皮膚科における独自のビジョンに興味を持ちマルホへ入社。MRを経て、新事業へ挑む
学生時代、マーケティングを学んでいた長山。就職活動中、さまざまな業界を検討する中で、所属していたゼミの教授に相談したことがきっかけで、医薬品業界に興味を持ちました。
教授の雰囲気の良さに惹かれて入ったゼミでしたが、医薬品業界は最新の医薬品を提供することで、医師や患者さんの笑顔に貢献できる仕事と聞いて、魅力を感じました。
当時の医薬品業界は、多くの会社が高脂血症などの生活習慣病や、がん領域などの大規模市場をめざす中、マルホは皮膚科学領域というニッチな市場で社会貢献する独自のビジョンを掲げていました。
他社と方針が違うところに興味を持ったのを覚えています。皮膚科でそれほど市場があるのかなと思いましたが、売上高が毎年二桁成長していたことや、医療用外用剤の生産量が国内ナンバーワンという実績を知り、この会社には大きな可能性があると感じました。また親身になってくださる人事の方々の人柄にも惹かれましたね。
こうして2003年にマルホに入社した長山。埼玉県でMR(医薬情報担当者)として活動を開始しました。
当社の医薬品の情報提供だけで医師との信頼関係を築けると考えていましたが、実際には相手のことをもっと深く理解し、医療情報をトータルに提案していく必要がありました。とくに入社1~3年目は大きな壁にぶつかりましたね。
上司や先輩からのアドバイスを受けながら、医師の経歴や専門領域、興味のある話題などの情報を地道に収集。試行錯誤を重ねていきます。全国にいる約30名の同期の存在も、メンタル面で大きな支えとなりました。
上司や先輩からは、夜遅くまでつきあっていただき、厳しくも愛のある指導をしていただきました。同じ境遇にいる全国の同期とは休日に旅行に行くなどして、気持ちを切り替えました。
3~4年目くらいになると、コミュニケーションの取り方や医師の気持ちを考えながら、当社の製品を通じてどのように貢献していけるかという考えのもと、情報を提供できるようになりました。
また、皮膚科医師が視診に重きを置いていることをMR時代に気づけたことは、後々の診断薬事業にも活かすことができたと感じています。
2010年、医療用医薬品のマーケティング部への異動が決まります。ここでも、新たな学びが待っていました。
MRとはまったく異なる視点が必要で、まるで別の会社に入社したかのようなインパクトがありました。とくに印象に残っているのは、上司からかけられた「この製品の責任者はあなただからね」という言葉。
マーケティング部からの発信で全国のMRの活動方針は変わるため、責任感を持って仕事に臨むように、という意味でした。この言葉のおかげでそれまでの考え方が大きく変わりましたね。
マーケティング業務で培った基礎知識や論理的思考力に加え、マーケティングプランの作成、新製品の上市の経験も、後の診断薬事業で活かすことができたと言います。
そして2019年、新たな挑戦の場として新規事業の診断薬事業部(現:診断薬・医療機器事業部)へと異動。ここで長山は、これまでのMRとマーケティングの経験を活かしながら、新しい価値創造に挑むことになります。
異なるバックグラウンドと対話が生む創造性。医療の可能性を広げた革新的な一歩
現在、長山が所属している診断薬・医療機器事業部は、マルホが取り組む新規事業の1つを担っており、「会社の中のベンチャー企業」のような部署です。製品開発から営業までの業務を部署内で完結しているため、開発担当や事業管理担当と日々のコミュニケーションが取ることができ、自然と広い視野で業務に取り組める環境となっています。
医薬品と診断薬の開発では、まずスピードが大きく違いますね。医薬品の場合、研究開発から製品化までに10年以上の時間と数百億円~数千億円規模の費用がかかり、成功確率も約31,000分の1程度と言われています。
一方、診断薬は医薬品と比べて承認事項が少ないケースが一般的で、3年~5年程度で製品化が可能です。スピード感をもって顧客のニーズにあった診断薬の開発に取り組んでいます。
スタッフは20代の若手従業員から幅広い年齢層で構成され、とくに開発系のメンバーには他社からのキャリア採用者が多く、さまざまなバックグラウンドを持つ専門家が集まっています。
異なる企業文化や社風など、多様性が高いチーム構成だったため、最初は考え方のずれもありました。しかし時間とともに課題はクリアになってきています。皆が考えていることを心に留めずに発言し、より良い方向を模索していく、そんな対話を大切にしています。
診断薬事業は新たな価値の創造に挑戦してきました。その原点には、皮膚科医師の診断における医療課題があります。
皮膚科医師は目で見て診断することを得意とします。皮膚疾患は内臓疾患と違い症状が見えるため、専門的なスキルを身に着けた皮膚科医師だからこそ成しえる妙技です。
ただし皮膚科医師と言えども判断が難しい疾患があることも事実です。診断に迷いながらも治療を進めなければならない状況があり、その悩みを解決できないかと考えたことが、診断薬事業の始まりでした。
診断薬の開発は、MRが医師との日常的な対話を通じてニーズを収集するところから始まります。
医師との対話の中で、臨床症状で判別できるものもあるが、わかりにくいものも一定数あるという声はよく聞きます。たとえば、真菌感染症の一つである爪白癬は、爪が濁ったような症状が特徴的ですが、これに似たような疾患が5~6種類以上あり、視診による判定が難しく、顕微鏡による検査が必須と言われていました。
2022年に発売した白癬菌抗原検査キット(体外診断用医薬品)は、爪白癬の診断に焦点を当てたという点で革新的でした。皮膚科の診断の可能性を広げることができたと自負しています。
幾多の壁をのり超えた末に生まれた診断薬──皮膚疾患の診断への貢献
新しい検査領域への取り組みは、容易なものではありませんでした。既存品がない中での製品開発には、さまざまな壁が立ちはだかりました。
製品の位置づけやプロモーション方法、保険適用に向けた関連学会や厚生労働省との交渉など、すべてがマルホでは前例のない挑戦でした。とくに関連学会や厚生労働省との交渉では、開発に携わった医師と共に課題を一つずつ克服していきました。
思うように前に進まない時もありましたが、爪白癬診断への貢献はマルホの診断薬事業がやらずに誰がやる、という強い気持ちをメンバー全員で持ち続けました。
試行錯誤を繰り返すことで、その努力は確実に実を結んでいきました。
関連学会と連携しながら厚生労働省からの保険適用の承認がおり、発売が決まった時の気持ちは今でも忘れられません。メンバー一丸となって取り組んだこともあり、喜びもひとしおでした。
マルホはこれまで爪白癬以外にも、ヘルペスなどの皮膚感染症の診断を補助する診断薬を発売してきました。市場に投入した複数の製品は、年々出荷量が増加し、多くの皮膚疾患の診断に貢献しています。
皮膚科医師から「診断に困った時に大変重宝している」という声をよくいただきます。また、診断結果を患者さんと一緒に確認できるため、治療に前向きになってくれるケースもあると聞きます。皮膚科学領域に特化している当社が取り組んだからこそ実現できたことだと考えています。
診断薬事業では、診断から治療までの一連の流れを作るため、他メーカーとの連携も積極的に進めています。
医療への貢献を第一に考え、会社の枠を超えて治療薬メーカーと連携することで、診断から治療までがスムーズに進み、医師や患者さんの笑顔につながっています。
診断薬事業の活動は、マルホのバリューである「ワクワクで世界を変えよう」「超えていこう」を体現してきたと長山は言います。
既存品のない検査の領域を切り拓いていくことは簡単ではありません。さまざまな壁にぶつかり、うまくいかないこともありましたが、あきらめずに試行錯誤を繰り返していけたのは医師や患者さんに貢献したいという想いを部署全体で共有できていたからこそ。これはバリューの「超えていこう」にあたります。
そして、新しい診断薬が承認されることで関連疾患の医師や患者さんに対して画期的な検査ができる環境を提供することが可能となりました。まさに「ワクワクで世界を変えよう」ですよね。
皮膚科の診断・治療・予防のすべてに関わる。常識にとらわれない挑戦で新しい未来へ
診断薬・医療機器事業部として、新たな組織で歩み始めた2024年。この事業の醍醐味について、長山は3つの点を挙げます。
まずは、診断薬を通じて医師の治療方針の決定を支え、患者さんが適切な治療を受けられる環境を整えることにやりがいを感じます。
次に、当社の医療用医薬品と診断薬のシナジーを生み出すマーケティングを考えるおもしろさがあります。医療用医薬品のマーケティングを担当している部署とは、丁寧にコミュニケーションを取りながら連携しています。
そして、医療機器事業との連携も醍醐味のひとつです。診断薬と医療機器は事業が違えども、現在は同じ部署で活動しています。異なる事業が同じ志で皮膚疾患という医療課題に向き合い、医師や患者さんへの貢献に努めている点が魅力的です。
皮膚科の医療関係者からは、「皮膚疾患の医薬品メーカー」というイメージが強いマルホですが、長山は未踏の可能性を見据えています。
日本が直面している超高齢社会に対して、私たちができることはなんなのかを常に考えています。国策として「健康日本21プロジェクト」が掲げられていますが、高齢者の健康寿命を延ばすには歩行機能の改善が重要だと示されています。フットケア領域の枠組みの中で、当社の診断薬である白癬菌抗原検査キットと医療機器の巻き爪矯正具、巻き爪治療用剤をミックスしたプロモーションを通じて、この社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
皮膚科学領域とひとくくりに言っても、私たちは診断・治療・アフターケア・予防という幅広い領域で事業を展開しています。診断薬・医療機器事業やセルフケア事業など、医療用医薬品以外の分野でも活発に活動していることをもっと広く知っていただきたいですね。これらの取り組みがどのように患者さんに届いているのかを積極的に発信していくことも、当社のブランドイメージの向上に大切と考えています。
当社の戦略としてグローバル展開も本格化しており、診断薬事業も海外進出をめざしています。
診断薬は医薬品と比べて海外の規制が比較的緩やかで、スピーディーな展開が可能です。海外でも皮膚疾患の視診の難しさは日本と同様の課題があり、確実にニーズが存在します。診断薬をグローバル展開の突破口のひとつとして、そこから治療へとつなげていきたいと考えています。
長山は、若手への知識継承にも力を入れていく考えです。
診断薬・医療機器事業では、前例がなくチャレンジングかつダイナミックな経験をしました。また、マーケティング業務に10年以上従事した経験は、他部署でも活かせると思います。
今後は部署の枠を超えて、マーケティングに興味のある従業員に知識を伝えていく立場になっていきたいと考えています。
診断薬・医療機器事業部の挑戦は、確かな診断を支え、医療現場と患者さんに安心を届けてきました。これからも、医療機関での診断や治療、日常のセルフケアといった皮膚科のヘルスケアすべてに関わる存在として、常識にとらわれず、医療の可能性を拡げていきます。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです
