東京から静岡へ──鈴与の基本指針に惹かれ、入社を決意
東京出身の中井が鈴与への入社を決めた大きなきっかけは、同社の基本指針との出会いだった。
「会社の基本指針には『歴史の審判に耐える正々堂々の経営』というフレーズがあり、そこに非常に強く惹かれました。中学生時代から『人の役に立ちたい』と考えていた私は、このような理念のもと働きたいと就職活動時に素直に感じましたし、それは今も変わっていません」
大都市での生活経験から、より人間的な関係性を築ける地域での活動に魅力を感じていた。
「東京で育ち、満員電車で人の圧力に押されてホームから転落した経験もあり、人間的な付き合いが感じられる地域で働きたいと考えるようになりました」
鈴与への入社を決めた理由には、グループ内の航空事業の構想も影響していた。
「大学では観光学部で旅客輸送事業や旅行事業の経営などを学んでいました。物でも、人でも、運ぶという仕事に興味があったんです。鈴与のグループ会社としてヘリコプターや航空事業の構想があることを知り、将来的に関わってみたいという希望を抱いたことも、入社を決める一つの要素となりました」
新卒で入社し、6年ほど物流機器のリース営業に携わった中井。
「営業担当としてリース契約を取りたいと思いつつも、お客さま視点で最善を常に考えていました。時には、過剰な投資と感じた場合は、お客さまである運送会社の経営者に素直にお伝えしていました。
その結果、お客さまと強固な信頼関係を構築することができ、リース営業担当という枠を超えた関わりができたと思います」
振り返る中井は、ここにも基本指針の「歴史の審判に耐えうる正々堂々な経営」を自身が大切にしたと語る。
2011年鈴与(株)社員を対象に、航空事業への社内公募が行われた。中井はリース営業にも充実感を覚えていたが、航空に対する学生からの憧れに正直に、自ら手を上げた。
希望してFDAへ出向──すべての経験がFDAと自分を育ててくれた
2008年に設立されたFDAは、翌年7月に3路線で運航を開始。社内公募があった2011年には、すでに機体は5機にまで増えていた。
「手を上げた当時、FDAは急成長を始めた頃でした。私は当初の航空事業自体への興味以上に、FDAの『地方と地方を結ぶ』というコンセプトに大きな意義を感じるようになっていました。リース事業本部で地域ごとの産業や文化の違いを知ったことで、それらをつなげれば、きっと新たな価値が生まれると期待したのです」
中井は公募試験に合格し、2011年末にFDAに出向となった。最初の勤務地は名古屋となったが、程なく新路線開設を控えた新潟へと異動した。
「急拡大する会社の勢いに背中を押され、意気揚々と新潟へ。常駐スタッフは自分を含めて2名でした。右も左もわからない土地で不安もありましたが、やるしかありません。旅客業務やグランドハンドリング業務などの委託管理、販路の拡大に奔走しました」
未経験の業務、知らない土地での勤務に関しては、リース営業での経験が活きている。
「前任者がいる場合は、課題や注意点などをヒアリング。いない場合でも、関連書籍を読むなどして、可能な限りの情報を集めて、一つひとつ不安を消していくようにしていました」
総務人事部を皮切りに、空港現場、営業、経営企画など、幅広い部署を経験している中井だが、とくに印象に残る部署はコールセンターだと言う。
「コールセンターには、お客さまの生の声が届きます。立ち上げ間もないFDAにとって、その声は傾聴すべき財産でした。お客さまの声を関係部署にフィードバックすることで、改善されたり、新たに始まったりした業務も多々あります」
こうした改善への動きは、その後のFDAらしさを形作っていく。
「お客さまの声でも、個人のアイデアでも、さらに良くなる可能性があるならやってみる。社内に限らず、国や自治体といった外部に働きかけることも頻繁にあります。変化を恐れないと言うより、変化が好きな会社と言った方が近いかもしれません。こうした姿勢は、鈴与本体と似ていますね」
地方と地方を結ぶ架け橋──地方創生を担う航空事業の使命
現在中井は、FDAの経営企画部企画グループで、グループリーダーを務める。経営ビジョンに沿って経営施策の立案をしている。
「大規模な予算管理を含む経営施策を立案し、実行に移しています。具体的には、飛行機の購入・売却計画、航空機燃料の調達、そして航空局や自治体との調整など、私たちの部署では会社の背骨を作り実行しています」
飛行機の新規導入には数年単位の期間を要するため、中長期的なプロジェクトが多いのが特徴である。また、自治体との調整も重要な業務の一つだ。
「富士山静岡空港は静岡県の所有・管理となっています。自治体にとって、便数を増やすことは非常に大きなミッションです。県外から人がたくさんいらっしゃれば、経済や文化などの活性化につながります。そのため、自治体から路線誘致の提案をされた際には支援条件や予算などを検討し対応しています」
企画グループには2名の直属の部下がおり、近接部署である路線計画グループとも協力して業務を遂行している。中井はグループをまとめながら、短期的な課題と長期的な視点のバランスを常に意識している。
「目の前の仕事に追われがちですが、それらは最終的に路線の維持や会社の存続につながっています。リージョナル航空として地方と地方を結ぶという使命を果たすためには、経営・収支の安定化が重要です」
とくに空港現場で5年間の経験を持つ中井は、日々の業務と長期的な目標の結びつきを重視している。
「空港の現場では、1便1便、1日1日で完結する仕事が多いのですが、それだけでは先に続いていきません。安全性やお客さま満足度、定時出発率、就航率といった指標を通じて、継続的な改善につなげていく必要があります。そのため、目の前の仕事と最終目的の関係性を、チームメンバーとの日頃の会話でも意識するようにしています」
地域からの期待は大きく、やりがいを感じる仕事だ。
「私たちの路線が就航することで、地元自治体や経済界の皆さまから感謝の言葉を多くいただきます。ご利用のお客さまからもお褒めの言葉をいただくことがあり、非常にやりがいを感じています」
夢の数は絞らない。チャレンジを続け、可能性を広げたい
中井は、これからのキャリアについて、目の前の重要なミッションを語る。
「FDAの重要なミッションとして、経営面の自立を達成させなければなりません。また、鈴与からの出向者として、鈴与グループの基本理念や考え方をFDA社員の方々にきちんと伝えていくことも、私の重要な役割だと考えています」
鈴与グループで働く魅力について、中井は長期的な視点を持つ企業文化を挙げる。
「鈴与グループの大きな特徴は、人を大切にする企業文化と、3年から5年という短期的な視点だけでなく、10年、50年、100年という長期的な時間軸で社会貢献を考える姿勢です。
一方で、FDAはまだ発展途上の企業であり、短期的な成果も重要です。そのため、長期的なビジョンを持ちながらも、足元の経営も確実に行っていく必要があります」
若手社員やこれからマネージャーになる人に向けて、中井は価値観を形成する上での大切なアドバイスを送る。
「いろいろな経験をなんでもしてみることが大切です。私は五感をとても大切にしています。学生時代や社会人になって間もない頃は、仕事面でもプライベートでも思いがけない経験や刺激が得られます。そして、それらは自身の価値観をつくっていく材料になります」
リース営業で実績を積んだ後、自ら希望して航空業界に飛び込んだ中井。最後に、自身のこの先の可能性について語る。
「今いる場所で最大限専門性を高めていく必要はありますが、それだけが自分のすべてではありません。夢の数を自分で絞りすぎない方が良いと感じているので、航空事業だけでなく、それ以外の領域についても経験していきたいと考えています。
可能性は自分で広げられますし、この先も新しい夢は生まれます。変化していくことは大変ですが、人生一度きりなので、楽しみながらチャレンジしていきたいと思います」
可能性という名の広大な青空に向かって、中井はこれからも力強く羽ばたいていく。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
