対話で見えた「組織をより良くしていきたい」という社員の想い
人事戦略部 組織開発グループでグループ長を務めているM。
事業成長と社員の働きがいを促進する組織開発活動に加え、ダイバーシティ推進という大きく2つの取り組みを担っています。
「組織内の当事者が、組織の成長と改善のための取り組みを自ら考え、行動できている状態をゴールとする組織開発活動の主体は、当事者である社員の皆さんです。組織開発活動の対象は、戦略、制度や組織体制、業務プロセスという目に見えるものだけではなく、習慣化された仕事の作法、共有されている価値観など、目に見えにくいところで広い範囲にわたって組織の人々の判断や行動に影響を与えている組織の価値観も含まれます。
その組織の価値観は、“組織の常識”として組織内の当事者に刷り込まれているため、対話をしながら確認しあって、一人ひとりがそれに気づいて自発的に、自覚的に変えていく必要があります。そのため、『誰かにやってもらう、やらされる』ということではなく、『自分たちの組織は自分たちで良くしていく』ということが、組織開発の基本にある考え方です。
私たちは『伴走者』というカタチで各組織の活動を支援しているんです。一方、ダイバーシティ推進では、一人ひとりの個性や属性の違いを尊重し、個人の能力を最大限に発揮できる組織風土の醸成をめざしています」
組織のありたい姿は各事業部門によってさまざま。そのため、Mらはコーディネーターとして伴走する中で、それぞれの状況や特性に合わせてこまやかに対応しています。
「基本的には対話を起点としながら、まず、社員意識調査で組織の現状を可視化します。その結果を当事者が対話を通して深掘りし、めざす組織の姿を設定します。それを実現するための課題に対する具体策を検討し、適切なアクションを行っていきます。
また、組織内の当事者が取り組みを自ら考え、行動できるようになることをめざし、各事業部門に推進リーダーを立てて推進体制を事業部門内に構築。私たちは全社事務局として支援し、活動推進を各リーダーたちと一緒に進めています」
こうした取り組みは、“誇りを持って働ける職場づくり”という意味を込め、「PRIDE PJ」と名づけられました。PJという名称ですが、組織内の当事者が、組織の成長と改善のための取り組みを自ら考え、行動できている状態をゴールとするこの活動は終わりのある活動ではなく、継続的な取り組みとして定着しつつあります。
「PRIDE PJでは、もともと人や組織が持っている想いや力を引き出し、事業成長や社員の働きがいにつなげていく取り組みです。いろんな方と対話をしていると、『自分たちの組織をより良くしたい』という熱い想いを持った社員が多くいることに気づかされます。
それはベテランだけでなく、若手社員も同じです。私たちは伴走者として、想いを持った仲間がつながるような場をつくり、一人ひとりの想いをカタチにできるように伴走をしていきたいという一心で取り組んでいます」
一方、ダイバーシティ推進では、まずは女性のキャリア形成促進を重要な経営施策のひとつとして推進しています。
「階層別研修での『無意識のバイアス』に関する研修を実施しています。また、女性のキャリア形成のために、管理職一歩手前の係長級の女性社員の上司と人事部門による個別面談の実施および育成プラン作成などによるキャリア形成支援を行っています」
人への投資なくしては組織は成長しない。トップの想いをカタチにして活動へとつなぐ
組織開発活動の根底には、「人への投資」に対するトップの強い想いが込められています。
「事業の持続的成長の源泉は人と組織の成長、発展であり、人材は最大の資本と当社は考えており、『中期経営計画2026』の重要テーマになっています。社長の下村は、採用に対する取り組みだけでなく、育成基盤の強化に注力すべきと考えており、その際に重要なのは、対話であると言及しています。
人材への投資なくしては、組織は成長していかないという信念があります。こうした経営トップの想いと理解があるから、活動の輪はますます広がっていくのではないでしょうか」
Mは2020年に住友重機械工業に中途入社。その頃は、ちょうど組織開発活動を立ち上げようとしていた時期で、組織開発の経験があったMが任命されました。
「もともと、組織開発グループはダイバーシティ推進を中心とした役割を担っていたんです。社員の主体性や自律性を引き出したいというトップの想いがあり、組織を根本から変えていく組織開発活動を進めることとなり、両方を担う形で組織開発グループが発足しました。
『なぜ現状はそうなっていないのだろう』と対話を通して社員の話を聞いたところ、顧客の要望に応える形でモノづくりをしてきたことで自発的な行動が生まれにくくなっていました。
また、失敗が許されない環境であったため挑戦へのハードルが高く、『言っても無理だろう』という諦め感も漂っていました。新しいものを生み出す技術力がありながら、そうした環境下からやむなく“受け身”な文化が定着していたことが見えてきました。そのため、まずは本音で話せる組織づくりと、自ら発言して変化を起こすという成功体験を積み重ねていくことが必要だと考えました」
取り組みを進める中で、とくに苦労したことは活動への理解を得ることだったと言います。そこでMらは、啓発活動を始める前の準備期として、経営層で対話の機会をつくることに。これが活動への理解を深めるきっかけとなり、その後の啓発活動にも大きな影響を与えます。
「社長と各事業部長で組織のめざす姿と組織や人に関する困りごとについて対話を行い、お互いの率直な想いや考えを本音で話し合い、聴き合って相互理解を深めてもらいました。通常の会議とは異なる対話が、実際にどういうものなのかを体験してもらうことで、活動に対する理解を深めてもらいました。対話では、自由に思っていることを対等に話し合うためのルールを設けています。そうした安心・安全の場づくりが対話の質を高めます。
その後は、各事業部長に人選をお願いして、推進リーダーを立ててもらい、事業部ごとに活動を進めてもらいました。対話に参加した社員からは、『立場がまったく異なる人たちでも、“会社のことを良くしたい”と同じことを思っていることに気づくことができ、想いを共有することができた』などの声があがり、あらためて対話の必要性を実感しましたね」
それと同時に、対話で話し合った社員の「こうしたい」という想いを実現できるように、事業部長にスポンサーシップを発揮してもらっています。具体的には、推進リーダーたちの決定を支持し、時にはアドバイスし、変化のためのリソースを提供し、励まし、活動全体を支えてもらっています。
「事業部長の皆さんには、活動に対してスポンサーシップを発揮してもらっています。そのため、これまで実現が難しかったアクションも、PRIDE PJの一環として進み、徐々に皆さんの想いをカタチにできるようになりました。活動を通して、もともと持っていた主体性が引き出され、徐々に本音を言える組織文化が醸成されていきました。
また、組織をより良くしていきたいと当事者意識を持つ人の活動への参加が増えたことも大きな変化です。活動を推進する社員の皆さんの取り組みが社内で評価され、周囲から承認されるような文化をつくることも私たちの使命だと思っています」
組織の成長と改善のための取り組みを自ら考え、行動できることがゴール
Mが社員に向けて伝えたいことは、あくまでも主体は各組織の皆さんであるということ。組織をより良くしていく活動は、他人任せにできるものではありません。「誰かにやってもらう、やらされる」ということではなく、「自分たちの組織は自分たちで良くしていく」と、自分ごととして捉えることが大事だと話します。
「私たちも活動に伴走しますが、組織の現状に自ら気づき、自分たちでより良くしていくためには、組織内の当事者の皆さんが主体となった活動を進めていく必要があります。
そのため、組織長自らが経営や事業における組織開発の意義を認識して、組織開発でめざす姿を組織内に発信できるように、働きかけています。組織内の当事者が意志をもって取り組まなければ、この活動はうまくいきません」
住友重機械工業では、2023年にパーパスの策定に取り組みました。その背景にも、エンゲージメントを高めたいというトップの想いがありました。
「パーパス策定の背景には、当社グループでは多数の事業がそれぞれ自律した経営を進めてきたため、グループ全体として力を結集するためには、皆がめざすべき方向を示す普遍的な道しるべが必要であるという社長の想いがあります。
パーパス策定にあたって、さまざまな部門や階層の延べ約500人の社員を対象にインタビューやディスカッションを重ねました。その中から当社グループの独自の価値観や強み、将来のありたい姿や、社会から求められるニーズなどを抽出し、一つひとつの言葉に意味や想いを込めながら、パーパスステートメントをつくり上げました。中でも『優しさ』という言葉は、住友の事業精神に基づいており、技術・製品の持つ特徴・強みとも合致する概念として、こだわったポイントです」
パーパスを組織内に浸透させていく過程でも、理解を得ることに苦労したと言います。
「当社には経営理念が存在していたため、新たにパーパスを策定する意義について理解を得ることが難しかったですね。理解と共感を得るために、ここでも対話を重視した取り組みを行いました。各事業部長には伝道師となってもらい、長期的な視点で将来を見据え、働きがいのある職場づくりを進めてもらっています。
一方、あらためて当社の普遍的な強み、当社らしさが言語化されたことで、それを強みとして磨いていけば競争優位性になるのではないかと感じています。これから新たに育んでいく強みについては、『組織としてこれから“共に先を見据える力”を獲得していこう』と共通認識が持てたことは大きな一歩です」
事業戦略や個人の働きがいとリンクさせた組織づくり
Mらの取り組みは着実に成果を上げてきましたが、より大きな変革に向けて次のステップを見据えています。
「さまざまな課題が見えてくる中で、経営や事業でめざすべきものに関しては、経営陣も含めて会社全体で取り組んでいく必要があると感じています。現状、事業戦略はあっても、それを実現するための組織戦略がまだ十分とは言えません。これまで経営課題と言えば、収益性の向上、競合との差別化やグローバル化といった事業に関する課題認識が多く、社員同士の関係性や働きがいなど、事業を下支えする組織に関する課題認識を持つ企業は当社も含めてあまりなかったと思います。
しかし、混沌として予測不可能な変化の激しい今日のビジネス環境では、これまでの組織力では事業経営が立ち行かなくなります。もっと大胆に組織を変えていくためにも、今後は組織開発を事業戦略に紐づけていく取り組みにも挑戦したいと考えています」
住友重機械工業の魅力は、組織をより良くしたいという想いを持っている人が多いこと。そう話すMには、想いを持った社員のために実現したいことがあると言います。
「活動の中で組織のありたい姿を描く際には、事業の課題やめざすことと社員一人ひとりの想いの両方をリンクさせることを大切にしています。個人の自己実現と事業成長が両立する組織を実現することが、社員の皆さんにとって働きがいにつながると思います。組織文化や風土の変革は一朝一夕には成し遂げられませんが、私たちは『対話』を通じて一歩ずつ進めていければと考えています」
※ 記載内容は2025年1月時点のものです
