新たな時代の調達戦略。グローバル市場のリアルと挑戦
電池の製造においては、資源や部材、設備、物流など、外部のパートナーさまから供給いただくものが非常に多く、この状況は他の業種や製造業と比較しても大きくは変わりません。しかし、私たちの事業においてこれらの調達活動は、会社の競争力や持続的な成長を支える上で、非常に大きな役割を担っています。
その最大の理由は、製品原価の大部分が外部から調達する材料や部品で構成されるという、私たちの事業構造にあり、私たちのめざす安全・安心で高品質な競争力のある電池を実現するには、それを支える強靭なサプライチェーンが不可欠です。さらに、電池の材料は製品の性能や安全性に大きな影響を与える重要な要素であり、化学材料の繊細な品位はもちろん、その加工においてもミクロンレベルの精度が求められます。
こうした背景を踏まえると、調達活動の良し悪しが事業の成否に直結すると言っても過言ではありません。
その上、私たちが向き合っているのが、めまぐるしく変化する世界の事業環境です。世界的に電動化への需要は高まっていますが、その進み方は一様ではありません。各国・地域のお客さまニーズ、政策やエネルギー事情によってハイブリッドやバッテリーEV(BEV)といった電動車の種類も異なり、そのスピード感も違ってきます。時には国の政策転換によって当初の計画からの変更を迫られることもあります。
たとえば最近では、中国による黒鉛(電池材料の一つ)の輸出管理措置や米国の関税強化といった動きがあり、このような地政学リスクが常に存在します。私たちは、このように複雑な市場環境や地政学リスクといったさまざまな変化へ迅速に対応しながら、サステナブルな事業を進めていく必要があります。
こうした先の読めない不確実な時代だからこそ、私たちは二つのことを徹底しています。一つは、長期的な視点で、最適なサプライチェーンを構築し続けること。資源の乏しい日本では、採掘からリサイクルまでを見据えた循環型モデルを、多様なパートナーと連携して推進することが不可欠です。
そしてもう一つは、常に改善を続ける姿勢です。現状に甘んじることなく、長期的な視点で多様な戦略を練り、未来を見据えながら日々の業務に取り組んでいます。
一緒に未来をつくる関係へ。変化に強い調達体制をつくるパートナーシップのあり方
私たちが調達業務において最も大切にしているのが、パートナーさまとの関係性です。良質な部材を安定的に確保するためには、私たちがパートナーさまを選ぶだけでなく、パートナーさまから「選ばれる」企業でなければなりません。
私たちがめざす理想の関係は、どちらか一方が利益を得るのではなく、互いの事業継続性を尊重し合える「イコールパートナー」です。コミュニケーションを重ねる中で、「PPESと一緒に仕事がしたい」「共に未来を創りたい」と思っていただけるような、互いに応援し合える関係を築いていきたいと考えています。
たとえば、部材の価格は調達活動において重要な要素ですが、私たちはそれ以上に、長期的な事業継続性を重視しています。どんなに安くても、安全・品質・供給に問題があったり、パートナーさまの事業継続に問題があったりすれば見直しを検討する必要がありますし、競争力強化のためにパートナーさまと一緒に現場・仕事のやり方を改善し、原価低減を追求する姿勢も大事にしています。
また、急速な事業環境の変化に対応するため、パートナーさまに変革をお願いすることもあります。その際も、一方的に要求するのではなく、対話を通じて課題を共有し、共に解決策を探る姿勢を大切にしています。
こうした関係性の根底にあるのは、日々の誠実なコミュニケーションです。信頼を築くのには時間がかかりますが、失うのは一瞬。だからこそ私自身、常に「約束は必ず守る。無責任にできない約束はしない」という姿勢を貫くことを心がけています。
信頼関係は「会社」ではなく「人」から──覚悟と共感でつながっていく
私たちPPESは、激しく変化する電池業界の「チャレンジャー」として、常に挑戦を続けています。しかし、その挑戦は決して私たちだけで成し遂げられるものではありません。PPESの成長は、数多くのパートナー企業さまで構成される、強靭なサプライチェーンの上に成り立っています。サステナビリティやコスト競争力、品質の確保といった課題に、サプライチェーン全体で向き合い、共に乗り越えていく。それが私たちの基本姿勢です。
パートナーシップの本質は「会社同士」だけでなく、「人と人」との信頼関係から生まれます。私たちがめざすのは、対等な立場でお互いを尊重し、長期的な視点を持ちながら伴走できる関係です。
しかし実際には、事業環境や市場の変化、企業文化の違いなどが壁になることも多く、時には思うように意思疎通ができず、厳しい決断や状況に直面することもあります。そのような時こそ、誠実に向き合い、対話を重ね、共感しながら課題を乗り越えていく覚悟が欠かせません。信頼は一朝一夕で築けるものではありませんが、だからこそパートナーと共に歩む価値があるのだと思います。
私たちの使命は、サステナブルで競争力のあるサプライチェーンを、パートナーさまとの揺るぎない信頼関係のもとで築き上げることです。同時に、私たちは「人を中心とした経営」を掲げています。調達という仕事を通じて、社内外の仲間と互いに学び、助け合い、感謝し合える職場を育んでいくことも、同じくらい重要なミッションです。
困難は尽きませんが、立ち止まることなく、価値観を共有できる仲間と共に一歩ずつ前へ進んでいきたい。私たちは、そんな未来への旅を共に歩んでくれる仲間を、心から探しています。
明るく、楽しく、元気よく──指示待ちではなく“腹落ち”で動く能動的な組織へ
組織運営において、私が指針にしている「明るく 楽しく 元気よく」という言葉があります。若い頃に上司から贈られた言葉ですが、当時は正直、仕事の厳しさとのギャップを感じていました。しかし今、この言葉が持つ本当の深さと重要性を日々実感しています。
私が考える「明るく」とは、未来志向で前向きであること。「楽しく」とは、一人で抱え込まず、仲間と知恵を出し合うこと。そして「元気よく」とは、安全と健康を第一に、笑顔で仕事に打ち込むこと。難しい仕事だからこそ、皆で悩み、助け合いながら進んでいける。そんな組織を創り上げることが私の目標です。
組織が大きく成長する中で、この指針はますます重要になっています。日々多くの仲間が増える中、新しく加わったメンバーが一人で孤立し、不安を抱え込まないようにすること。それは、「楽しく(=一人で抱え込まず)」働くための土台づくりに他なりません。もちろん電池の知識や調達スキルも大切ですが、それ以上に重要なのが、安心してなんでも話せるコミュニケーションの土壌です。そのためにも私たちは、周囲のメンバー同士が積極的に声をかけ合い、相談しやすい雰囲気づくりを何よりも大切にしています。
そして最終的にめざすのは、メンバー一人ひとりが「言われたからやる」のではなく、自ら考え、深く納得した上で行動できる組織です。そのためには、時間的な制約があっても、一つひとつの物事に対して全員が「腹落ち」するまで議論を尽くす過程が不可欠だと考えています。この風土づくりは一朝一夕にはいきませんが、仲間と知恵を出し合いながら、着実に育てていきたいと思っています。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです

