大丈夫は大丈夫じゃない。相手の言葉をそのまま受け取らず、全力で寄り添うことが大事
私は2002年に旧関西工場に入社し、現場のオペレーターとして、タンクローリー車からの生乳の受け入れや、殺菌・調合などの業務に従事していました。ある時、上司から言われてデータベースソフトを使用して、職場の仕組みづくりを行ったんです。これがおもしろくて、新たな仕組みを取り入れていく中で、“仕事をしている実感”を得られたのを覚えています。
その後、2009年から労働組合の専従者となり、活動の中で自分の価値観が大きく変わる出来事がありました。それが、2011年3月に発生した東日本大震災の時の経験です。その時、私は被災地域である東日本エリアを担当していました。
しかし若さゆえの未熟さから、何をすればいいのかとっさにわからなくて。被災地にいる担当者と連絡を取った際、「来なくても大丈夫ですよ」という言葉を鵜呑みにし、すぐには現地に向かわなかったんです。その後、現地に訪れた際は復興が進んでいて、何もできることがありませんでした。
後になって担当者から、「あの時に来てくれていたら泣けたな」と言われたんです。その時に思ったことは、たとえ相手が「大丈夫」と言っていても、本当は支援を必要としているかもしれない。その言葉に甘えることなく、とりあえず現地に行ってあげようという気持ちが必要だったと反省しましたね。行って迷惑になるなら帰ればいい。まずは行動すること、そして相手に全力で寄り添うこと。この2つが大事だと身にしみて感じました。
2012年に戸田工場で主任、その後は係長となり、マネジメントする立場に変わってからも多くの気づきがありました。機械一つとっても、各分野にプロフェッショナルがいて、いろんな強みや個性を持った人たちが集まって成果を出すことができています。
ここで皆が100%以上の力を発揮できるよう、導いていくことが管理者である自分の役目だと考えるように。自分がやりたいことをやっていれば、より仕事が楽しくなってくると思うので、得意分野やモチベーションなどを聞いて、相手をよく知ることを大事にしています。
現在は、東北工場で「おいしい牛乳」やヨーグルト、宅配便向け製品など、製造ライン全体のマネジメントを担当しています。職場は若い社員が多いため活気があり、新しい取り組みにも臨機応変に対応できる柔軟性があります。もともと職場の仕組みづくりに興味がありましたが、いざマネジメントする側になると、万人に合う仕組みはないんだと実感。そのため、最初はやり方が合わなくても、結果的に皆が「これで良かったんだ」と思ってもらえることを目標にしています。
全工場で運用やルールを統一するのは簡単ですが、皆がいろんな事情を抱えながら働いていますから、誰しもがうまくいくとは限りません。そうなると仕組みに合う人だけが残り、ほかはストレスを抱えながら働くことになってしまいます。何よりも私自身がそうなってしまうのが嫌なので、ルールの目的を理解して自分たちに合うように最適化し、浸透させていくことが私の役目だと思っています。
女性活躍支援に注力。復帰後も現場で仕事と家庭を両立できる体制を構築
私は女性の活躍支援も積極的に行っており、時には面識がない中で職場復帰のための準備を行うこともあります。その場合は、周囲から得意分野などの情報を集め、まずは相手を知ることからはじめて、復帰後は本人と話し合った上で、適切なポジションを検討するようにしています。
私が支援に力を入れている理由は、過去に労働組合での仕事をする中で深く感じたことにあります。具体的には、研究所が統合される際、一人ひとりにその状況や条件についてヒアリングを行った経験です。この経験を通じて、個々の価値観や私生活にまで配慮する必要性を強く感じました。育児を行っている女性たちの持っている価値観も人それぞれ。人それぞれの背景や思いを理解し、サポートしていくことがどれほど重要か、私の想いの根底にあるのは、まさにこのような体験から来ているのです。
育児に関しては、物理的な男女差はあっても、子どもを育てる点においては明確な差はないと考えています。たとえば、育児に専念するために年単位で休む人がいる一方で、ご主人が育休を取るからと数カ月での復帰を希望する人もいて、各家庭によってさまざまです。そこでも私は価値観を尊重して、できるだけ本人に決めてもらうようにしています。
復帰後は元の製造現場での仕事に従事できるよう配慮しています。また、復帰後は固定シフト制に変わり、その人が出勤している時は別の人がフリーとなって自身の業務に専念します。1名プラスされる形になるので、フリーの時間は各個人の担当業務や新たなスキルの習得などに活用してもらっています。お子さんの発熱で突発的に休みを取らなければいけない場合は、フリーの人に変わってもらうなど、休んでも業務に支障が出ないような体制作りを心がけています。
「会いたい仲間がいる」エンゲージメントを向上させるため、ユニークなイベントを開催
東北工場では、数年前からエンゲージメントを高めるための取り組みを行っています。全社的にそういった動きがある中、私たち工場のスコアはあまり良いとは言えず、なんとかしなければと当時の工場長が「エンゲージメント事務局」を立ち上げました。最初は相互理解を深めようと、バーベキュー大会や花見、芋煮会などのイベントを実施したんです。
しかし、当初は管理職が中心となって運営していたことから、参加者を増やさなければと気持ちが先走り、社員が「参加させられている」ような形になってしまいました……。それから現場の意見を取り入れようと、現場からも事務局メンバーを選抜し、主体的に活動できる体制へと変更しました。
ここでも価値観の多様性に気づくとともに、その理解や社員同士の信頼関係を築くことは、組織で働く上では切り離せないと感じました。体制を変えてからは、若手社員から「こんなことやってみませんか?」と次々と新しいアイデアが出されるように。たとえば、新作のアイスが発売されれば試食会を行い、やってみたいことを書き込むホワイトボードを設置したりなど、以前よりもコミュニケーションが活発になりました。
当時の工場長には、「明日また出社するのが楽しくなる工場であってほしい」という想いがありました。そのためには、「会いたい仲間がいる」、「やりたいことができる」という環境づくりが大切だと思い、これを活動の軸として取り組んでいます。
イベントでは必ず当社の商品を使っています。「うちの商品って良いよね」と思ってもらうことも、実はゴールの一つなんです。お菓子など夢のある商品が多いので、社員も楽しんでくれますし、中でも人気菓子の「メルティーキッス」を天井から吊るして、空から降ってくるように再現したことは好評でした。いろんな取り組みを通じて、気づいたら会社のことを好きになってもらえたら嬉しいですね。
育児に奮闘する男性への思いやりも忘れず、理解を深めて広げていくことが今後の目標
明治では、皆がより楽しく働けるように、さまざまな施策を実施しています。社員のことを一生懸命考えてくれているのが伝わりますし、人を大事にしてくれるところが当社の良さですね。
今後の目標は、一人ひとりの価値観や状況を理解し、最大限の力を発揮できる環境づくりに取り組んでいくことです。どんな状況であっても、いくら自動化が進んでも、最も大切なのは人だと考えています。そのため、個々の特性を尊重し、皆が力を発揮できる場を提供することが、私がめざす方向性です。
現在の職場では、男性社員も積極的に育児に参加しています。そこは女性と変わりませんし、ただ男性の場合だと、理解が得られにくい部分は正直まだあります。後ろめたさや不安感がある中でも、本人たちは必死で頑張っているので、女性だけでなく男性への理解や思いやりも広がってほしいですね。
私自身は、子どもが小さい頃は労働組合の役員をやっていて、出張が多くて家にいないことがほとんどだったため、育児を妻に任せていた時期がありました。傍で見ていると、大変だというのは伝わりますし、それを仕事と両立させるとなると、さらにもっと大変なことだと思います。
その大変な育児と仕事を両立させるためには、できるかぎりのサポートをしていきたいと考えています。ただし、仕事はきちんと任せるようにしているんです。もちろん難しい場合は調整しますが、最初から「できない」と決めつけて仕事を振らないことはしないようにしています。それは、その人の能力向上の機会を奪ってしまうことにもなりかねないから。先のことまで考え、個々の状況とそれぞれの価値観に合わせて、マネジメントしていくことが私の役目だと考えています。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです

