デザイン思考によるワークショップ。DXの定着化をめざして
──コラボレーションの事例について、聞かせてください。
黒部:テクノロジーとエクスペリエンスデザインの2つのユニットがコラボレーションし、DX戦略策定やBPRのプロジェクトにデザインの要素を導入した支援を行っています。
具体的にはデザイン思考によるワークショップ、情報をその場で可視化するグラフィックレコーディング、またインフォグラフィックスを用いたロードマップ策定によりDX定着化を図っています。
DXは全社ごとであり、社員一人ひとりの変革や当事者意識が求められます。したがって、社員の方々をいかに巻き込むか、やるべきことをいかにわかりやすく伝え共通理解化するかということが重要だと考えています。
一方で従来のDX支援ではトップダウン的なアプローチが多く、社員の巻き込みや共通理解化が不十分であるため、結果としてDXが社員や組織に浸透せず、定着しないといったことも多いのではないかと思います。
デザイン思考によるワークショップでは、社員の方々に本音ベースでの意見・アイデアを出してもらい、その場で情報を可視化・整理しながら、課題やニーズの本質への理解を深めていきます。
情報をその場で可視化するグラフィックレコーディング
黒部:ワークショップでは猪野さんにグラフィックレコーディング(以下、グラレコ)をお願いしています。
猪野:はい。ワークショップに参加し、その場で出てきた意見やアイデアをリアルタイムでイラストやデザインでまとめていきます。通常の議事録と比べても視覚的にわかりやすく、DXの全社的な共通理解化にあたっては有効な手法ではないかと思っています。
──コンサルティングの支援の中で、グラレコが活用されるのはなかなかないですよね。デザインのみならず、ビジネスの知見も必要とされるチャレンジングな取り組みではないでしょうか。
猪野:そうですね。私自身、前職までのキャリアでは、学術論文などをはじめとした専門的なコンテンツをイラストとデザインを用いて図解することは慣れていました。有形なものを「もっとわかりやすくする」ような、翻訳に近い仕事でした。
ですが今取り組んでいるのは、まったくの無形なものを図解する仕事なので、これまで経験してきたこととは質が異なりました。
キャッチアップは大変ですが、黒部さんが都度ミーティングを設定してくださり、一つずつ用語を丁寧に説明してくださるおかげで形にすることができています。
インフォグラフィックスを用いたロードマップ策定
黒部:最終的な業務の将来像やロードマップ策定にも、デザインの要素を入れ、パワーポイントでの成果物だけでなく、グラフィカルな成果物に仕上げ、社員全体に対するDX戦略の共通理解化を進めています。ここでも猪野さんの力を借りています。
猪野:ビジュアル性の高い成果物を納品することで、アウトプットの面では他社とは大きく差別化できると思っています。パワーポイントの資料だと、それを理解できる人の数も関係者などに限られると思いますが、そこにイラストやデザインが加わることで、共通言語が生まれ、より理解しやすいものになると思います。そうすると、関係者以外にも展開しやすくなり、結果として全社的なDXの共通理解が進むのではないかと思っています。
──コラボレーションはどんな経緯で生まれたのでしょうか?
猪野:workplace(社内のSNS)に私のイラストを投稿したところ、黒部さんから声をかけてもらいました。コンサルティングのお仕事をイラストやデザインで可視化してみたいという想いがあったので、話をもらったときはすごく嬉しかったです。
黒部:テクノロジーユニットの支援のゴールは、“DXがクライアントの社員・組織へ浸透し、定着すること”だと考えています。DX戦略が絵に描いた餅にならず、全社的に定着するところまでを支援していくために、従来のコンサルティング手法のプラスアルファで何かできないか、デザインの力で活路を見出せないかと考えていたところでした。
当社の場合、各ユニットとの距離が近く、やりたいことや悩みを相談しやすい環境にあります。イノベーションは掛け算で生まれるものなので、さまざまなユニットとコラボレーションしやすい環境であるのは当社の良いところだと思います。
デザインとコンサルティングを組み合わせ、イノベーションを生む
──今後取り組みたいことについて教えてください。
猪野:私の専門のインフォグラフィックスは絵にすべきコンテンツがないと成り立たない仕事なので、今後もコラボレーションをしてコンサルティングの案件における経験を積んでいきたいです。また個人的にはコンサルタントの皆さんに向けて“ビジュアル思考講座”を開催し、アイデアを可視化するためのノウハウを共有するのが今後の目標です。
黒部:コンサルティングファームは、近年DXをクライアントに謳っている反面、コンサルティングファーム側の支援の進め方に大きなイノベーションが何十年も起こっていないのではないかと思います。
われわれはイノベーションファームを標榜しているので、コンサルティング手法にもイノベーションを起こせるようなノウハウの構築を進めていきたいです。
たとえば、動画やアニメーションを支援の中で活用するのも良いですし、メタバースのようなデジタル技術を取り入れた新たな手法も取り入れつつ、他ファームと一線を画していきたいです。そして、浸透・定着化するデジタル・トランスフォーメーションを突き詰めたいと思っています。
