お客さま視点で物流の課題を解決──静岡発・清水港の強みを武器に挑む物流営業の現場
鈴与株式会社(以下、鈴与)のロジスティクス事業本部 名古屋支店に所属する北住は、物流全般の営業を担当している。
「当社には主に3つの強みがあると考えています。1つめは北海道から九州に至るまで約140拠点・30万坪の倉庫・物流センターを有し、さまざまな貨物・商材に対応していること。2つめは、2,600台の車両を保有し、全国各拠点を結ぶことはもちろん、最適な車両・ルートの提案が可能であること。3つめは、業界内でもトップクラスの通関士資格保有者を揃え、清水港を中心に海外との一貫輸送、輸出入が可能なことです」
営業活動において、北住は顧客目線でのアプローチを最も大切にしていると言う。
「当社の強みをいくら伝えても、輸出入を行ってなかったり、倉庫に困っていなかったりするお客さまもいらっしゃいます。そのため、お客さまが何に困っているのかという『軸』を外さないように心がけています」
商談に向けた準備も入念に行っている。
「訪問前には必ず商談用の資料を作成します。具体的には、お客さまのWebサイトなどから物流やサプライチェーンについて仮説を立て、図にしたものとなります。
資料をお見せし、議論することで、お客さまから『中国へA商品をどの程度輸出をしている』『主な納品先は関東だが、一部九州にも配送している』などといった具体的な情報を引き出すことができます」
名古屋支店は 課長含め3人で連携をしながら営業活動を行っている。案件獲得のアプローチ方法は主に2つ。社内システムでターゲットを選定しテレアポから始めるパターンと、既存顧客からの紹介によるものだ。北住は後者を多く活用している。
「新規開拓の場合、意思決定者へお会いし、情報を引き出すまでに多くの時間を要します。既存顧客からのご紹介であれば、実績と信頼感からより多くの情報をいただくことができ、スムーズに商談が進むと考えています」
顧客に寄り添う姿勢を大事にする北住の活動があってのことだ。
広告会社志望から物流のプロへ──若手時代の苦労によって培った忍耐力が武器に
就職活動時、北住が希望していたのは広告業界やテレビ局で働くことだった。鈴与については、当初は第一志望ではなかったと言う。
「就職活動中に先輩方との面談を通じ、おもしろそうだと興味を持ちました。また、私自身が静岡の出身で、いずれは地元で働きたいという思いもありました」
入社を決めた大きな要因の1つに、入社前の研修での出会いがあった。
「同じグループだった同期と親しくなり、一緒に働きたいと思いました。その同期とは今も仲が良いです。就職活動では働く人や環境を重視していたので、『人が良い』会社に行きたいという思いがありました」
入社後、最初の配属は運輸事業部。乗務員への配車指示が主な業務だった。
「乗務員さんがストレスを感じず、気持ち良く1日の仕事を終えられるよう、パズルのようにルートを組み合わせて指示を出していました。
たとえば、静岡から群馬に行った後、帰りは群馬から近い場所で荷物を引き取って静岡に帰ってくるなど、売り上げと乗務員さんの負担の両方を考慮しながらルートを組んでいましたね。また、業務の1〜2割は、お客さまと料金の交渉をするなど営業的なこともしていました」
3年間の運輸事業での経験は、忍耐力を培う機会となった。
「乗務員さんへ誤った情報をトスしてしまったことがあります。自分の注意不足で乗務員さんに無駄な運行をさせてしまいました。乗務員さんからの厳しくも優しいフィードバック・指導により、私の業務の影響範囲を本気で考える機会になりました。
これ以外にも細かい事象含め、毎回指導してくれたことで忍耐力がつき、相手側の気持ちを考えるクセがついたことは私の大きな『財産』です。
3年間そのような経験を積めたおかげで、現在営業として働いていても、大体のことはそれほど緊張せずにこなすことができます。あの時に比べればたいしたことがないと思えるようになりました」
2年越しの大型案件を獲得──「対面」での提案力と情熱が生んだ顧客との信頼関係
その後、沼津支店に異動した北住。当初は大きな戸惑いを感じたと言う。
「最も苦労したのは、国内輸送の営業経験しかない状態から、突然、倉庫を含めた物流全般の営業へ異動となったことです。当初は基本的知識もなかったので、DC・倉庫で仕事をしている同期に話を聞くなどして知識を蓄えていきました」
そんな中、ある顧客との取引拡大のチャンスが訪れる。
「当時、あるお客さまの輸送に関して、静岡県の御殿場から熊本県まですべてお1人で陸送を行っている状況にありました。長距離・長時間の陸送は事故のリスクが高まることはもちろん、乗務員さんの高齢化により今後の輸送継続が困難となるリスクもあること。
また、SDGsの観点からCO2排出量の問題があることをご指摘させていただき、解決策としてフェリーによる輸送ご提案させていただきました。お客さまには陸送を変えたくないというお考えがあり、さらにフェリーの揺れによる製品への影響を懸念されていました。
そこで、製品への振動が少ないことをフェリー会社からの数値データで示すことで不安を解消し、その上でトライアルを実施して、荷物量の変化や、乗務員さんの拘束時間が短くなることを事実ベースでご理解いただきました」
顧客の信頼を獲得し、受注につなげた北住。その後、顧客から新たな課題を耳にする。
「工場内のスペースが限られており、保管場所について当社とは別の物流コンサルに相談しているというお話を伺いました。一定の信頼関係を築けていたと考えていた中、他社に相談されていたことに多少のショックを覚えましたが、同時に熱意が沸き、すぐに『先方へのご相談はいったんやめていただき、ぜひ、私たちに話をお聞かせてください』とお願いしました」
北住は顧客を鈴与の倉庫に招き、工場からの距離の近さや、他の顧客の事例を見てもらい、具体的なイメージを持ってもらった。
「当社は物流会社ですが、実際に倉庫やトラックといった潤沢なファシリティ・現場があり、最適な物流のご提案や対応ができるということをお示ししました。そこから2年かけてお客さまの不安や課題をすべて解消していき、最終的に受注をいただきました。
お客さまには『たくさん提案をもらえて安心できた』と仰っていただきました。御殿場のお客さまのもとに沼津から毎週のように通いつめており、『帰らずに、ここで仕事していけば?』と言われたこともありましたね。今でも営業する上では『対面』ということを大事にしています」
北住は、大型案件の獲得に結びついた理由を次のように分析する。
「最初のフェリーの件は国内輸送・運輸の知識がなければ提案できなかったことだと思いますし、大型の倉庫の話にもつながりませんでした。入社後3年間の運輸での現場経験があったからこそ、説得力を持ってお客さまに話せたのだと思います」
1人ですべての営業提案が可能に──ジョブローテーションによって培った応用力
多くの経験を積んできた北住。営業という仕事のやりがいについて、次のように語る。
「お客さまとの信頼関係構築を前提に、自分が提案し物流という形となって実現していくことにおもしろみを感じます。このプロセスすべてにおいて、お客さま視点でかつ全体最適を考え続けます。大変ではありますが、やりがいの大きい仕事だと思います」
また、営業としての「切り替え」も大事にしている。
「初回の案件は、荷物が事故なく無傷で届くとホッとしますし、その後にお客さまから次の依頼をいただく時が本当に一番嬉しい瞬間ですね。
そして、お客さまの笑顔を見て嬉しいと思った直後から、気を緩めないよう、次の商材やターゲットに気持ちを切り替えるようにしています」
鈴与のジョブローテーション制度は、複数の事業を経験する。最初は戸惑いがあったものの、今では大きな価値を見出していると言う。
「当初は3〜4年ごとに新たな知識を習得することへの抵抗がありました。異動をすれば、あらためて一から学ばなければならないことにも躊躇いを感じ、当初は元々取り組んでいた運送営業に特化したいと考えていました」
しかし、現在では異なる視点を持つようになったと言う。
「もし運送の知識しかなかったら、営業できるフィールドはとても狭くなっていたはずです。ジョブローテーションのおかげで、倉庫や輸出入など物流全般の知識を蓄えることができました。
今では1人でお客さまのところに行っても全部の提案ができますし、お客さまにとっても、1人の営業に言えば課題を解決できることになります。幅広い提案ができることこそが自分の強みであると自負しています」
営業としてこの先も成長していきたいと考えている北住。今後のキャリアについて、具体的なビジョンを描いている。
「現在は目の前のことに集中したいと考えています。国際輸送は少し苦手意識があるので、まずは国内で食品、自動車関連、ゴム、樹脂、医療系など、さまざまな貨物・商材の取り扱いに挑戦していきたいと思います」
名古屋支店に着任して、約5カ月。静岡とは異なる環境での営業活動で、新たな目標もできた。
「静岡では鈴与の名前やネームバリューは非常に強く、よく知られています。しかし、他県では当社をご存知ないお客さまも多く、競合他社もいます。今後は、大阪や東京などでも鈴与の知名度を広めていきたいと考えています」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
