必然の決断。技術者の価値を最大化する場の創出
金融分野における技術支援組織に長く在籍してきた藤沢。現在はCTO兼テクノロジー&ソリューション事業部事業部長として、組織の技術戦略をリードしています。その藤沢が注力しているのが、組織の枠を超えて技術者が集う「技術コミュニティ」および「情報交換の場」の運営です。この取り組みの必要性を藤沢は次のように語ります。
藤沢:当社には、銀行、証券、保険、決済といった多様な領域で、非常に高い専門性を持った技術者がたくさんいます。しかし、これまでは各プロジェクトの中に知見が閉じ込められがちでした。
2022年の会社統合をきっかけに、全社的なシナジーをさらに高めたいと考えました。業務ドメインとは別の軸で、技術者同士がつながり、互いに切磋琢磨できる場を提供したい──そんな想いからこの取り組みが始まりました。
この施策は、単なる勉強会にとどまりません。その背景には、市場の変化と、藤沢自身が歩んできたキャリアから得た確信がありました。かつて、多くの高難度プロジェクトにPM(プロジェクトマネージャー)として参画し、いわゆる「火消し役」を務めてきた藤沢。過酷な現場で痛感したのは、技術者の重要性でした。
藤沢:難度の高いプロジェクトの成否を分けるのは、結局のところ技術者の力です。PMという立場だったからこそ、技術者をしっかり育てることが、プロジェクトの成功に直結し、ひいてはお客さまに安心・安全なシステムを提供することにつながる──その重要性を強く実感してきました。
技術者の真価は、単にコードを書くことだけではありません。自らの技術と経験をもとに適切な判断を示し、プロジェクト全体を正しく導くこと。その結果として、社会基盤そのものを支えることにあります。だからこそ、技術者が孤立せず、学び合える環境を作ることが、経営課題としても急務だったのです。
また、事務局としてこの施策を支える板坂も、入社以来、証券や銀行向けのシステム開発、そして全社の採用や育成担当としての経験を経て、技術者同士がつながることの重要性を感じていました。
板坂:私自身も開発現場や採用業務を経験する中で、社員が持つポテンシャルの高さを感じていました。しかし、組織が縦割りだと、せっかくの知見が共有されません。藤沢の構想を聞いた時、これは一事業部の施策ではなく、全社のカルチャーを変える大きな挑戦になると感じました。
学び・つながり・挑戦。4つの注力領域と自由な交流
現在、この施策は大きく「技術コミュニティ」と「情報交換の場」という2つの枠組みで展開されています。あえて2つに分けた理由について、藤沢は会社としての戦略と、社員の自発性の両立を挙げます。
藤沢:「技術コミュニティ」は、会社として戦略的に伸ばしていきたい技術領域を扱っています。具体的には、クラウド・アジャイル開発・生成AI・ITSM(ITサービスマネジメント)の4つを定めています。クラウド、アジャイル開発、生成AIは、ビジネス成長率が高く、当社の技術力をさらに高めていきたい領域です。
その中でも、ITSMは当社の大きな強みの一つ。24時間365日の安定稼働が求められる金融システムを、長年にわたり支えるなかで培ってきた、他社には真似できない技術力です。この当社の強みを、さらに強固に高度化させたいと考えています。そのため、ノウハウのアセット化や最新のAI技術を用いた自動化などに取り組んでいます。
一方、「情報交換の場」は、情報交流を目的として社員が自発的に集まったグループです。ソフトウェアプロセスやアーキテクト、セキュリティ、オープン系基盤など、現場の技術者が関心の高いテーマを題材とし、自主的に運営されています。金融システムで古くから使われているCOBOLや、特定の製品知識「Salesforce」「NonStop」について、仲間と研鑽を深める場などもあります。
板坂:たとえば、ITSMのグループでは、北海道のデータセンターへ視察に行き、現地で意見交換を行うなど、会議室やオンラインの枠を越えた活動も活発に行われています。会社としてもこれらの活動を積極的に後押ししてきました。活動に必要な研修費や交流のための費用などの予算をしっかり確保し、活動しやすい環境を整えました。
立ち上げ当初は、社員にとっても初めての試みだったので、まずは集まることから始めました。普段は拠点が離れているメンバーも多いので、顔合わせの機会を作ったり、懇親会を企画したりして、心理的なハードルを下げることに注力しました。現在では、技術コミュニティが4つ、情報交換の場が7つ活動しています。
藤沢:業務の合間を縫って参加してくれる社員が多い中で、今後はよりメリハリをつけていきたいと考えています。会社としてアウトプットを強く求める領域に関しては、業務時間としてしっかり投資する。
一方で、情報交換の場のような自発的な活動は、会社が後押ししつつも、あくまで技術に対する内発的好奇心を大切にする。この戦略と自発の両輪が、組織に新しい風を吹き込んでいます。
事務局としての奮闘。隠れた逸材をつなぐ架け橋に
事務局として運営の実務を担う板坂。立ち上げ当初は、目的の周知やメンバーの参加促進に試行錯誤したと言います。
板坂:リーダー役の社員も本業が忙しいので、どうしても活動が停滞してしまうことがありました。そんな時は、私自身も可能な限りコミュニティの活動に参加し、現場でどんな会話がされているのか、耳を傾けるようにしました。私一人では解決できないことも、周囲を巻き込み、現場のニーズを直接拾うことで、少しずつ軌道に乗せていきました。
そんな中、事務局として大きな達成感を得られたエピソードがあります。生成AIのコミュニティと、古くからのプログラム言語であるCOBOLをテーマにした情報交換の場、このまったく異なる2つのグループがつながった瞬間です。
板坂:ある事業部から、金融のメインシステムを長年支えている技術であるCOBOLの領域で生成AIを試したいという相談がありました。生成AIコミュニティには新しい技術に意欲的な人が多いですが、COBOLに詳しい人は少ない。そこで、COBOLの場に参加しているメンバーに声をかけたところ、2名の方が興味を持って手を挙げてくれました。
結果として、異なる事業部のメンバーがタッグを組み、現場の課題解決に向けて動き出しました。このように、組織図の上では交わらなかったはずの人と人をつなげられた時、心からやりがいを感じます。
この事例は、社内にいるプロフェッショナルな人材の再発見にもつながりました。
藤沢:技術者の中には、普段は静かだけれど、実は内面に熱い想いや深い知識を持っているメンバーがたくさんいます。そういう社員とあらためて巡り合う感覚は、まさに「宝探し」ですね。社員の意外な一面に驚かされるような発見があるのが、この活動の醍醐味です。
年度末の報告会後に行われた懇親会では、多くのメンバーが担当の枠を超えて自然と集まり、技術やアイデアについて熱く語り合っていました。その光景からは、一人ひとりが主体的に情報交換の中心となり、周囲を巻き込みながら新しい価値を生み出していく姿勢が強く伝わってきます。私は、こうしたプロフェッショナル同士の刺激的なつながりこそが、当社の成長を支える原動力だと考えています。
板坂:そうなんです。会社が場さえ用意すれば、喜んで参加し、交流を楽しむ方がこれほど多いんだという発見がありました。社員の約1割にあたる250名以上が参加する規模に成長しましたが、数字以上に、そこで生まれる熱量に日々励まされています。
「働きやすい職場」を超えて「働きたい職場」へ。技術で波の先頭に乗る
施策は3年目を迎え、定着のフェーズに入りました。藤沢は今後の展開について、よりビジネスに直結した動きを加速させたいと語ります。
藤沢:今後は、有望な技術領域に集中的に予算を投下し、リアルなビジネス展開につなげていきます。同時に、まだ参加できていない社員がもっと気軽に行き来できるような、風通しの良さも追求していきたい。技術革新のスピードが速い現代において、トップダウンだけでなく、現場の感性から生まれるボトムアップのイノベーションこそが重要だからです。
板坂:私は事務局として、そうした社員のやりたいという小さな声を拾い上げ、実現をサポートし続けたいです。予算や仕組みをうまく活用して、社員が自ら成長できる環境を整えること。それが、結果として会社の強みになると信じています。
これからの時代、会社と個人の関係性はどのようにあるべきか。最後に二人はこう語りました。
板坂:参加しているメンバーがいかに楽しく活動できるか、悩みやニーズに寄り添いながらサポートを続けていきたいです。また、私自身も気づいたことは積極的に提案し、実行に移していくことで、会社と社員の良い関係づくりに貢献できればと思っています。
藤沢:私は、働きやすい職場を超えて、働きたい職場を作りたいと考えています。この会社にいるからこそ自分は成長できる、そう実感できる場所。新しい技術の波に乗り、社員一人ひとりが挑戦を楽しめる、そんな会社であり続けたいですね。
技術という共通言語を通じて、組織の壁を溶かし、新たな可能性を紡ぎ出し始めたNTTデータフィナンシャルテクノロジー。「新しいITの力で、新しいお金の通り道をつくる」というミッションの実現に向け、社員たちの挑戦はこれからも続きます。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

