CBDCを活用してキャッシュレスサービスの相互運用を可能にする構想を提示
──まずは、皆さんが担当したプロジェクトの概要と、プロジェクト発足の経緯を教えてください。
Taiki.O:近年、世界各国でCBDCの検討・実装が進められています。当社としても、新しい決済基盤によってどのような変化が起こるのか、どのようなビジネスが生まれる可能性があるのかを注視しながら、グループ会社である富士通とともに研究をしてきました。
その一環として株式会社ジェーシービー様(以下、JCB)と一緒に研究を進めることになり、2024年10月に「CBDCを活用したブリッジ(中継サービス)によるインターオペラビリティの実現」(※)というホワイトペーパーを公表。2025年1月末には、日本銀行が開催している「CBDCフォーラム」でJCB様とともにプレゼンテーションを行いました。
Hiroaki.I:インターオペラビリティとは、相互運用性のことです。現在、様々なキャッシュレスサービスがありますが、それぞれが独自運用されているため、異なるサービス間で送金などのやりとりができません。そこで、CBDCが橋渡し役として各サービスを中継することで相互運用が可能になれば、利便性は大きく向上します。
どうすればこの仕組みを実現できるのかについて、決済インフラ研究の第一人者である明治大学の小早川 周司教授の監修のもと、海外の事例などを参考にしながら構想を取りまとめました。
──プロジェクトにおけるそれぞれの役割についても教えてください。
Taiki.O:私がプロジェクトマネージャーを務め、Hiroaki.Iさん、Keita. Mさんがプロジェクトリーダーとして各領域を担当しています。
Hiroaki.I:私は小早川教授に研究指導を仰ぎながら、主にホワイトペーパーの作成を担当しました。
Keita.M:私が担当しているのは、CBDCが実装された際の応用サービスの検討です。例えば、近年は地域通貨としての電子マネーも増えていますが、使える店舗が限られているなどの課題があります。この仕組みにCBDCを組み込めれば、地域通貨をもっと浸透させることができるかもしれません。
また、BtoB決済の効率化にもつながる可能性があります。特に中小企業が多く、小ロットかつ高頻度で取引を行う業界では、取引に付随する事務業務の煩雑さなどが課題になっています。そこにCBDCを活用することで、モノのやりとりと支払の同期が可能になるうえ、事務業務の効率化が図れると考えています。
※ プレスリリース「JCBと富士通、中央銀行デジタル通貨を活用した、異なるキャッシュレスサービス間での取引実現に向け、ホワイトペーパーを発行」(2024年10月21日)
数多の選択肢から、各社のビジネスと滑らかな決済の実現を両立させる方法を模索
──インターオペラビリティが進んでいなかったのはなぜなのでしょうか?
Taiki.O:各キャッシュレス事業者には、顧客囲い込みの思惑もあり、また多くのサービス間を接続するコストも大きいため、他のサービスと相互運用可能にすることは積極的ではなかったと考えています。
一方、CBDCは日本の決済の高度化とデジタル化の普及に資することを意図して検討が進められており、業界内では解決できない課題に対して一石を投じることができるのではないかと考えています。
──Hiroaki.Iさん、Keita. Mさんがプロジェクトに参画された経緯を教えてください。
Hiroaki.I:私は10年以上にわたり金融領域のコンサルティングに従事してきました。加えて、書籍の執筆など、成果を広く社会に発信する活動にも積極的に取り組んできました。
そうした背景から今回のプロジェクトにお声がけいただきました。このようにプロジェクトの枠を超え成果物を社会に提示し先端的なテーマに挑めることが私のモチベーションの源泉です。
Keita.M:私は2021年にRidgelinezに入社して以来、決済領域のプロジェクトに参画してきた実績があり、その流れで声をかけていただきました。プロジェクトの概要を聞いた時は「壮大なことに挑戦するのだな」と感じ、ワクワクしたことを覚えています。
──壮大なテーマに取り組むにあたり、一番苦労したのはどのような部分でしたか?
Taiki.O:日本におけるCBDCは、まだ具体的な社会実装方針が定まっていない状態です。流通範囲や利用技術など様々な可能性がある中で、一定の仮定を置きつつ、どのような活用可能性があるか、決済のあり方を変えるポテンシャルがあるか、などをつぶさに見ていく必要があります。
Hiroaki.I:社内外の関係者が多岐にわたるため、情報共有や連携を慎重かつ綿密に行う必要がありました。例えば、私とKeita.Mさんは毎日のように顔を合わせ、活発に議論を交わしながら検討を進めました。
Keita.M:私の担当領域では、決済利用者の課題を捉えることが新鮮であり、同時に難しい点でもありました。これまで経験してきた金融機関に対しての課題解決から、さらに一歩踏み込んで業界や業種ごとにどのような課題があるのかを見ていく必要があったのです。
社内外の様々な関係者とディスカッションしながら解像度を高めることは大変でしたが、今後、金融機関の課題解決を進めるうえでの土台になったと感じます。
「まだ誰も答えを出していないこと」への挑戦が認められ、社内外から大きな反響
──ホワイトペーパーの公開やCBDCフォーラムでのプレゼン後、社内外からどのような反響がありましたか?
Hiroaki.I:プレスリリースでホワイトペーパーを公開した後、メディアで多数の掲載がありましたし、大手企業の役員層との意見交換の機会も生まれました。このプロジェクトがきっかけとなり、新たなつながりが広がっているのを感じます。
また、社内では、「ピオレドールアワード」のイノベーションオブザイヤー部門を受賞しました。これは、登山界で権威のある賞の1つである「ピオレドール賞」をモチーフにした社内表彰です。「革新的な変革のルートを開拓したこと」を讃える賞であり、解が定まっていない社会課題に挑戦した点を評価いただいたのだと思います。
Taiki.O:小早川教授をはじめ外部の有識者の皆さまに参画いただいたことも、当社の中で新しい取り組みでした。研究はどうしても社内に閉じこもりがちなのですが、社外の方々とともに社会的関心の高いテーマに取り組めた点も評価につながったと感じています。
──皆さんは金融領域でのコンサルティング経験が豊富ですが、このプロジェクトを通して新たに学んだことや身についたスキルを教えてください。
Keita.M:金融以外の業界をしっかり見ていくことの重要性を再認識しました。金融はあらゆる業界と接点があるため、金融機関のお客様への提案でも、その先の事業者が抱える課題まで踏み込んで考える必要があります。
また、決済の世界の奥深さも感じました。元々決済領域でのプロジェクトに参画していたので、ある程度知ったつもりでいましたが、まだまだ足りないと痛感したのです。プロジェクトの活動の一環で、CBDCフォーラムでの当社プレゼン資料の作成に携った際には、決済端末の歴史や仕組みなどマニアックな部分まで理解する必要があって大変でしたが、同時に知的好奇心が刺激されて楽しかったです。
Hiroaki.I:私は、このプロジェクトを通じて、視座を高めることができたと感じています。普段のコンサルティング業務では、目の前のクライアントの課題解決に深く注力します。しかし、今回のCBDCの検討は、短期的な視点だけでなく、社会全体への長期的な影響まで見据える必要がありました。
業界有識者や公的機関の関係者など、多様なステークホルダーと意見を交わすことができ、自らの主張や構想を社会に提示していくことで、新たに見えてくるものがあるのだと学びました。
Taiki.O:本件ではCBDCを主眼に検討を進めましたが、企業活動や消費者の購買活動に着目した検討は、CBDCの有無にかかわらず、今後の金融ビジネスにおいて重要となります。
金融機能が他業界に溶け込んでいくトレンドの中で、その基礎となる部分を検討できたことは、今後の新たなビジネス創出支援における大きな糧となると考えています。
大きな視点で物事を捉えながら、社会実装に向けたアプローチを続けたい
──プロジェクトを通じて得られた手応えと、今後の展望を教えてください。
Taiki.O:新たな決済基盤はどうあるべきかという日本全体での検討に一石を投じることができたのではないかと思います。
Hiroaki.I:そうですね。私たちの提案もきっかけの1つとなり、CBDCが日本のキャッシュレスにおいて果たすべき役割についての議論が活発になってきたと感じています。
Taiki.O:私たちのミッションは、こういったビジョンを検討するだけでなく、実際に具現化していくことです。本件も含め、今後もこのような形でビジネスを作っていくアプローチを続けていきたいと考えています。
──最後に、Ridgelinezへの転職を考えている方々へ、メッセージをお願いします。
Keita.M:当社は富士通グループの企業ということもあり、技術的な知見にアクセスしやすいのが特長です。だからこそ、新興のコンサルティングファームでありながらCBDCのような壮大なテーマにも取り組めますし、自由度の高い環境で裁量を持って検討をリードすることもできます。そこが成長につながるポイントであり、おもしろい環境です。
Hiroaki.I:Managerの立場では、自分たちならではのプロジェクトを立ち上げたり動かしたりできることがRidgelinezの魅力ですね。当事者性が重視される風土がありますから、チャレンジングな環境で成長したい方と一緒に頑張りたいと思っています。
Taiki.O:社会課題を解決するという観点で物事を捉え、その俯瞰的な視点から各事業者がサービスやビジネスを生み出すためのアプローチを設計できること。さらに、機動力を活かして、現場主導で迅速に物事を前に進められる点が当社の強みです。
個社の視点にとどまらず、大きな視点で物事を捉えたうえで社会・企業を変革していくことに挑戦してみたい方は、ぜひ一緒に仕事をしましょう。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
