工場で培った品質や安定供給のこだわり。相手の立場で聴き、自らが変わる大事さを学ぶ
高校の情報処理科でプログラミングを学んでいた西澤が、製薬会社に入社したのは、知人の影響がきっかけでした。
知人が医薬品の会社に勤めていて、人の命に関わるような業務をしているという話を聞き、興味を持ちました。ただ、正直なところ強い思い入れはなく、通勤距離や働く環境といったところが、入社の決め手でした。
入社してからの方が「こんな仕事がしたい、この会社で良かったな」と、実感することが多くなったと思います。
入社後、彦根工場の製造部へ配属された西澤は、主に軟膏製剤を容器へ充填し包装するまでの業務を担当することになります。
現在は自動化が進みカメラが不良品を検査・選別してくれますが、当時の製造現場ではすべて目視検査を実施していました。幅広く全品目の検査業務に従事していましたが、機械的に流れてくる製品のスピードに応じて不良品を選別するのが非常に難しかったです。作業研修では事前にダミーの不良製品を入れ、それが検出できるまで繰り返し訓練していました。
マルホでは、製品に関わる600以上の工程に対して社内資格制度を設け、それぞれの資格を取得したスタッフが丁寧に生産作業を行っています。
同期が10人以上いて、研修中、1人、2人と資格を取得していくのを横目に、自分はなかなか不良品の選別ができず、見逃してしまうことがありました。焦りもありましたが、先輩から「この角度だと見えやすいよ」「こういうふうに見てみたら」など親身なアドバイスを受けながら、同期とも相談し、繰り返し訓練することで乗り越えていきました。
当時指導いただいた先輩の影響が大きかったと西澤は話します。
新人時代は初めてのことも多く、緊張もしていましたが、先輩のようになりたいという思いで必死に業務を覚えました。先輩の指導は厳しさの中にも優しさがありました。
また、なぜこの生産工程が必要なのか、工程を間違えることで品質や後工程にどのような影響が出るのかを教えてくれ、責任感の醸成にもつながりました。
入社6年目には、製造グループの班長として後輩の指導を任されるようになりました。
憧れていた先輩のように、後輩にいろいろなことを教えたい、面倒をみたい、という気持ちがありましたね。人と接することが基本的には好きで、私の土台になっていたと思います。後輩の成長を通じて、教えることの大切さと楽しさを自分の中で見出せるようになっていきました。
入社12年目で製造部門の教育担当に抜擢され、新入社員の教育も担当するようになります。西澤は厳しくも温かい指導を心がけました。
誤りを指摘するのは言いにくいし、嫌われたくない。それでも、間違いが起こった時には「必ずその場で伝える」ことを、私のスタンスとして貫いていました。ただし、それを引きずるのではなく、その場限りにしていました。また、なぜダメなのかといった理由が理解できないと、言われた本人が消化しきれないと思っていたので、丁寧にフォローし、すべてを否定するのではなくいいところも一緒に伝えるようにもしていました。
厳しい先輩と思われていたかもしれませんが、厳しくしていても頼ってきてくれたり、社内資格に合格した際に報告してくれたりする後輩も多く、良い意味で緊張感のある中で働くことができたのかなと思っています。
入社17年目に西澤は自ら出向を希望し、マルホの外用剤生産の一部を担う、立山製薬工場株式会社の工場立ち上げメンバーになりました。
新しいことに挑戦したいという気持ちと、仕事のやり方や考え方で影響を与えてくれた上司が少し先に出向していたので、その人の力になりたいという思いで、出向を志願しました。
工場立ち上げを成功させるためにマルホから数名が出向し、私は工場メンバーの教育と工程管理を任されました。着任当初は生産開始前の準備段階で、機械は設置されていたものの作業を開始するために何が必要かを話し合うところからスタートしました。
当時は従業員の人数も限られており、誰か1人でも休めば生産がストップするような状況で生産を開始したことを思い出します。
3年間の出向の経験が、自身の成長に大きく影響したと西澤は話します。
立山製薬工場は別会社のため、考え方ややり方が彦根工場のメンバーとは当然異なります。最初は自分のやり方が当たり前かのように相手に押し付けてしまい、まったくうまくいきませんでした。相手をコントロールしようと必死だったのかもしれません。
当時の上司から「相手をコントロールすることはできない、自分自身が変わりもっと相手の話に耳を傾け話し合うことが大事」だとアドバイスをいただき、その時から相手に向き合う姿勢や、仕事のやり方を変えることができました。出向の経験が成長のきっかけになったと感じています。
今では、新しい環境や人間関係であっても相手の立場になり耳を傾けることや、自らが変わることで状況はいくらでも変えられると考えるようになりました。
関連リンク:確かな品質と安定供給で、あなたの笑顔につなげたい-国内トップクラスの外用剤を生産する彦根工場のこだわり | マルホ株式会社
実体験があるからこそ、製造現場への思いを大切に。医薬品の確かな品質を守っていく
西澤は現在、品質保証部の生産品質保証グループで業務をしています。
生産品質保証グループでは、法規制対応を始め、医薬品の品質保証に関わる業務や、GMP(※1)に基づく業務全般の教育や文書管理などをしています。
医薬品を製造する上では、いかなる変更も評価し管理する必要があります。その変更内容にリスクは伴わないか、そもそも変更しても良いのかを現場から出た資料を基に判断します。また医薬品製造に使用する原料や資材の製造会社の管理もしています。
西澤は医薬品の品質保証業務に加え、医薬品の容器や包材の品質保証に関する業務や、教育も担当しています。
医薬品の容器や包材を他社から購入する際、GMPの規格に合ったものを納品いただく必要があります。他社との品質に関わる契約を担当し、品質を担保しながら製造しているかを定期訪問で監査する業務もしています。また、グループを始め、彦根工場の従業員を対象とした教育の実施や、定期教育のサポートなどを行っています。
チームのムードメーカーとして、楽しく前向きに仕事を進められる雰囲気づくりも心がけていると、西澤は笑顔で話します。
生産品質保証グループは、彦根工場と長浜工場に拠点があります。メンバーは男性が7名、女性が6名で、年齢層も50代、40代、30代と幅広いです。それぞれのメンバーが専門性を持っているので、何か困った時にすぐに尋ねることができ、連携しながら業務を進められるのがチームの特長です。
どんな時も楽しみながら仕事をするが私のモットーなので、周りも巻き込んで笑顔が絶えないように業務をしています。
たとえば予定にない業務が急に降ってきた時など、多忙によりチームがマイナスな雰囲気になってしまう時もありますよね。でも仕事だからやらないといけない。嫌々やるよりは、みんなで協力して楽しんでやる方がいいと考えています。少し愚痴を言いたいときも「文句はポップに言う」(笑)ことを意識していて、軽やかに言葉を選ぶことで柔らかく受け取られて、人を傷つけることも避けられそうですよね。
西澤は、製造業務での経験を活かしながら、現在の業務に取り組んでいます。
生産品質保証グループは、レギュレーションに従って品質を保証する仕組みを作る部署です。しかし実際に実行するのは製造や品質管理を行う製造現場の作業者です。そのことを忘れずに、現場の人の意見を聴くこと、聴いた上でどうすれば一番良いかを考えるようにしています。
これは現場を経験した私の視点として、大切にしています。現場を大事に思う気持ちは入社当時から今まで変わることはなく、現場が当社の生産を担っているというプライドがあるからかもしれません。製造作業は毎日同じことの繰り返しと思われるかもしれません。でもその当たり前を繰り返し行うことの難しさと、それが確かな品質の確保につながることを、製造現場の従業員にも伝えています。
入社当時に教わった「後工程はお客さま」という言葉は、今でも大切にしていることの一つです。
製造現場に配属された当初は自分のことで精一杯でした。私の後の作業者のことまで考えられず、後工程が二度手間になったり、作業がやりにくくなったりしたときに、先輩からこの言葉を教えてもらいました。「後工程はお客さま」という言葉は、本来は薬を使用される患者さんを指していますが、何に対してもこの言葉は使えると思っています。
品質保証部でも、誰かから情報や業務を受け取って私の業務を進め、それをまた誰かにつなぐことで仕事が成立しています。自分の次の工程はお客さまという気持ちを常に意識して相手を想った仕事をすることを私の業務の基本としていて、後輩へも伝えるようにしています。
マルホは「あなたといういのちに、もっと笑顔を。」をミッションとしており、患者さんの笑顔のためにも確かな品質の医薬品を安定供給することを追求しています。
コロナ禍の時期には患者さんに医薬品を届けるため、製造現場も、私たち生産品質保証グループも、工場全体で一丸となって取り組みました。感染対策のため直接的なコミュニケーションが制限され、昼食も無言で食べるなど、とても厳しい状況でした。
それでも、医薬品を途切れさせないという使命感は全員が共有し勤務していました。当社の薬を必要とされている患者さんがいるので、薬を欠品させてはいけない。「患者さんのために」それは全員の共通認識でしたね。
工場勤務者全員が年に1回集まる会議では、患者さんのメッセージ動画を視聴する時間があります。
工場では患者さんの声を直接聞く機会は少ないですが、「症状が改善した」という声や医師の講演などを聞くと、私たちの日々の製造業務が確かに役に立っていることを実感できます。会社がそういった機会を作ってくれることで、仕事の意義を感じられていますね。
※1 GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品及び医薬部会品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令
信頼は相手があって成り立つもの。「信頼性保証ポリシー」の策定検討で得た気づき
マルホは、人々の生命とQOL(生活の質)に関わる企業として社会に貢献し続けるために、全社をあげて信頼性保証に取り組んでいます。
当社が考える信頼性保証とは、人々の笑顔のために必要なことを従業員が自ら考え、提供する製品や情報の質を常に向上させていくことです。
これまで作り上げてきた信頼性保証に対する考え方をあらためて整理し「信頼性保証ポリシー(※2)」として明文化し、2024年9月に全社の行動規範としました。
信頼性保証ポリシーの策定メンバーに選ばれた西澤は、これまでの業務経験から、品質に対する生産現場の思いを伝えながら会議などに参加しました。
「信頼性保証」について1年間、策定メンバーで議論を重ねました。「自分の大切な人に自信をもってすすめられる製品とはどのようなものか」と考えた際、「品質が確かであることと、安定的に供給されること」が必須で、これらを常に高いレベルで実現し続けることが重要だと検討しました。
また、すべての顧客の利益を損なうことがないよう公正な情報開示、情報提供を行っていくことも重要です。これらの思いをポリシーの文言に込めました。
検討の際、言葉の定義付けやメンバー内での認識の統一が難しかったと、西澤は話します。
私が最も難しいと思ったのは「品質」ではなく「信頼」を保証するという考え方への転換でした。工場で働いてきた私にとって製品の品質を保証することは当然の認識でした。今回「信頼」の意味をあらためてじっくり考えたときに、研究開発から市販後まですべてのプロセスに信頼が必要で、そのプロセスを支える柱が信頼性であることに気づきました。
信頼とは相手があって初めて成り立ちます。言い換えればわれわれ自身の在り方でいかようにも変化します。この想いを基本にして、ポリシーの策定に携わりました。
これまでも、当社は製品と製品に関わる情報に対する信頼性保証に取り組んでいました。ポリシーとして明文化したことにより、全従業員がより誠実に顧客や患者さんに思いを馳せ、 自分たちの業務を進化させていきたいと思っています。それが信頼を得ることにつながると考えています。
この考えは、西澤自身の業務でも活かされています。
医薬品で使用する容器や包装の製造会社に訪問する際、品質面で改善が必要な点を見つけることがあります。その際に相手を責めたり、強要したりするのではなく、製造業者側も良いものを提供したいという思いがあることを前提に、品質保持の観点で譲れない部分を伝えていきます。
相手の立場を考えたコミュニケーションで、製造業者との信頼関係を保つようにしていますね。
信頼性保証ポリシー策定後、社内の浸透活動を進めており、少しずつ変化が見られています。
議論の場面で「これが信頼性保証ということなんじゃない?」といった発言が自然に出てきたり、日常会話でも意識的にポリシーの言葉が使われたりしています。
今後は信頼性保証ポリシーをさらに社内浸透させ、従業員一人ひとりが、自身の行動をポリシーに結び付けて自分事化できるようにしたいです。また現状に満足するのではなく「さらに何が必要か」を従業員自ら考えられる状態をめざしたいです。
※2 信頼性保証ポリシー:マルホは「あなたといういのちに、もっと笑顔を。」というミッションのもと、「確かな品質の製品の安定的な供給」と「公正で正確な情報のタイムリーな提供」の実現に全社で取り組みます
挑戦に遅すぎることはない。女性後輩たちのロールモデルを自分らしい姿で示したい
西澤は、次のキャリアステップに向けて、マネージャーをめざしたいと語ります。その原動力となっているのは、マルホへの深い愛着と、これまで育ててくれた先輩や上司への感謝の気持ちです。
マルホはさまざまなチャンスを与えてくれる会社です。私は高校卒業後すぐに入社しましたが、専門学校や大学卒業のかたとはスタートが異なる中で、入社前には想像できなかった数多くの機会をいただきました。与えられたチャンスをつかむかは自分の選択次第ですが、これまでの挑戦や経験が今の私の財産になっていますし、その恩返しをしたいと思っています。
会社の制度やキャリア支援についても満足しています。
会社は頑張りを認めてくれますし、自主的な提案や「こういうことをやってみたい」という意見も、必ずしも実現はできなくても、しっかりと聞いてもらえる環境があります。
西澤は、めざすマネージャー像について語ります。
メンバーに近い存在でありたいと考えています。単に上に立つのではなく、みんなと目線を合わせながら、メンバー同士の橋渡しができるような存在になりたいですね。
女性後輩たちのキャリアプランの参考にしてもらえたら嬉しいと、西澤は話します。
当社でも女性マネージャーが増えていますが、製造部門の女性マネージャーはまだ少なく、製造部門の女性がキャリアプランをイメージしにくい可能性があると考えています。私のように、出向や部門移動を経験してキャリアの幅を広げることもできるし、マネージャーをめざすこともできるよと、後輩たちにさまざまなキャリアアップの選択肢があることを示していきたいと思っています。
社内のマネージメント適正試験への挑戦は、西澤にとって重要な気づきをもたらしました。
約1年間、マネージメントに関する勉強をしました。これまで勉強したことのない分野で難しかったですが、マネージメントの難しさと新しいことを学ぶおもしろさを感じました。
この経験を通じて、何かを始めたいと思った時に「今さら遅い」と考えるのではなく、その時をスタートとして挑戦することの大切さを学びました。また、あらためてマネージャーという役職の重みを認識し、マネージャーになるには覚悟が必要だと気づく機会にもなりました。
キャリアに悩む後輩たちへ、西澤はこう語りかけます。
私も悩んだことがあるのですが、キャリアを考えると霧がかかった道を歩いているようで答えがみつからないことがありました。具体的に「あれがやりたい」「こうなりたい」という目標が今なくても大丈夫です。日々の業務の中で無駄なことは一つもありません。 それがある日突然、霧が晴れて、これまでの経験が何かにつながっていることに気づく時がきます。
今は明確に考えられなくてもよいから、自分が何を大事に想い仕事をしているかを考え、日々与えられるチャンスを前向きにつかみ取っていってほしいですね。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです
