部門の垣根を越えた議論の先に──UX/UIチームの仕事
前職ではブランディング・グラフィックデザインを中心に担当していた小野塚。現在所属するUX/UIグループの業務についてこう語ります。
小野塚 「まず、UX(ユーザーエクスペリエンス) についてですが、メーターやディスプレイ、画面内の動きや表示を通じてお客様にどういった体験を提供できるのかというユーザーファーストなアイデアを考えています。 一方、UI(ユーザーインターフェース)はお客様との接点として画面内のグラフィック、メーターや操作する画面のデザイン、お客様が見て触れる外観を表します。
UXだけでは企画的な色が強くなってしまうのでUX/UIの両方を見ながら、最終的な成果物としてグラフィックを作っています。
三菱自動車のUX/UIグループは自動車のメーター、ディスプレイのグラフィックやワイヤーフレームと呼ばれる基本的なレイアウトの構造的な部分、それからロゴマークや車体に貼るデカール、会社内でのグラフィック案件も部門を超えて参画するなど幅広く担当しています」
UX/UIは見た目だけでなく、それらを通じてお客様が得られる体験も提供しています。小野塚が現在担当しているプロジェクト、今までに印象に残っている仕事についてこう話してくれました。
小野塚 「最近ではメーターやIVI(In-Vehicle Infotainment )を担当しています。短い期間で進めなくてはいけないので、プレッシャーも感じますね。並行して、もう一つのプロジェクトでは提案したコンセプトが採用されたこともあり、グループのメンバーとデザインの検討や議論を重ねています。
議論の中で衝突することもありますが、デザイン本部だけではなく部門を越えたクロスファンクショナルチームで多角的な目線、考え方を持つ方々と広く協力いただきながらデザイン開発を進めています。
もう一つ印象に残っていることでは、車体に張り付けるロゴマークも担当しました。前職ではデータ形式での納品や平面的なWebサイトのデザインが多かったので、自分の作ったロゴマークがWebや紙媒体で使われるだけではなく、車体に張り付けるエンブレムになる経験は『こういう形で立体になるのか!』と新鮮でおもしろく、強く印象に残りました。新たな楽しみを見つけたというか、今でも自分が作ったロゴを見るとモチベーションが上がりますね」
UX/UIデザイナーが明かす、仕事に情熱を持ち続ける方法とは?
数々の仕事、業務をする上で欠かせないモットーがあると小野塚は言います。
小野塚 「『まず好きになる』こと。前職のときからそうなんですけど、どんな仕事にでも、すごく興味の沸くパートもあれば、全然わからないことや興味が持てないことがあると思うんですよね。なので、まずは興味を持って好きになることを大切にしています。
そういう考えで業務に取り組むと『ここをこうするともっと良くなる』とか『本当はこうしたいんじゃないかな』と考えを巡らせることができます。 ポジティブな気持ちで取り組むことで、その結果アウトプットも『仕事だから~』と惰性で取り組むより良い仕上がりになると思っています」
そんな小野塚は、コンセプトやイメージを伝えるときに思った通りのアウトプットを得るために、ある工夫をしています。
小野塚 「相手を信頼してお任せするパートと『こうしてほしい』『ああしてほしい』というパートでは詳細をきっちり伝える、そんなメリハリを心掛けています。
はじめて依頼する方やあまりイメージが決まっていないときは、必要最低限のイメージを伝え、相手から考えを引き出すことも大切なことだと思っています。そこから、思いもよらないアイデアが出てきたりするので。
その後、段々と形になってきて細かな調整や修正をお願いすることがあるんですが、その際『こうしてほしい』『このタイミング』『こういう絵にしてほしい』と赤字で詳細を書き込んで、画面のピクセル単位で要望を入れています。 逆に、もう少しアイデアを引き出したい、調整してほしいというところは相手を信頼してお任せする形で進めるようにしています」
小野塚は大切にしている価値観についてこう話します。
小野塚 「お客様の存在は絶対に意識しないといけないと思っています。自動車は高価な買い物ですし、ある種の期待をもって購入していただいているところも踏まえています。
たとえば、単純にわかりやすさや使いやすさだけを求めて突き詰めるのであればシンプルな表示のメーターやIVIになってしまいますが、『三菱自動車のデザインとしてそれだけでいいのか?』と自問自答やチーム内で話し合うことも大切です。シンプルにしすぎると個性がなくなってしまうのでバランス取りも難しく毎日悩んでいます」
前職の経験を活かし、真正面から業務に取り組む小野塚。仕事にフィードバックできるアイデア、刺激を得るためにしていることがあると言います。
小野塚 「自動車のデザインだけではなく、日頃からヒントを探すようにしています。去年動物園の年間パスポートを買いました。最初は子どもと休日に出かけるためだったんですが、自分がハマってしまって(笑)。いかに園内をおもしろく見せるとか、見る人が新しい発見をして興味が持てる工夫が随所にあるので、学びもありますね」
UX/UIデザイナーへの転職の想いときっかけ
小野塚 「前職ではブランディングやグラフィックデザインを担当していました。デザイナーさんだけでなく、社内外の様々な人とチームを組んで、一つの目標に向かってものを作り上げていくことが非常に楽しかったんです。
そういった経験からインハウスのデザイナーとして提案したり携わることで、企業のブランドや商品の魅力を作り上げていけるような取り組みをもっとやりたいという想いがありました。
個人的には、自動車は思い出や記憶に残る部分が多く、他のプロダクトとはすこし違うと感じていて、そこに関われる仕事がしたいと思っていました。日本を代表する産業の一つですし、そこに関われることが私にとって大きなモチベーションとなり、情熱をカタチ作っていく要素になっていると思っています」
ブランドを作り上げていくという気持ちを胸に、自動車というプロダクトに携わり情熱を注ぐ小野塚。入社後に感じたギャップについてこう語ります。
小野塚 「大きい企業だったので、漠然と、特定の業務のみ担当するのかなと思っていたんですが、手を挙げれば多様な業務に参画できるところが良い意味でのギャップでした」
そして、前職から得た経験も現在のフィールドに活かせていると言います。
小野塚 「前職ではクライアントワークが中心でした。発注側からすると、打ち合わせの段階では言えることと、機密上言えないことがあるので、仕事をいただく側としても伝わってくる情報に曖昧なところがあると思っていました。
これまでの経験の中で、情報や考えを伝えることが曖昧でうまくいかないと、依頼を受けた側としても作りづらいということを強く感じていました。なので、依頼する側として、そういったところをフォローできる進め方を意識しています」
成長を続けるUX/UIグループ──チームがめざすこれから
小野塚は、UX/UIグループの雰囲気についてこう語ります。
小野塚 「メンバーの年齢が近く感度が高いので、自動車だけに限らずネットで見たことをチーム内で話すと『おもしろいよね』『知ってる!』 と共感されたり、そこから話がふくらんだり。さまざまな意見が出るのはとてもおもしろくて、和気あいあいと仕事ができるモチベーションの高いグループだと思っています。グループとしても、個人としてもできること、やれることがどんどん増えていますね」
グループとしてのポテンシャルの高さを感じる小野塚。UX/UIの可能性や、個人のスキルアップについてこう話を締め括ります。
小野塚 「国内外の自動車メーカーで、メーターやナビ画面が大きくなってきています。画面のサイズが大きくなると、表現できることや画面内のレイヤー、奥行きも出てきます。単純に、大きくなったから切り替えられる画面が増えるという話に終わらず、お客様にどんなことを伝えてどんな新たな体験を提供できるのか。さまざまな角度で、幅広く検討する必要が出てきます。
UX/UI、体験と接点、画面の外と中。その2つで並行してどういったことをお客様に提供していけるかを考えていかないといけないので、領域だったり活躍の場だったりが増えてきていると感じます。
個人的なキャリアアップ、スキルアップの考えとして、今後はグラフィックだけではなく、設計部門とのやり取りに必要な専門的な知識や、これからの見通しや予測をするフォアキャスト、将来の目標から逆算して計画するバックキャスト、両者を通じてUX/UIの未来像を検討することが必要だと思っています」
※ 記載内容は2023年5月時点のものです