自由に試行錯誤できる環境が技術者を輝かせる。プロジェクトで実感した学びの原体験
数ある領域の中でも現在、多くの事業部で求められているのがクラウド技術です。関心を持つ社員が部署を越えて集まりナレッジを共有し合う「クラウドコミュニティ」。船田はこのコミュニティ活動の立ち上げから深く関わってきました。
「入社してから今年で25年目になります。これまで一貫してクレジットカード決済システムの開発・運用に携わり、基盤からアプリ、保守、顧客対応まであらゆるフェーズを経験してきました。
昨年度までの2年間は人事部で全社のエンジニア育成に携わっていましたが、現在は再び現場に戻り、決済システムの高度化を推進するチームのリーダーを務めています」
現場と育成、双方の視点を持つ船田は、自身のメイン業務のかたわら、コミュニティ活動を全社的な知の共有の場として位置づけています。
「私が務めているクラウドコミュニティの推進役としての活動は、現在3カ年計画の最終年を迎えています。コミュニティ内には2つのチームがあり、一つは各部署のクラウド活用ナレッジを集約する『アセット化チーム』。
もう一つは私がリーダーを務める、スキルアップの方法論を可視化する『人材育成チーム』です。20人弱の有志が集まり、月に1〜2回ほど対話や検討を重ねています」
管理職として多忙な日々を送る船田が、あえて業務外のコミュニティ活動を重んじるのには理由があります。そのきっかけは数年前、自らがPM(プロジェクトマネージャー)として率いた、決済システムのクラウド移行案件での大きな気づきでした。
「そのプロジェクトは当社でも過去に類を見ない挑戦的なもので、手探りの状態で課題も山積していました。そこで私は、開発の進め方を柔軟な形式へと切り替え、さらにメンバーが自由に試行錯誤できるよう『サンドボックス』と呼ばれる検証環境を用意しました。
メンバーが自身のアイデアで自由にシステムを改修・改善できる状態にしたところ、チームの雰囲気は劇的に変わりました。1年間で100件を超えるシステム改修を実現し、その約半分がメンバー自らの提案による改善だったのです。自分たちの手でシステムを良くしていく過程で、エンジニアたちが生き生きと目を輝かせ、驚くほどのスピードで成長していく姿を目の当たりにしました。
自律的に動ける環境こそが、エンジニアが飛躍するためにいかに重要であるかを深く実感し、その可能性を全社に広げるためにコミュニティ参加を決めました」
多忙な中でも続く仕組みと、市場視点で広がる新しい世界
コミュニティでの活動は、ミッションクリティカルな案件を抱えるメンバーにとって、活動時間の確保は最大の課題となります。そこで船田はマネジメントの経験を活かし、参加のハードルを下げるための継続できる仕組みを構築しました。
「部署や年次、拠点の垣根を越えた有志の集まりですので、参加しやすさを最優先しています。活動の時間はあらかじめ年間を通して決まった枠で確保し、予定を立てやすくするほか、現場のトラブルや夜勤明けなどでどうしても参加できないメンバーに向けてオンラインを活用し、ミーティングの様子は動画を残したりAIで自動的に記録を作成したりして、後からでも内容を把握できる環境を整えています。計画的にコミュニケーションを設計することで、現場が忙しくても置いていかれない工夫をしています」
こうした運営の配慮に加え、船田自身がこの活動に心血を注ぐのは、コミュニティを通じて触れる新しい世界が大きな刺激になっているからだと言います。
「クラウドコミュニティと言いつつ、私はクラウドの技術そのもの以上に、各事業部の課題を共有し、解決策を共に考えるプロセスを大切にしています。現場にいると、どうしても目の前のタスクをどうこなすかという視点になりがちですが、コミュニティでの学びはもっと広い世界につながっています。
たとえば、今年度取り組んでいる『めざすべきクラウド人材像』の策定では、内閣府の動向や市場全体のトレンドといった、より広い視野での分析を行っています。現場の育成だけを考えると、どうしても半年後、1年後といった目の前の成長に意識が向きがちですが、コミュニティでは世の中の大きな流れから逆算して、今本当に必要な力は何かを掘り下げていきます。
システム開発の現場ではなかなか味わえないマーケティングに近いアプローチができる。それが非常におもしろいんです」
技術の習得に留まらず、市場全体を俯瞰して調査を深めていく。こうした高い視座での学びが得られることが、船田やメンバーたちが多忙な中でも活動を続ける大きな原動力になっています。
部門を越えた知の共有が、実務を加速させリスクを回避する
コミュニティでの学びは、実務に直結する生きたナレッジの共有へとつながっています。
「以前、小規模な案件で5年間の運用コストをいかに効率化するかという課題に対し、コミュニティの仲間たちとシステムの設計検討を行いました。これが非常に刺激的な時間でした。通常、費用の試算は外部の協力会社さまにお願いすることも多いのですが、この時はネット上に公開されているツールなどを使い、自分たちの手で一から計算したんです。
自分たちが考案したシステムの構造が、実際にどれだけの費用抑制につながるのか。リアルな数字を使って自分たちで証明していく過程に、技術者としての純粋な楽しさを感じました」
自分たちで考え、納得感を持って導き出した設計。その答え合わせができた経験は、実務においても確かな自信へと変わったと言います。
「結果的にコミュニティで検討した方式は、実際のプロジェクトでの最適解とほぼ一致しており、『間違いじゃなかった』と確信を持って本番の検討を進めることができました。こうした知の共有による恩恵は、私のプロジェクトだけにとどまりません。部署を越えた横のつながりは、組織のリスク回避にも大きく貢献しています」
船田のプロジェクトだけで完結せず、他部署へもその成果は広がっています。実際に、コミュニティ発のナレッジがチームの大きな決断を支えた場面もありました。
「別のチームからクラウド化の相談を受けた際、コミュニティの専門家が作成した検討フローを共有したことがありました。何をどの順番で確認すべきかが可視化された資料を渡したことで、そのチームは早期に『このシステムは今はクラウド化すべきではない』という正しい判断を下すことができました。
お客さまの業界やシステムの目的によって、スピード重視であったり品質重視であったりと求められるものは異なりますが、それらを理解し、いつでも相談できる仲間がいることは実務において大きな強みになります」
技術的な知識だけでなく、部署を越えた頼れる相手がいること。それが、現場のリーダーとしての強みになると船田は強調します。
「社内に頼れるコネクションがあるだけで、難しい課題に直面した際の『引き出し』と『心の余裕』が格段に増えます。まったくわからないという不安が、あの人に聞けばいいという確信に変わる。その安心感こそが、実務を支える本当の力になるのです」
おもしろさが自律を促す。元人事の視点で描く、高度成長期の組織論
船田には、現場での経験に加えて、人事部で全社のエンジニア育成戦略に携わったというキャリアがあります。現場と人事を越境して全体像を俯瞰した経験から、今の組織が直面している変化を誰よりも鋭く捉えています。
「本社の人事部を経験して見えてきたのは、多様な事業部が連なり、毎年100名以上の若手が加わっていく組織のダイナミズムでした。現在、社員の約6〜7割が30代前半までの若手です。
例えるなら高度経済成長期の日本のような年齢構成で、若手が圧倒的に多く、少ない中堅層だけでは支えきれないほどの活気があります。
この状況を目の当たりにし、危機感と同時に大きな希望を感じました。定年まであと10年ほどとなった私のミッションは、彼らが上からの指示を待つのではなく、自ら気づいて成長していく自走の土台をつくることだと思っています」
会社としてのバックアップ体制は整っていますが、現場ならではの課題も船田は直視しています。制度と実態の距離を埋めることが、今の挑戦だと語ります。
「当社には自己啓発の支援制度などが非常に手厚く整っています。ただ、課題はその制度を活かすための時間です。現場が忙しいからと自己投資を諦めてしまうのは非常にもったいない。だからこそ、時間を惜しみなく投資したくなるようなカルチャーを醸成したいのです」
成長を「やらされるもの」にしないために、船田が大切にしているのは好奇心を引き出す入り口をいくつも作ることです。
「エンジニアの成長を料理に例えて言いますと、料理が好きな人は、放っておいても自分で本を買い、新しい素材や工夫を試しますよね。仕事も同じで、ちょっとした工夫が楽しいと思えれば、人は自律的に学び始めます。
制度を義務として使うのではなく、おもしろさを追求した結果として自然と活用し、楽しみながら自律的に育っていく。そんな姿こそが、私たちがめざす組織の形です」
船田にとって、クラウドコミュニティもまた、その自律的な成長を促すための仕組みの一つです。
「サークルのような感覚で参加し、現場では使わない頭を使って、違う視点を得る。そこから得たものを現場に持ち帰る。そうした循環が生まれることで、組織全体がより強く、おもしろくなっていくはずです。私はこれからも、若手たちが自らの意志で走り出せるよう、技術を楽しむための土壌を耕し続けます」
クラウドコミュニティという「場」を耕し、推進役としてメンバーに伴走する船田。未来につなごうとしているのは、次世代のエンジニアたちが心から技術を楽しみ、自律的に光り輝くための揺るぎない土台です。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです

