今でも大きな影響を与えています。
小寺さん 「最適化とは『目標へ向かってより良い状態へ近づけていくこと』ですが、目先の範囲だけをより良くしようとする『局所最適化』では、全体として良い状態になりません。目に見える範囲だけでなく、あるべき姿を想定し全体を俯瞰しながら進めていくことの大切さが、現在も業務に活かせていると思います」
→ストーリー:「誰もが使いたくなる“イケてる”サービス」の開発──俯瞰力で“最適”を導く
▶︎帝国繊維株式会社
事業内容:防災事業、リネン事業
・仕事内容:営業担当として、電力会社向けの特殊車両、ホースなどの販売やメンテナンス業務に携わる
佐々木さん 「大学では経営学を専攻し、『新規事業の創出』をテーマとしたゼミに入りました。有名な経営学者が提唱した理論を事例に当てはめてディスカッションするほか、社会問題を解決する事業を検討して提案する、という課題にも取り組みました。
実はこのゼミは、『学部内でもっとも厳しい』と言われていて、議論や研究が深夜に及んだことも。あえて過酷な環境を選んだのは、卒業後どんな企業でもやっていけるだけの耐性を身につけたいと考えたからでした。その甲斐あって、長時間でも集中して物事を考えたり、わからないことをとことん調べたりできるようになり、今の仕事にも大いに役立っていると感じます」
→ストーリー:“働く車”への愛がモチベーションに──防災・災害の現場を支える仕事への意欲と誇り
▶︎株式会社テクノプロ テクノプロ・デザイン社
事業内容:機械、電気、電子、組込制御における研究開発分野や商品開発分野への技術サービス
・仕事内容:車載機器の受託開発プロジェクトに配属され、要件定義を担う
Y・Sさん 「もちろん、まだまだ分からないことも多くありますが、そこはクリアになるまで自分で調べていき、答えを導き出しています。
この『自主的に調べる』という方法は大学院時代に培った能力かもしれません。研究室にいたころは教授も答えが分からないような先進的な分野だったので、論文など参考となる文献を世界中から探したり、自分で答えを探求することを繰り返し行っていたので、技術分野は異なっていても、エンジニアの世界でも通用する力になっていると実感しています」
→ストーリー:化学分野の博士課程から、受託開発の組込エンジニアへ。 全く違う道のように見えるけど、自主的に突き詰めて取り組む姿勢は共通だと思う
▶︎農林中央金庫
事業内容:食農ビジネス、リテールビジネス、投資ビジネス
・仕事内容:JAバンク業務革新部 情報系渉外班に所属し、システム系の業務を担当しながら、DXを推進する業務にも携わる
大学時代に学んだことと、システム業務には意外な共通項もあると話す熊本さん。
熊本さん 「法学部では、法律の原理原則と現実とのバランスを取りながら解決策を考えます。また、ゼミではビジネス交渉についても学び、理想と現実を踏まえて落とし所を探っていく思考の訓練をしていました。どちらもシステム構築と通ずるところがあるように思います」
→ストーリー:総合職から、IT領域のスペシャリストへ。未知の領域で出会った“適職”
▶︎パナソニック インダストリー株式会社
事業内容:電気部品・電子部品・制御機器・電子材料等の開発・製造・販売
・仕事内容:研究開発メンバーとして電子材料事業部でマテリアルズ・インフォマティクス(MI)推進に取り組む
小林さん 「当初は、事業部にMIの活用事例がなくゼロベースで検討する必要があり、社内外のセミナーや書籍から学びながら、ひとつずつできることを増やしていきました。私は、大学院で化合物の立体配座(空間的な原子の配置)や反応機構(化学反応の論理的推論)を研究していましたが、データを取得するための論理計算(シミュレーション)やデータの取り扱い方などを学んだことが役に立ちました」
→ストーリー:MI導入にゼロから挑戦──電子材料開発を革新する“キーパーソン”をめざす「想い」
ゼミや研究室では特定分野の専門性に限らず、さまざまなスキルや経験を得ることができ、就職後も仕事の中でそれらを活かしている方が多いようです。今回ご紹介したエピソードをヒントに、ご自身のゼミや研究室での経験を振り返ってみてはいかがでしょうか?
