NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部の三宅 恒司です。
デジタルマーケティング領域を中心とするシステム開発案件のプロジェクトマネージャー(以下、PM)として、日々お客様の事業成長とテクノロジーの進化に向けて取り組んでいます。
さて今回は「Creative」の観点から、これからのプロジェクトマネージャーに求められることについて、私の考えをお話ししていきたいと思います。加えて、後半ではプロジェクト実行のパートナーとして関わっていただいているTBWA HAKUHODO シニアマーケティングテクノロジストの伊藤 太郎さんにも、エージェント目線からプロジェクトにおける気づきをお話しいただきます。
そもそもデジタルマーケティングとは?
第一回でも書きましたが、ここでいう「デジタルマーケティング」とは、”顧客接点で得られるデータを高度な専門性を持って分析・活用することで、顧客に利便性や利益を提供し、事業目的を達成するための活動”と定義しています。実現する情報システムも、その1つのパーツと捉えています。
デジタルマーケティングにどう取り組むのか?
多くの企業において顧客を管理することは、非常に重要なテーマです。顧客を理解し、パーソナライズされた対応を行い、適切なコンテンツ・サービスを提供していくことで、顧客との関係を継続・維持し続けることができるかが、企業の成長を大きく左右します。しかし、デジタルマーケティングへの取り組むことを困難にする「2つの分断」を抱えている企業も多いと感じています。
1.組織の分断
IT部門・マーケティング部門・セールス部門・経営と現場などが個別の意思を持ち活動することで”組織の分断”が起こると、ガバナンスの劣化・無駄な投資・スケジュールの不整合が発生する確率が高まります。その結果、本来力を注ぐべき重要な顧客体験の実現から遠ざかってしまうという現実があります。
2.データ・システムの分断
「基幹システムのサイロ化により抜本的な改修・機能追加が行えない」「デジタルマーケティングを点で捉えてソリューションを導入したために、システムが乱立し、重要なデータがつながらず有効に活用できていない」など、システムの分断が引き起こす問題は様々あります。
こうした2つの分断に橋をかけるべく、プロジェクトマネージャーはお客様の中に入り込み、マーケティンググランドデザイン、ロードマップ作成、システム構築、運用設計、業務改善など広い視野をもって課題解決に取り組む必要があります。自ら現場に入り込み、現実を見極め、どう進めるべきか企画・提案することが求められるのです。こうすることで、お客様と一体となり、お客様の変革領域に注力し、事業成長に貢献することができると考えています。
「Customerを理解したCreative」抜きでは進まない
前述の通り、デジタルマーケティングに取り組む上では、システム開発のみでは、不十分であり、価値を提供することができません。特に、UI/UXデザイン、イベント企画・クリエイティブ制作に関しては、私自身、これまでに経験が無く、力不足であったと考えています。この重要性を気づかせてくれたのが、一緒に仕事をさせて頂いているTBWA HAKUHODO シニアマーケティングテクノロジストの伊藤 太郎さんです。
ここから、伊藤さんに共同プロジェクトのKey Success Factors(KSF)についてお話しいただきます。
クライアントのマーケティング活動を支えていくには、三宅さんのおっしゃる通り「分断された組織・データ・システム」をいかに紡いでいくかがとても重要なファクターになってきます。ビックデータを司る各種データをいかに鮮度高く繋げ、深い分析をリアルタイムに行えるか?それらデータをいかに早くマーケティングに活かしていけるかがマーケティング活動の成否に大きく関わってきます。
最近ではソリューションが大きく進化したことにより、生活者のインサイトに基づいて論理上「1000人いたら1000通りのOne to Oneマーケティング」を人の手を介せず、自動的に運用できる状態になってきております。生活者一人ひとりに異なるメッセージを配信し、異なるバナー広告やメールマガジン、異なるコンテンツを表示させることで購買率や好意度などを底上げできます。
しかし、これら活動についても、上記のようなデータや最適なシステムがあるだけでは成果を上げることが難しい状態になってきてしまいました。今、世の中には様々な情報が溢れており、メディアだけでなく生活者個人が発信する情報の影響力が強くなってきております。その商品のレビューなどによってクライアント商品やサービスの良いところ悪いところの全てがフラットに共有されるのです。
「〇〇を購入したい」と思った瞬間、生活者はあらゆる情報にふれ、検討し、それが自分にフィットしたものなのか?を見極めてから購入手段を瞬時に選びます。お客様とのコミュニケーションにおいて、まずは「振り向いてもらう」ためのきっかけ作りと、振り向いてもらったお客様に対し、継続的な接点を持ってもらうための「エンゲージメント」を生み出し続けなくてはなりません。
このような活動は「鮮度が高く粒度が細かいデータ」と「高度なシステムやソリューション」があればうまくいくというわけではありません。マーケティングとは常にクライアントのその先にいる生活者に向けて行われる活動なので、生活者の「インサイト」をより深く理解した上で最適なクリエイティブをリアルタイムに届け続けるためのマーケティングシステムが重要になってきます。
NTTデータとの共同プロジェクトにより、クライアントにとって必要なエンゲージメント施策を実現した事例が多く創出され始めております。今回はそこで見えてきたKSFをご紹介いたします。
Key Success Factors1:データドリブンからサービスドリブンへシフトし、Clientをリードする
マーケティング活動を推進するにあたり、クライアントが所有するデータ(1stパーティデータ)はとても重要です。CRMシステムやWEBビーコンなどにより取得できる様々なトランザクションデータはその時点での顧客の全体像を見える化することができる最重視データとされてきました。
しかし、様々な接点からかき集めたデータを分析した結果として得られる情報は、あくまでも「過去データ」です。リアルタイムに変化する生活者の状況に合わせ、コミュニケーションを常に変化させるだけではお客様は振り向いてくれません。商品に紐づいたサービスや各種接点におけるUXをリアルタイムに変化させることで満足度を高めていく活動が必要になってきております。
様々な「モノ」や「コト」が、サイバー空間にシームレスにつながる時代に変化しようとしている今、商品の選び方、店舗のあり方なども大きく変化しつつあります。その商品に行き着くまでのプロセスがいかに気持ちよくなっているのか、接点ごとに最適化するマーケティング施策ではなく全ての接点のジャーニーがシームレスに連携して俯瞰的な「価値」を創造し、提供していく必要が出てきました。各企業のデジタルトランスフォーメーションによってそこにある様々なプロセスがデジタル化することで、そのプロセス自体が価値を生み出すようになってきたのです。
お客様は「商品の本質価値」だけではなく、それを取り巻く「付加価値」に対して対価を支払う時代となり、クライアントは商品とプロセスやその商品に込められたストーリーなどを組み合わせた全体像でモノやサービスを販売しなくてはなりません。
そのため、マーケティング活動にて最適な商品プロモーションを行なったとしても、そのプロセスやストーリーに課題があれば、二度と選んでもらえなくなってしまい、それまでの施策のすべてが無駄になってしまいます。
お客様の接点の全てにおいて、継続的に「価値」を感じてもらい「いつの間にか購入、また利用したい」と思ってもらうジャーニーを描くには、マーケティング活動で行ってきた接点のすべてや、店舗におけるエクスペリエンスを「サービス」として捉え、それら体験(UX)の拡充を重視した総合的な施策によってお客様に選んでもらえるブランドになることが最重要因子と考えます。
オンラインのデジタル体験をリアル店舗に紐づけて、一気通貫のブレのないコミュニケーションを実現するためには、データとテクノロジーを活用させ、様々な接点でブレのないコミュニケーションが必要になります。
このような最高のUX体験を実現するためには、サービスを司るシステム開発の領域にも踏み込んでいく必要があります。今、そこを支えてくれているのが、NTTデータです。短納期でセキュリティやリアルタイム性を考慮したフィジビリティを確保し、様々なソリューションを見定め、高度なシステム開発の提案をしてくれるNTTデータは、TBWA HAKUHODOがサービスドリブンでクライアントを成功に導くために欠かせない役割を果たしています。
Key Success Factors2:ホラクラシー型で全員が自ら動く文化が強み
変動性が高く不確定で、複雑かつ曖昧な状況下で、仕事を前に進めるために何が必要か。これは、今の時代、真剣に考えるべきテーマであります。過去、ヒエラルキー型組織で日本は経済大国になることができました。しかし、現在においては、スピード感や実現性に問題があると考えています。そこで、私のチームでは、ホラクラシー型組織により、業務を遂行しています。
ホラクラシー型組織とは、上司・部下といったヒエラルキーが存在しないフラットな組織であり、全員参加型の組織です。これを成功させるためには、社員一人ひとりに意思決定権を与え、適切な意思決定が行えると社員間で信頼し合うことが重要になります。
クライアントが向かうべき方向性を把握するために、できるだけ多くのアイデアをチームで集まってだしあいます。アイデアは、出そうと思ってすぐに出るものではありません。普段から新しいものに興味を示し、アンテナを張って情報収拾し、未来の世界・未来の生活を想像し続ける必要があります。これを全員が自分ごと化しながら継続し、チームで集まりディスカッションすることで、量的にも質的にも十分なアイデアリストができるのです。まさにこの取組みは、ホラクラシー型組織でないと価値を十分発揮することはできません。
そして、この大量なアイデアリストを使い、クライアントが抱えている真の課題や要望を掴み取り、方向性を確定させます。後は、クライアントなど多くの関係者を巻き込み、思いを1つにしていくことが重要です。その際には、心を1つにするコンセプトやキャッチコピーも重要な要素になります。
この目まぐるしく変わる状況においては、現場にいるメンバーが裁量を持ち現場の判断で物事を進める。そして、その行動や意思決定を信頼し合うことがとても重要であると考えます。
Key Success Factors3:TBWA HAKUHODO-NTTData One Teamで実現できる体験
TBWA HAKUHODOはマーケティング活動のベースとなるストラテジー作りやインサイトに基づいた顧客体験(UX)づくりに関しては長けておりますが、そこで活用すべきシステムの構築ノウハウは変化の激しい市場において、なかなかメソッドを持ち合わせておりません。
最適と思っていたソリューションが、翌年には古くなっている、別の新しい優秀なソリューションがリリースされた、ある会社が競合だったサービスとアライアンス、あるいは買収して同じブランドのソリューションになった、などマーケティングソリューションや手法は日々進化しております。
それらシステムやソリューションを選定するにあたり、生活者のインサイトをベースにまず「どんなコミュニケーションを実現したいのか?」「どんなジャーニーであるべきか?」といったビックビジョンをもとにストラテジーマップを作成し、イメージを膨らませます。そのディスカッションからNTTデータチームと共同で実施し、一緒にその理想を実現するための仕組みの検討を行っております。
当然、今できること(技術)の制限や、クライアントのレギュレーションによって実現が難しいことも多くありますが、まずはビッグビジョンに向けて何が必要なのか?を考え、実現に向けたステップを整えていきます。
特に活用するデータやパイプラインなどのインフラは、クライアントの異なる部署で個別に管理しているものが多く、そこに外部のデータやサービスを連携させる必要があるため、具体化するためにはかなり複雑な設計が必要になってきます。また私共が考えるエグゼキューションイメージ(アウトプット)を安全に効率よく運用できる仕組みを作り上げるには、私共エージェンシーだけでは難しく、NTTデータのような秘匿情報を安全に集約し、高度な分析基盤を構築、安定したエグゼキューションを出し続けることができるシステムの開発を行えるメソッドが必要になってきます。TBWA HAKUHODOとNTTデータは、共同チームで一気通貫した開発を行える体制を整えております。
2020年現在、NTTデータとの共同プロジェクトにおいては、上記各チームのシームレスな横連携を行いながら、システムで改善できる要素、オペレーションで解決すべき要素、クリエイティブで解決すべき要素、そもそも戦略の改定をすべき要素などをフラットに洗いだし、お互いの強みを持ってクライアントのマーケティング活動のサポートをしております。
これはある意味「マーケティングのアジャイル運用モデル」とでも言いましょうか、終わりなきプロジェクトをNTTデータの方と一緒に運用している状態です。
TBWA HAKUHODO+NTTデータがタッグを組むことで、お互い自社ソリューションを持たないが故の「全てにおいて中立な立場」で、ベストな仕組みを選択し、サービスを作り上げることができ、世の中やクライアントの変化に強いチームができると考えております。
この分野においては、テクノロジーカオスマップが示す通り、さまざまなサービスが存在し、成長を続けています。”顧客接点で得られるデータを高度な専門性を持って分析・活用することで、顧客に利便性や利益を提供し、事業目的を達成するための活動”を推進するために、ClientやBusiness Partnerと深く連携し、同じ将来を見据え1つひとつQuickに進めていくことが重要です。そして、それを実践できるPMを時代が求めていると考えています。
おわりに
次回は、システム開発畑にいたプロジェクトマネージャーがビジネスをマネジメントするとはどういうことかについて、再び三宅よりお話ししたいと思います。
