世界を舞台に挑む市場品質の改善。部を束ねる上で心がけるのは「信頼関係を築くこと」
2025年4月に、市場品質改善部の部長に就任した太田。世界を対象にした市場品質の改善や、ワランティー(製品保証)のマネジメントを担っています。
「市場品質改善の目的は、お客さまの満足度を高めて豊かな暮らしに貢献し、それによって日産自動車のブランド力を向上させることです。日々、市場で起きている問題を把握し、いち早く対応することがミッションとなっています。
とくに力を注いでいるのが、長期間使用される中で性能の低下や故障が起きる『耐久不具合』への対応です。耐久不具合の発生状況を全世界でモニタリングし、発生件数や対応できている件数を集計・共有。未対応の拠点に対しては状況を確認し、解決に向けてサポートしていきます。
一方でワランティーのマネジメントについては、お客さまのクルマに不具合が起きた際、ディーラーが行う保証修理の費用を当社が受け持つのですが、保証修理が適切な方法で行われているかの確認や、補償費のやりとりが適正に行われていることを確認する業務です」
市場品質改善部のトップとしてメンバーをとりまとめる上で、もっとも大切にしているのは「信頼関係の構築」だと言います。
「部下や上司などすべての同僚と信頼関係を築き、深めていくことがなによりも重要です。それができなければ、短期的には結果を出せたとしても、それぞれのモチベーションが上がらず長続きしません。
この価値観を持つようになったのは、中国の鄭州日産に出向した経験がきっかけです。私は当時、お客さまの満足度を高める土台づくりとして、TCS組織を立ち上げるために赴任したのですが、現地では『工数補填のためにやってきた日本人』と見られていました。
そこで、これから成し遂げていきたいことを年表に書き込んで具体的に説明していくと、少しずつ理解してくれるようになりました。さらに、やり方を一方的に押しつけるのではなく、現地の人たちと一緒に考えながら進めるように心がけたことで、信頼関係を築くことができたのだと思います。
会社組織では、上のポジションに行けば行くほど『ついてこい』という感じで強力なリーダーシップを発揮する人もいますが、私は『みんな、私を担いでほしい。お願いします』と共に歩む姿勢を大切にしています」
出向先のブラジルで得た学び。「私たちの役割は、お客さまの代弁者になること」
2005年に日産自動車にキャリア入社して以来、太田は幾多の困難を乗り越えてきました。中でも印象深いのは、2021年から出向したブラジル日産での出来事だと話します。
「拠点長として現地に赴任すると、営業や経理、工場などさまざまな部門から直接不満の声が届くようになりました。それまで日本の日産の中で守られてきた私にとって、経験したことのない難題が一気にのしかかってきたのです。
とくに苦労したのは、お客さまの満足度を大きく下げるような車両の不具合への対応でした。日産ブラジルの保証期間は3年ですが、修理費用が高く、お客さまの負担が大きい不具合が起きるのはたいてい保証期間が切れた5、6年たってから。『保証期間を過ぎているのでルール上、メーカー側で負担できません』と説明しても、お客さまからすれば『修理代が100万円を超える場合もあるのに、メーカー側は何もしないのか』と思うわけです。
難航したのは、その費用を社内のどの部門が受け持つかを決めることでした。TCSがワランティー費で支払うべきという意見も多くありましたが、グローバルルールにおいてその実現は難しく、一方で他部門も受け持つのを強く拒み、八方ふさがりの状況でした。
しかし諦めることなく策を練り、関係各所と交渉を重ねた結果、お客さま不満が高い不具合に対して保証期間の延長が実現したのです。お客さまの不利益を解消することが、継続して日産車をご利用いただくことにつながり、本当によかったと胸をなでおろしました」
一連の出来事を経て、大きな学びを得たという太田。それは、「お客さまに寄り添う姿勢を貫く大切さ」だとうなずきます。
「ものの見方は立場によって変わるもので、会社はコスト面を気にしますし、各部門は責任の所在を案じます。でも真に大切にすべきなのは、お客さまの代弁者になることだと思い知らされました。
私たちTCSXの役割は、『自分がお客さまの立場ならどう感じるか』を基準に考え、お客さまに代わって会社に問いかけること。コストやルールの壁があってもお客さまに寄り添う姿勢を貫く。それがひいては、日産自動車のブランド力向上につながるはずだと思っています」
耐久不具合の大幅減少に貢献。時代やお客さまの変化を察知し、新しい手法を編み出す
ブラジル日産で太田が実績を残したのは、それだけにとどまりません。耐久不具合の発生件数を大幅に減らすことにも貢献してきました。
「私が赴任した当初、耐久不具合の案件が相当数あったので、社内に向けて『不具合を早く見つけ、早く直そう』と呼びかけました。それはシンプルですが、難しいことです。
当社はもともと、購入から3カ月間の不具合発生率を会社全体のKPIに掲げるなど『初期品質』の向上に注力し、今では世界トップレベルの実績を誇っています。
一方で、耐久品質についてはグローバル方策に沿って取り組んでいましたが、改善があまり進んでいませんした。ブラジル日産では、お客さま迷惑度やブランドイメージへの寄与度が高い耐久品質が最優先課題であること、改善のためにはグローバル方策に加えて、よりプロアクティブに、より早く動くことが必要と訴え、理解してもらうことから始めました。
私たちは、将来の故障率などを予測するワイブル解析のツールを活用し、今後発生する可能性が高そうな不具合を1年経過時点で見極めるようにしました。そして、関連する情報を集めて部品を回収し、関係各所に対策を依頼するという取り組みを、毎月実施することにしたのです。毎月毎月、不具合の『芽』を徹底的に探し、見つけたらリスト化して動くというように、シンプルなプロセスをきめ細かくスピーディに進めました。
すると、取り組み始めた数カ月後には改善が見えるようになり、駐在任期が終了する頃には嘘のように数字が大きく改善していきました。チーム全員が共通認識のもと一丸となり取り組めば、『こんなに成果がだせるのか』と自分でも驚いたほどです」
勇気を持って挑み、成功に導いたこの体験は、太田に仕事観の大きな変化をもたらしたと言います。
「既存の手法は、先人たちが築き上げた素晴らしいものであり、私自身ももともとはそのような手法をとるのが好きなタイプです。ただ、時代は変わり、会社は変わり、お客さまの感度も変わっていきます。その変化を敏感に察知しながら新しい手法を自分たちで考え、編み出していくことが大切だと強く感じました。
誤解を恐れずに言えば、当社は各部門の責任分担がかなりはっきりしているように思います。『自分の仕事はこれであって、こうしていくべき』という既存の考え方にとらわれている人がいるかもしれません。しかし、時代に取り残されないようにするためには思いきって殻を破り、発想を転換していくことも大事だと感じています」
一人ひとりのマインドが未来を変える。めざすのは「明るい日産」と「お客さまの笑顔」
日産自動車で働いて20年余り。国内外で多彩なキャリアを築いてきた太田は、自らの強みについて「組織の歯車を回す潤滑油のような役割を担えること」と自己分析します。
「私自身、ストロングかソフトかと言えばソフトなタイプですね。自分の考えを人に押しつけることなく、いろいろな立場の人たちの声に耳を傾けながら、最適解を見いだしていけることが持ち味だと考えています。
基本的には、デリゲーション(権限の移譲)をし、部下が考えて行動するプロセスをフルサポートするスタンスですね。部下の考えに対し、頭ごなしに『それは違うんじゃないの』と否定することはなく、『まずはやってみよう。ダメだったらその学びを糧にして次の方法を考えよう』と伝えることで、モチベーション高く働いてもらうに努めています」
将来を見据え、ビジョンを語る太田の瞳には強い意志が宿っています。
「TCSXとして、他部署や会社、そしてお客さまから頼りにされるような組織になればと思っています。そのために、既存の考えにとらわれることなくお客さまや会社のニーズを把握し、それらをうまく反映させられるような仕組みをつくっていけないかとイメージしています。私にとっては大きなチャレンジですね。
また、TCSXのメンバーがある意味でインフルエンサーとして、会社全体にハッパをかけていくような存在になれば、会社も大きく変わっていくのではないかとも考えています。実現に向けたハードルは高いですが、私を含め全員が、その意気込みで進んでいく必要があると感じています」
最後に、TCSXのメンバーに向けて力強く呼びかける太田。
「日産自動車には今、乗り越えなければならない課題、チャレンジが目の前にあります。そのような状況だからこそ、一丸となって踏ん張り、『明るい日産』と『お客さまの笑顔』を勝ち取っていけるように頑張りましょう。一人ひとりのマインドの持ち方一つで、未来は明るいものとなるはず。そう信じています」
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
