「感性」も大事、「科学」も大事。バイヤーとしてそのバランスを意識したい
2023年4月現在、私は日本橋三越本店のバイヤーを務めています。婦人服部門で、各ラグジュアリーブランド様の支援やイベント企画、商品展開の交渉を担当しています。
日本橋三越のお客さまからのご要望をしっかりとブランドと共有し、日本橋三越の店頭の魅力を活かした特別な演出をした大型イベントの実施を提案しています。
当社には「感性と科学」という言葉があります。素晴らしい商品と出会った時の感動やワクワク感を持ちながら、一方で冷静に、ロジカルにビジネスとして見極める。そのバランスを常に大事にしています。
三越伊勢丹のバイヤーとの偶然の出会いで、道が開ける
大学1年からファッションの専門学校に通い、パターンを学んでいました。就職活動の時期になり、大学卒業後は専門学校で学び直すか、企業へ就職するかと悩んでいたときのこと。あるブランドさんの長期インターンで偶然出会ったのが、三越伊勢丹の「リ・スタイル」という店内編集ショップを統括するバイヤーさんでした。
バイヤーとブランドのデザイナーさんがともに議論しながらもの作りを進めている姿を見て感じたのは、「ああ、こんな仕事があったんだ」という純粋な驚きでした。この仕事なら、自分でファッションを生み出すよりも、自分の強みである論理的思考を活かせる。その直感が、三越伊勢丹への入社を目指したきっかけでした。
入社後、最初の2年間は伊勢丹新宿本店や銀座三越で販売職を担当。将来バイヤーになりたいという私の想いを叶えていただき、3年目に商品部に異動し、アシスタントバイヤーを務めていました。
7年目に昇格後、フロアマネジャーを1年、ブランドとフロアマネジャーを繋ぐスーパーバイザーを2年担当しました。どちらの仕事も向かっているゴールは同じで、お客さまに感動レベルのお買い物体験をいかにしていただけるかをひたすら考え抜く仕事です。
三越のお客さまはお買い物への期待値がとても高いので、細やかなお声に常に耳を傾けるよう腐心していました。このときにしっかりとお客さまと向き合えたことが、バイヤーとしての自分の想いを作る基盤になっていると思います。
譲れない自分の想いを見つめながら、交渉する日々
日本橋三越本店に異動になって3年目、初めてバイヤー職に就きました。私が担当するのは、世界的なラグジュアリーブランド企業です。
日本橋三越本店のお客さまだけに向けたオリジナル商品やイベントの開催を依頼していくのですが、交渉が簡単に進むことはまずありません。
当然ブランド様も譲れないフィロソフィーをお持ちだし、私たちも三越の「のれん」を守るものとして、大事にしたいことがある。お互いの価値観をすり合わせ、ブランド様の想いを深く理解する努力を重ねてようやく取組みの1歩が進む、といった具合です。
客観的なデータをもとに交渉、妥結を目指しますが、最後は、チームとして目指したいゴールは何なのか、バイヤーである私自身がどうしたいのか、その想いがどれだけ強いものなのかで交渉は決まると思っています。
島田が考える、百貨店の未来とは──「個と向き合う力」の価値が高まる時代へ
最近では、ある世界的なブランド様の宝飾品を、日本橋三越本店のあるお得意のお客さまにご紹介したことが強く印象に残っています。
革製品のイメージが強く、宝飾品はあまり知られていないブランド様でしたが、ファッションがお好きでトレンドに敏感なそのお客さまならきっとお気に召していただけると思い、そのお客さまを担当する外商社員と連携してご提案しました。
その結果、1人のお客さまへの商談としては私のこれまでの経験で最も大きな商談に繋がりました。お客さま、ブランド様双方に非常に喜んでいただき、外商社員も私も感無量でした。お客さま一人ひとりの嗜好やご要望に合ったものを、1人ではなく組織で提案できる百貨店の可能性を改めて感じました。
上質なものを求めるお客さまは増えており、百貨店の原点である「一人ひとりのお客さまにしっかり向き合い、ご要望に合った商品を提供していく力」の価値は一層重要になると思っています。
