持続可能なモビリティの未来へ。BEV普及を加速させる「40B」大量生産への挑戦
電動車市場の拡大に向け、その心臓部である電池の進化と安定供給が、未来のクルマ社会を左右すると言っても過言ではないと考えています。私たちの40Bプロジェクトは、その未来を切り拓くための、きわめて重要な挑戦です。
BEV用電池では、車両によって最適なサイズ、容量が異なります。私たちはカーメーカーとの対話を重ね、競争力を高めるために、新たな大型の電池の開発を行いました。電池の大型化(すなわち高容量化)には高度な設計・生産技術と安全性の確保が必要になりますが、これらをクリアしたものが現行のPPESのBEV用電池の一つとなっています。
そして、その考え方を突き詰め、走行距離を伸ばし、充電時間を短縮し、さらに多くの方に届くようコストも追求する。そうして生まれたのが、最新世代である40Bなのです。
40Bは、トヨタ自動車の今後のBEV需要に対応するため、第一歩目として、今年姫路工場の立ち上げに成功しましたが、今後はそれに加えて、何倍もの生産規模にあたるラインを、次々と立ち上げていく計画をしています。
このような大規模な展開は、私たち一社だけで成し遂げられるものではありません。トヨタグループ各社が密に連携し、総力を挙げて取り組むプロジェクトであるのはもちろん、設備メーカーさまや部材の仕入先さまといったパートナー企業とも強固な協力体制を築き、“チーム”としてこの大きな挑戦に取り組んでいます。
姫路の最初の生産ラインは、このグローバルな挑戦の品質やコストの基準を創り出す、重要な拠点となります。BEVの普及を通じて、クリーンで豊かな社会を未来へつないでいく。この壮大なプロジェクトを成功に導くことこそ、私たちに与えられた大きな使命だと考えています。
鍵を握るのは、ベースとなる姫路工場。生産拡大へ向けた突破口を探る
前述のとおり、前例のない規模でのグローバルな生産拡大の土台となるのが、姫路工場で立ち上げている生産ラインです。ここでの成功が、今後の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
試作の段階ではうまくいくことも、量産となるとさまざまなトラブルが起こります。この姫路のラインで確実にトラブルを解決しておかないと、後に続く国内外の拠点でも同じように苦しむことになってしまうため、大きなプレッシャーを感じています。
当社でこれまで積み重ねてきた電池の開発・生産経験を活かし、ミクロン単位の電極を破断させることなく作ることや、電解液が浸み込む時間の大幅な短縮など、多くの改善を重ねてきましたが、高い品質を維持したまま、計画通りの「数」を安定してつくり続けることの難しさに、日々直面しています。
この困難な状況を乗り切るため、PPESのメンバーだけでなく、これから国内外で生産を担う各拠点の仲間たちが集結しています。「まず、この姫路の量産ラインを絶対に成功させるんだ」という1つの目標に向かって、一体となって課題解決に取り組んでいます。
要求仕様を超える提案力と技術力が、世界のカーメーカーからの信頼に
私たちの強みの一つに、完成車メーカーとの「距離の近さ」があります。私たちのルーツは、電池のプロフェッショナルであるパナソニックと三洋電機の技術です。そこに、クルマでの使われ方を知り尽くしたトヨタの知見が加わっているのが、PPESの最大の強みです。
私たちは、単なる電池メーカーとして、一方的に「要求仕様」を受け入れるだけではありません。クルマを知り尽くした電池屋として「こうした方が、クルマ全体の価値がもっと上がるのではないか」「その性能を実現するためには、電池側でこんな工夫ができますよ」といった技術的な提案を、ごく当たり前のように双方向で行っています。
会社は違うけれども、電動車の普及に向けた同じ思いで重要な仕事を担う。そんな人間関係があるからこそ、「この設計、ものすごくつくりにくいんだけど」「その寸法、本当に必要ですか?」といった、普通の電池メーカーであれば入り込めないような深い部分まで踏み込んだ会話を日常的に行います。
電池の大きさや高さは、車内空間やデザインに直結しますし、性能は航続距離や加速、耐久性といったクルマの基本性能そのものを左右します。電池と車両、双方の良さを最大限に引き出すために、日々密なコミュニケーションを取りながら「いいクルマづくり」を追求できる。これこそが一体開発の醍醐味です。
もちろん、近い関係だからこそ常に高いレベルの要求もいただきますが、それにより私たちの技術はより磨かれていきますし、国内外のさまざまな自動車メーカーさまとお取引があり、そこから多角的なニーズを知ることもできます。この両輪があるからこそ、私たちの競争力は高まっていくのだと考えています。
スピードが生む開発力──感謝とリスペクトでつながる現場から
これほど大規模で困難なプロジェクトをスピーディに進められる秘訣は、私たちの組織体制とカルチャーにあります。
このプロジェクトには、電池の設計、生産技術、製造、品質管理、調達といった、製品化に必要なすべての機能の専門家が集結しています。初期段階からすべての関係者が一体となって本音をぶつけ合い、課題を前倒しで解決していく。このプロジェクト体制そのものが、私たちの強みです。
組織のカルチャーも、私たちの特徴と言えるでしょう。PPESは、トヨタとパナソニックという大きな親会社を持ちながら、気質としてはスタートアップ的だと思います。社内ではトップとの距離が近く、何か困ったことがあればすぐに上層部に相談し、スピーディに意思決定がなされる。私も日々そのやりやすさを実感しています。
また、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間が多いのも特徴です。今や社員の半数以上が、パナソニックやトヨタ以外の多様な業界から集まってきたメンバーです。それぞれの知見を尊重し、ワイワイガヤガヤと、誰でも意見が言いやすい雰囲気があります。
私自身の経歴も、この会社の多様性を象徴しているかもしれません。大学では薬の分析手法の開発をやっていて、今の仕事とはまったく違いました。しかし、失敗から学び、プランを立てて実行する、いわゆるPDCAの回し方は大学の研究で学びましたし、それが今の仕事の基礎になっています。専門性がなくても、多様な分野で活躍できるのがPPESのおもしろさだと思います。
紆余曲折を経てこの世界に入りましたが、電池は本当におもしろい。エネルギーを蓄えるという機能は、クルマだけでなく、不安定な再生可能エネルギーを社会で活用するためにも不可欠です。エネルギーは人間にとって必要不可欠なものであり、その根幹を支え、未来を創るソリューションとして、電池にはまだまだ無限の可能性があります。
今、私たちは姫路で立ち上げている先頭ラインを成功させ、その知見を世界中の仲間たちにわかりやすく展開していく、という重要なフェーズにいます。このプロジェクトで得られた成功も失敗も、すべてが会社の財産となり、次の挑戦へとつながっていきます。この記事を読んで、私たちの挑戦に少しでも心が動いたなら、ぜひ話を聞きに来てください。共に未来を創っていける仲間と出会えることを、楽しみにしています。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです

