日常に「アドベンチャー」を。デリカミニに込めた遊び心とデザインへの探求心
──まずは、新型デリカミニがどんなテーマをもとに作られたのか教えてください。
中田:ターゲットとしてはこれまで三菱自動車をご愛顧くださってきた方々はもちろん、より若年層や女性の方にも乗っていただけるようなクルマを想定しました。従来の当社のクルマといえば「かっこいい」「男らしい」イメージが主流でしたが、よりキャッチーでポップなイメージを大切にデザインしたことが新型デリカミニの特徴です。
開発のコンセプトは「デイリーアドベンチャー」。パジェロやアウトランダーなどの三菱自動車のクルマは非日常へも出かけられることをベースにしていますが、新型デリカミニは日常でアドベンチャーを体験してほしいという思いを込めてデザインしています。走行状況に合わせて5つのドライブモードが選べるのですが、切り替えた際のモニターのデザインを見て「こんな道も走れるんだ」「ちょっと遠くへ出掛けてみたい」と冒険心を掻き立てるきっかけになればいいなと思っています。
加藤:車種名に「デリカ」とついていますので、あくまで三菱自動車らしさからは大きくかけ離れすぎないよう注意しながら、新しいユーザー層をターゲットにしたところが挑戦したポイントです。三菱自動車の高い機能性や技術をアピールしつつも、遊び心を取り入れるバランスは意識して取り組みました。
私がもともと三菱自動車に持っていたイメージは「力強さ」や「タフさ」だったので、新型デリカミニのすこしかわいらしいキャラクターはいい意味で外れたところにあり、やりがいを感じました。
──UX/UIグループのチーム構成や雰囲気について教えてください。
中田:愛知県と東京都のスタジオに分かれて在籍しています。メンバーの半数以上が20〜30歳代で、基本的にデザイン系出身者が多いですね。私を含め新卒入社者が半数以上で、残りのメンバーは自動車産業以外からも多彩なバックグラウンドを持った人が集まっています。
上司がよい意味で仕事を任せてくれることが多いので、とても自由闊達に仕事ができていると感じています。基本メンバーに進行を任せてくれるのですが、迷った時は「こうしたら?」とアドバイスをくれるんです。私が配属された時も「じゃあデリカミニお願いね!」という感じで(笑)。実際にはメーターとセンターディスプレイの全体管理を行いました。
加藤:メンバー同士は年齢も近いので仲がよく、和気藹々とした雰囲気です。私はドライブモードを示す画面のデザインを担当し、イラストを作成しました。部署内は担当する車種に関係なく横のつながりがあるので、デザインで迷った時は他のメンバーにも相談して、フィードバックをもらいながら作成できたことが非常に心強かったです。
グラフィックの力でクルマを変える。若手デザイナーたちが挑んだ新しい表現への道
──おふたりの学生時代と、三菱自動車に入社されたきっかけを教えてください。
中田:工学系の大学でデザイン・経営・工学を複合的に学び、プロダクト系の研究室で家電などの提案をしていましたが、自分にはグラフィックやソーシャルデザインの方が合っていると感じていました。
自動車業界に興味を持ったきっかけはインターンです。「そういえばクルマが好きだったな」と気づき、父がよく三菱自動車のクルマに乗っていたことから入社を決めました。入社後はさまざまな車種のメーターや細かなコンテンツに関わり、今回新型デリカミニの開発に携わることになりました。
加藤:私はもともと個人的に油絵を学んでいたほか、海外の大学でグラフィックデザインを専攻していました。その大学でクルマのデザインが盛んに行われていたことをきっかけに自動車業界に興味を持ったんです。中でも三菱自動車は国外で活躍しているイメージがあって、国際的な仕事ができそうな点に惹かれて入社しました。
入社早々配属されたのが、新型デリカミニの開発です。おそらく今回のターゲット層に近い属性を持っていたからこそ、選んでもらえたのかなと思っています。
──新型デリカミニ開発において、とくに苦労されたことを教えてください。
加藤:ドライブモードのイラスト化自体が大きな挑戦でした。これまで当社のクルマでは写実的な画像を用いてドライブモードを表現してきたことが多かったので、今回イラスト化にあたって具体と抽象のバランスには苦労しました。路面状況を確実に伝えるためにはある程度の描き込みが必要ですが、イラストとしてキャラクター性やかわいらしさを持たせるには書き込みを省いてシンプルに見せる必要があります。そのちょうどいい塩梅を探るためにかなり調整しました。
そこでサポートしてくれたのが同じUX/UIグループや他のデザイン・戦略部の先輩方です。さまざまな方の意見をもらっては描き直し、また見せて描き直す……そう言った繰り返しの中で最終的によいバランスに仕上がったなと思っています。
中田:私はタコメーターのデザインにかなり工夫を凝らしましたね。通常のメーターは黒地に白い文字を置くことが多いのですが、新型デリカミニは先進性やかわいらしさを重視したことから白地に黒い文字を置くことにしたんです。
それに対して評価部門から「見えにくいのでは?」と懸念をもらったので、とにかくたくさんのサンプルを作って昼夜で検証を重ね、一番見えやすいパターンを見つけ出しました。その結果、評価部門からもGOサインをいただけて、うれしかったですね。
安心安全の機能を、人の気持ちを豊かにする体験へ。若手が気づいたデザインの本質
──新型デリカミニの発表にあたって、社内外の反響はいかがでしたか?
中田:ヘッドライトを模した「目」がパチパチと目覚めるオープニングムービーを社内で発表した時、すごく反響がよかったんです。レビューの時から雰囲気が違っていて、海外のメンバーも含め、みんなが「いいじゃん!」と盛り上がってくれたことをよく覚えています。その後1号車ができた時にも、商品戦略本部のメンバーから「あれすごくいいね!」と褒めてもらえて。発売前から「やってよかったな」と手応えを感じました。
また発売後は動画投稿サイトなどにも好印象を持つレビューが多く掲載されていましたね。「オープニングムービーかわいいね」「ドライブモードの画面もひと工夫あっていいね」などとコメントされており、方向性として間違っていなかったと実感しています。
──初めてのプロジェクトを通じて、加藤さんが気づいたことや学んだことはありますか。
加藤:本当にすべてが学びにつながりましたね。とくに大切だと学んだのは、自分からコミュニケーションを取りにいくことです。もともと私は部署内でも奥まった座席にいて存在感が薄かったと思うのですが(笑)、さまざまなメンバーの意見を聞きにいくうちに顔を覚えてもらえるようになり、廊下ですれ違うと声をかけてもらえるようになったのも大きな収穫でした。
中田さんには私のメンターを務めてもらい、使い慣れないソフトウェアについて相談させてもらったり、頻繁に進捗を確認してもらったりしていました。
中田:加藤さんは最初から本当に優秀でした!とくに素晴らしいのはアイデアをはじめから20パターンくらい持ってくるところです。多くの人が1〜2パターンしか用意できないところを一気にそれだけ持ってきて、一つひとつ説明しながら「どれがいいと思いますか?」「私はこういう理由でこれがいいと思うんです」と話してくれるところが本当に素晴らしいと思いました。
──中田さんは今回のプロジェクトを通じて、変化したことはありますか。
中田:車の機能を活かして、人の気持ちをより豊かにさせることを考えるようになりましたね。たとえば、メーターは本来安心安全のための機能部品ですが、新型デリカミニでは「冒険に誘う窓口」として捉え直し、赤信号で止まった時にメーターの白い丸が心臓の鼓動のように動く「ウェイティングアニメーション」を作成するなど、ペットのような愛着感が湧くさまざまな工夫を凝らしました。
単なる機能にひと工夫加えることで人の気持ちを動かせることが、自分の中で大きな気づきとなりました。
違う意見があるから、よいものが生まれる。個性を活かし合うUX/UIチームの挑戦
──新型デリカミニ発売後はどのような業務に取り組んでいるのでしょうか。
加藤:新しいクルマの開発に携わっています。新型デリカミニの時のように1つの画面に注力するのではなく、さまざまなコンテンツの画面を担当しているので、新たな学びがあります。
また、これまで通り自分がいいと思うアイデアだけでなく、その途中経過でできあがった副産物も合わせてメンバーに見てもらうことで、そのクルマにとってもっともよいデザインが生まれるよう工夫しています。
中田:私も新型デリカミニとは打って変わって、「THE三菱自動車」と言えるようなGUIの先行開発をしています。新型デリカミニの開発で学んだ「どうしたら人の心をつかめるか」といった点を意識しながら、数年後の未来にお客さまに喜んでいただけるような製品を作りたいです。
──今後三菱自動車で挑戦してみたいことは何ですか。
中田:日本では20-30代の車離れが進んで自動車産業全体が大変革の時代にある一方、中国車が進んでいる現状があります。中国車のすごいところって、今私たちがやっているようなメーターやセンターディスプレイの部分なんですよね。
私はかつての自動車産業が盛り上がっていたころのビンテージカーやクラシックカーの熱量が好きです。昔の車は凄い熱量で開発、文化醸成が行われていたかと思います。私たちもそれに負けない熱量で新しい価値を作りだし、日本の自動車業界を今一度盛り上げたいと思っています。
加藤:中田さんの言うとおり、中国車の勢いは本当にすごいです。見た目もかっこよく、機能性も高いものが多いんですが、一方でみんな似たような形になっていくような雰囲気も感じていて。
そこで新型デリカミニのような遊び心を組み込んだクルマや人に寄り添うようなキャラクター性のあるデザインを作っていけたらいいなと思っています。
──最後に入社を考える方にひと言お願いします。
加藤:UI/UX分野は他のエクステリアやインテリアと比較すると、最初から専門的な知識を求められるわけではなく、自動車に詳しくない方でも挑戦できると思います。
また当社は一人ひとりの裁量が広く、手を挙げればさまざまなことに挑戦できる環境があります。ぜひ、いろんなことに挑戦して、自身の糧にしていただきたいです。
中田:UX/UIグループは、みんなが個性的なチームです。そのため、ぜひ幅広い個性のある方々に集まっていただきたいですね。時には議論が白熱することもありますが、みんなが違う意見を持っているからこそ、さまざまな意見が生まれ、よい結果につながっていると思います。自分らしさを活かし、新しいことに挑戦したい方をお待ちしています。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです
