デリカDNAをコンパクトボディに満載。 細部まで宿るこだわりと工夫
後藤 新型『デリカミニ』のデザインコンセプトは「DAILY ADVENTURE #2」(日常に冒険を。#2)です。初代で好評だった“『デリカ』らしさ”をさらに進化させることを目指しました。エクステリアのキーワードは「ギア感」「安全感」「親近感」。走破性とアウトドア感を表現する「ギア感」、塊感のあるボディが与える「安全感」、そして親しみやすい“やんちゃなキャラクター”としての「親近感」です。さらに推し進めた柱が「ルーミー&タフ」。広い室内空間や、ボディと足まわりのタフさが『デリカ』のDNAであり、それをさらに高めるデザインを意識しました。
後藤 特に親近感を表現するために意識したのがフロントフェイスです。ヘッドライトは初代より大きくしてかわいらしさを演出しつつ、やんちゃさとのバランスを取りました。レーダーをフロント中央のスリーダイヤ付近に収め、その存在を“鼻”に見立てています。ヘッドライトの“目”と合わせて、愛嬌のある表情を表現しました。
山本 ヘッドライトの造形はデリケートな調整が必要でした。サークル状のデザインをどのようにカットするかでフロントの印象が大きく変わります。カットする位置が高いと途端にかわいらしすぎる表情になり、逆に下げると締まりがなくなる。大きさも難しく、初代は“にらみ”をきかせた印象でしたが、目を大きくするとかわいくなりすぎてしまう。その絶妙なさじ加減をミリ単位で探る作業が続きました。モデルチームと一緒になってクレイモデルを使った造形や3Dプリントを駆使することで、早い段階からイメージを具体化できたのは大きな収穫で、その経験は他車種の開発でも活用されています。
後藤 フロントフェイスをデザインする際には“デザインパーソナリティ”という考え方を取り入れています。そのクルマがどんな人格=パーソナリティなのかを適切に表現する。『デリカミニ』の場合は『デリカD:5』と親子のような関係にあり、子供らしい「かわいらしさ」と「やんちゃさ」を表現して、軽自動車としてアプローチャブルな存在でありたい。一方で『デリカ』の頼れる、信頼できるDNAも併せ持ったキャラクターとしています。
後藤 今回はフルモデルチェンジということで、“『デリカ』らしさ”をより造形に込めるべく、ゼロからデザインしました。まずAピラーの位置と角度を見直し、キャビン上部を10センチ前に出すことで外観にも広さ感を表現。また、骨太な印象を与えるDピラーは『デリカ』らしいタフネスを強調、ルーフからウエストへの流れで『デリカ』の「D」の文字をかたどっています(以下、Dフレームキャビン)。ロアボディは前後を樽のように絞り(以下、樽型ボディ)、前後のフェンダーの張り出しを強調、タイヤがしっかり踏ん張ったシルエットを作りました。ボディ全体で安全感や走破性、スタンスの良さを表現するべくデザインしています。
後藤 また、Dフレームキャビンと樽型ボディが組み合わさる部分は、山の稜線を表現する「やまのせ」ラインをモチーフとして使用しています。車体をぐるっと囲む地平線のようなラインが、サイドとリヤで山のように立ち上がることで、『デリカ』らしいアウトドア感を表現しています。リヤ部分にはヘキサゴン形状も取り入れており、三菱車共通のイメージを持たせました。
山本 ランプはターンランプをヘッドライト内に組み込むことで、“瞳のきらめき”を表現しました。例えば日本のアニメキャラクターは瞳にキラッとした光が描かれることが多いですよね。そんな活き活きした印象を取り入れたかったんです。法規要件の制約は厳しかったですが、モックアップをつくり、PQ(Perceived Quality:感性品質)チームとも検証を重ねながら、視認性とデザイン性を両立しました。
グランピングや街中の公園にマッチしたカラーを提案
中村 「DAILY ADVENTURE #2」を基に、インテリアをグランピングやにぎやかな公園といったイメージで固めてから、エクステリアのカラーを検討しました。まず1色はグランピングなどで飲むコーヒーをイメージした「サンドベージュパール」。もう1色は街中の公園に出かける際に穿くデニムをイメージした「デニムブルーパール」で、カジュアルでタフな素材感を表現しています。
加藤 コーヒーやデニムに過度なキラキラ感は合わず、パールやメタリックを入れてしまうとアウトドアギアらしい質感が薄れてしまいます。ただ、エクステリアデザインとしてはボディの立体感を強調するためにパール感を出したい。エクステリアデザイナーと議論を重ねながら、最終的にはソリッド感を保ちながらも最小限の粒子を入れて立体感を出す方向にしました。
中村 サンドベージュパールは少し明るいとかわいらしくなりすぎてしまい、暗くすると濁ってしまいます。デニムブルーパールも、わずかな色味の違いで“爽やか”にも“重厚”にも振れてしまう。微妙な色味の違いに悩みながら、最終的にアウトドアテイストを持ちながらも、お客様に“長く愛される色”に仕上げられたと思います。
加藤 アウトドア感のあるこの2色で、『デリカミニ』の世界観をより強く伝えられ、そして“選ぶ楽しさ”が増えて、お客様から「カラーも進化したね」とポジティブな反応をいただけて良かったです。
『デリカミニ』の世界観をチームで共有
後藤 スケッチ段階からカラーチームの意見を反映しました。いつもなら立体感や形を表現しやすいシルバーやグレーで絵を描くところもサンドベージュパールでスケッチしながら形を決めていきました。チームで社外へリサーチに行って、体験を共有しながら世界観を作っていきました。山本さんが「こんな世界観にしたい」「こんな人に乗ってほしい」という写真を集めたムードボードをつくってくれたことも部内外のイメージ共有に役立ちました。さらに今回はターゲットユーザーをイメージした等身大のアバターパネルも作って、それをデザインモデルの横に置いて世界観がマッチしているか、検証しながら造形するという試みもユニークでしたね。
山本 等身大のパネルは、インパクトがあってモデラーから「視線を感じて作業に集中できない」というクレームもありました(笑)。でも、具体的に「この人に乗ってもらいたい」というイメージをチーム全体で共有できたのは大きかったと思います。
加藤 カラーのレビューでも等身大パネルを借りて、想定ユーザー像を共有し、それに基づいた説得力のある色の提案ができたと思います。
後藤 初代『デリカミニ』が高い評価を得ていたこともあり、「新型はどうなるのか」と不安の声も耳に入ることがありましたが、新型を見ていただいたお客様やジャーナリストからは「初代をリスペクトしつつ進化している」と高い評価をいただき、うれしかったですね。
中村 「この色ならいける」と思って出した提案でも、市場に受け入れられるまでは怖さがありましたが、結果的に多くのお客様に支持してもらえて本当にうれしいですね。カラーにしてもインテリアにしても、最後まで世界観に沿った形で提案できたことが“『デリカミニ』らしさ”につながったと思います。
後藤 クルマというのは、毎日の通勤や買い物、レジャーなど、常に一緒に過ごす、まさに相棒と呼べる存在です。今回の『デリカミニ』は、「感情を移入できるアバター」のような存在としてその”相棒感”をより強く体現できていると思います。
デリカミニをご検討中のお客様、デザイナーを目指す方へ伝えたい想い
加藤 『デリカミニ』として、本当に完成度の高い一台に仕上がったと思っています。ボディカラーは『デリカミニ』らしい色がさらに充実していますので、ぜひ悩みに悩んで、自分に合う“相棒”の色を選んでください。
中村 新色は女性のお客様でも選びやすい色に仕上がったと思います。ただ、かわいらしくなりすぎないように調整したので、男性のお客様にもきっと選んでいただけるはずです。
後藤 三菱自動車には『デリカ』をはじめとする強いブランドアセットがあり、やりたいことをみんなで一緒になって実現するパワーもあります。携わったみんなのこだわりを形にできたからこそ、お客様に満足してもらえる商品を届けられたのだと思っています。そういう意味でこのプロジェクトは本当に幸せな経験でした。
山本 三菱自動車という会社は、勢いに乗ると“やりすぎるくらい全力になる”ところがあると思っているのですが、このクルマもまさにそうだったように感じます。妥協せず、やりたいことをとことん突き詰めた結果、公式キャラクターのデリ丸。含め、その世界観をここまでつくりあげることができました。私自身、このプロジェクトを通じてデザイナーとして大きな学びを得られましたし、こうした経験を今後の仕事にも活かしたいです。
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