電動化の“心臓部”を支える。設計と現場をつなぎ、確かな品質を
パワートレイン領域の品質を一気通貫で支える、パワートレイン・EVコンポーネント生産技術開発本部。中でもアジムアブドゥルアジムビン(以下アジム)が所属する品質技術開発部・電動パワートレインプロジェクトグループは、新車プロジェクト立ち上げに向け、ユニットの品質を担保する計画策定と実行を担っています。
「新車プロジェクトに求められる品質を満たすための計画の立案と、車両評価が主な業務です。工程が量産に適用できるかどうかを確認するバリデーションなども行っています」
既存の電動パワートレインユニットの品質を維持・向上させることも、同本部の重要な役割のひとつ。生産現場と密に連携しながら、日産自動車(以下、日産)の品質を下支えしています。
「パワートレインは、モーターやジェネレーター、減速機などで構成される自動車の“心臓部”です。私たちはその中でも電動化のコアとなるユニットを担当しています。直近で携わっているのが、次世代電動パワートレインの『X-in-1』ユニットです。生産を手がけるパートナー企業のプロジェクトが円滑に進むようサポートしています。
私たちのミッションは、上流の設計要件を現場で確実に再現できる形に落とし込むこと。期待通りの製品をお客さまに届けるための、いわば“つなぎ役”だと考えています」
品質保証計画のもと、現場に近い立場で品質を確保することがチームでのアジムの役割。確認業務の設計から実行、最終判断までを任されています。
「たとえば工程バリデーションを実施する場合は、まず計画を立て、関係部署と調整しながら実行体制を整えます。その上で現場に足を運び、R&D部門やパートナー企業と連携して、ユニットの組み立てから完成車の評価まで、工程を一つひとつ見極め、製品の状態も確認しながら合否判断を行っています」
若手ながらリーダーポジションを担うアジム。多くの関係者を巻き込みながらプロジェクトを進める上で、大切にしていることがあります。
「できるだけ現場に足を運び、自分自身も実務者として関わるようにしてきました。開発側から見れば問題ないように見えても、生産側からすると違和感があるケースもあります。そうしたギャップをすり合わせながら、コストも含めて最適な着地点を見つけていかなくてはなりません。現場で起きていることを自分ごととして捉え、作業者の声を直接聞きながら進めることで、周囲からも信頼をいただけると考えています」
電動化の先進性に魅せられ、日産へ。現場への想いが導いた生産部門への道
マレーシア出身のアジムは、高校卒業後に日本の大学へ。動力技術との出会いが、その後のキャリアの道しるべになりました。
「学部では機械システム工学、大学院では機械知能工学を専攻し、流体力学や機械力学を中心に学びました。エネルギー技術への関心を高め、その延長線上で自動車業界にも興味を持つようになったのは、指導教員の専門がエンジン材料開発だったからです。
中でも日産に惹かれたのは、電動化技術に魅力を感じたからでした。日産は全固体電池開発に先進的に取り組んでおり、100%モーター駆動で走行する独自のハイブリッド技術『e-POWER』を展開しています。工場見学を通じてその技術力の高さを肌で感じ、入社を決めました」
周囲の学生の多くがR&D部門を志す中、アジムが選んだのは生産部門。その背景には、「現場で価値が形になる瞬間に立ち会いたい」という想いがありました。
「R&D部門だと、現場にいられる時間はそれほど多くありません。生産部門なら、お客さまに届けられる製品がどのようにつくられているかを、目の前で見ることができます。机にじっと座って構想を練るより、製品の品質にダイレクトに関わりたいと考えていました」
入社後、アジムは約9カ月にわたる研修に参加。見学や実習を通じて、現場理解を深めていきました。
「前半は現場見学、後半は実習という構成です。見学では、現場の作業を間近で見ることができます。工程の流れを具体的にイメージできたことは大きな収穫でした。実習では、配線設計から組み立て、稼働までを経験するだけでなく、改善活動にも参加しました。
私が担当したのは、モーターカバーのボルト締結工程です。コイルを巻く治具にゴミが付着し、コイルが切れる不具合が発生していたため、定期清掃の導入など、異物混入を防ぐための改善提案を行いました」
研修を経て現場への解像度を高めたアジム。課題解決に一貫して携われる点が、現在の部署を選ぶ決め手になりました。
「品質技術開発部では、生産現場で生じる課題を見つけ、解決するところまで関わることができます。実際にタスクを任され、チームで改善に取り組む中で、その醍醐味を強く実感しました。課題と向き合い、より良い状態につなげていけることは大きなやりがいです」
さまざまなプロフェッショナルとの連携が育む、品質への確かなまなざし
本配属後、ユニットの試作段階からプロジェクトに参画したアジム。まず取り組んだのは、量産を見据えた工程確認の準備でした。
「設備に必要な品質確認の項目が、きちんと帳票や手順に落とし込まれているかを確認することが私の役割でした。必要に応じて工場に足を運んだり、ユニットを製造しているパートナー企業へ出張したり。プロジェクト運営が業務の中心ですが、モノづくりに近い距離で関われるおもしろさがありました」
こうした経験を重ねる中で、品質を担う技術者としてアジムが初めて手ごたえをつかんだ出来事がありました。
「あるユニットで不具合が発生し、原因を突き止めるためにパートナー企業の現場に入ったところ、シール塗布後に本来必要な乾燥時間を確保しないまま出荷されていたことがわかりました。製品はすでに海外へ出荷され、簡単には回収できません。そこで、既存データをもとに影響範囲を特定し、条件を変えた場合でも問題がないかを検証するための計画を立てることになりました。
複数のユニットを対象に、現場の方々と連携しながら分解調査やシール面の点検を行い、最終的に品質への影響がないことを確認できたときの達成感は、今でも忘れられません。その後のトラブル対応でも状況整理を任されるなど、一連の対応を通じて関係者との信頼関係が築けたことは、大きな自信につながりました」
さらに、工程から完成車までを一貫して見届ける、品質技術開発部ならではのこんな実体験も。
「工程で確認したユニットが車両に搭載された後、実際に試乗して実車評価にも関わりました。多くの関係者を巻き込みながら、よりお客さまに近い視点でモノづくりに向き合えたことは、貴重な経験になっています」
入社2年目ながら、技術者として着実にキャリアを積み重ねるアジム。生産や品質に携わる魅力についてこう語ります。
「量産前の工程を確認し、課題があると判断した点を改善につなげることで、不具合の発生を未然に防ぐことができます。問題が起きる前に手を打てるのは、このポジションだからこそです。
一方で、評価の過程で気になる点があっても、別の専門チームが異なる判断をすることもあります。品質を見極める難しさを痛感する毎日ですが、多くのプロフェッショナルと連携する中で、視野が大きく広がっている実感があります」
“最後の砦”として、確かな価値を守り抜く。日産の品質を、次の世代へ
一貫して現場にこだわり続けてきたアジム。創業以来受け継がれてきた、お客さま起点のモノづくり、そして「革新と感動」を追求する姿勢こそが、日産の競争力の源泉だと語ります。
「品質に妥協しないことが日産の強みです。細部まで徹底的に確認し、課題があれば率直に指摘する。その積み重ねが、ブランドへの信頼につながっていると思います。
一方で、市場環境の変化は速く、スピードも欠かせません。日産では今、開発・生産のリードタイムを短縮しながら、これまで培ってきた品質レベルを両立させる取り組みを進めており、大きな可能性を感じています」
そんなアジムが見据えるのは、品質のスペシャリストとしてのキャリア。現場を深く理解する技術者になることが目標です。
「生産技術領域の品質技術開発は、製品が市場に出る前の最終判断に関わる重要なポジションです。お客さまに届ける価値を守る“最後の砦”として、表面的な理解ではなく、工程の実態や現場の感覚を踏まえて判断できる力が求められます。
今は“指摘する側”ですが、“指摘を受ける側”の経験も欠かせません。そこで、来年度からは工程技術開発部へ異動し、現場での実務経験を積む予定です。その上で再び品質技術開発部に戻り、より高い解像度で最適な意思決定ができる技術者になることをめざしています」
日産の品質力をさらに高めていくために。ともに未来を担う仲間に向けて、アジムはこんなメッセージを送ります。
「生産や品質の仕事をしていると、市場で評価されている製品に対して、『自分が貢献している』と実感できる瞬間があります。求められるのは、目の前にある事実に向き合い、良し悪しを自分の言葉で伝えられる力です。モノづくりの最前線で価値を生み出したいという想いを持つ人と、一緒に挑戦できればうれしいです」
アジムの挑戦は、次世代のモノづくりへ──現場で積み重ねた経験と判断が、これからの日産の品質を支えていきます。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
