鈴与の強みを活かし、独自のシステム開発で事業成長を支える
会社全体のITインフラを支えている社長直下の組織、情報システム室(以下、情シス)。室長を務める橋本は、情シスのミッションについてこう語る。
「ミッションは3つあります。1つめは鈴与の物流サービスを情報システムで支え利益を得ること。また、物流を通じて社会貢献を行うことです。
2つめは組織全体のビジネス戦略や目標、ニーズにもとづいて、情報技術を最大限に活用すること。業務システムなどの定期的な更改や機能強化、お取引先のニーズに合わせた互いのデータ交換や業務ニーズに応じた既存システムへのアドオン開発を継続的に行っています。
3つめは安心安全にシステムを使ってもらうこと。PCやネットワーク、メールやチャットを含めいろんな業務システムがありますが、そういったITに関わるものを安心安全に全社員宛にサービスとして提供していくのが私たちの役割です。
物流事業者は、お客さまの商品をお預かりして次の方に確実に届けるというのが仕事。その仕事を止めないためにも、われわれは決められた納期に合わせてきちんとしたシステムを提供し続けることが必要になってきます」
会社で使用している基幹システム系は、既存のパッケージソフトを使わず、ゼロの状態からつくるスクラッチ開発でつくっているのが特徴だ。
「われわれの会社にはサービス独自性があると考えています。鈴与は国内物流だけでなく、貿易貨物を扱う国際貿易、清水港の港湾オペレーションも行っています。国内物流では倉庫を活用した保管や作業だけでなく、運送を絡めたサービス、国際貿易では国をまたいだ複合型の一環サービスを提供しています。
多岐にわたる業種・業態の事業間の連携性や効率性が求められるため、既製のシステムでは対応しきれないのです。鈴与の強みを活かすために独自のシステムを開発することで、より柔軟で効率的な物流サービス提供を実現しています」
開発するにあたって、コーディングや設計の部分はグループ会社である鈴与システムテクノロジーに委託しているが、要件定義や導入後の保守運用は情シスで行っている。その理由を橋本は次のように語る。
「情報技術は進歩が速く将来的な可能性を見据えて、事前にインフラ構成やシステム構成をどうすべきかを継続的に検討しています。なので、システム開発を行う場合には、どんな環境で、どのツールを使って、どのようにシステムを開発していくかはすべて自分たちで決定しているんです」
倉庫業務を一変させた情シスのデジタル改革。ペーパーレス化で業務効率が大幅に向上
「情シスは常に新しい技術の導入に積極的に取り組んでいます。ビジネスに活用できるIT技術はすぐに採用する方針で、新技術が登場すると即座に評価し、有望なものは継続的に学習して将来の実装に備えています。スマートフォンやタブレットが出始めた時には、すぐに試作品の業務アプリを作ったんですよ」
そうして、橋本は事業本部と連携し、現場と対話しながら新しいデバイスの可能性を探っていった。はじめは事業部門からの抵抗があったものの、新社長の就任を機にデジタル化が一気に進んだ。
その結果、従来の高価なハンディターミナルに代わる安価で機能性の高いスマートデバイスを業務に導入。とくに大きな成果を上げたのが、倉庫業務におけるペーパーレス化の取り組みだ。
「当社の倉庫は、これまで指示書を紙で出していたんです。多いところだと10〜20㎝ほどの厚みになるほどでした。紙代もばかにできませんし、出力までの時間や手間、さらには使用後の回収や保管などの非効率が発生していました。
この状況を改善するため、スマートグラスや音声システムの検討をしてきましたが、スマートフォンが安価に購入できるようになったことからスマホを活用したペーパーレスシステムを提案しました。元々準備を進めていましたので、短期間で全国展開されていきました」
導入にあたり一箇所一箇所丁寧に説明をしたという橋本。このペーパーレス化の取り組みは、予想外の効果をもたらした。それは、作業の標準化である。
「全国約80の倉庫で導入したペーパーレス化の仕組みは、作業の標準化につながったと言えます。今は基本的にペーパーレスで、スマートフォンを使った業務に切り替えています。日本国内の倉庫では、それがベーシックなやり方として業務が行われています。現場のメンバーはどこに行ってもやり方が変わることなく、新しい環境にも素早く順応できるようになりました」
未知の領域に、果敢に挑戦。失敗を教訓に現場で学び、システムの力を活用して物流改革
橋本は1992年に鈴与に入社後、鈴与システムテクノロジーに出向してプログラマー、そしてシステムエンジニアとしてのキャリアをスタートさせた。
「7年半に及ぶ出向では、主に経理系や港物流系、建設系の多岐にわたるシステムプロジェクトを担当しました。1999年に出向から戻ると、情シスのシステム運営課に配属されました。
国内物流担当として倉庫管理システムと運送システムを担当することになったのですが、正直なところ業務経験も開発経験もない領域だったので、現場やそこで働く人の状況がまったくわからない状態でした。まさに新しい世界に飛び込んだような感覚でしたね」
しかし、橋本はこの未知の領域に果敢に挑んだ。2000年の組織改革で情シスは物流企画室IT戦略チームに名称を変え、鈴与では情報システムを核とした物流改革が本格化した。その流れを受け、システム導入を進めるために全国を飛び回った。
「倉庫管理システム(WMS)の導入と業務での運用定着を進めるため、全国の倉庫を回りました。当時、多くの中小倉庫会社がまだ紙の台帳で在庫管理をしていましたし、大手倉庫会社もすべての倉庫にシステムを導入しているところは少なかった時代に、私たちは先進的なシステムを全国のすべての倉庫に導入しようとしていたんです。しかし、それは決して平坦な道のりではありませんでした。
新規の倉庫立ち上げで大きなトラブルに遭遇したことがあります。システム自体には大きな問題はなかったのですが、在庫している現物の場所と数量がシステムと異なり、出荷作業に大きな混乱が発生してしまいました。倉庫現場もシステムを使った在庫管理や作業に不慣れだったんです。私も3カ月半も倉庫に寝泊まりして、昼間は倉庫作業、夜間は棚卸とシステム調整を続け現場の問題解決に取り組みました」
この経験は、橋本にとって貴重な学びとなり、大きな転換点となった。
「物流改革は約2年間続きましたが、システムの知識だけでなく現場の業務を深く理解することの重要性を痛感しました。そして、システムを使った倉庫管理が鈴与の強みになってきた時期、営業部門に対してはシステム活用の利点をお客さまへどのように訴求していくかを全営業へ説明する勉強会を開催しました。
技術的な知識と業務知識を組み合わせることで、システムが営業ツールとしても有効であることを伝えることができたんです。結果的に、現在ではスムーズな業務立上げ、システム導入ができるようになったと感じています」
また、これらの経験を通じて、橋本はシステムエンジニアとしての素養について深い洞察を得た。
「システムエンジニアの素養としてもっとも重要なことの1つは、お客さまの業界の特性や専門用語を短期に理解し、スムーズなコミュニケーションが取れるようになることです。相手に寄り添い、相手に合わせ自分を変えていける柔軟性の高さが、システムエンジニアには求められると考えています。
さらに、システム開発においては、新しい技術の有効性を短期間で判断し、システムへの実装を遂行していける能力です」
次世代IT人材の育成を強化し、DX時代に輝く情シスの未来を切り拓く
鈴与の情シスで働くやりがいについて、橋本は次のように考えている。
「私たちは鈴与の中に居て、多くの部門や現場を見ることができるため、会社全体の業務やニーズをよく理解できる立場にあります。困っている部署には解決策を提案したり、現場の声をマネジメント層に橋渡ししたりするなど、われわれ自身がコミュニケーションツールとなることもあります。
私たちは、自分たちの『鈴与』という会社を育てていくため、大きくするためにどうしていったらいいのか。会社の潤滑油としてどうあるべきかを常に考えているんです。
そのために、システム開発にとどまらず、いろんな姿で貢献していく。これは、自社製品を開発・販売したり、顧客の要望を単にシステム開発したりするSler(システム開発会社)とは大きく異なることだと思いますし、それが情シスで働く楽しみなのかなと思っています」
そう語る橋本は、マネジメントにおいても独自の哲学を持っている。
「とくに、失敗を恐れずに挑戦してもらうことが大切です。私は、失敗を責めることはありません。怠けているとか、仕事上でのミスに対しては注意しますが、一生懸命取り組んだ結果に対しての失敗というのは一切責めることはしていないんです。むしろ褒めてあげています。
最近では、情シスの若手社員を、新しい運送システムの開発プロジェクトにアサインしました。運輸事業の業務も既存システムの知識もなくプロジェクトに投入され、はじめは苦労していた若手社員も、約2年間の開発プロジェクトを経て大きく成長してくれました。
ここ数カ月間は、事業の母体となる鈴与カーゴネットの営業所に常駐してもらい、IT関連以外にも求められることはなんでもやるように言っています。そこでシステムの話もすれば、業務の話もすることになります。いろんな課題に直面し、いろんな情報を吸収し、次の仕事に役立ててくれたらと期待しています」
最後に、橋本は鈴与全体でのIT要員増強の課題について触れる。
「DXや生成AIなどを取り入れて生産性を上げていくためには、全社的なITスキルが必要になってきます。もはや情シスだけでなく、全社員がITの基礎スキルを持たなければいけない時代になっています。
そのためには、私たちの部署が積極的に人員の拡充と教育を行い、社内で必要とされるさまざまな部署にITサポートを行なっていきたい。物流は、社会インフラとして止めてはならない仕事です。エッセンシャルワーカーが社会混乱の中で活躍してきた裏側には、物流を動かす情報システムが存在します。いまやシステムがなければ正確で効率的な物流活動ができなくなっています。
私たち鈴与の情シスは、物流知識と情報技術を武器に物流のフィールドで競争しながら社会貢献に通じる仕事をしていると思います」
次世代のリーダーを育成することも自身の重要な役割だと認識し、組織の整備や若手人材の育成にも力を入れている橋本。鈴与の情シスの未来は、橋本の想いと共に着実に前進している。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
