幼少期の趣味からデジタルモデラーの世界へ──夢を実現できる職業との出会い

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幼い頃から車が好きで、いつか自分も街中を走る車をデザインしてみたいと考えていた岡。工業高校で自動車整備を勉強し、その後、カーデザインを学ぶために専門学校へ進学しました。

岡 「車の整備を学ぼうと思ったのは、車に関する知識を深めたいという気持ちからでした。自動車整備士などさまざまな資格を取得し、高校卒業後はカーデザインに関わる仕事を目指すために、専門学校へ進学しました」

カーデザインを学んだ岡は、職業としてデジタルモデラーを選択した理由を次のように語ります。

岡 「最初はデザイナーを目指していました。なぜなら、車の絵を描くのが好きでしたし、そもそも車をデザインできる人はカーデザイナーだけだと思っていたからです。でも実際には、カーデザイナー以外にもデジタルモデラーやクレイモデラーという職種の人も関わっていることを在学中に知りました。

そんな中、授業で『Alias』という3DCADソフト(デジタルモデリング)を勉強する機会があり、自分が想像した形をスケッチの2次元表現ではなく、3次元の立体表現ができることを体感しました。極端にいえば、絵を描かなくても想像した形を3Dモデリングで立体形状にできるこのツールは、当時の私にとって衝撃的で、絵を描くこと以上にのめり込み勉強しました。

ただ当時は、Aliasを使用するデジタルモデラーの仕事はどちらかというと下請けみたいなイメージがあり、デザイナーが描いたスケッチをただデータ化するだけだと思っていました。ところが、在学中にある会社のインターンシップに参加した際、実際にデジタルモデラーとして働く人たちから、デザイナーと同じ立場で仕事ができること、デザインに積極的に関わりながら、車を立体的な形にしていくのがこの仕事のやりがいであることを教えていただきました。デザインを実際に形にしていけるデジタルモデラーとして、プロを目指そうと決意したのはその時です」

三菱デザインの一員、デジタルモデラーの魅力とやりがい

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▲デジタルモデリングの様子

デジタルモデラーを目指した岡は、専門学校卒業後の2013年にデジタルモデラーとして三菱自動車に入社しました。当時、三菱自動車を選んだ理由をこう語ります。

岡 「理由はいろいろありますが、三菱はデザイン以外にも技術力や性能が高いイメージがありました。当時は環境性能に優れたアウトランダーPHEVの技術コンセプトが発表されて話題になっており、ここだったらデザインだけでなく、乗って走る車として魅力を持った良い車作りに携われそうだと思って選びました」

三菱自動車には高い技術力があり、魅力を持った良い車を作れそうだ──そう確信して入社を決めた岡。実際に働き始めて感じた印象を、次のように語ります。

岡 「三菱自動車のデザイン本部は、他社と比べたらそこまで規模は大きくないですが、その分組織がフラットで壁がなく積極的に議論ができます。また、いろいろな人と気軽に話せるので知りたい情報をすぐに掴むことができ、結果として多くの知識が身に付きます。自分から動けばいろいろなことができる、働きやすい職場だと思います」

そんな岡が、自身の仕事の内容とその魅力、やりがいを語ります。

岡 「デジタルモデラーの主な仕事は、基本的にはデザイナーが描いたスケッチを、3D-CADソフトを使って立体データにすること=データモデリングです。デザイナーやクレイモデラーとディスカッションを重ねて作り上げたデータは、デザインを検討するためのCGや実物サイズのクレイモデルの作成に使用したり、車の構造や性能のエンジニアリング検討に使います。最終的には自動車を生産するための金型の作製や広報用の素材として使われます」

自分の作ったデータが各工程で重要な役割を果たし、実際に形になる──これこそが、デジタルモデリングの仕事の魅力・やりがいだという岡。

岡 「自分が作ったデータがそのまま形になるというのはすごいことだと思います。デザイナーはもちろん『この車は自分がデザインしました』といえますが、デジタルモデラーも同じことがいえると思っています。とくに面や線の繊細なコントロールはデジタルモデラーの腕の見せ所で、『自分がやった』と誇れるポイントなのかなと思います」

さらに、仕事の難しさや今後の目標をこう語ります。

岡 「データがそのまま形になるということは、デジタルモデラーの表現力がその車のデザインの出来栄えに大きく影響するということです。車のデザインというのは数値ではなく感覚的に良し悪しを判断する部分が多くあり、明確な答えがない仕事ですが、お客様に魅力的だと感じていただけるように、三菱らしい面質・線質・カタマリとは何かを探求しながら、立体の表現力を磨き続けていきたいと思っています」

仕事を通じて、成長を実感。デジタルモデラーとしてあるべき姿を見つける

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▲作成したデータにて切削したクレイモデルを、実際に見て触って確認

入社10年目、多くのプロジェクトのデジタルモデリングを担当してきた岡。プロジェクトを通して得たものがあるといいます。

岡 「2016年に発表したGT-PHEV CONCEPTのプロジェクトが特に印象に残っています。まだまだ若手というタイミングで、エクステリアのボディデータ全体を担当する機会をいただきました。

エクステリアデザインに携われて嬉しかったのですが、実際に先輩デザイナーの方と仕事を進めていくには、知識や経験などが全く足りず、手とり足とり何度も指示をいただきながら必死にデータを作った記憶があります。

専門学校で学んだつもりだったものの、実際働いてみると、エクステリアデザインの“エ”の字もわかっていなかったなと、自身のスキルの低さを痛感しました。教えていただいたことを自分なりに理解しながら、カッコイイ形にしてやろうと最後までやりきったプロジェクトで、その経験があるからこそ今の仕事ができていると感じます。 

他にも、このプロジェクトを取りまとめていた当時のデザインマネージャーに、私は生意気にも『こっちの方がかっこいいと思います!』とか、結構口を出していたのですが、今思えばよくそんなこと言えたなと思います(笑)。そんな若手の意見にも耳を傾けてくれた上に、『デジタルモデラーからも意見を出してもらえるのは良いことだ』といっていただいたことが、私にとってとても印象深い出来事でした」

このプロジェクトを通して、デジタルモデラーとしてあるべき姿が見えたという岡。 

岡 「デジタルモデラーとして、ただいわれたものを作るのではなくて、“自分から積極的に意見を交わして、より魅力的な形を目指す”という仕事のスタイルができたのは、このプロジェクトがきっかけだと思っています。当時の自分が貢献できたとは思いませんが、貪欲に取り組んだことでたくさんの学びがあり、今後につながるプロジェクトでした」

育児休暇を取得。家庭と両立しながら、東京でさらなる成長を目指す

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▲GT-PHEV CONCEPT(右)と昨年発売された新型アウトランダーPHEV(左)

岡 「当時は周囲で男性の育児休暇取得の前例がなく、私が仕事を離れることのインパクトは少なからずあったと思いますが、上司に相談をしたら約5カ月間の取得を了承していただけました。以降、男性が育休を取るのは自然なことになりました。育児休職を取って良かったと感じたのは、しばらく仕事を離れたことで、復帰後にチームや仕事の進め方に関して俯瞰で見られたことです。

また、やはり仕事と家庭の両立は重要だと強く思いました。仕事の時間は一生懸命頑張って、休日は子どもと出掛けて遊んでリフレッシュしています」

岡は、2021年に岡崎のデザインセンターから、東京本社にある東京デザインスタジオに異動。多様なバックグラウンドを持ったデザイナー・モデラーと働いています。

岡 「東京デザインスタジオは、外国出身のスタッフの比率が高いです。三菱自動車がファーストキャリアの人もいれば、国内外のメーカーを渡り歩いて経験を積んできた人もいます。カーデザインの仕事は、メーカーによって考え方やツールの使い方が異なるので、他社でキャリアを積んできたスタッフから学ぶことはとても多く、視野も広げてくれます。まだまだ学ぶことはたくさんあると、日々感じています」

外国人比率が高い職場では、他国の文化、知識、情報を学ぶことができる反面、苦戦することもあるという岡。

岡 「さまざまなバックグラウンドを持った人たちがいるので、お互いの意見が分かれることも多々あり、使用する言語も英語となるため、上手くコミュニケーションを取れず仕事を進めるのが難しいと思う時もありました。でも、お互いリスペクトしながら積極的に意見を交わすことによって、チームとして徐々にまとまっていきました」

東京という拠点の魅力についてはこう語ります。

岡 「東京はやはり岡崎と比べると情報量が多く、新しい情報がすぐに得られます。たとえば新しい車が見たい!と思っても、岡崎ではすぐに実物を見るのは難しいので、その点は東京にアドバンテージがあると思います。車に限らず、ファッションや家具家電など、デザインの参考になるものが周りに多いのも、東京の魅力ですね」

最後に岡は、三菱自動車のデザインに興味を持っている方に、こうアドバイスします。

岡 「三菱自動車のデザイン本部は、活躍できる場がたくさんあると思っています。もちろん活躍するためには知識やスキルが必要ですが、知識をつけた分取り組めることもどんどん増えます。いろんなことにチャレンジしたい、という人には向いている職場だと思います。

自分の例を挙げると、入社当初は知識が足りなくても、ちゃんと学んでいけば、いろんなことができるようになると思います。知識があるかというよりは、貪欲に学んで自分のものにできる力が大事だと思います。だから、車やカーデザインの知識がなくても、そういうところに長けている人であれば、活躍できるのではないかと思います」 

学生時代にカーデザインを勉強し、入社後も貪欲に学んできた岡。「デジタルモデラーとしていかに魅力的な形を生み出せるか」を常に自問しながら、今後も向上心を持って成長し続けます。