多様な仕事を経験して自分の道を見つけたい──入庫4年目で迎えた大きな転換点
JAバンク業務革新部 情報系渉外班に所属する熊本。2022年10月現在はシステム系の業務を担当しながら、DXを推進する業務にも携わっています。
熊本 「全国のJAが使用する基幹インフラ『JASTEMシステム』の要件定義や、渉外担当者がお客様訪問時に使用するタブレット端末の企画・運用が主な仕事です。また、業務総括班を兼務しており、そちらではデジタルを活用した業務効率化に従事しています」
高い専門性が求められる特定職として活躍する熊本ですが、大学時代はシステムとは直接関係のない法学部に籍を置いていました。さまざまな仕事に取り組める場所を求め、農林中央金庫に辿り着いたといいます。
熊本 「就職活動の際に、『ひとつの会社でいろいろな仕事を経験しながら適職を見つけたい』という自分なりの軸がありました。中でも、金融なら多種多様な業界に携われるだろうと考えていて。
そんなときに出会ったのが農林中央金庫です。農林中央金庫には、『第一次産業を支える』という明確なポリシーがあります。かつ職種も非常に豊富だったので、とても魅力的に感じました」
入庫後は岡山支店に配属され、食農ビジネスを担当し、地方支店で農業や林業関係の営業・推進活動をしていた熊本。自ら異動願いを出したことがきっかけで、大きな転換点が訪れます。
熊本 「支店では外回りを経験させてもらいましたが、それとは全く異なる本店地区の仕事も経験してみたいと思うようになりました。そこで、異動の希望書類に業種の指定をしないまま、東京勤務希望とだけ書いて提出したんです。
結果、4年目の春に事務企画部への配属が決まりました。事務企画部の業務は未経験の分野。その後、JASTEMシステムの担当と聞いて、具体的にどんな仕事をするのか、全く想像がつかないまま異動の日を迎えました(笑)」
未経験からプロフェッショナルの領域へ。必死の努力の末、おもしろさを見出すまでに
まったくの未経験の状態で、支店から本店の事務企画部へ。職人気質のプロフェッショナルが多く活躍する領域で、熊本は新たなスタートを切ります。
熊本 「最初の仕事は、とにかく電話に出ること。システムの仕様を決める、要件定義業務を担う部署ですが、農林中央金庫内だけでなく、全国のJAバンクグループからも質問を受けるコールセンターのような役割も担っています。
電話で質問をお聞きして、システムのマニュアルや設計書を読み漁りながら回答していくのが、基本的な業務の流れです。当時は1日20〜30件程度は電話対応をしていたと思います」
未経験の領域で慣れない業務に向き合うことになった熊本。当時の苦労をこのように語ります。
熊本 「JASTEMは、さまざまなバックボーンを持った人たちが必死で作り、守ってきたシステムです。初めて触れるシステムへの質問に対して、なんらかの回答をしなければならない。
当時は、情報や知識を、後追いで吸収していくだけで精一杯でした。私の所属する部署は、知識や経験が物をいう側面が強く、とにかく身の回りにある資料を読み漁って、ひとつずつ理解していく。それでもわからなければ、ベテランの先輩に尋ねる。知識を蓄積することが、この部署でやっていくコツだと思っています」
電話対応を必死でこなしながら、徐々に知識を身につけていった熊本。“すでにあるもの”に対応する業務から、“新しく作る”段階の業務へステップアップしていきました。
熊本 「次の段階として、数多く寄せられる仕様変更の要望を具体化する、要件定義業務にも携わりました。システムへの理解度も少しずつ上がり、『こうすればもっと使いやすくなるかも』といった感覚が少しずつ掴めるようになっていったのを覚えています」
担当システムへの理解が深まるにつれて、最適解を見つけることの難しさに直面したと話す熊本。
熊本 「改善要望を聞いて具体化していく中で難しいと感じたのが、組織ごとに力を入れたい商品や考え方に違いがあることです。たとえば、同じ県内でも、隣合う別の農協どうしで金利や力を入れたい商品が違うこともある。そのような前提がある中で、全国の要望をひとつにまとめ、いかにして最適解へと導いていくか。これはいまだに悩む部分です」
この最適解が、折衷案であってはいけないと熊本は言います。
熊本 「ひとつの組織からの要望を叶えると、別の組織にとって不便になることがあります。かといって、バランスを取ろうとしすぎると、両方にとって使いにくくなることも。つまり、確固たるポリシーのようなものを持っていなくてはなりません。要望を満たしながらうまくバランスを取るのが、とても難しいと感じています」
難しさがある反面、それが業務のおもしろさでもあると話す熊本。
熊本 「予算や時間が無限にあるなら、きっとどんな要望でも実現できますが、現実はそうではありません。どこかで調整する必要があるわけですが、少ない予算で大きな予算と同様の効果を出せたときには、独特の気持良さを感じますね。
もちろん、うまくいかないこともあるのですが、それもひとつの経験として積み重ねていくことが、仕事を極めることにつながるのかなと思っています」
過去の経験との共通点を見出し、特定職への転換を決意。社内DX推進チームにも参加
事務企画部の業務を進める中で、特定職への転換を決意した熊本。その経緯を次のように振り返ります。
熊本 「日々の業務に取り組む中で、自分に向いているなと感じるシーンがいくつもありました。『この仕事を自分の軸にしよう』と考えるようになったのが特定職への転換の大きな理由です」
大学時代に学んだことと、システム業務には意外な共通項もあると話す熊本。
熊本 「法学部では、法律の原理原則と現実とのバランスを取りながら解決策を考えます。また、ゼミではビジネス交渉についても学び、理想と現実を踏まえて落とし所を探っていく思考の訓練をしていました。どちらもシステム構築と通ずるところがあるように思います」
まったく異なる分野ながら、過去の経験との共通点を見出して適性を感じた熊本。別の部分でも相性の良さを感じていると話します。
熊本 「蓄積した知識やスキルを、フルで業務に活かせるところも気に入っています。やりがいもあるし、打開策を見つけられたときにはとても気持ちが良いですね。
たとえば、従来、農協の渉外担当者は、複数の端末を持ち歩く必要があったのですが、ひとつのタブレットに機能をまとめることができました。集合研修で、実際にシステムを操作した方から喜びの声をいただけて、この仕事をやっていて良かったなと思いました」
農林中央金庫では、熊本のように総合職から特定職に転換するケースが少なくないと言います。
熊本 「若い人からベテランまで、幅広い年齢の方が転換されている印象です。実際、今の部署にも、私よりも前に転換し、プロフェッショナル性を発揮している方がいます。ただ、特定職だからといって、ずっと同じ仕事というわけではありません。転居をともなう異動はなくなりますが、担当の変更という形での異動はあります」
また、周囲から好意をもって迎えられたことも、特定職への転換を後押ししたと言う熊本。
熊本 「上司からは『応援するよ』と言ってもらい、手厚くフォローしてもらえたのは、とてもありがたかったですね。実際に転換してみて、本当によかったなと感じています」
若手に対して裁量権が与えられるケースが多い農林中央金庫。熊本が所属する情報系渉外班も例外ではありません。
熊本 「私が働く部署では、年齢に関係なく担当者が裁量を持っている印象です。上司には『システムの世界は担当者が一番詳しい』という認識があるようで、担当領域のことは判断を尊重してくれています。その意味では、他の部署に輪をかけて裁量を持たせてもらえているかもしれません」
普段の業務で系統のシステムを担当するかたわら、熊本は2021年に“社内DX推進チーム”にも参画。
熊本 「普段の業務と兼務する形で、DX-CFT(デジタルトランスフォーメーションクロスファンクショナルチーム)に参画していました。同プロジェクトでは、社内コミュニケーションを効率化するツールを導入するにあたり、社内ルールの整備などの導入準備から、導入後の社内のユーザーサポートまで幅広く担当しました。
参画のきっかけは、普段の業務において『ユーザーのことを全然考えてないじゃないか』といった意見が寄せられていたこと。『ユーザー目線を取り入れた業務の効率化を考えたい』という想いで、自らがユーザーとなる社内インフラ改革のチームに、手を挙げて配属させてもらったんです。本当に大変でしたが、すごくやりがいのある仕事でした」
社内DX推進チームに加わったことが、普段の業務にも活きているという熊本。
熊本 「社内DX推進チームで行ったプロジェクトにより、社内でメインとなるコミュニケーションツールも変わりました。業務効率が大きくアップし、すごく働きやすくなったなと思います」
大切にしているのは、フットワークを軽くすること。理想とする人材像を目指して
熊本が仕事を進めるうえで大切にしているのは、いつもフットワークを軽くしておくこと。
熊本 「なるべくフットワークを軽くして、どんなボールでも積極的に拾いにいくようにしています。どんなことでも選り好みせず、とりあえず試してみるよう心がけているんです。システムの分野では、入ってきた情報をよくよく精査してみると、『こことここがつながって、目の前の仕事と結びついている』ということが案外少なくありません。
ですから、『自分に直接関係ないから』とすぐに謝絶するのではなく、いったん自分の中で反芻してみるようにしています」
そんな熊本の今後の目標は、“専門性とゼネラル性の両方を持った人材”になること。
熊本 「プロフェッショナルになればなるほど、親しみにくい印象を抱かれがちな分野なので、親しみやすい専門家になりたいです。
いろいろなことを知っていれば、困ってる人を助けてあげることができますし、その分自分にも返ってきて、結果的に得をすることも。専門的なところには全力で取り組みつつ、自分の本来の射程から外れるようなところもカバーできるような人になれるといいですね」
自ら積極的に行動した結果、“適職”と出会い、その道を極めることを決断した熊本。専門性とゼネラル性を兼ね備えた、新しいタイプのプロフェッショナルを目指して、これからも奮闘を続けます。