異なる知見が集結。生成AIコミュニティで始まった挑戦
NTTデータ フィナンシャルテクノロジーには、全社横断で技術を学び合う「技術コミュニティ」があります。その重点領域の一つ「生成AIコミュニティ」の中で、人事総務部のメンバーを中心に活動しているのが、ナレッジ共有チャットボットグループです。現在6名で構成される同グループから、今回は3名のメンバーに話を聞きました。
まずは、財務業務を担当する後藤と契約業務を担当する佐藤の2名です。後藤は、構想当初から約2年にわたり主担当としてチームを牽引し、コタエルの全社展開を実現しました。彼らが生成AIに着目し、参加を決めた背景には、現場ならではの課題がありました。
後藤:きっかけは、私の所属担当の施策テーマの一つに生成AIの活用があったことでした。当初は模索状態でしたが、人事総務部には社員からの問い合わせが多く寄せられており、回答をお待たせしてしまうことが課題でした。
そこで、チャットボットで自動回答できれば、社員の待ち時間を減らし、私たちもより複雑な相談業務に注力できると考えたんです。ただ、独学や個人の試行錯誤には限界があります。
当時、企画部で生成AI活用推進をしている方に話を伺う機会があり、その縁で社内の技術コミュニティに参加してみることにしました。そこで先行する知見を得ながら、形にしていきたいと考えたんです。
佐藤:私も現場からの問い合わせ対応において、同じ質問に何度も回答するフローに非効率さを感じていました。「もっと簡単に、お待たせせずに答えられたらいいのに」という課題感は後藤さんと同じです。
以前、チャットボット導入を検討したものの実現に至らなかった経験があり、生成AIであれば解決できるのではないかという期待を持って参加しました。
一方、情報セキュリティやシステム導入を担当する折田は、異なる視点からこのプロジェクトに参画しました。
折田:私は以前から新しい技術に関心があり、個人的にChatGPTなどに触れていました。会社としても変化やチャレンジが求められている中で、今までの知見を活かして、新しい取り組みができないかと考えていました。
コタエルのプロジェクトにおいて、ログ取得や運用改善の仕組みづくりが必要だと聞き、自分のスキルが活かせる場面があると感じて参加を決めました。
繁忙期と開発の両立。互いの強みで支え合う開発
普段は決算や契約対応、システム運用などの業務を担っている3人。繁忙期には本業が優先されるため、彼らは限られた時間の中で工夫して開発を進める必要がありました。
後藤:財務業務の繁忙期もありますが、このコタエルの取り組みは社員のサポート充実に繋がるチャレンジとして、チームメンバーの理解・協力を得ながら活動時間を捻出しました。
また、開発未経験のメンバーによるシステム構築には、技術的な課題も多く立ちはだかりました。とくにプロジェクトが本格始動してからの約1年間は、仕様の理解や環境設定など、多くのハードルがあったと言います。
後藤:苦労したのは時間の確保以上に、技術的な部分でした。当時は使用したサービスの導入事例が社会全体でも少なく、書籍やインターネットで調べてもあまり情報が見つかりませんでした。さらにグループ会社独自のセキュリティ制約で動かない箇所もあり、なぜ動かないのかわからないという手探りの状態が続き、行き詰まることもありました。
折田:AIの挙動はブラックボックスな部分が多く、エンジニアの方から「通常のフローとは異なる」と言われることもありました。私は主にログ取得の仕組みを担当しましたが、プライバシーを守りつつ、改善に必要なデータをどう集めるか、そのバランスの調整が必要でした。既存のツールを組み合わせたり、書籍で調査したりしながら、要件を満たす実装方法を模索しました。
佐藤:私は、AIに読み込ませるナレッジの整備を担当しました。どのような質問が来るかを想定し、AIが正しく回答できるようにデータを整形していく作業です。折田さんに操作方法を教わりながら、1日1回は必ずシステムに触れる時間を作り、地道に精度を高めていきました。
後藤:チームでの連携が支えになりました。佐藤さんがチャットボットβ版のナレッジ整備をしてくださり、今年度の本番公開に向けては、人事総務部の社内ポータル改善WGのメンバーとも連携しました。それぞれの強みや役割分担があったからこそ、課題を解決できたのだと思います。
非エンジニアでも形にできる。コタエルがもたらした社内の変化
試行錯誤を経て、チャット形式で社内のナレッジ共有を可能にしたコタエルは2025年8月に全社公開されました。Teams上で社内手続きや制度について自動回答するこの仕組みは、社員の利便性向上に加え、開発に携わったメンバーの意識にも変化をもたらしました。本社スタッフでも技術活用により課題解決ができるという実感は、実務にも影響を与えています。
後藤:実際に社員の方に使っていただき、「便利だね」「あの場所にデータがあったんだ」といった反応をもらえた時はうれしかったです。これまでの財務や契約の業務は、法令や社内規程によってあるべき姿が明確に決まっており、いかにその基準通りに正確に対応するかが求められる仕事でした。
一方今回は、自分たちでゼロから正解を考え、形にしたサービスが役立っている。その経験は大きな自信になりました。また、開発現場のエンジニアの方から「どうやって作ったの?」と興味を持ってもらえたことも意外でした。
まずは本社スタッフがやってみたという事例が、金融システムという堅牢性が求められる現場に対し、生成AIの取り入れ方の一つとして、イメージを広げるきっかけになれたのかもしれません。
折田:通常、スタッフ部門の業務システムはグループ全体で共通導入されるものが多く、一から独自に開発して導入する機会はほとんどありません。だからこそ形あるものを作り、それが全社で使われるというのは貴重な経験です。
私は継続的な改善のためにはデータの可視化が欠かせないと考えログを取得する仕組みを構築しました。この可視化されたデータを利用することによりナレッジを整理するチームと、それをAIに学習させる私たちが連携することで、より回答精度が高まるという相乗効果も出ています。
今では日に20〜30件の利用があり、社内への定着が進んでいることがわかります。利用者からは「ホームページから情報を探すよりも早く解決できる」「人に聞くほどではない些細な質問も気兼ねなくできる」といった声も上がっており、一次対応窓口としての役割を確立しつつあります。
佐藤:私たちが直接受ける問い合わせの電話やメールが減ったのは、コタエルがしっかりと機能している証拠だと思います。何より、現場の課題を技術で解決するプロセスを経験できたことは、今後の業務改善を考える上で有用な経験になりました。
失敗を恐れず挑戦できる風土が、自律的な成長を促す
今回のプロジェクトを通じて得たものは、技術スキルだけでなく、課題の本質を見極める視点や、部署を超えた連携の経験でした。人事総務部という立場でエンジニアと共に学び、実装まで進めた背景には、挑戦を後押しする風土があります。最後に、3人の今後のキャリアと、会社への想いを聞きました。
後藤:今後は、法令対応といった守りの業務だけでなく、社員が求めている本質的な課題を解決していく力をさらに磨きたいです。財務や契約といった規律や正確性が厳格に求められる、いわゆる「お堅い仕事」と今回のような「新しいことに取り組む仕事」、この両輪を回していくことで、会社に新しい文化を定着させたいと考えています。
当社には、コミュニティという場があり、「失敗してもいいからやってみなさい」と背中を押してくれる風土があります。本社スタッフであっても、新しい技術を使って課題解決ができる。その姿勢を発信することで、会社全体に新しいことに挑戦する空気を広げていきたいです。
折田:私はこれからも新しい技術やツールが出てきた際は、まず触れてみたいと考えています。RPAやVBAの経験もありましたが、今回の生成AIのように、業務を効率化し、全体にとってプラスになる仕組みを今後も取り入れていきたいです。
佐藤:私も新しいもの好きなので、今回の経験を糧に、変化を恐れずに学び続けたいです。生成AIに限らず、まだ社内で未着手の領域があれば、率先して関わっていきたいと考えています。
技術革新は、開発現場だけでなく、バックオフィス業務にも変化の機会をもたらしています。コタエルの事例は職種や経験に関わらず、仕組みや環境を活用することで新しい取り組みが可能であることを示しています。NTTデータ フィナンシャルテクノロジーでは、こうした社員の自発的な挑戦を支援する環境づくりを今後も進めていきます。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです

