複数現場を担当しつつ風力発電という未知の領域へ──学び続ける技術者の姿
前田建設工業の東北支店土木部施工支援センターで、トンネルと風力発電所の機電業務を一手に担う益子。施工支援センターではほぼ単独で機電業務を担当しています。
「トンネル工事では仮設備の設置や組立、機械の管理をメインに行っています。風力発電関連では機器の設計から実際の工事まで幅広い業務を担当しています。去年から複数現場を同時に管理する試みを始めており、最大で3現場を担当することもあります」
複数現場を管理する新しい取り組みにチャレンジする益子の仕事において、大切にしている価値観があります。
「私は『適切なリスク』という言葉が好きで。リスクは取りすぎても、取らなさすぎても良くないと思っているので、それを考えることに一番時間をかけています。仕事でも人生でも大切にしている考え方です」
この価値観は、入社5年目の頃から後輩にも教えていく立場となった頃に出会ったものだと言います。業務量が多い中で、何を任せ、何を自分で担当するかという判断の際、益子の中では重要な基準となっています。
「基本的には各現場に部下がいますので、実際の話を調整しながら業務を行っています。朝は現場で不具合が起こっていないかどうかや、その日に必要な作業の確認を行い、他の職員とも実際に話をして仕事を進めていきます。
その合間に風力発電の検討事項や、施工計画書の作成、風車の設置計画などについて発注者と会議をしながら業務を行っています」
2024年から始まった風力発電設備の設置工事は、前田建設にとっても新しい取り組みです。社内でも風力発電の電気経験者は上司を含めてほんの数名程度しかまだ存在していません。
「電気や機械に関する知識は活かせている一方で、風力発電設備は恒久的な本設工事なので、これまでの仮設的な土木工事とはまったく異なります。より細かな検討と発注者との綿密な打ち合わせが必要です。
とくに特別高圧という何万ボルトもの電気を扱うため、適用される法律もこれまでの知識でカバーできていたものとは大きく変わってきます。その辺りの知識のレベルアップは、今も継続して行っています」
各現場の部下への教育も重要な業務のひとつです。複数現場を持つようになってから、どのように教えていくか、イメージをどう伝えるかを考える中で、独自の教育方法を確立してきました。
「機電業務の教育は、私のこれまでの経験をノウハウにする形で、個人的に後輩に対して行っています。現場で実際に使う機械について、基本的な知識から応用まで、一人ひとりに合わせて丁寧に指導するようにしています。とくに『言語化』することによって考えを整理しよりわかりやすく伝えることを心がけています」
就職時はメーカー志望から建設の道へと転換。建設業で見つけた機械の可能性
前田建設工業への入社前、大学時代の益子は機械系学部に在籍し、材料研究や構造力学を専攻していました。同じ研究室の多くの学生は自動車メーカーや航空機メーカーへの就職を選びましたが、益子は異なる道を選択します。
「私には子どもの頃からインフラ機械系の仕事に就きたいという夢がありました。当初はプラントメーカーが志望でしたが、就職活動を通じて、建設業にも機械や電気が必要な職種があることを知りました」
就職活動中に面接で出会った前田建設工業の社員たちの話から、その高い技術力に惹かれ、建設業ならではの魅力を発見します。
「メーカーの場合は、製品を作って納品したものをお客様に使っていただくという立場になります。建設業では、自分で機械を使いながらどんどんと改良できる環境があります。これは建設業ならではの特徴ですし、日々、臨場感を持って業務に取り組めるのではないかと思ったのです」
入社後、益子は東北支店に配属され、さまざまな現場を経験していきます。その過程で、想像以上に幅広い知識が必要とされることも実感してきました。
「機電という職種であっても、当然ではありますが、建設関連の知識を多く習得する必要があります。そのため入社後には電気工事、建設機械、土木などの業務知識を身につけ、専門資格も取得。
さらに機電においても軽油や燃料の取り扱いなども含め、幅広い知識が求められますし、私自身これまでを振り返ってみると成長を実感できています」
現場での実務経験を積みながら、同時に勉強して資格を取得していく日々。社内の教育システムも活用しつつ、実践的な学びを重ねてきました。
「また、いくら知識が必要とはいっても、実際の現場で実践しながら学んでいくことが何よりも重要です。想像以上に建設に関するさまざまな知識は必要とされますが、それらを習得することで現場での仕事がよりスムーズに進められるようになる、という流れです」
また、入社2年目で結婚をし、岩手県に家を構えて以来、現場での泊まり込み勤務をしつつも忙しい中、自宅に帰るという生活スタイルを確立した益子。東北支店での11年間、益子は仕事と私生活のバランスも大切にしてきました。
「結婚前は現場の宿舎に住み込んで仕事をしていました。今は週末に岩手の自宅に帰れる生活をしています。配属場所は東北支店内での異動が基本となっていますが、家族との時間も大切にしながら仕事を続けられています。
家族とのコミュニケーションや価値観の共有が重要です。とくに配偶者との間では、仕事の予定などを早めに伝え、共有することを大切にしています」
大規模プロジェクトの最前線、新鍬台トンネルと成瀬ダムでの貴重な経験
入社以来、多くの現場を経験してきた益子ですが、中でもとくに印象に残っている現場が2つあります。1つめは入社2〜3年目に携わった新鍬台トンネル工事です。
「月間掘削量で日本一を記録した大規模なプロジェクトでした。大きな現場ではとにかく業務量も多くなるため、たとえば機械の管理では、故障が出てから対応するのではなく、予防保全を重視して効率化を図るようにしています」
大規模な現場ならではの経験は、益子にとって大きな財産となっています。
「能力の高い方々が多く集結していて、その中で学べる機会が豊富でした。とくに少人数で多くの人を動かしていく必要があり、そこから多くの学びを得ることができたので、今の仕事の進め方の基礎になっている、と実感しています」
2つめの印象的な現場は、現在も進行中の成瀬ダムです。ここでもまた記録を達成しています。
「成瀬ダムではCSG(セメントと土を混ぜたもの)の月間打設量で日本一を達成しました。現場全体で50人ほどの職員がいて、私の担当する機電業務には8人ほどのメンバーがいました。作業員を含めると600人規模の大きな現場でしたね」
現場での知識習得について、益子は独自の方法を確立しています。
「最新の機械については自らマニュアルを読み込み、データを取ります。そして実際に使用している作業者とコミュニケーションを取りながら、早期の不具合発見と対応を心がけています。
今は、30代後半から40代の層が少ない環境なので、比較的若いうちから重要な仕事を任せてもらえる状況にあります。自由度が高く、新しいことにチャレンジできる風土も魅力ですね」
決断を託される責任とやりがい。環境の中で変化を遂げて得る成長の実感
従来の機電業務の枠を超えた新しい働き方に挑戦している益子。複数の現場を同時に担当し、トンネルと風力発電所の機電業務を掛け持ちする中で、次の目標を見据えています。
「正直なところ、何か大きな具体的な目標というものについて今は定まっていません。ただ、この新しい働き方をしていく中で何か目標が見つかるのではないかという予感はしています。
まさに今の風力発電に関わる業務内容がかつての自分では想像していなかったようなものであるのと同様に、今ある職種や部署とは異なる、新しい部署で働くことになるかもしれない。そういった可能性を模索しているところです」
現場での判断の多くを任されている益子。上司からの信頼も厚く、自身で決定できる範囲が広いことにやりがいを感じています。
「ほとんど自分で決めることが多いです。実際の現場に行くタイミングも自分で決めていますし、機電業務は少数精鋭メンバーなので、当然上司には相談をしますが、自身で決めるべき裁量は大きいです」
変化を恐れず挑戦することが重視されているのも前田建設工業の特徴的な社風。益子自身もそのカルチャーに共感しながら働けていると言います。益子自身、入社時と比べると担当業務や取り組む内容が大きく変化してきました。それは同時に、成長の証でもあります。
「これからこの会社へ入社してくる方には、変化することを恐れない人であってほしいですね。そして、自分のように、最初から建設業を考えていなかった方でも、十分に活躍できる環境が整っています。私も機械系の学部出身で、当初は周りと同様にメーカーへの就職も考えていた身でした。
けれども今は建設業で、機電の専門性を活かしながら、新しいことに挑戦できる環境に身を置けている。これはとてもよい選択だったな、と思います」
これからも従来の枠にとらわれない柔軟な発想と行動力で、益子は機電の領域から建設業界の可能性を切り開いていこうとしています。
※ 記載内容は2025年1月時点のものです
