「クルマとイラストが好き」が原点。ユーザー目線に立って機能美を形にする
──まずは、クルマやデザインに興味を持ったきっかけを教えてください。
山道:もともとイラストを描くことが好きで、とくに風景などの模写が得意でした。そのうち、クルマ好きの父や兄の影響で私も興味を持つようになり、自然とクルマのイラストを描いたり、自分でエアロパーツ(走行性能を高めたり、ドレスアップしたりするための外装部品)のデザインをしたりするようになったことで、カーデザイナーになりたいという想いが芽生え始めました。
福井:私は自分でクルマをカスタムすることが好きで、整備士をめざして工業高校に進みました。ある時、カスタムメーカーの方と話す機会があり、カスタムパーツも意図をもってデザインされていると知ったのです。
また、「3Dを使えるようになるといいよ」とアドバイスをいただきました。その後、いろいろと調べていくうちに、カーデザイナーという職業があることを知り、「自分はカーデザイナーになりたい」という新たな目標ができました。
大沼:私は小学生の頃にアメリカに住んでいて、移動手段はいつもクルマでした。車窓から対向車を眺めて過ごすうちに、「このクルマはかっこいいな」と感じることが増えていきました。もともと幼少期から絵を描くことが好きだったこともあり、しだいに「自分でクルマをデザインできたらいいな」と思うようになったことがきっかけです。
実際に、小学6年生の頃に書いた「20歳の自分への手紙」にも、「カーデザイナーになる」と書いてあり今も嬉しさを実感してます。
──デザインを本格的に学ぶようになったのは、いつからですか? また、デザインのおもしろさを感じた部分も教えてください。
山道:大学でプロダクトデザインを学び始めました。それまであまり工業製品に触れてこなかったので、製品の仕組みを学びながら、「ただかっこいいものを描けばいいわけではない」と知りました。「人がどう使うか」という視点からデザインが展開されていくプロセスが、とても興味深くて。ユーザーの目線に立って機能美として形が生まれていく感覚がおもしろいなと感じました。
大沼:私もプロダクトデザインを学び始めたのは大学に入ってからです。それまで自分なりに絵を描いていましたが、プロダクトにすることは全然違うのだと、すぐに思い知らされました。その難しさは今でも感じていますが、そこがプロダクトデザインのおもしろいところだと思っています。
福井:私の場合は高校卒業後、専門学校に進み、スケッチからモデル化まで、カーデザインの一通りのプロセスを学びました。私はもともとクルマが好きで、とくにシルエットやバランスを見ているのが好きだったのです。なので、「自分の理想とする形を実現させて走らせられたらおもしろいな」と思いました。
インターンシップで感じた温かい雰囲気と、若手社員も活躍できる環境が入社の決め手
──就職活動で重視していたことと、三菱自動車に入社を決めた理由を教えてください。
福井:私は大きいクルマが好きなので、大きいクルマをデザインできる会社に行きたいと思っていて、もともとは別の企業を志望していました。そんな中、三菱自動車との産学共同プロジェクトをきっかけに、三菱自動車の車種展開が意外と自分の好みに合っているのかなと思ったのです。
そこで、インターンシップに参加することを決めました。課題をもらい、1週間ほどかけてスケッチをしたり、形を考えたりして、最終日に成果を発表するという流れだったのですが、その過程で親身になってアドバイスをもらえたのが印象的でした。さらに、自由な雰囲気で若手デザイナーも活躍できる環境があると聞き、早い段階から多くの経験を積めることに惹かれたことが入社の決め手です。
大沼:私も福井さんと同様に、大学で産学共同プロジェクトに取り組む機会がありました。その制作過程で描いたスケッチやクルマの意匠について、講師の方々から「これ、三菱らしくていいね」と評価していただいたことが、三菱自動車を志望するきっかけとなりました。自分が好んできた造形が受け入れられた喜びと同時に、造形に対するオリジナリティへの強いこだわりが、他社にはない三菱自動車の魅力であると感じました。
また、産学共同やインターンシップを通じて社員の方々と関わる機会があったのですが、その際に感じた雰囲気の良さも大きな魅力でした。外国籍の方が多く、英語でのコミュニケーションが活発なことで、フランクに意見を交わせる環境が整っており、若手でも着実に成長し活躍できる風土があると感じました。こうした環境の中で、自分の感性をさらに磨きながら価値を発揮していきたいと考え、入社を決めました。
山道:私は、当初は志望を狭めずにいろいろな企業のインターンシップに参加していました。その中で三菱自動車に決めたのは、力強くて大きなクルマのエクステリアをデザインしたいと思っていたことと、インターンシップでの印象が理由です。
2人が話しているように、講師の方が親身に指導してくれたことはもちろん、「うちは他の自動車メーカーに比べて規模は大きくないけれど、そのぶんさまざまなプロジェクトに関わることができる」と聞いたのです。若手のうちからいろいろな挑戦をして成長したいと思っていたので、自分に合っていると感じました。
──皆さん、インターンシップでの経験が入社の決め手になったのですね。入社後は、どのようなステップで研修を受けたのでしょうか。
山道:まずは1カ月、会社のことや社会人としての基礎を学ぶ研修を受けます。その後2カ月ほど、工場でのライン作業やディーラー(販売店)での店舗実習を経て、本配属となります。
大沼:私たちの場合、配属後はエクステリアの教育から始まりました。まずはホイールのデザインプロジェクトに入って、数カ月かけてデザインを作ります。その後、インテリアの教育に移り、コンセプトを立てるところから実際のデザイン作業までを行います。
福井:入社から1年経ったタイミングで、教育の成果としてそれぞれが作品を発表する場も用意されていて、英語でプレゼンします。
大沼:発表には、オンライン参加者も含めてデザイン本部全員が集まります。大勢の前でプレゼンをすることは、とても貴重な機会で、非常に良い経験ができたと感じました。自分が自信を持って取り組んできたことへの再確認ができる場であり、自分の強みである英会話もアピールできたと思います。
山道:英語でうまく説明できたかどうかは少し不安もありましたが、そのぶん、スライドに思いを込めたので、伝えたいことは伝えることができたと思います。これからの業務でも、言語を超えて、絵で思いを伝えることができるように頑張ります。
──現在(2026年5月)の平均的な1日の仕事内容も教えてください。
山道:出社したらメールチェックなどの事務作業をした後、現在参加しているインテリアデザインに関するプロジェクトの作業をしています。デザイン画を描くことはもちろん、イメージを明確にするためにディーラーや製造現場を回ったり、イベントに参加してレポートを書いたりすることもあります。
大沼:プロジェクトチームには教育担当の先輩がいるので、週に1回フィードバックのミーティングがあります。もちろん、それ以外にも悩んでいるポイントがあれば相談に乗ってもらいながら仕事をしています。
福井:私は、出社したらまず自動車業界の最新情報をチェックすることを習慣にしています。新しいクルマが出ていたら、どの部分が新しいのか、どんなチャレンジをしているのかなどを自分なりに分析しています。
先輩との力の差は自分の伸びしろ。意思を通せるフラットな関係性が成長の秘訣
──入社後、とくに印象に残っている出来事を教えてください。
福井:教育で作成したデザインが、実際のプロジェクトでピックアップされことです。提案したデザインを先輩が磨き上げていく過程では、私が想像していなかった面の貼り方や丸みのつけ方をしていて、「こういうアプローチがあるんだ」と勉強になりました。
大沼:私も同じような経験があります。自分が作ったホイールのデザインを採用していただいたのですが、先輩方が手を加えると、線一本、角度一つとっても精度が上がっていくことが大きな学びになりました。
同時に、実力差を目の当たりにして、3Dの技術も含めたスキルアップが必要だと痛感しました。「最後までデザインする力」がまだまだ足りないので、隙間時間を見つけて精度を上げる訓練をしています。
山道:私は2人と違って、ホイールのデザインが採用されませんでした。それがとても悔しくて印象に残っています。2人が次々とデザインを描いている中、自分だけ手が止まっていて……。なんとかしようと焦って空回りして、良いデザインが出せなかったんです。
自分は何がしたいのかを明確にできていなかったことが原因だと反省して、その後は「このクルマのコンセプトだと、どのような機能が必要なのか」「どんな人が、どんな気持ちで乗るのか」などをまとめたストーリーボードを描いてからデザインを考えるようにしました。
──自分の中でイメージを明確にすることが大切なのですね。実際にデザインが浮かびやすくなったなど、手応えはありますか?
山道:そうですね。デザインを考える時にアイデアを整理しやすくなりましたし、周りの人からの反応も良くなりました。
福井:私も以前、自分のやりたいことができなかった苦い経験があり、先輩から「自分が『これだ』と思ったら、意思を通した方がいい」とアドバイスをもらったことがあります。
東京オートサロンの展示車両に貼るグラフィックシールのカラー選定を担当した際は、自分の直感を信じた上で、「なぜこの色がいいのか」という根拠も添えて提案したところ、採用してもらうことができました。若手でもそういった意思を示せるのは、この会社の風通しの良さもあると思います。
──皆さんが入社前に感じていた通り、フランクな雰囲気があるんですね。
大沼:たとえば、廊下ですれ違う先輩たちも気軽に声をかけてくれます。いろいろな国の人がいて、それぞれの国の価値観や文化をもとにしたフィードバックをもらえることもおもしろいですね。
福井:仕事終わりに皆で遊びに行くこともありますし、上下関係なくフランクに付き合える関係性がすごくいいなと思っています。
海外でも経験を積みながら、絵でコミュニケーションできるデザイナーをめざしたい
──今感じている、カーデザインのおもしろさを教えてください。
大沼:まだ実績と呼べるものはありませんが、自分が「こんなクルマがあったらいいな」と思い描いたデザインが採用されて、これから世に出るかもしれないというワクワク感があります。それに向けていろいろなスキルを身につけていかなければいけませんが、成長できることが楽しみです。
山道:製造工程や性能といったさまざまな要件と自分の望むデザインを両立させていく難しさがあって、そこが腕の見せどころでもあり、おもしろさです。自由に造形できていた学生時代とは違って「縛り」があるのですが、若手ならではのフレッシュさを残したデザインを作りたいと思っています。
福井:私は、この1年で「かっこいい」の定義が広がりました。学生時代はコンセプトカーと量産車のデザインの違いに戸惑うこともあったのですが、今は「なぜこのデザインになったのか」という背景を含めた「そのクルマだから感じられるかっこよさ」がわかるようになりました。
──これからの目標や、めざしているデザイナー像を教えてください。
山道:量産車・コンセプトカー問わず、いろいろなプロジェクトに関わっていき、いつか「デリカ」のデザインに携わりたいと思っています。また、英語力を磨いてドイツにある拠点で働いてみたいです。海外勤務を経験した人は視野が広いと感じますし、海外のユーザーがクルマをどう捉えているのかを実際に体感したいのです。
福井:私もデリカに携わることが目標です。そのために、さまざまなプロジェクトで経験を積んでいきたいです。また、デザイナーとして「絵でコミュニケーションできる人」になりたいと思っています。自分の意思を絵で伝えられる、絵で指示を出せるようなデザイナーをめざしています。
大沼:私も、絵や3Dで自分の意思を表せるようになった上で、英語も含めた言葉でのコミュニケーションができて、海外でも活躍できるデザイナーになりたいです。そしていずれ、SUVやスポーツカーのデザインをしてみたいと思っています。
──最後に、カーデザイナーをめざす学生にアドバイスをお願いします。
山道:さまざまな会社のインターンシップに参加してみるのがおすすめです。会社ごとにデザインの考え方が違うので、多種多様なデザイナーと関わることで、広い視野でデザインを考えられるようになると思います。(三菱自動車デザインインターンシップ情報)
福井:いろいろな場所に行って見聞きすることはもちろん、毎日1枚でも絵を描くなど、デザイナーとしての習慣を持っておくといいと思います。
大沼:目の前の課題を楽しみながら全力でやりきることが大事です。その姿勢があれば、絶対に成長できると思います。
※ 記載内容は2026年5月時点のものです
