見えなかった現場が可視化される──中央管制センター誕生の背景
駐車券やゲート、ロック板などの機器を設置せず、駐車場に設置したカメラで車両ナンバーを撮影し、入出庫を管理する新しいタイプの駐車場管理システムを活用した「カメラ式駐車場」の展開やAI技術の進展により、これまで見えなかった現場の状況が映像やIoTデータとして取得できるようになりました。
中央管制センターではそれらのデータを用いて、全国に展開する駐車場やカーシェアで起きたトラブルに素早く適切に対応をするとともに、一歩先を行くサービスを創ることがミッションになっています。
私は、2019年にパーク24グループのコンタクトセンター業務を担うタイムズコミュニケーション株式会社に入社し、オペレーション改善と品質向上に従事した後、DX化の推進業務を行っていたところ、パーク24グループとしてモビリティサービスのさらなる進化を支える中央管制センターの立ち上げプロジェクトが始まるということでお声掛けがあり、「中央管制センター立ち上げプロジェクト(以下立ち上げプロジェクト)」に参画しました。
立ち上げプロジェクトメンバーにはグループ各社から、現場トラブル解決や業務設計を経験してきた担当者など異なるバックグラウンドを持つ人々が集まりました。
前例のない仕事を、仕組みにする。ゼロから始めた中央管制センター設計
立ち上げプロジェクトでは、まずは構想を実現すべく、要件を定義し、業務計画に落とし込む必要がありました。
まず着手したのは、トラブルやそれによる機会損失についてデータを用いて数値化し、指標として整理することでした。駐車場というリアル空間で発生する事象について、トラブルや異常とはどういうことをいうのかの基準を定め、その基準を共有化することでパーク24グループ全体において共通の認識を持って議論ができる状態にすることを進めました。
社内では、例えばカメラ式駐車場での不正出庫など、トラブルや機会損失が発生しているという認識は以前からあったものの、その規模や影響度については十分に把握できていませんでした。
中央管制センターでは、現場で発生している事象をデータとして定量的に把握できるようになったため、その情報を各事業部門に展開しています。
「どれだけの損失が発生していたのか」という具体的な数値が示されると、事業部門では従来の業務プロセスを見直す必要性が高まります。
業務プロセスの見直しは一朝一夕ではいかないため、一定の調整が必要でしたが、認識の共有化と業務プロセス改善の提案を行うことで、いっそうグループ内にて横断的な議論ができるようになり、例えばメンテナンス部門と連携しながら対応の優先度を整理したり、再発防止に向けたマニュアル整備を進めたりと、改善を現場に落とし込みやすくなりました。
また、新しいサービス開発や駐車場レイアウトの検討段階においても、監視や運用の視点から意見を伝え、より安定したサービス設計の実現をサポートしています。
中央管制センターでは監視業務の深化も進めています。トラブルの早期発見や要因の改善支援のため、さらなるデータ活用による効率的な情報取得や新たな視点による改良に向けた試行錯誤を常に行っています。
また、より良いサービスの実現に向けて、技術部門に対して改善点を伝えるなど、各部門への自発的なコミュニケーションによる連携の強化を進めています。
そのほか、他業界の無人化・省人化の事例学習を積極的に行い、適用可能な考えを実験的に取り入れるなど、新たな可能性の創出にも取り組んでいます。
データの先にある価値──全体最適で支えるサービス品質
中央管制センターが生み出している価値の根幹にあるのは、データをただ確認するのではなく、仮説を立て、検証し、次に同じことが起きない状態をつくるという視点です。カメラやセンサーから得られるデータや映像をもとに異常を捉え、その原因を見極め、現地メンテナンス部門と連携しながら再発防止につなげていく。地道な取り組みですが、確実にサービスの質を底上げする仕事だと感じています。
こうした動きを通じて、「何が起きているのか」を見える形にすることができるようになり、可視化が進んだことで、これまで気づかれにくかった課題や改善余地が次々と明らかになり、組織として機能し始めた手応えを確かに感じています。
まだ道半ばではありますが、この積み重ねこそが中央管制センターの基盤になっており、その結果として、お客さまにとっては「何事もなく快適に使える」体験が増え、駐車場現地メンテナンス従業員にとっては状況確認のための現地出動が減っていき、より効率的に業務を行えるようになりました。
中央管制センターは特定の部署の利害に捉われない立場だからこそ、「全体最適」の視点で物事を捉えることができます。
現在では、「これは中央管制センターに相談しよう」と声を掛けられる場面も増え、グループ内のハブとして機能し始めていると感じます。グループ全体が進化していくうえで、中央管制センターは欠かせない存在だ──そう実感できるようになってきました。
事後対応から予測へ。中央管制センターが描くモビリティの未来
今後、私たちがめざすのは、トラブルが起きてから対応する運用ではなく、予兆を捉えて先回りする運用です。
データが蓄積されていけば、「この条件がそろうと、次に何が起きやすいか」を予測できるようになる。悪天候の情報や事故の多い条件、お祭りなど地域イベントなどさまざまなリアル空間での出来事に、常に先回りできるようになれば、トラブルを未然に防ぎ、お客さまにとってより快適な移動体験を提供できる。それは結果として、街の安心・安全を下支えすることにもつながっていくはずです。
中央管制センターの仕組みは、駐車場に限らず、将来のモビリティサービスにも応用できると考えています。
近い将来、新たな移動手段が登場したとしても、それらを安全かつ安定的に支える仕組み、その基盤を今から整えていくことが私たちの役割です。新しい取り組みが始まるたびに、「中央管制センターがあるから大丈夫」と頼ってもらえる存在をめざし、日々、技術や精度の向上に取り組んでいます。
中央管制センターは目立つ存在ではありません。
しかし、社会インフラを裏側から支え、当たり前の便利を守る仕事にこそ、大きな価値があると信じています。その価値を積み重ねながら、モビリティサービスプラットフォーマーの一員として、これからのモビリティ社会を支える基盤をつくり続けていきたいと考えています。
※記載内容は2026年4月時点のものです
