内視鏡の品質を部品の製造工程から支える
──現在の業務内容について教えてください。
第1技術部で内視鏡のチャンネルという部分の製造にかかわる技術を担当するチームで、内視鏡の新製品の立ち上げとプロセスバリデーションを担当しています。新製品の立ち上げとは、新製品を安定して製造できる工程づくりと、その工程が求められる品質を満たすことを確認・証明する業務です。プロセスバリデーションとは、FDA(米国食品医薬品局)などのガイドラインにもとづき、医療機器の製造工程が要求される品質を安定して満たしていることを客観的に証明し、その結果を文書に残す業務です。
具体的には、設備が正しく設置され、仕様通りに動作するかを検証する「IQ(Installation Qualification)」、試験法の妥当性を検証する「TMV(Test Method Validation)」、工程管理の上下限を検証する「OQ(Operational Qualification)」、実際の生産条件で求められた品質通りに安定して製造できるか検証する「PQ(Performance Qualification)」などといった厳しい検証工程があります。
製造工程を理解した上で、日本語と英語の文書にまとめる必要があるため、非常に根気と精度が求められる作業ですが、当社の製品が世界中で安心・安全に使われることを客観的に証明するための、大切な役割だと考えています。
また、長野オリンパスは2026年7月に新棟が完成したばかり。新たな設備の立ち上げやプロセスバリデーションの再実施に向けて、走り回っているところです。
──長野オリンパスで働くやりがいや意義を教えてください。
長野オリンパスでは内視鏡の部品を製造しているので、完成した製品の姿を目にする機会は多くありません。しかし、本社研修で内視鏡の分解作業を見学した際、私が仕事で携わった部品が組み込まれており「大事な部品です」と説明を受けました。そこで、医療の役に立っているのだと心から実感できました。
さらに、家族の存在も大きな原動力になっています。私には障がいのある妹がおり、内視鏡検査を受けることがあるため、以前から内視鏡に対して身近な感覚がありました。多くの人々の助けとなり、ご本人やご家族の安心を支える製品に携われることが、何よりのやりがいであり、日々の業務に向き合うモチベーションになっています。
ものづくりを通して医療に貢献したい。その想いを支えた先輩の指導
──長野オリンパスへ入社した経緯と、入社後、どのような仕事を経験してきましたか?
大学では機械工学を専攻し、機械の動きや3D-CADを学んでいました。そうした知識を活かし、医療や健康に貢献したいと考えたため、長野オリンパスを選びました。もともと地元は静岡だったのですが、大学から長野に進学していたこともあり、そのまま県内で働くことを選んだ形です。
入社後はグループ全社の合同研修に参加し、内視鏡の分解を見学したり、医師の話を聞いたりする機会を通して、私たちがこれから支えていく医療現場とはどういうものなのかを学びました。その後、長野オリンパスに配属されました。
最初の業務は、資料の整理から始まりました。先輩の指示をもとに作業を行いながら、各種資料の格納場所や社内情報の保管ルールを覚えることで業務の全体像を理解し、そこから徐々に実務に移っていきました。
──実務の中で、最初に任された業務を教えてください。
製造や検査の際に製品を固定したり、寸法を確認したりする、製造現場で使用する「治工具」の設計を担当しました。チューブを輪状の器具に通し、外径が基準内かを確認する「リングゲージ」という治工具に対して「サイズが小さくて持ちにくい」という現場からの相談を受け、より使いやすい形に作り直す仕事です。
実際に取り組んでみると、内視鏡に使われる繊細な医療用チューブを検査する治工具なので非常に高い精度が求められました。公差(許容される寸法の誤差)をどれくらいにすべきかなど、わからないことばかりでした。
ただ、隣に先輩がついてくれていて、作った図面を見せて質問すると、「良いと思う」と否定せずに受け入れてくれた上で「こうすると、もっと良くなるかもしれないよ」とアドバイスをくれるんです。こうした温かく丁寧な指導のおかげで、1年目から臆することなくチャレンジできました。
──業務の中で、失敗を経験したことはありますか?
チューブを成形する際などにチューブに挿入しておく「芯金」という治工具を10本製作した際、すべてサイズが合わないという失敗をしたことがあります。1本1万円を超えるものなので、ショックと申し訳なさですごく落ち込みました。
でもその時、先輩が「こういうことはよくあるよ。もう1回作ってよ」と言ってくれたんです。責めることなく次を促されたことで、「また任せてもらえるんだ」「この経験を活かして、次は絶対に失敗しないぞ」と気持ちを前向きに立て直すことができました。
品質を学んだからこそ生まれた、自動化への提案
──プロセスバリデーション業務に初めて挑戦した時のことを教えてください。
治工具の改善の次に担当したのが、プロセスバリデーションでした。「バリデーションプラン」という検証の目的や進め方をまとめた文書の作成に携わることになったのですが、作成のためには全体の工程の流れを理解している必要がありました。しかし当時の私はまだ製造工程の流れがよくわかっておらず、机に座っているだけでは書類を作成できませんでした。
そこで、実際に製造現場へ足を運び、「この工程ではどんな作業をしていて、どんな治工具を使っていますか?」と話を聞きに行ったところ、現場の皆さんは新人の私に快く教えてくれました。ものづくりとは異なる、文書作成業務に苦労はありましたが、現場へ足繁く通ったおかげでたくさんの人と関係性を深めることができました。
──プロセスバリデーションの経験は、その後にどう活きましたか?
新製品の立ち上げに携わる中で、プロセスバリデーションで培った学びが活かされました。 立ち上げ業務の中で、もともと人間の手作業を想定していた熱を扱う危険な工程を、機械で自動化できないかと自ら提案する機会がありました。機械化を考えた背景として、手作業で行うとプロセスバリデーションが難しく、求められる品質を安定して満たせない可能性がありました。そこで先輩と一緒に考え、自動化設備の構想を示すイメージ図を描いて「こういった設備を作りたいです」と開発側に提案したんです。
すると開発担当者も前のめりに話を聞いてくれ、「その方向でやってみようか」と提案が採用されました。今では実際に自動化設備が完成して工程で稼働しています。さらに、私の後任の担当者が改善を重ねて提案してくれ、設備にチューブをセットする作業もロボットが担い、工程全体が自動化された形に進化しています。
会社としても自動化や検査表のデジタル化などの先進化に力を入れる中、手作業から自動化設備へ切り替えることで検証プロセスの標準化・効率化が図れたことは、非常に良い試みだったと感じています。
このような挑戦をすることができたのも、早いうちからプロセスバリデーション業務を経験していたからこそです。過去に経験したいろいろなことが現在の自分の糧になっているので、これまでやってきた業務やその順番にも、意味があったんだなと実感しています。成長を見据えて育ててくれた先輩方には感謝しかありません。
長野オリンパスの誇りを胸に、周りを率いるリーダーへ
──仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
円滑なコミュニケーションです。製造工程を考える技術部門と実際に製造する現場は一心同体なので、製造現場から安心して頼ってもらえる関係性が欠かせません。
また、部署内でも「疑問に思ったことをすぐに聞ける、聞いてもらえる」という環境をめざして、メンバーが気軽に質問できる雰囲気づくりを全員で心がけています。
最近は他拠点との会議も増えているため、対面の機会も大切にしています。以前に会津オリンパスのメンバーから『一度会って話してみませんか』と誘っていただき、お互いの人となりを知ることで一気に距離が縮まり、その後のオンライン会議でも活発に意見を交わせるようになったことがありました。だからこそ、機会があればあえて「Face to Face(対面)」でコミュニケーションを取るようにしています。
──これからの目標を聞かせてください。
1年目に私を指導してくれた先輩が、現在チームを引っ張るリーダーとして活躍しています。その姿をロールモデルに、ゆくゆくは私自身も、周りを巻き込んでいけるリーダーになりたいと考えています。
その第一歩として現在、接着剤を作る工程をオリンパスグループ全体で標準化・デジタル化するプロジェクトに、長野オリンパスの代表として参加しています。会津や白河、青森、日の出などオリンパスグループの各拠点と連携して進めるプロジェクトで、長野オリンパスの代表として意見を求められる、責任の大きさを感じる役割です。
長野オリンパスは内視鏡本体を組み立てているわけではありません。しかし私たちには、絶対に不良を後工程に流さない、高い品質が求められる部品を作っているんだという内視鏡を部品から支える製造拠点としての強い誇りがあります。その想いを全社にしっかり伝える立場として、プロジェクトでも存在感を発揮し、この役割を最後までやり遂げたいと考えています。
※ 記載内容は2026年8月時点のものです

