成長市場での経営の行く先を担う
メカトロニクス事業部の経営企画部に所属する坂口は、AIデータセンター向けキャパシタ事業において、どの地域に何をどれだけ販売するかを定める経営戦略を策定している。同事業部は産業や車載、ICTといった分野に幅広く電子機器や機械部品の製造・販売を行っている。
「AIデータセンター向け製品の市場は、類を見ないほどの成長をしています。電子回路内の電力バラつきやノイズを平滑化し、一時的なバックアップ電源としても使用されるキャパシタの需要も急激な伸長ぶり。また、半導体市場の拡大を背景に、キャパシタのみならず半導体リレー(以下、SSR)への注目も高まっています。いずれも、メカトロニクス事業部だけでなく、当社全体で非常に力を入れている商品です」
パナソニック インダストリー(以下、インダ)ならではの高性能・高品質な製品は、世界中の先端企業から熱い視線が注がれる。坂口はお客様のニーズをつかみ、設計・製造を担当する現場と伴走しながら事業をけん引する。
成長が見込まれるEVリレーの設計に挑戦──キャリアのスタートは上流部門から
坂口は大学院で機械工学を専攻し、人工筋肉を使用したパワーアシストグローブの開発を行っていた。就職活動では生活に身近な仕事に就きたいと、一つのテーマを軸に就職先を探していた。坂口が求めていたのは、挑戦し続けられる会社だった。
「就職の軸は“40年間、働き続けたい会社”でした。パナソニックグループはさまざまな事業を手掛けており、違う仕事に挑戦したいと思ったときにも、社内で完結できる環境が大きな魅力。ここなら年月を経ても挑戦できると確信できたんです。入社すると、想像以上に多角的に事業を展開しており、ここは他社にない強みだと実感しています」
入社後は、インダの伊勢拠点に在籍し、電気自動車に使用するEVリレーの設計を任された。EVのバッテリーとインバータをつなぐ、スイッチのような電子部品だ。
「大電流に対応するEVリレーは、開発中から幅広い分野に展開が見込める有力製品で、ワクワクする仕事でした。伊勢拠点の上司・先輩たちが本当に丁寧に教えてくれたこともあり、楽しんで仕事に打ち込めました」
2年間EVリレーの設計に従事した後、取引先である大手自動車メーカーへゲストエンジニアとしての出向が決まる。
「お客様が求める製品へのニーズや要求を直接聞いて、インダにつなぐことが仕事です。目の前で進む新型車の開発だけでなく、さらにその先、次世代モデルの情報をつかみ、インダの先行開発部門と検討を重ねていきました。入社2、3年めの新人がゲストエンジニアに任命されるのは異例ですし、大きな不安があった一方で『面白そう!』という期待感もありました」
もちろんのこと、経験の浅い坂口に苦労は絶えなかった。
「次世代から、EVリレーも含め複数部品を組み合わせたユニット全体をインダが担当するという話が持ち上がりました」
社内でも誰も担ったことがない新規案件、その難題を乗り越えたのは坂口の最大の武器、コミュニケーション力だった。
「わからないことは、とにかく周りの方に聞きにいきました。ただ教えてもらうだけではなく、『教えてもらった分、ここは自分が手伝います』という姿勢は大切にしていました。そうして一緒に仕事をする中で、皆さんも親身に教えてくださり、少しずつ知識を吸収していきました。
インダ以外から出向してきている他社の方々も、『お客様のために一緒に良い車をつくりたい。そのためなら何だってします』と、壁をつくらずに細かなところまで教えてくださった。見方次第では私たちはライバルとなりますが、良い商品を生み出すにはこういう思想が必要なのだと、強く印象に残っています」
最終的にこの案件は採用には至らなかったが、坂口が取りまとめた設計の一部は出向先がつくる製品にも反映された。良い車をつくる、という目標は実現できたと坂口は胸を張る。
「自動車メーカーのスピード感を内部で経験できたのは、大きな財産になりました。さらにコミュニケーションの力、総合力を感じました。『密接にみんなと関わり、一緒に汗水を流さないと良い商品などつくり上げられない』と肌身に染みて実感しました」
事業企画、経営企画へ──専門性を生かして奮闘する日々
お客様の元で多忙な日々を送った坂口は、大きく成長してインダに戻ってきた。EVリレーを製造するパナソニック スイッチングテクノロジーズの帯広拠点に赴任する。
「帯広の拠点で設計改善、新製品設計、工程改善などの業務を担当。製造現場に入ると、これまでの自分はモノづくりの表層をおぼろげに理解していただけだったと痛感しました。設計者としては理想を通したいけれど、生産上の制約も多い。生産技術や製造の皆さんと密にコミュニケーションをとりながら、改善案を出し合い、課題を解消していく。現場ならではの面白さを感じながら仕事ができました。良い製品をつくるだけでなく、製造方法や輸送方法といった商品としては目に入らない部分にもタッチしていく必要があると強く刺激を受けました」
クライアント・設計・製造とEVリレーの上流から下流までほぼすべてを経験した坂口は、やがて事業企画の仕事に携わるようになる。
「帯広から帰任後、リレービジネスユニットにて車載・産業向けリレーの戦略立案の業務を担当しました。EVリレーだけでなく、SSRにも力を入れ始めた時期でした。半導体製品の計測機器などには欠かせないSSRは、今後に大きな成長が見込まれる商品。EVリレーは使用先の車種が決まっているのでユーザーが明らかで、なおかつ私も経験と知識があるので戦略が立てやすい。一方でSSRは半導体の検査装置をはじめ、幅広い産業機器に使われるため、どの市場が伸び、どのような性能が求められるのかを見極めるのが難しく、頭を悩ませる日々でした」
がむしゃらに仕事に打ち込む中で、モノづくりに対する目線が変わってきたと話す。
「今まで関わることがなかった方々、経営陣と話をする機会が増えました。経営戦略におけるポイントを間近で聞く。そこで気づいたのは、戦略に沿った商品を生み出そうとしているかの重要性です。事業部や部門の戦略や方針が、現場のメンバーにまで腹落ちしていなければイノベーティブな商品は生まれてこない。皆が中長期的な目線を持って、次世代の商品を生み出していくには、柱となる事業戦略が不可欠です」
さらに2026年4月から、メカトロニクス事業部全体の経営企画を策定する部署へ異動した。事業部を俯瞰し、成長市場向け商品の戦略立案、拠点・顧客アプローチ、組織変革の企画を担当している。
見えないところから、見違える世界に変えていく
坂口はこれまでさまざまな職場で仕事に携わり、そのたびに大きく成長し専門性を広げてきた。知識の源泉はコミュニケーションだと話す。
「自分がベストな解を持っていると考えていても、だいたいそれって最適解ではない。話し合う中で、そのベストを上回る解が出てくる。だから常に歩み寄る姿勢を大切にしています。もう一つ心がけているのは、相手の言うことを否定せずに受け止めて、知見の中から付け加えて提案すること。自分からアイデアを出していけば、皆が想いを張り巡らせて、発展していく。広がりすぎて収拾がつかなくなることもありますけど(笑)
これまでやってこられたのは、周囲の皆さんがサポートしてくれたから。人と人、部門と部門、会社と会社がつながればシナジーが生まれる。インダの最大の強みは、事業範囲の広さ。事業部同士が今よりも緊密に連結できれば、日本、いや世界で一番すごい会社になれると確信しています。経営企画としては自部署だけでなく、広い範囲での協業を模索していきたい」
“40年間、働き続けたい会社”をキーワードにパナソニックグループを選んだ坂口。入社から10年がたち、次の10年、20年をどう見据えているのだろうか。
「お客様に『この商品や技術がすごい』と感じてもらえたときに、ふたを開けたらその中にインダの製品が入っている、そんな世界を今後もつくっていきたい。快適な日常を送るためのお役立ちには、目に見える商品だけつくっていてもダメ。自然や環境といった、目に見えないものにも目を向けなければなりません。困ったときにお客様が真っ先に思い浮かぶ会社でありたい。そのためには他社がまねできない商品を生み出し続けることで世界中の皆さんを、そして私たち自身も笑顔になれるモノづくりを担っていけたら幸せです」
見えないところから、見違える世界に変えていく──経験豊富な坂口は、その幅広い知見を武器にさらに広い世界を捉えている。自分一人ではできることが限られているからこそ、人とコミュニケーションを取り続けるという坂口が、インダの人をつなぎ、新たなシナジーを生み出していく。
※ 記載内容は2026年9月時点のものです
