“変わりたいけれど変われない” 企業のジレンマに、繰り返しぶつける「なぜ」
社会や経済など、私たちを取り巻く環境がめまぐるしく変化する昨今。企業活動においても、既存の事業を深掘りするだけでは生き残れない時代が到来しています。しかし、市場の変化に耳を傾け、同時に足も動かしながら新規事業を開拓していくことは簡単なことではありません。
「多くのお客様と日々対話をする中で、『変わりたいけれど変われない』といったお悩みは少なくありません。そんなときに、私が最も重要としている感情は“共感”です」
マーケティングを起点に顧客へ提案・サポートを行うのがマーケットワン・ジャパンの使命。しかし、自分たちの発するメッセージ以上に深澤が大切にしているのが、「新しいことをやろうとしているけれど、どうしてもうまくいかない」と危機感を抱えているお客様と、想いを重ね合わせることだと言います。さらに深澤は続けます。
「漠然とした危機感を抱えたお客様によく見られるのが、『新しいシステムを導入すれば、結果がついてくるだろう』といった焦燥感です。でも本当に変わるために大事なことは、システムではなく、根本的な経営の在り方だったりする。こんがらがった現状を打破するための問いである『なぜ?』から、私は入っていきたいと考えています」
あるとき、とある大手製造業から「マーケティングシステムを導入したい」といった相談を受けた深澤は、その企業にとって“本当に・いま・必要な”打ち手をみずからに問い続けた結果、そのテーマでのコンサルティングを一旦辞退するに至りました。
「その企業の現状を見る限り、システムの導入に安易に飛びつくと手段が目的化してしまうと感じたからです。本質的な課題を紐解くことをせずにシステムだけを手にしたところで、無用の長物として終わるだけ。
そこで、『なぜマーケティングシステムを導入したいのですか?』『営業を動かしたいから』/『なぜ営業を動かしたいのですか?』『新規案件を作りたいから』/『なぜいま新規案件が必要なんでしょうか?』……こんな具合に、お客様がいま向き合うべき課題の本質をしつこくヒアリングし、『マーケティングシステムの導入』というプランを再考してもらう方向に向かうことになりました」
その結果、プロジェクトの目的は「“自分たちに必要なマーケティングとは何か”を社内に発信できるようにする」というものに変わり、お客様の事業戦略部の方々とともに新プロジェクトを発足。事業戦略部としての目標と、その手段としてマーケティングが必要な理由をあらためて精査し、メッセージへと落とし込んでいくプロセスをマーケットワンがサポートすることとなりました。
社内への発信や施策を粘り強く繰り返し、小さな成功体験を積み重ねるうちに、事業戦略部の考えが社内に少しずつ浸透していったと言います。
「1カ月で1人、3カ月に2人ほどのペースですが、考えに共感してくれる仲間が徐々に増えていきました。事業戦略部はあくまで企画を立てる部署。営業やR&D、経営層などの協力がない限り、戦略は絵に描いた餅のままです。そのため、仲間づくりが非常に重要でした。
草の根活動を続けて仲間を集めた上で、土台固めができた3年目にようやくマーケティングシステムを導入。現在、運用が順調に進んでいます」
個人の想いが周囲を巻き込み始めたとき、はじめてプロジェクトは本格始動する
日々顧客と向き合う中で深澤が考えていることは、顧客自身の課題を「マーケットワンが」「深澤自身が」解決できるわけではないということです。
「マーケットワンのコンサルタント個人の想いや能力がどれほど強かったとしても、それだけでお客様の成長をつくったり、本当の意味での企業の変革を生み出したりすることはできません。私たちはお客様に伴走し、変化のきっかけをつくることはできるかもしれない。
しかし、お客様がそのあと大きく飛躍するために必要なのは、お客様自身が変化を体感し、社内の賛同者が増えていくことだと思っています。社内での共感が得られたとき、はじめてプロジェクトは勢いを持って回り始めるのです」
実際に一緒に動くプロジェクトメンバーに始まり、経営層を含めた社内の各部門。戦略を戦術に変え実行に落とし込むためには、新規プロジェクトの発端となる個人の想いだけでなく、向かう方向を共有し、賛同してくれる人の存在が欠かせません。
「新しいことを始めるにあたり、プレゼンして一度に全員に納得してもらおうとしても無理な話だと思っています。一つずつ施策を試す中で小さな失敗と成功を積み上げながら、『そうか、マーケティングってこうすれば効果がでるんだ』といった実感を、仲間と一緒に少しずつ増やしていただくことが、結局は新規事業成功への一番の近道だと思っています。まさに急がば回れ、です」
マーケットワンに相談を寄せる顧客は、2種類に分類されます。大手製造業を例に挙げると、「なんとか変革しないと」と強い熱意を持っている30代後半から40代くらいの若手層。そして、「いまの若手社員にダイナミックな成長機会を与えたい」と話す、右肩上がりの事業成長を経験したベテラン世代です。
「どなたの悩みにも共通しているのが、社内に仲間を増やさなければ進められないが、どう動けばいいかわからないということ。幸か不幸か、それがわれわれを頼ってくださっている最大の理由になっています」
顧客内での賛同づくりをサポートする上で、深澤がしつこいほどに口にしてきたのが、「動き続けましょう」というメッセージ。仮に新規事業の立ち上げが目標であれば、絶対にあきらめずにプロジェクトを続行することが大切だと言います。
「施策を続けていく過程には、失敗も成功もあります。とくに、失敗した事例は社内で広まりやすい傾向にありますが、だからこそ次に成功できれば、より関心が集まりやすい一面もあります。施策を進めるごとに、まるでオセロゲームのように評価がひっくり返り、そのたびに仲間が増えていく過程はとてもスリリングです」
深澤は、お客様社内はもちろんのこと、企業の垣根を超えて業界内での仲間づくりができれば、より一層変革が推進しやすくなると考えているのです。
日本のものづくりの良さを枯渇させないために──いま足りないものを考え続ける
深澤の仕事へのスタンスの源泉にあるのが、顧客企業のポテンシャルに対するリスペクトと、「もったいない」といった歯痒さです。その根本には、「日本のものづくり産業の発展をマーケティング視点で支えていきたい」という深澤の熱い想いが隠されています。
「最近は、製造業で長年、技術職や研究職としてものづくりの最先端に携わる方々とともに、新規事業創出マーケティングの伴走をさせていただく機会が増えました。日本を支える基幹産業の技術開発を担う方々のお話を聞いていると、実際に市場と直接接点を持つ機会がとても限られてしまっていることがわかります」
5~10年後を見据えて製品や事業をつくるにあたり、そのコアにいる人たちが“未来のお客様”と対話し共創できる環境が限定的であり、その結果、市場の潜在ニーズを開発現場に取り込むことも難しくなっている現状が見られると語る深澤。
「また、技術革新力によって培ってきた企業知的財産の多くは、広い市場の中で日の目を見ることがないまま消えていくことも多い。せっかく高い技術開発力を誇っていても、潜在的に大きな新事業の芽となる要素があったとしても、市場のニーズや将来の志向とマッチさせ、製品化・事業化させていくことができるケースはまだまだ多くないのだと実感しました」
こうした日本の製造業におけるジレンマを目の当たりにしてきた深澤は、「経営の源泉やエネルギーになってくるのは、“マーケティング活動がもたらす情報”だ」という確固たる信念を抱いています。
「どんな産業が必要なのか、どんな製品が必要なのか、そのためにはどんな技術・研究が必要なのかを辿っていくと、『市場が何を求めているか』に行きつきます。新しい時代に合わせて日本のものづくりをアップデートしていくためには、企業活動の上流に遡ってしっかり再考していくことが求められると思っています」
大量生産・大量消費の時代が終わりを迎えたいま、自分たちにとって本当に必要なものづくりを見極めるためには、市場の声や情報をもとに、時代の変化と自社のビジネスを結びつけていかなければなりません。そのためには、市場と自社の接点をディレクションするポストが、どんな企業にもいないとおかしい時代になっていると深澤は考察します。
「これからの日本のものづくりでは『心の豊かさ』を追い求める新時代に突入していくと私は考えています。これは製造業に限らず、あらゆる業界に共通すること。国内やグローバル市場で戦えるような選ばれる製品をつくるためには、売り上げ・収益を追い求める経営層と、心の豊かさを追い求めてマーケティングを設計できる人物が必要になる。
そう考えたときに、いま日本に足りていないのが、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の存在だと思い至りました」
さらに深澤の考察は、より深い部分にまで及んで行きます。
「もっと広い意味で定義するならば、CMO(チーフ・“モノヅクリ”・オフィサー)というのが正しいのかもしれません。“マーケティング”の方向性を単に収益向上・顧客層拡大と捉えてしまうと、物量と価格で競争力を持とうとする途上国の三番煎じとなり、『心を豊かにするためのものづくり』と逆行した方向に進んでしまいかねません」
「どのような方向性でものづくりをしていくべきか」を本質的なところから考えることができ、そのために必要なマーケティング活動を発想できる人物をどんな企業もマーケティングの最高責任者に据えるべきだと、深澤は日頃から考えているのです。
主語になるのは「お客様」。遠回りになったとしても、必ず“共に”次のステージへ
外資系コンサル会社と聞いて多くの人がイメージする世界は、「キラキラ・華やか」といったものかもしれません。しかし深澤が提案するのは、一見すると遠回りのように思える道。そこに、本質を突き詰めようとするマーケットワン・ジャパンの流儀があります。
「高度なシステムも、お客様がそれを活用できなければ価値を持ちません。お客様の細かな要望に一つひとつに応えたとしても、本来のゴールに辿り着く道筋ではなければ意味がありません。
提案内容を考えたり、お客様にプレゼンを行ったりする上で、主語となるのは常に“お客様”です。『われわれに何ができるか』ではなく、『“お客様が”どんなことをできるようになるべきか』という視点で考えています」
すでにあるサービスや、いまできることを提供するのではなく、顧客にとって本当に必要なものを提供しようとすれば、ときにマーケットワンのケイパビリティを超える領域に挑戦しなければいけないこともあります。
入社当初は、そんなマーケットワンの営業スタイルにもどかしさを感じたこともあったと話す深澤。周りに感化されながら、迷いを断ち切ってきました。
「入社して間もないころ、お客様がシステムを必要としているのならシステムを提供すべきだと考えていました。しかし、先輩社員の商談に同行する中で、数字や利益主義ではなく、お客様にとって最善の未来を熱心に提案する姿を目の当たりにして、意識が大きく変わりました。
いま自分のメンバーには、『マーケティングで変革を実現するベストパートナーであれ」といつも伝えています。そのためには、お客様の未来を想像してお客様より先に動き、導いていくスタンスが必要だとも教えてきました。お客様が次のステージに進化し、支援を通してメンバーが成長を果たすことで、私たち自身もさらに進歩を遂げることができると信じているからです」
高精度で見栄えのいいロボットを渡して、結局顧客が操縦の仕方がわからないまま終わるような事態には絶対にさせない。一つひとつ手ほどきをしながら、顧客の機能自体をまるごと変えるために、ときに暑苦しいくらいに腐心することが、深澤をはじめマーケットワン・ジャパンで働くメンバーの楽しさになっています。
しかし、顧客のカウンターパートや組織を動かし、変革に導くのは簡単ではありません。
「『これをやってみたら楽しいんじゃないか?』といったポジティブな感覚を持てたら勝ちだと思います。挑戦意欲は陽の要素を持っている、そして陽の要素があるところに、結局人って集まってくる。もちろん楽しいというのは、失敗も含めて『どうしよう、こうしてみよう』と挑戦することを指していて、そうやってプロジェクトを進めていくうちに、どんどん周りが巻き込まれていくという姿が理想だと思っています」
自分たちのできること=最適解を押し付けるのではなく、「お客様が何をできるようになるか」を見据え、ベストパートナーとして伴走する。ゴールのないマーケティングという領域において、厳しくも楽しく成長し続ける。こうしたビジョンをもとに、今日も深澤は走り続けます。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです

