言葉を形に、魅力を引き出す──デジタルモデラーがキャリアのスタート
多くのプロジェクトに携わってきた今田。デジタルモデラーとしての22年間を振り返り、入社後の様子をこう話します。
「入社してからは毎日が勉強でした。
デザイナーの求めていることと、自分がやろうとしていることを一致させ、要求されたところまで到達させることがすごく難しかったです。
画面内で立体化したデータを見てもらい、『ここはもう少し張りがほしい』『こっちは面の流れをこう変えたい』といった意見をもらいます。デザイナーと言葉でやりとりした後に、その言葉を形状に変換してデータに反映することに苦労しました。
学生のころに学んだことは主に設計や製図で、角は何R、表面粗さは1/1000mmなど明確な図面指示のもと立体を作ることができたんですが、デジタルモデリングでは数値で追えなかったんです。ひたすらにトライ&エラーの繰り返しです。デザイナーで言えば毎日スケッチを描きまくるような(笑)。あとは、いろいろな車の面の流れや張り、ダイナミックさの出し方などを見てひたすら自分に取り込んでみたりもしました。
当時は、デザイナーの考えていることを、言葉だけで捉えて作業していたんだと思います。ニュアンスやさじ加減を理解できていなかったため、混乱してしまい、自分自身が何をしたいのかがわからなくなったこともあります」
その後、歴代のアウトランダーやさまざまなプロジェクトに参加した今田は、デジタルモデリングの広い領域で活躍の場を広げます。
「デジタルで私が担当していたフェーズは、大きく2つあります。1つめが、アイデアスケッチの魅力を引き出し3Dデータ化する先行段階。2つめが、設計要件を織り込み、高品質なデータ面『クラスAサーフェス』を作りこみ、製品として成り立たせる量産段階。そのどちらも担当することができました。
先行段階では、デザイナー並みのスケッチセンスが求められます。2次元を、ゼロから3次元に作り上げるので、アイデアスケッチでは表現しきれていないところも立体として成立するようにモデリングします。
クラスAサーフェスを3D-CADで作りこむのは、高度なテクニックとロジック、そして、トライ&エラーを繰り返す根気が必要です。きれいなデータにすることは良いことではあるのですが、整えすぎると形そのもののメリハリがなくなって、ダイナミックさや魅力もなくなってしまうことがあります。
デザイン本部には、アイデアスケッチの魅力を引き出してスピーディーに立体データを作るのが得意な人や、商品として成り立つように設計要件を入れていくのが得意な人もいれば、両方得意な人もいます。人それぞれの特性を活かして、適材適所で担当しています」
さまざまなプロジェクトを通じて、開発から商品の完成・発売までを経験した今田は、その喜びややりがいを、こう話します。
「幼いころから車が好きでした。父が乗っていた車が三菱の車だったので、高校生のころには三菱自動車に入りたいと思っていました。夢だったカーデザイン、自動車開発に関わることができて、さらには、自分が手がけた車に両親が乗ってくれたり、自分が担当した車がミニカーなどの玩具になって子どもが遊んでいたり、他の親子が玩具を購入してくれたり。そんな光景を見かけると嬉しくて、やりがいを感じます」
また、開発力の強化のために海外の協力会社(アウトソース先)の開拓をしたことも、思い出深い経験です。
「数カ月の短い日程でしたが、開発のプロセスや3Dデータの成果物に求められる品質レベルなどを教育(ティーチング)しました。英語や現地の言葉でのやりとり、文化の違いに苦労しましたが、現在でも当社の開発力の1つとして活躍していただいているので 、自分の取り組みが実を結んでよかったと思っています」
プロジェクトの調整役として、広い視野で自動車開発をサポート
デジタルモデラーとしての経験を活かし、今田は新たな役割に挑戦します。それが、プロジェクトの調整役であるコーディネーターです。
「コーディネーターの仕事はプロジェクトをスムーズに進めることです。日程、目的、必要なことを伝えて、それぞれの役割を明確にします。仕様に変更があった場合は、素早い計画の変更も求められます。社内でデザイン検討をする日に合わせ、最新の形状を反映しつつ、検討に必要な品質も担保する必要がありました。
それまでは、デザイナーと1対1で仕事をすることが多かったのですが、今度は1対多数。サプライヤーなど、関わる人数も工程も増えました。デジタルモデラーのときと比べて、もっと俯瞰して広く物事を見ることが必要になったんです。
私1人で何とかするわけではなく、みんなで決めていくことですから、判断するための材料を集めるのも私の役割です」
新たな役割を歩んだ今田は、コーディネーターとして大切にしてきたことをこう話してくれました。
「日々の業務に慣れてきても、いつも同じことを淡々とこなすのではなく、1つでも新しいことを取り入れようと心がけてきました。
たとえば、前回はうまくいったことでも満足せずに、プロセスごとの目的に合わせて『今度はここの品質を向上させよう』と改善を繰り返すのです。
そのときに気をつけることは、バランスです。理想のモデルを実現するためには、予算や時間をかければいいということではありません。予算を抑えて、効率的に高品質なモデルにするためには、どうするか。常にアンテナを張って、協力しながら商品の魅力や品質の向上に取り組んでいます」
カーデザイン開発の設備計画で商品力UPに挑戦!
デジタルモデラー、そしてコーディネーターとして実績を残してきた今田は、さらなる挑戦をしています。
「現在、デザイン本部の開発力の強化のために、設備の投資計画立案にも携わっています。
ここでも重要なのはバランスを考えること。『予算があるから、これを買おう』ではなく、費用や効果、性能などを既存の設備ときちんと比較して、メリット・デメリットを整理して資料を作成します。承認者である部長や本部長と、経営者目線で話ができるかを意識しながら取り組んでいます」
投資計画の基本的なプロセスは押さえつつ、今田はここでも自分なりの工夫をしています。
「私が一番に考えるのが、みんなのパフォーマンスを最大限発揮させる環境を作ることと、安全に開発ができること。
開発力が向上すれば、プロジェクトに関わるすべての人のモチベーションやパフォーマンスに貢献できます。今までは、自分の手を動かすことで開発に関わってきましたが、間接的に、より広く商品力や会社の将来のための貢献ができていると思います」
インターンシップを通じて接する学生への想いと、今田自身のキャリアプラン
設備の投資計画に加えてもう1つ、将来に向けた重要な計画について、今田はこう語ります。
「新しい仲間を迎えることも、大切な将来への投資ですよね。現在、新卒採用のインターンシップ運営も担当しているのですが、当社に興味を持ち、『この人たちと働きたい』と思ってもらえるような運営を心がけています」
インターンシップに参加する学生はもちろん、これから将来を考える人たちに向け、こんな想いを話します。
「これは私自身も経験していることですが、同じデザイン本部にいても、さまざまなフィールドがあり、視点や視野が変わる経験ができます。
デザインに関わる仕事ですから、もちろんスキルやセンスも大事です。でも、一番大事なのは、多くの人と協力して開発していくためのコミュニケーション。1人でやろうとせず、周りの人たちと協力し、引っ張っていくことも必要です。
より良いものを作るため、ときには意見が食い違うこともありますが、同じ方向を向けるように必要なことを伝える能力も大切です」
インターンシップは、今田が何より大切だと考える、チームワークを体験する機会でもあります。学生たちには、積極的にコミュニケーションをとってほしいと話します。
「もし入社してもらえたら、インターンシップ参加者同士は同期になりますよね。なので、ぜひ積極的にコミュニケーションをとって、お互いに刺激を与えあってほしいと思います。
もちろん、学生同士だけではなく、私や講師役のデザイナーにも、何でも聞いてください。いずれは上司と部下、先輩と後輩として、もっと熱くぶつかり合うかもしれませんから。私たちも、学生の皆さんから学ぶことがたくさんあるんですよ」
積極的にフィールドを変えながら、スキルアップ、キャリアアップしてきた今田。最後に自身のキャリアプランについて、こう語ります。
「あくまでもプランの1つですが、一番経験の長いデジタルモデラーにもどることも考えています。コーディネーターで身につけた調整力や、投資計画の知識などを活かして、デジタルモデリングのプロセス改革、PCなどのハードウェアの増強、個々のスキルアップなどに取り組みたいんです。さまざまな経験を積んだからこそできる、デジタルの開発力の底上げをしてみたいですね」
これまでの経験のすべてを活かして会社に貢献する──今田の挑戦はまだまだ続きます。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです

