三菱自動車ならではの幅広い環境で自分の進む道を発見──カーデザインの世界へ
カーデザインの道に進んだきっかけは、専門学校のゲーム科やCG学科のオープンキャンパスに参加した時に、偶然カーデザイン学科を見つけたこと。講師から『絵を描いたことがない人でも、これぐらい描けましたよ』というデザイン画の例を見せてもらい、もともと絵を描くことが好きだったので、ここだったら自分の好きなデザイン関係の仕事ができると思って、カーデザイン学科に入学することを決めたんです。
専門学校では、車のスケッチを描くことだけでなく、クレイモデル(粘土を使った造形)とAliasという3Dモデリング(デジタルツールを使った造形)も学びました。そして3年生の時に、たくさんある専門の中からデザイナーを選択しました。
学校の授業でも、とくにクレイモデラー志望の学生に自分が描いたスケッチの意図を正確に伝え、イメージ通りに作り上げる勉強をしていました。入社してからもモデラーの方と何度も話し合いながらデザインしますので、この経験が今でも役に立っているのかなと思います。
3年生の夏からは複数の企業のインターンシップに参加しました。その中で三菱自動車は、軽自動車からピックアップトラックまで幅広い車をデザインしている点が自分の希望に合っていると思って、入社を決めました。
それから三菱といえば、三菱電機とか三菱重工といった三菱グループならではの太いパイプがあるのも魅力のひとつでした。たとえば、三菱ジープをデザインする機会があったら是非ともやりたいなと思っています。
経験を積み上げる──仕事の魅力とやりがい
専門学校卒業後、2016年に三菱自動車工業株式会社に入社して、最初の3年間はエクステリアデザインに所属。その後、入社4年目の時にインテリアデザインに異動しました。
学生時代は主にエクステリアを勉強してきて、スケッチも基本はエクステリアを描いていたので、インテリアに異動した時にはやっていけるかどうか、ちゃんとスケッチを描けるか不安で、当時の上司にも相談しました。
上司からは、「若いうちにエクステリアもインテリアも、さらには戦略的デザインも含め、いろいろ異動してみて経験を積んでほしい」と言われたことを覚えています。
実際に仕事を始めてみると、インテリアのことを知らないが故に設計要件などにとらわれない状態だったので、今まで他の人が考えてこなかったことや、違ったアイデアを提案することができました。「このアイデアは新しいね」と言われることもあり、やってみたら意外と合っているかも、楽しいかもという印象を受けました。
インテリアは、人が使うもの。エクステリアよりも人との距離が近いので、人中心でものを考えていかなければと思っています。エクステリアはどっちかというと、スタイリング的にかっこいい/かっこ悪いとか、力強い、エモーショナルみたいに、形がメインになります。インテリアは形もすごく重要ですが、人が使うことを前提にデザインしないといけないところが、エクステリアとは大きく違うなと感じました。
さらにインテリアデザインでは、使い勝手の良さと遊び心、お客様のライフスタイルに合ったものを提案できるかが大切だと思っています。
また、車らしさから逸脱したインターフェースの進化を見ると、非常におもしろく感じます。今ある最新の技術やスマートフォンのデバイス的なところが目まぐるしく進化していくので、そういったものをインテリアにも取り入れていけるといいなと思っています。
仕事の中でスキルを磨ける環境──適切な進み方を探索
2022年には入社7年目を迎え、これまで先行デザインから量産製品まで幅広いデザインを担当しています。とくに海外向けの車を担当することが多かったですね。
この7年の間で一番印象に残っているプロジェクトは、エクスプレス(正式名:Express)のエクステリアのグリル周りをデザインして製品化まで持っていったことです。
これは日産、ルノーとアライアンス関係になってから初めての共同開発プロジェクトで、とくにルノーの現地開発者とやり取りしたことがすごく印象に残っています。開発の進め方や細かい部分の感覚が三菱とはだいぶ違いましたね。
たとえば、製品化するプロセスの中で開発エンジニアと協業する場合。その際にエンジニアの側から「こういう数値に合わせてください」という要求が来るのですが、それまではこの数字は絶対に変更を許されないものだと思っていました。
ところがこのプロジェクトでは、現地のエンジニアからの要求数値に対して、少しずれたものでデザイン提案をしても受け入れてもらえたんです。
もしかすると会社間でのルールの違いや人、パーツ、場所によるものかもしれませんが、初めての経験で言語的な問題もあって、普段以上に丁寧なコミュニケーションを心掛け、お互いのニーズが確認できたおかげだと思います。
この経験を通して、エンジニアとのコミュニケーションを重ねることで、厳密な数字が必要なところと、そうでないところを確認・理解することが重要だと感じました。そのうえで、デザインとしてやりたい形状にこだわり、最後まで粘って交渉、キープすることを心がけています。
デザイン業務を進める上で気をつけることは、エンジニアからの要件を受け入れるだけじゃなくて、より良いデザインになるような提案をすること。その提案を受けて、エンジニアから「ああ、なるほど。それだったらいけるかもしれません」みたいな答えが出てくることもあります。相手に気づいてもらうっていうのもすごく大事だなと、デザインをやっていて思っています。
仕事でも私生活でも、積み上げた経験から、次に目指す目標が見えてくる
三菱自動車のデザインメンバーは比較的多くないですし、インテリアデザインは担当するパーツがすごく多いので、さまざまな仕事に関わることができます。自分が手掛けたデザインを数多く世の中に出せるのは、とても誇らしいと思っています。デザインする箇所が多ければ多いほど仕事量が増えて大変ではありますが、やり遂げたときの達成感は格別ですね。
また、私生活の中にもデザインの仕事に活かせることがあります。私はアニメ好きなのですが、趣味から今の仕事に役に立つことも見つけました。カーデザインにおいては、1~2年後だけでなくもっと先のライフスタイルを掴みながら進める必要があるので、アニメのトレンドや未来感の作り方がカーデザインに活かせるんです。
カーデザイナーを目指している人たちに伝えたいのは、ビジネスになるとどうしても車の製造要件などの縛りっていうものが出てくるので、学生のうちは自分のやりたい形とか、「こういう乗り物が世に出るといいよね」みたいなものを楽しんでデザインをしてほしいなあということ。そんなフレッシュなデザインを今のデザイナーたちに見せて、「こういうのは新しいね」っていう驚きを見せてほしいですね。
最後に、自動車業界は広いようで実はすごく狭い業界です。学生時代に出会った人たちとコミュニケーションをとっておいた方が、より自分の視野が広がります。そして自動車デザインのイベントでばったり会うこともあるので、その際に情報交換をし合うことでよい刺激にもなるから、人とのつながりは大切にした方が良いかなと思っています。
入社してからの7年は、長いようで短く感じます。今後のキャリアの方向性はまだしっかりと決め切れていませんが、まずはインテリアでしっかりと修行をして、ゆくゆくはエクステリアに戻ったりとか、またちょっと違ったデザインをやってみたい気持ちはあります。
そして先行デザインから製品化まで一貫して携われる、オールラウンドなデザイナーになれるように頑張っていきたいです。

