患者ファーストを貫く──信頼を築くための対話とフォローの現場
堂籠さんは、メディカルシステムネットワークグループの九州エリアのグループ会社であるなの花九州が運営する久留米大学病院前店の薬局長として日々の業務に取り組んでいます。
「薬局長として、主に3つの役割を担っています。まず、店舗責任者として人事管理やスタッフのシフト管理、評価や指導を行います。次に、医療機関との連携や情報共有の体制整備。そして、店舗の売上管理も重要な仕事の1つです。変更点などがあった際には、スタッフへの周知徹底を図っています。
勤務する薬局は薬剤師10名、事務スタッフ6名と当社の中でも大型店舗に分類されるので、新卒の方が配属されるケースも多いです。新人教育に関しては基本的に年齢の近いスタッフが担当しますが、私も全体の流れを見守りながら必要に応じてサポートしています」
また、堂籠さんは外来がん治療専門薬剤師としても活躍しています。
「がん患者さまに対する服薬指導や服薬フォローにはとくに力を入れています。抗がん剤は副作用の強い薬が多いので、患者さまの不安も大きくなります。そこで、薬の準備や飲み合わせの確認はもちろん、服用方法や副作用、注意点などをしっかり説明します。
さらに、お薬をお渡しした後も電話でフォローを行い、副作用の有無や効果の確認を行っています。問題なく飲めているかを重点的にヒアリングして、必要があれば次の受診までの間に病院にフィードバックすることもあります」
患者さまと向き合う時間を創出するため、薬剤師の教育強化やITシステムの導入を進めているメディカルシステムネットワークグループ。丁寧なフォローにより解決できたこともあると話します。
「患者さまに電話した際に副作用が早めにわかって早期に対応できたケースもありました。ほかにも、副作用が出ていると勘違いして患者さまが自己判断で服薬を中止していた時があり、その際に正しい服薬フォローをできたケースも。
丁寧なコミュニケーションを積み重ねることで、患者さまが薬局に対して相談しやすくなり、かかりつけ薬剤師につながることもあるので、とても重要視しています」
堂籠さんは、仕事をする上で大切にしている価値観があると言います。
「常に目標を持ってチャレンジすることが大事だと考えています。人生は一度きりですから、後悔しない人生を送りたい。薬局長としての店舗目標もそうですが、外来がん治療専門薬剤師としても、さらに専門性を高めていくための自己学習は欠かさないよう意識しています。
また、医療従事者として、常に患者ファーストの姿勢を忘れないようにしています。これは日々の業務の中で、患者さまの話をしっかり聞き、不安や想いを理解することから始まります。時には、お薬の話だけでなく、プライベートな話を聞くこともあります。そういった対話を通じて、患者さまとの信頼関係を築いた上で適切な指導を行うことを心がけています」
対物から対人へ──転機がもたらした資格への挑戦と成長の軌跡
看護師として医療に従事していた母親の背中を見て薬剤師をめざしたと堂籠さんは振り返ります。
「母親を通じて薬には良い面だけでなく副作用という悪い面もあることを知り、それまで気にしていなかった薬の安全性について考えるようになりました。とくに、祖父が薬の副作用を経験したことが大きな影響を与え、薬の正しい使用方法を伝える重要性を実感。その上で患者さまが安全に安心して薬を使えるようサポートする薬剤師の仕事に魅力を感じました。
これらの経験から薬剤師になることを決意し入社しました。人事の方がすごく親身に話を聞いてくれ、親近感や会社にアットホームな雰囲気を感じられたこと。そして、新人の時から大きな総合病院に隣接した薬局で多くを学べることが私にとって魅力的で、入社の決め手になりました」
堂籠さんの薬剤師としてのキャリアは、大規模な薬局から始まりました。
「最初に配属された店舗は、当社でも大きな規模の薬局でした。患者さまの数も多く、毎日が本当に忙しかったですね。正直なところ、日々の業務をこなすことで精一杯で、勉強はしていましたが、資格取得にはあまり関心がありませんでした。忙しい業務を終わらせることに達成感を覚えていました」
しかし、2015年に厚生労働省から発表された「患者のための薬局ビジョン」が、堂籠さんの考え方に大きな転機をもたらしました。
「薬剤師の業務が対物から対人へとシフトし、薬局の薬剤師にもより専門的な知識が求められる時代になってきました。その中で自分を振り返った時、『自分の強みはなんだろう?』と考える習慣が身につきました。それまでは日々の業務をこなすことで満足していましたが、もっと専門性を高める必要があると危機感を覚えるようになりました。
そこから外部の勉強会にさまざま参加するようになって、抗がん剤治療が入院から外来へシフトしていることや、分子標的薬などの内服薬の開発が増えて、自宅で抗がん剤治療をする患者さまが増えていることを知りました。抗がん剤は副作用が多いので、薬局薬剤師としてできることがあるのではないかと考えるようになりました」
そして、堂籠さんは資格取得への挑戦を決意。入社6年目にケアマネージャーの資格を取得し、その後入社9年目には難関の外来がん治療専門薬剤師の資格に挑戦。見事、資格を取ることに成功します。
「外来がん治療専門薬剤師の資格取得は、仕事をしながらの勉強でしたから約1年から2年かけて準備しました。資格取得には時間も費用もかかりますが、当社は資格取得に協力的で、研修会の費用をサポートしてくれたり、資格を持っている先輩方からアドバイスをもらえたりと薬剤師たちの専門性向上を後押ししています。経済的な負担が軽減されることで、より集中して勉強に取り組めたので、本当に大きな支えになりましたね」
資格が変えた新しい信頼関係。患者とともに考える治療のサポートへ
堂籠さんは、資格取得に向けた専門知識の習得により、患者さまとのコミュニケーションに大きな変化を感じました。
「勉強を重ねていくうちに、患者さまとの会話が以前よりも深まっていきました。とくに、抗がん剤治療を受けている方々は、副作用への不安が大きいです。そういった患者さまに対して、学んだ知識を活かした服薬指導や服薬フォローを行うことで、患者さまも自分の状況や悩みを今まで以上に話してくれるようになりました。
たとえば、ある患者さまが抗がん剤の副作用で吐き気に悩まされていると聞いた時のこと。患者さまからの聞き取りをもとに病院へ制吐剤の処方提案を行ったところ、提案が採択されて患者さまの吐き気が軽減された時は本当に嬉しかったですね。その後、かかりつけ薬剤師として担当させてもらえることになりました」
この経験を通じて、患者さまとの信頼関係を築くことの重要性を実感しました。
「かかりつけ薬剤師になってからは、来局時だけでなく電話でも副作用や日常生活での注意点などの相談に乗るようになりました。患者さまが安心して治療を続けられるよう、きめ細かなサポートを心がけています。
以前は一方的に指導していた部分もあったのですが、今では患者さまと一緒に副作用対策を考えるようになりました。患者さまの生活環境や状況を考慮しながら、より実践的なアドバイスができるようになったと思います」
堂籠さんの努力は、患者さまからの感謝の言葉となって返ってきました。
「『ありがとう』や『相談できてよかった』という言葉をいただけると、本当に嬉しいですね。それが私のモチベーションになっています。患者さまが薬の副作用に不安を感じながら治療を続けていることを知り、専門的な指導を行うことで少しでも安心してもらえるのは薬剤師冥利に尽きます。
これからも日々研鑽を重ね、患者さまに寄り添った薬剤指導を行っていきたいですね。1人でも多くの患者さまが安心して治療を続けられるよう、私にできることを精一杯やっていきます」
薬局長と専門薬剤師の二刀流で。患者さまと共に歩む薬剤師としての成長
堂籠さんは、薬局長と専門薬剤師としての2つの役割を持ちながら、今後のキャリアについて考えを巡らせています。
「薬局長として店舗運営を行いながら、専門薬剤師としての知識も活かして、患者さまにより良い医療を提供していきたいですね。とくに、がん治療の分野では日々新しい治療法や薬が開発されています。そのため、常に最新の情報をキャッチアップし、患者さまに正確な情報を提供できるよう努めていきたいと思います。
また、資格取得をめざす後輩の薬剤師には、今後私の経験を共有してサポートできればと思っています。資格取得の過程で学んだことが、実際の業務でどのように活かせるのか、具体的な例を示しながら伝えていけたらいいなと考えています」
堂籠さんが所属する久留米大学病院前店を含め、メディカルシステムネットワークグループでは薬剤師の専門性向上を積極的にサポートしています。そのサポート体制が、堂籠さん自身のモチベーション向上にもつながっていると語ります。
「当社は資格取得に協力的で、それが大きな魅力の1つだと感じています。がん治療だけでなく、腎臓や心不全、緩和ケアなどさまざまな分野で専門知識を持った薬剤師が活躍しています。他の薬剤師の活躍を身近に感じられるので、『自分もがんばらないと』といい刺激になりますね。
また、外部から講師を招いたり、社内で講師を募ったりして社内の勉強会が頻繁に開催されています。また、資格取得をめざしている社員向けの相談会や、個人的に勉強会を開きたい社員のサポートも行っているので、常にキャリアアップや学び続けられる環境が整っているのも魅力的です」
最後に、堂籠さんは活躍してほしい人材像についてメッセージを送ります。
「目標を持って日々挑戦できる人に来てほしいですね。薬剤師という仕事は、常に新しい知識を吸収し続ける必要があります。だからこそ、自ら目標を設定し、それに向かって努力できる人が向いていると思います。
また、医療人として人間性も非常に大切です。患者さまや同僚、他の医療従事者とのコミュニケーションが不可欠なので、人を大切にできる、思いやりのある人であってほしいですね」
専門知識を活かしながら、常に患者さまの立場に立って考え、行動する。それが堂籠さんの薬剤師としての信念であり、日々の業務の原動力となっています。
※ 記載内容は2024年8月時点のものです

